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分からないことが分かること

「過密ダイヤ」因果関係薄い JR脱線あす2カ月、原因の特定難航 (産経新聞)

死亡した高見隆二郎運転士(23)は乗務中のミスで過去三回、計十八日間の日勤教育を受けた。捜査本部は、日勤教育を恐れるあまり無理な運転につながった可能性もあるとみて、JR西の運転士から管理実態などを幅広く聴取。だが、現段階で「見せしめ」のような懲罰は浮かび上がってこないという。
捜査幹部は「どんな組織もミスをしたら責任を取らされるのは当然」と指摘、日勤教育に社会常識を逸脱するほどの制裁はなかったとみている。
同様に事故の遠因とされた同線の高速・過密化についてもダイヤ編成担当者から事情聴取。しかし、山手線などの首都圏の鉄道網に比べれば過密ダイヤとはいえず、車両やレール、保安機器などの「ハード面」も異常は見つかっていない。
新型ATS(列車自動停止装置、ATS-P)が未設置だった点も「他の未設置区間で事故があったわけではなく、『未設置が事故原因』という理屈は成り立たない」としており、捜査の難しさを強調する。

この記事に何を思うかは、きっと人それぞれだと思うのですが・・・私は、ちょっとだけ、ほっとしています。
原因の特定が難航しているのに、どうして?・・・と、思うかも知れませんが、物事の真相というのは、自分に見えているものと見えていないものをきちんと選り分けるところから始まるような気がするからです。
時間はかかってでも、ここから世論をかわすことが目的の対策ではなく、本当の意味で事故の再発防止に向けたとりくみのきっかけが生まれることを祈ります。


Posted by 47th : | 12:35 PM

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» JR西日本(再開) from 一誠館〜日々の戯言〜
脱線事故からしばらく経ち、早いような遅いような私にはわからないが事故を起した区間も再開された。再開するにあたり、ダイヤを変更しATS(自動列車停止装置)を設置し... [続きを読む]

トラックバック時刻: June 25, 2005 08:45 AM

コメント

こんにちは。私も同感です。こうやって「わかること」と「わからないこと」を選別することで議論は進化すると思います。

そこで、もう少し進化した(深化した?)議論をするならば、山手線のダイヤと福知山線のダイヤを比較して結論を出すこと自体、ナンセンスです。尼崎駅で宝塚方面からの電車、大阪方面からの電車が来るのを待った経験がある人なら、わかるはずです。あの電車は尼崎駅で乗降タイミングがピッタリ合わないと、たいへんな苦情が乗客から浴びせられます。私も尼崎支部への裁判のためにしばしば利用しますので、何度も列車の遅れに対して苦情を言いましたが、私なんかおとなしいほうで、すごい剣幕で駅員に怒鳴りつける人がたくさんいます。(むしろ山手線のように電車が来るのだったら苦情は出ないと思いますが)乗客からあれだけ苦情が出るわけですから、なんらかの理由で運転手に警告したり、極度の緊張のもとでダイヤの正確性を確保するのは当然でして、むしろ(調査するのであれば)尼崎駅での乗客の苦情内容などをきちんと調査するべきだと私は前から思っています。なお、誤解のないように申しますが、私はなにも「乗客の責任で今回の事故が発生した」などというつもりは毛頭ありませんので。

Posted by toshi : June 24, 2005 11:25 PM

警察の場合はどう刑事責任を負わせるかの為の捜査な訳ですから、膨大な刑事責任と複合的な原因になれば捜査が難航するのはあたり前なのではないかと思われるのですがそれはさておき。

一方の調査機関である事故調査委員会では最近日勤教育の調査を始めたようです。
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20050624i312.htm


>toshi さん
一応確認したいのですが苦情に対して管理者がちゃんとした対応を前からしなかった。ゆえにこのような状況を解決しない限り「なんらかの理由で運転手に警告したり、極度の緊張のもとでダイヤの正確性を確保するのは当然」でよろしいでしょうか。
すなわち「警告したり過度の緊張の下でダイヤの正確性を確保する」前に苦情内容の調査をするべきであったで正しい理解でしょうか。

