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信託型ライツ・プランと「好み」

前のエントリーで、信託型ライツ・プランはあんまり好みじゃないということを「ちらり」したのですが、どの辺りが「好み」じゃないかということについて少々。

何だか「重そう」

信託型って、よく考えられているのは確かですし、機能もいろいろとついているんですが、何だかその分、機動性に欠けるところがあるような気がします。
例えば、新株発行で株式数が増えたときの取扱いや端数処理とか、プラン導入後のストック・オプション付与のときの処理とか、転換株式を出す場合、etc・・・
もちろん、予めプランニングを慎重にしておくことで回避できる部分もあるのですが、プラン導入後にいろいろやるときに、いつもプランの影響というのを加味しなくてはいけないわけで、その辺りで、何というか「重そう」という印象があります。


「出口」での審査をどうするのか?

もう一つ、私の「好み」でない理由が、「出口」での審査がどうなるかが、今ひとつよく分からないところです。
「出口」というのは、買収防衛策の導入を「入口」に譬えて、実際に買収がなされた段階でプランを消却するかしないかという判断をする場面のことを指します。
信託型の場合、「入口」(導入時)段階で新株予約権をSPCや信託に発行する段階では不公正発行差止めという形で裁判所の司法審査に訴える余地があるのですが、買収が具体化していない段階では「そもそも取締役が買収防衛をするのは何事か」とか「仕組みとしてできが悪い」といった争い方しかできないので、今ひとつ身のある議論になりにくいところがあります。
そこで、実際に買収者が現れた「出口」段階での司法審査というのが、本来は重要になってくるはずなのですが・・・信託型の場合、誰に対して、どういう訴えをすればいいのか、今ひとつ分かりにくいところがあります。
「分かりにくい」というのも煮え切らない表現ですが、100%「できない」というわけではないものの、会社側の措置が適切かどうかという実体面での争いに入る前に、手続的な面で訴えの組み立て方や適法性にいろいろな論点があって、買収者が経営陣の判断を法廷で争おうとしても、そうした手続的な部分で「門前払い」をくらってしまう可能性があります。
つまり、信託型は一度導入してしまえば、後で具体的な買収の場面で経営陣の判断にチェックをかけるのが難しい構造になっているように思われるのですが、多分、逆にこの「法的安定性」というのは信託型のセールスポイントにもなっているんじゃないかという気がします。
心情的には、「実際に買収者があらわれたときに、消却の判断の適切性について訴訟で争われるかも知れない」というのは、依頼者(=経営陣)の立場からすれば居心地が悪いというのも分かるのですが・・・個人的には、むしろ「出口」段階でいい加減な判断をしたら裁判で負けるかも知れないという緊張感が自己保身目的の買収防衛策維持に対する抑止力となるべきじゃないかと思っているので、信託型は「好み」ではないところがあるわけです。

「好み」とお仕事

・・・とはいえ、いくら「好み」でないといっても、仕事になれば、一弁護士の個人的な「好み」を依頼者に押し付けるわけにもいかないんでしょうけど・・・
というわけで、「好み」如何にかかわらず、必要に迫られ既発表の信託型のプレス・リリースを勉強中です。
そういえば、別に設計者をよく知っているからほめるわけではないのですが、ウッドワンのライツ・プランのリリースも、今日初めて読んだのですが、細かいところで色々と確認しなければいけないことはあるような気がしますが、全体としてはよくできている、というより書けている気がします。
受益の意思表示と行使期間内の行使を怠った場合には一般株主も不利益を受けることや課税上の不利益についても、(変ないいわけなく)淡々と書かれていて「好み」ですので、信託型のライツ・プランの先例としては、こちらの方も見ていただくといいような気がします。

Posted by 47th : | 05:10 PM

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» 信託型ライツプランについてのジャスト印象(その2) from isologue −by 磯崎哲也事務所
47thさんに、またコメントいただきました。 鋭い切り返しにたじたじなのですが、 またまた、なにをおっしゃいますやら。 しろーと相手に遊んでいただいて、ありがと... [続きを読む]

トラックバック時刻: June 1, 2005 05:21 AM

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今日は朝からぎょぇ〜とテストで致命的な間違い(というか、ありえん!!!)をおかし [続きを読む]

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