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「マンション自壊」のおそれと「梁のたわみ」・・・

テストというか、ゼミのペーパーの締め切りを3週間後に控え、この週末は論文のスキミングと基本的な構想をたてていたのですが、こちらのニュースを見て、あまりの衝撃・・・

耐震性偽装、倒壊の恐れ新たに5棟…全棟の強度公表へ (読売新聞)

首都圏のマンションなど計21棟の耐震性が偽装されていた問題で、新たに東京都港区や新宿区などのマンション5棟の強度が不足し、震度5強の地震で倒壊する恐れがあることが20日、国土交通省などの調査でわかった。・・・国交省の調べで強度不足が新たに判明したのは、いずれも船橋市内にある建設中のマンション3棟。このうち、「グランドステージ船橋海神(かいじん)」は、建物自体と家具や住民などの重量にも耐えられない構造。地震などで外部の力が加わらなくても倒壊する恐れがあり、「基礎的な計算をしただけで、強度不足が分かった」(国交省関係者)という。

外部の力が加わらなくても倒壊・・・と思って、国交省のHPを見ると、「読売新聞11月20日(日)朝刊1面の記事に関して」というリリースがあるので、読んでみると・・・


読売新聞の、構造計算書が偽造された川崎市と船橋市のマンションについて、自壊するおそれがあることが国土交通省の長期応力度の調査の結果判明した等の報道について、国土交通省の認識している事実関係は以下の通りである。
(中略)
  本日、竣工済みの2件の長期許容応力度(建物の重さ等に対する強度)に対しての検討を行ったところ、これまでの計算結果では、船橋市の1件について部材の一部※の強さに不足があり、記事にあるように、長期的には柱や梁が曲がってくるなどの可能性があるが、ただちに「自壊するおそれ」があるような状況とは言えず、川崎市の1件については、強さが不足している部材は確認されなかった。

しかしながら、地震時の強さに関しては、概ね震度5強の地震に対して倒壊するおそれがあるというものであり、いずれにしても早急な対応が必要なものと考えられる。
(中略)
※5階~10階の梁(はり)約85本のうち約5本について、長期的にたわみ等の問題が生じるおそれ

「梁のたわみ」と「自壊」では、えらい違いやがなと思いつつ・・・ふと思ったのは、「梁のたわみ」には、心当たりが・・・
うちは、築2年半ぐらいの新しいマンションなんですが、入居したときよりも窓が開きにくくなったり、ドアが閉まりにくくなっているような・・・でも、建築中のビルを見ているそれもあり得る話で、日本だとまず外側の骨組みがきちんとできてから、外壁ができていった記憶があるのに、こっちのビルはワンフロアつくったら、その上に木材で2フロアぐらい仮組をして、積み木みたいにして、上へ上へと伸びていくんですよね。
建築については、全くの素人なんで、この作業の違いは何を意味するのか分からないんですが、何か怖い。
実際、ビルを崩すときも、えらくあっさりと跡形もなくなってるし・・・そういえば、たまにニュースで、本当に突然ビルが倒壊したというのもあったりするんで、震度5とかいわずに、震度2ぐらいでも危ないんじゃないかと。
NYは地震がないというのが、何か定説になっているんですが、本当なんですかね?
・・・というわけで、日本では、極めて大変な問題となっている中、こんなしょうもない我が身かわいさなことを考えてしまいました。
最後にちょっとだけ真面目な話をすると、この件についての日本のニュース番組での識者のコメントで「実際に倒れてみるまでは分かりませんからね」という話が印象的でした。
ちょうど今ペーパーの関係で情報の非対称性に対して、法がどういうアプローチをすべきかということを考えているんですが、マンションの耐震性というのは、nonverifirable informationの一種なので、これをどうやってコントロールするのがいいのやら・・・この辺り、また何か考えがまとまったらエントリーしてみます。

Posted by 47th : | 08:28 PM

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» 北側大臣の姿勢に敬意&47thさんのつぶやき(追記版) from 法務の国のろじゃあ
<耐震偽造>国交相、行政の責任検討を表明北側一雄国土交通相は22日午前、閣議後の [続きを読む]

トラックバック時刻: November 22, 2005 01:56 AM

» もう民事再生の検討か?・・・霞ヶ関等でできること from 法務の国のろじゃあ
YahooNews<耐震偽造>大半関与の木村建設が民事再生法申請を検討姉歯(あね [続きを読む]

トラックバック時刻: November 22, 2005 01:57 AM

コメント

47thさんと同じ事を、バンクーバに居たときに感じました。

北米のビルの建築物は、木で積み上げていく方式の違いだけではなくて、柱の太さも日本よりも細い気がしました。

これは、建物の重量を柱で支える構造でつくるか、壁で支える構造で作るかの違いなのですかね。

日本において、建築基準に合っている建物でも、長周期地震に対しては考慮されていないので、大きな地震が起これば基準に合っていても倒れてしまう建物はあるのではないかと考えてしまいます。

