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MTAスト突入

ここしばらくNY地域のトップニュースは「MTAスト突入か」だったのですが、先週金曜日を空振りさせてごにょごにょした挙げ句、本日、とうとうストに突入しました。
MTAはニューヨーク市内の地下鉄・バスの大部分をカバーしており、これが全面ストに突入すると大量輸送交通機関はほとんど麻痺状態になってしまいます。東京でいえば、地下鉄とバスが止まって、JRも埼京線と京葉線だけが動いているという感じかも知れません。
・・・で、何が起きるかというと、摂氏零度を切る寒さの中、通勤のためにマンハッタンにかかる橋を歩いてわたる人の群れということになります。
自動車についても、厳しい交通規制が敷かれ、マンハッタン内に入る車は4人以上の乗員がいないとだめとなっており、タクシーの運賃もメーター制ではなく、ブロック料金が敷かれています。
報道を聞いている限りでは、ことの起こりは、MTAの剰余金が数千億規模になっていて、それを従業員に還元しろという声が高まったところにあるようです。
これに対して、市側は、この剰余金は今後の新路線の開発などに用いるのであって、決して金が余っているわけではないと反論。両者の言い分は平行線を辿ったまま、今回の全面ストに突入したわけです。


さて、これだけなら、よくある労使紛争なんですが、ちょっと気になるのは、MTAというのは、ニューヨーク市のエリア内では、ほとんど独占的な存在である上に、提供しているサービスの性質からいって顧客の価格弾力性が低いというところ・・・ということは、MTAは現在でも相当な価格支配力を持っているところです。
そういう意味では、人件費の上昇は価格転嫁を通じて消費者に転嫁される可能性が相当に高く、実際、ついこの間も新路線建設費とかの関係で市民からの不評にもかかわらず値上げをしたばかりです。
つまり、普通の企業なら、元々のパイの大きさは、市場における競争を通じて得られる範囲に限られるのですが、MTAのような独占的公共サービスの場合は、価格を上昇することによってパイ自体を広げるということが可能です・・・で、例えば、MTAが今回の人件費上昇の分を価格に転嫁して、また剰余金を増やしたとすると、また、その剰余金の分配を求めて労使紛争が起きる・・・というようなスパイラルに陥る可能性もあるような気がします。
そう考えると、今回のストの問題は単なる経営者側と労働者側のトレードオフの問題ではなく、公的独占企業における利潤設定をどうすべきかという問題にも通じる話なんじゃないかというところで、どういうロジックでどんな解決がなされるか、とても興味深いところです。

Posted by 47th : | 10:35 AM

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» Strike on Subway and Bus (追記有) from LLM留学日誌~留学2年目NYLife
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トラックバック時刻: December 20, 2005 09:05 PM

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