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停止条件と新株予約権無償割当決議

実はちょっと前にtoshiさんがブログで新株予約権無償割当決議に停止条件をつけることはできるのか?という問題提起をなされていました。
条件決議型ワクチン・プランに関する共著論文が同時並行で進んでいたので、あんまりブログ上で暴走しても悪いなぁ、というのがあって、敢えて沈黙していたのですが、原稿も8割方固まってきましたし、磯崎さんも、今日のエントリーでこの問題をとりあげておられたので、ちょっとだけ触れておくと、実務ではかなり昔から「新株発行」に際して、停止条件を付すことがよくありました。それは何かというと、授権枠との関係で、定款で予め付された授権枠を超える数の新株を発行しようとする場合、「授権枠拡大の総会決議を得られることを停止条件」として、予め新株発行決議をすることがあるというのは、割合企業法務では有名な話で、確か法務省の監修している実務相談でも、このような決議は可能であるという趣旨の記事が載っていたと思います。
条件決議型ワクチン・プランの場合には、対象となる行為は「新株予約権の無償割当て」ですが、「会社外の第三者との意思の合致を必要としない」という意味では(これが民法上の「単独行為」と同じかは次に述べるように、そうではないと思うのですが)、新株発行と同じですので、従来新株発行に停止条件を付することができた範囲では新株予約権の無償割当に停止条件を付することは、少なくとも実務上は、何ら問題がないのではないかと思っています。
あと、これは手許に民法の教科書を一冊も持ってきていないので伝聞になってしまうのですが、コンメンタールなどでは、取締役会決議などは民法上は「合同行為」と解されていて、「単独行為」とは解されおらず、また、「合同行為」に停止条件を付することができないという議論は見あたらないということのようです。ですので、そういう意味でも形式論的にも問題はないようです。
寧ろ、私自身が大切だと思っていたのは、toshiさんが最初に指摘されている会社法上の議論としてしばしば問題となる「条件の合理性」の問題で、こちらについては、「導入時」の取締役会が、「発動時」の取締役会の意思決定をどこまで拘束することが可能なのかということが問題となるわけで、設計の際のバランスというか匙加減をよく考える必要があるわけです。これは、日本でも使われ始めた「デッド・ハンド性」と 連続性を有する問題だろうと思っています。ということで、停止条件が付されているだけで、ア・プリ・オリに無効となるということは、とりあえずないだろうと考えております。


Posted by 47th : | 11:47 AM

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コメント

おひさしぶりです。いろいろと勉強でお忙しいにもかかわらず、ご丁寧に回答いただき、ありがとうございました。こういった説明をしていただきますと、おそらく導入を検討されておられる企業のほうも「法的安定性」という面からの安心感が増すのではないか、と思います。あの論文は事務所のオフィシャルなものと思いますので、ちょっとこちらのブログに質問するのはためらっておりました。新会社法施行と合わせた防衛策として実務面で参考にさせていただきます。
しかし、47thさんと ろじゃあさんを結ぶ「某氏」・・・
なんか興味ありますねえ(笑)

Posted by toshi : September 6, 2005 01:41 PM

>toshiさん
こちらこそ、色々と事情があってお返事(?)が遅くなり申し訳ありません。ただ、こういってしまうと何ですが、買収防衛策というのは、単なる「仕組み」なわけで、より大切なのは、それを運用する側の意識とか知恵の部分なんで、その辺りが見失われないといいな、などと思っています・・・って、まるで人ごとみたいですが。
あと、何だか含みを持たせてしまったようですが、「某氏」というのは、そんな黒幕?みたいなお方ではないんですが^^;

Posted by 47th : September 6, 2005 04:26 PM

こんにちは。旧ブログから飛んできました。
文字の色がグレイで少々読みにくいです。あらゆる文字を黒で表示するよう、firefoxの設定を変えれば良いのですが、それだと、逆に読みにくくなるサイトもあります。
CSSをいじって、黒に変えていただきたい。

Posted by Inoue : September 7, 2005 05:44 AM

>Inoueさん
はじめまして。
文字色の変更考えてみますが、仰るとおり、全体とのバランスもとらないといけないのですが、現状、少々ばたばたしており、すぐには着手できないかもしれません。
ご迷惑をおかけしますが、ご了承下さい。

Posted by 47th : September 11, 2005 09:13 AM

どうも、某氏です(笑)。ニューヨークでお世話になった御礼がすっかり遅くなりました。47th さんも、同行してくださったろじゃあさんも本当にありがとうございました。オーダーの仕方などうまくリードしてくださって、こちらは要らぬ心配なしに韓国料理を心底楽しめましたですよ。

私がお二人を結んだわけではなく、たまたま別々にそれぞれ知り合いだったのですが、3人であったのは始めてであったということです。Sさんは初対面でしたが、初対面とは思えないほど4人で盛り上がってしまいました。私のノリが少し悪かったのは時差のせい、ということにしておいてください。

toshiさん、はじめまして。ROMですが、以前よりブログ拝見しています。買収防衛策に関するtoshiさんのつっこみにはいつも鍛えられております。当方、実務家ではなく研究者なので、47thさんのブログともども、実務のセンスを披露していただけるのは(しかも無料で!)本当にありがたいです。

civil law/ common law とファシズムの話は本当にひどいですね。「commmon law 国はワールドカップでのサッカーの成績が悪い」と言ってやれば面白かったかもしれませんね。元ネタはここです。
http://papers.ssrn.com/sol3/papers.cfm?abstract_id=318940

ご存知の方も多いと思いますが、「common lawってなんて素晴らしいんだ。世界に広げなくては」みたいなブームが2000年前後に存在して(実際に、日本もヨーロッパも競って会社法や倒産法、担保法をアメリカ化しており、ヨーロッパの法学者はそのことを自覚している)、それが最近では鎮静化してきたという動きが背景にあります。でも、いまだにやっているなんて、その人、時代遅れ?

ひどい例なので、みんなでこうやってブログでイジって遊んでますが、私自身は学生から苦情を受ける側の立場にもいる人間なので、読んでいてだんだんと辛い気持ちにもなってきました。最近、学生からの授業評価が結構こたえたもので・・

それでは、また。

Posted by けんけん : September 12, 2005 01:35 AM

>けんけん先生

 こちらこそ、よろしくお願いします。防衛策につきましては、私は47thさんのようなベンダーではなく、ユーザーの立場に近いものでして、だからこそ「怖いもの知らずのツッコミ」が可能なんだと思います。(時々、思いっきりハズシていますがΣ(^o^;)アセ)わざわざ私のブログにまでコメントをいただき恐縮です。またご教示いただければ幸いです。
 
 しかし学生による「授業評価」ですか。。。時代も変わったんですね。ビックリです。。。

Posted by toshi : September 12, 2005 06:31 AM

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