最後に事故調査委員の会見でも述べられたように「制限速度の時速70キロ以下なら、あのような脱線事故は起こらなかった」事はここでも強調しておきます。

Posted by 小僧 : June 25, 2005 05:37 AM

>小僧さん

そうですね。ちょっと誤解を招く物言いで言葉足らずたったようです。失礼しました。私は、事故直前の状況として「誰かがこうすべきだった」と指摘するつもりは毛頭ありません。制限速度で走行していたのであれば脱線事故は起こらなかったという点については、おっしゃるとおりだと思います。
ご指摘の点ですが、私がコメントした趣旨は「警告したり、過度の緊張の下でダイヤの正確性を確保する前に苦情内容の調査をすべきだった」というわけではありません。
事故原因の究明ということですが、運転手固有の問題、ダイヤ編成の問題、安全設備の問題などいろいろ考えられると思いますが、現場近くにおける固有の問題というのも究明の対象にしてよいのではないか、と思います。
私が「当然」と書きましたのも、現在の評価の問題として正確性が大切、ということを書きたかったのではなく、あの尼崎駅の様子からすると事故前の状況として、「超過速度でも、正確性を期して当然」と考える人がいたのではないか、そのような人たちの意見が社内の価値基準に影響を与えていたことがあったのではないか、ということも調査対象となるのではないか、との趣旨です。JR西自体がこのような調査を行う、ということであれば責任の所在を拡散するような受け取られ方になってしまうでしょうが、公正な調査機関による調査ということであれば、日勤教育の問題点、設備やダイヤの問題点と同様に解明の対象となるのではないか、と考えています。それと、私自身知識に乏しいため、疑問を抱いている点は、これまでも大きな事故が発生したときに日勤教育の問題点ということが指摘されてきたと思うのですが、今回の調査はこれまでの調査とどのように違うのか、そのあたりもきちんと理解しておく必要があると思っています。また、不適切な物言い等ございましたらご指摘ください。

Posted by toshi : June 25, 2005 09:33 AM

>toshi さん
回答有難うございます。
"そのような状況だからダイヤの正確性を守るのが当然だと考えるのが(誰もが思う)常識"
と取れなくもない文章でしたので、文章の意図を確認致したく質問させていただきました。

私個人としては critical な事象として当該カーブの著しい速度超過により事故が発生したとの仮定の下で

○ そこまでに至る事実として何がありどのような関連性があるか。
○ 起こったは大惨事となることは、どうあがいても避けることが出来ないが少々の対策は reasonable な cost で可能だったか。
○ 起こった後の対応の御粗末さゆえ、被った風評リスクなどがここまで酷くなったのではないか。

等を疑問点として設定しております。

JR 西日本はどう考えても効果的なリスクマップを作成していたとは思えないのですが、上記の記事に関しても

○ 少々のアクシデントがあった場合にも、安全の為のルールを守りながらも定時運行出来るようにダイヤに「あそび」があるか。
○ 遅れた場合は顧客の損害となるような(e.g. 1 分遅れただけで乗り換えの都合上実質はかなり遅れる)ダイヤとなっていないか。

などの調査の下で因果関係は薄いと言ったのかが分からない故、なんとも言えないと言うのが正直な所です。

> 今回の調査はこれまでの調査とどのように違うのか
私も門外漢並びに未確認で書き込みますので間違いが紛れ込んでいるでしょうが御容赦願います。
国交省事故調査委員会については、「本委員会が行う調査は、公正、中立の立場から事故やインシデントの原因を科学的に究明することにより、事故防止に寄与することを目的とするものです。」との事です。委員会についての説明関係法令 がありますのでそちらを拝見していただければ宜しいかと存じます。

今回の事故については平成13年10月発足以後初めての鉄道重大事故として位置付けられております。どのような調査結果になるかはニュースなどによる現在の所断片的な情報しか知らないのですが, JR 西日本における鉄道人身事故の報告書 よりも詳細になることは容易に想像できます。

信楽高原鐵道列車事故の遺族側代理人による記事が存在しますが、Google で手っ取り早く見つけたものですし、評価は法曹関係者がされたほうが良いのではという逃げ口上で勘弁願います。

取り急ぎまで。

Posted by 小僧 : June 26, 2005 10:35 AM

>toshiさん、小僧さん
貴重なコメントをありがとうございます。
事故当初、事故自体の情報についても乏しい段階で事故の原因が「過密ダイヤ」や「企業体質」のせいとされたり、そうした「断定」の下で関係者の「責任」を問う声が見られたり、「安全」と「利益」がトレードオフの関係にあることが前提とされているかのような意見が見られたときに、このままその方向に流れていくのではないかという不安を感じました。
それで、この記事を見たときに、少なくとも過失認定という「事前」の責任については慎重に検討がされていることを知り、感じるところがあったので紹介した次第です。事故調査検討委員会の調査がどのような形で進んでいくのかはわかりませんが、そこでも一見の分かりやすさから更に踏み込んだ調査がなされることを期待したいと思っています。

Posted by 47th : June 27, 2005 11:03 AM

事故調査委員会の経過報告が以下の URI
http://araic.assistmicro.co.jp/araic/railway/report/%8Co%89%DF%95%F1%8D%90%82Q.pdf
にて発表されておりますが、現在の所回線が込み合っているためか pdf がうまく download 出来ないようです。

国交省のページ
http://www.mlit.go.jp/fukuchiyama/
にも同様の報告書並びに他の発表資料も存在します。

Posted by 小僧 : September 7, 2005 10:10 AM

>小僧さん
いつも、ありがとうございます。
じっくりと読む時間はまだないのですが、客観的な事実関係の整理がなされたもののようですね。ここから、どうやって原因へのアプローチを進めていくのか、また興味深いところです。

Posted by 47th : September 11, 2005 09:31 AM

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