昨日のことになりますが・・・
コイル大手のスミダコーポレーションは28日、スイスの電子部品メーカー、サイア・バージェス・エレクトロニクスに対して進めていた株式公開買い付け(TOB)による敵対的買収を断念した。・・・スミダは保有するサイア株(発行済み株式の29%)すべてについて、スミダのサイア買収を防ぐために登場した「ホワイトナイト(白馬の騎士)」の香港の電子部品会社に売却すると発表、買収戦から撤退した。
ということなんですが、ちょっと考えてみると、「TOBが成功しなかった」という意味では「失敗」なんですが、全体のパッケージで見ると、これは「成功」といっていいんじゃないですかね?
TOBというのも、一つの「買い物」ですから、当然「出せるお値段」と「出せないお値段」というのがあります。
「出せるお値段」の範囲内で買い物ができれば、一番いいわけですが、それよりも値段が高ければ、それは元々「手の届かない品物」だったというだけです。
もっというと、これはオークションであって、この自分の中のお値段の幅をしっかりと持っていないと、「勝者の災い」ということで、却って泣きをみるので、価格がつり上がった以上撤退するのは別に失敗ではないわけです。
しかも、このケースでは、スミダは元々保有していたかなりの分量の株式をプレミアムをつけてホワイト・ナイトに売却できたわけですから、見方を変えて、これを純投資だとすれば、「成功」といっていいんじゃないかと。
こういう具合に、より高い価格を出す者が現れなければ希望した値段で買収を完了できるという意味で「勝ち」で、より高い価格を出す者があらわれた場合には投資収益をあげることができるという意味で「勝ち」なわけですから、これは一種の王手飛車取りの状態になります。
実際、アメリカのM&Aの指南書などでは、この状況を意図的につくることは、極めて大事とかとも言われています。
ということで、全体のパッケージとして見れば、このTOBは「成功」と言っていいんじゃないですかね?