Posted by Cazper : November 20, 2005 10:59 PM

>Cazperさん
アメリカにいると、日本沈没じゃありませんが、日本って国土が狭くて入り組んでいる上に、火山帯はあるわ、いろいろな意味で土地関係のリスクが大きいんだなと感じますよね。
住宅のこういう面でのリスク耐性って、素人には分からない上に、ちゃんと確かめるにもコストがかかるわけで、どうやって適切に(完全には無理だと思いますが)コントロールしていけばいいんですかね。

Posted by 47th : November 21, 2005 09:13 PM

香港でホテルに泊まってるとき
香港の街中で竹の足場で古い(すごく古い)ノッポビルの改装が行われてるのをみるとき
・・・香港に地震がないというのは定説なんだろうか・・・
とろじゃあもよく考えてしまいます。
先ほどはコメントありがとうございました。
すかさずTBいくつかさせていただきます(^^;)。
NYオフ会の会場と日本のオフ会の会場をネットでカメラ使ってつなげるといいかな・・・なんて誰に技術援助を頼めばよいのやら・・・

Posted by ろじゃあ : November 22, 2005 01:55 AM

はじめまして。アメリカ東海岸で11月17と19日に、弱い地震ありましたね。合衆国の歴史的地震については以下をご覧下さい。
http://earthquake.usgs.gov/recenteqsww/Quakes/usfnbb.htm
カナダでも、五大湖、セントローレンス河付近に,たまに地震があります。

日本では、手抜きマンションの話題で騒然ですが、原発も同程度の振動で壊れてしまう事が、分っています。加速度の計算式が古すぎたそうです(^^;;

Posted by U-2 : November 22, 2005 09:02 AM

>ろじゃあさん、U2さん
コメントありがとうございます。
Katrinaでも思ったのですが、この種のリスク管理のメカニズムって、難しい問題がありそうですね・・・本当の意味でのリスク転嫁というのは難しいので、デリバティブとかを使ってヘッジすればいいという話ではないことは確かなところですが・・・かといって、完璧に自然現象を予測したり、コントロールすることもできないか、異常なコストを要するわけで・・・この微妙なバランスをどうとっていけばいいのか・・・うーん、考えがまとまりません。

Posted by 47th : November 23, 2005 01:36 PM

昔だったら・・・ロイズが一手に引き受けてくれたかもしれないのにねえ(^^;)。
ところで、今回の件、また核ミサイルの発射ボタン押しちまった取引銀行があるのかないのかが話題になってしまってます。押すには勇気がいると思うのですが・・・

Posted by ろじゃあ : November 24, 2005 07:56 AM

材料工学についてはまったく知りませんが、梁がある程度たわんでも大丈夫なように鉄骨やら鉄筋が入っているのだと...
少なくとも「ビルを崩すときも、えらくあっさりと跡形もなくなってるし・・・」や地震のように突発的に巨大な力がかかるというのと長期的な力の掛かり具合で自壊するというのは違う問題です。(そのぐらいの幅があると衝撃と部材のダメージはまったくもって正比例しません) また WTC のような倒壊を想像されているのだとすると、京大防災研の http://www.dpri.kyoto-u.ac.jp/web_j/faq/qa-gen.html#QA11 を斜め読みした限りでは飛行機の衝突の衝撃(当然福知山線の事故とも衝撃のエネルギーが桁違いに違います)と火災による構造部材の劣化の複合による物のようです。鉄筋コンクリート部材の破壊については http://www.eng.hokudai.ac.jp/news/publication/archive/archive00/2003/09/page07.html などを参照してください。
図面や現場だけでは倒壊の危険性が簡単には見抜けない(なぜなら危険性と鉄筋の量が正比例する訳ではないから。 8 割の鉄筋でも 3 割の安全性とか)としても、通常の用途でただちに自壊する程までの手抜きが建築確認で見抜けないとは...思いたくないです。

初期報道は emotion を揺り動かす事項が多くなるのはしかたがないにしても...なんか言葉に踊らされているだけのような気もするんですよね(私も含む) という訳で昔習った理科の知識をアンカーに頼る訳ですが

Posted by 小僧 : November 26, 2005 07:01 PM

>小僧さん
まさにWTCの崩れ方が頭にありました^^;
ただ、建物と建物の隙間が、本当に全くないような建物の建て方とか、(規制があるという話ですが)築100年の建物が、そのまま内装だけやりくりして使われている様には、やはり発想の違いを感じることもしばしばです。
今回の件については、純粋に技術的な問題だけでなく、制度の枠組やコンプライアンスのあり方なんかも絡み、事実関係も錯綜しているので、何ともコメントがしにくいのですが、「責任」という言葉が乱発される状況が気になっていました。
報道のせいだけではないのでしょうが、今回も自ら命を絶たれた方が出たことが本当に痛ましい限りです。

Posted by 47th : November 27, 2005 01:50 PM

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