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マンUにみる英国買収規制事情(1)

「マンU」といえば、英国を代表するサッカークラブMancehster United(official HP)で、スペインに渡る前のベッカム様のチームとして日本でもお馴染みですが、本職の方ではプレミアのタイトルは早々にチェルシーに奪われ、チャンピオンズ・リーグでもリバプールの後塵を拝する形になってしまい、今や最後に残ったカップ戦のタイトルを、これまた地味なシーズンを送ったアーセナルと争うという、何だかビミョーな展開になっているわけです。
しかし、ここに来て、何だかあんまり嬉しくないような話題で盛り上がりを見せ、日米のメディアでも「マンU」の名前が踊っています。


たとえば、

英サッカーのマンU、米国人実業家が1600億円で買収 (NIKKEI NET)

世界最大のプロスポーツチーム、サッカーの英マンチェスター・ユナイテッド(マンU)が米実業家マルコム・グレーザー氏(76)に買収された。第2位株主の同氏は16日、出資比率を英上場企業の経営支配に必要な75%強に高めた。完全買収を目指して総額7億9000万ポンド(約1600億円)を投じる方針だ。ベッカム選手などを輩出し、世界に約7000万人のファンを持つマンUのスポーツビジネスが巨額投資に見合うと判断した。

これを受けてマンチェスターは大変な騒ぎで、"サー"・ファーガソンはやめるとかやめないとか、ファンはユナイテッドのスポンサー商品の不買運動を始めるだの、グレーザー氏が持ち込んだ負債の返済のためにリオ(・ファーディナンド)はスペインに売られていくだの、グレーザー氏の金儲けのために米国で「唯一」メディアがとりあげるベッカム様復帰だとか(リオとベッカムのトレード・・・割りにあわんだろう。普通・・・!これは新手の焦土戦術か?)、色々な話が出ています。
そうした動きも大いに興味深いのですが、純粋に買収という面でみても、なかなか面白いケースですので、ユナイテッドをネタにして英国買収規制について考えてみたいと思います。

英国買収規制の基本構造~シティ・コードとパネル

ところで、まず基礎知識として、最初に押さえておきたいのが、英国特有の買収規制の基本構造です。
米国では買収規制は州会社法と連邦証券法が中心となっていて、補足的に自主規制機関(SRO)のルールが上場企業の活動を規制している形になっていますが、英国では自主規制であるシティ・コード(City Code on Takeovers and Mergers)の下で、自主規制機関であるパネル(The Takeover Panel)が、企業買収にかかる活動を規制しています。
というわけで、これからユナイテッドの買収に関して触れる色々な「規制」は、実は自主規制に過ぎないということは念頭に置いていてもらうといいのではないかと思います。
で、実は、早くも私にとって分からないのは、こうした「自主規制」のエンフォーゥメントはどうなっているのだろう、というところです。
極論でいうと、日本とかアメリカだと、上場廃止を覚悟すれば、取引所の規則に抵触するやり方というのも可能なわけですが、イメージだけですが、英国のシティの自主規制というのは、そういうものとは少し違うような気もします。
とりあえず今回のユナイテッドの買収に関しては、このシティ・コードの枠組みの中で手続が進んでいるので、これ以上は突っ込みませんが、いずれまた考えてみたいところです(誰かご存知の方がいらっしゃたら教えて頂けると助かります^^;)。

と、イントロが終わったところで、次回はグレーザー氏の登場からの経緯を見て見ましょう。

Posted by 47th : | 01:44 PM

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コメント

Codeのエンフォースについてですが、私の理解しているところでは、①Panelに参加している団体については、団体規則として機能するものであるので、Panelからの除名等のリスクを背景にエンフォースされることになるのに加え、②FSAが何らかの法令のもとでCodeをエンドースしており、PanelからFSAへの要請があれば、Codeをエンフォースするメカニズムがあり(場合によっては差し止めとかもあった気がします)、また、③Panelが批判的な声明を発表すると一般株主らがこれに影響され易い現象がでているため、事実上、Codeに従う買収者(特にそのFA)が多い、ということで遵守されてきているのだった気がします。

Posted by 110 : May 20, 2005 03:44 PM

>110さん
ありがとうございます^^
こういう自主規制の果たす役割という観点から各国の法体系を眺めてみるのも、色々と示唆を得られそうですね。

Posted by 47th : May 20, 2005 08:16 PM

ちょっと変化球になってしまいますが、前BBC会長で、かつてマンUのボードメンバーであったGreg Dyke氏が、最近の著書で任期中に買収をかけられた際のボードの動きを内側から詳細に描いていたのを思い出しました(時効なのでしょうか?・笑)。彼をBBCから追い出すことになったHutton Inquiryも”独立”調査委員会と呼称されながら、第三者性を保証するいわゆる法的な、明確な位置付けはなく、国王大権ということで理解するとのことで、しばらく浸かってはいるものの、やはりイギリスの法体系は難しいです。

Posted by 4thestate : May 20, 2005 09:31 PM

Man U買収者であるGlazer氏は、報道されているとおり、NFLのチーム(Tampa Bay Buccaneers)のオーナーでもあるのですが、NFLのanti-gambling policyの関係で少し雲行きが怪しくなってきているとの報道がでてきました。これは、Man Uがbookmakingをしていたり、Old Trafford跡地にラスベガスの会社とジョイントベンチャーでカジノを建てる計画があったりするので、Glazer氏がMan Uをも所有するとなるとanti-gambling policyに反するのではないかというものです。どうやら、Man Uの買収に反発している英国の少数株主やファンらがNFLの規則集を読み漁って関連条項を発見し、NFLに通報したということのようです。なお、Glazer氏の反応についてはまだ報道されていないようです。

個人的な予想としてはこれで頓挫することはなかろうと思ってますが、ちょっと面白いニュースに思われましたので、コメントさせていただきました。

Posted by 110 : May 25, 2005 11:44 AM

>4thestateさん、110さん
貴重な情報をありがとうございます。
ユナイテッドの話が面白いのは、チーム自体が地域とか文化に根差している中で、買収というものをどう考えればいいのかが突きつけられるところですね。
チェルシーの時は、これほどの反発はなかったような気もしますし、その辺との違いを考えるのも面白そうです。

Posted by 47th : May 27, 2005 02:10 PM

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