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CNOOC提案にアメリカがおそれるもの

CNOOCによるUnocalへの買収提案ですが、次に掲げた記事あたりを見ていると、中国によるIBMのPC事業やメイタグの買収とは違う趣を持つものとして米国では受け止められているようです。

要は今回のCNOOCによる買収提案は、純粋にビジネス的なものではなく、中国のエネルギー政策と密接に結びついた国策的買収だという見方です。


面白いのは、その金で原油を買えばいいのにという意見に対して、そうではなく中国が心配しているのは、中国が台湾に対して武力行使を行った場合に中国に対する輸入が原油を得られなくなるという点が最初の記事では指摘されているところです。

Some foreign economists have criticized China for paying a hefty premium to control energy reserves abroad when it could pay market prices and have oil delivered to its door. But China's leaders are wary of entrusting their economic growth, and perhaps the longevity of the Communist Party, to American oil companies and the Pentagon.

"A popular saying abroad is that oil is just a commodity that anyone who has money can buy," Mr. He said. "But this saying is most popular in the countries that already control the supplies."

Shortages of imported oil could threaten China in the event of a conflict with Taiwan. The United States, which has said it would defend Taiwan if the Chinese were to attack it, could potentially block shipping in the East China Sea, crippling Chinese trade.

これは日本の食糧問題とも同じ構造の議論ですが、中国側の狙っているものが、この対台湾政策に対する米国の影響力の低下ということだとしても、中国企業が米国企業を資本的に支配することが手段として適切かというと、実は?がつくところがたくさんあります。
余り詳しくは書きませんが、中国に民間企業が資本的に支配するだけで、そのような特殊状況におけるエネルギーの確保という目的を達成することができるのか?、とか、エネルギーだけを確保すれば対台湾政策に対する障害は除去できるのか?、とか、そんな(ある意味)やましい動機があるなら、どうしてここまで派手な手段をとるのか?・・・とか。まあ、米国は、いざとなったら道理が通じなくても輸出禁止とかするぞとかいう脅しを使うので、それが使えなくなるのが困るということかも知れませんが(笑)
結局、そうしたところからすると、後者の記事のこちらの見方の方が現実的な気がします。

To be fair, the bid by CNOOC, as the Chinese oil company is called, is considerably more complicated. But at base, lawmakers and investors should remember that despite Unocal's history - it was founded in 1890 as the Union Oil Company of California - it is already more Asian than "made in America." About 73 percent of its proven natural-gas reserves are in Asia. And if CNOOC acquired Unocal, it "would not increase energy flows to the Chinese market, because most of Unocal's upstream assets are locked up by long-term contracts to supply other regional markets," according to Jason Kindopp, an analyst at the Eurasia Group.

And then there is the even more basic argument about capitalism. "U.S. oil companies need to play on an equal playing field around the world," said Larry Goldstein, president of the Petroleum Industry Research Foundation. "The prospects of that happening are diminished if the U.S. government interferes in a deal like this," he said.

ところで、別の記事で見かけたのですが、UnocalはChevronとの間で、他の買収者との交渉に入る前にChevronとの買収提案を株主総会にかけなくてはいけない旨の約定を結んでいるようです。
ここで、仮にこの株主総会の承認が得られなかった場合にはChevronは手をひくというアナウンスがなされた場合には、株主に残される選択肢は、①CNOOCのより高い現金オファーの可能性を放棄して、Chevronのオファーに賛成するか、②Chevronの成立確実なオファーを放棄して、CNOOCの成立可能性が未だ不明確なオファーをとるかの何れかしかないことになります。
というわけで、CNOOCに最終オファーを提示させて、両者を比較して決めるという選択肢が奪われていることになるという意味で、株主の意思決定の選択肢が一部奪われていることになります。
CNOOCのオファーの可能性を排除しているわけではないことからいうと、適法と判断される可能性が高いとは思うのですが、実質的な効果を考えると強圧的な要素もあるところで・・・この条項に基づく株主総会招集の差止めが法廷闘争の第一弾になるかも知れません。

Posted by 47th : | 03:26 PM

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コメント

7月10日まではなかなかまとまった思考を取れる時間が取れないので、前回の件をほったらかしにしているのですが、47thさんのエントリに反応して中国の石油戦略についてコメントしてみました。
http://nishio.main.jp/blog/archives/2005/06/post_176.html#c696
仕事との切り替えがうまくいかず、あまり頭が回っていないので考えすぎかもしれませんが、どうしてもユノカルというと、春暁ガス田群の問題がリンケージされてしまいます。私の頭の中では。

Posted by 福井 : June 28, 2005 08:03 AM

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