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ご教示、多謝 ~ あふたーまーけっと

昨日、ペーパーを書くのに行き詰まり、ぐち半分で書いたエントリーに、早速に色々なコメント、TB、メールをいただきました。本当にありがとうございます。
・・・いや、実は、こんなに競争法に興味のある方がご覧になっているとは思っていなかったので(しかも、明かに独禁法の専門家と見受けられる方もいますし・・・)、内心今まで書き散らしてきたエントリーを振り返って冷や汗をかいていたりするんですが:-)
貴重なご示唆のお礼・・・になるかどうかは分からないのですが、とりあえず、これまでのサーベイをベースに、米国での議論状況に関する私の理解(誤解の可能性あり)をご紹介いたします。
(・・・というわけで、以下は多少マニアック)


まず、アフターマーケットに関する経済理論の整理に関しては、Shapro, Aftermarkets and Consumer Welfare: Making Sense of Kodak, 63 Antitrust L.J. 483 (1995)とEmch, Price Discrimination via Proprietary Aftermarkets, 2 Contributions to Economic Analysis & Policy 1 (2005)に多くを負って、次のように整理しました。[ ]で囲んだ部分は私の現時点でのimpressionです。

  1. "Costly Information"
    Package Priceに関する情報は、消費者にとっては入手困難であり、aftermarket における価格転嫁がequipment priceに適切に反映されるとは限らない。
    [equipment marketにおける競争(とsophisticated customerの存在)がある限り、原則として、情報の不足をmanufacturerの有利に用いることはできない?]
  2. "Surprising" or "Limited Manufacturer Commitment"
    事後に不確実性があり、かつ、事前に完全なコミットメントを行うことが不可能な状態では、不可避的にmanufacturerの機会主義的行動のインセンティブが発生する(See Borenstein et al, Exercise Market Power in Proprietary Aftermarket, 9 J. of Economics & Management Strategy 157 (2000))。
    [基本的には"reputation"が制約条件になるが、当該企業がequipment marketから撤退するなど、reputation蓄積のインセンティブを失った場合にはhold upが生じる可能性があることは否めない。但し、こうした例外的な状況におけるhold upのオプションを確保することがaftermarket monopolyの主要な動機といえるかは疑問。裏からいえば、これによる厚生損失は限られており、これのみを理由にaftermarket monopolyを禁ずる理由になるかは疑問。]
  3. "Price Discrimination"
    High aftermarket pricesは、consumer demandのintensityのmeterとして機能する。See Klein, Market Power in Aftermarkets, 17 Managerial and Decision Economics 143 (1996). (Pricingに関するものとしては、Ramsey pricingとなっているとするElzinga=Mills, Independent Service Organizations and Economic Efficiency, 39 Economic Inquiry 549 (2000)もあるが、まだ消化できていないので割愛・・・)
    [equipment marketが真に競争的な場合には、price discriminationはworkしないのではないか?(Emch(2005)は実証的にこれを主張)そもそも、適切なmeterとして機能する場合は限られる?(独禁屋さんのコメント)]
  4. "Signaling"
    Aftermarket Markupは、equipmentの品質に対するシグナルとして機能する(使ってみていいものなら、利用が増えるはず→equipmentではなく、aftermarket markupを乗せるのは、使ってみてよさが分かるという自信を持っているシグナルという意味)。See Schwartz=Werden, A Quality-Signaling Rationale for Aftermarket Tying, 64 Antitrust L.J. 387 (1996).
    [筆者自信が述べているように、必ずしも一般的にあてはまるわけではないのと、少なくとも高いAftermarket Mark-Upを消費者が認識していないとシグナリングの前提が伝わらない。Aftermarket Mark-Upの中にはHold Up theoryなど他の理論で説明できる場合もあり得る以上、誤ったシグナルの識別の問題も生じる。全くないとは言わないが、かなり限定的?]
  5. "Myopia"
    消費者は、たとえPackage Priceの情報があったとしても(Costly Informationとの違い)、Equipmentに関心をおき、Aftermarket pricingに十分な関心を置かないかも知れない。(モデル的にはAftermarket Goodsの評価に用いる割引率が異常に高い(家電製品の購入に際して購入後のランニングコスト(電力)に対する消費者の行動を研究した実証研究によれば、45-300%の割引率が用いられていたとのこと))。
    [独禁屋さんが仰るようにKodak事件多数意見では、こうした現象への配慮を伺わせる記載もあるのですが、その後の文献では、Costly InformationやHold Upに焦点が当てられていて、この完全情報下でも生じ得るMyopiaについては余り触れられていないようです(Emch(2005)の脚注等で触れられている程度)。ということで、この方向での議論の発展の可能性についてはペーパーで触れようと思っています。]
  6. その他
    その他では、Aftermarket goodsの品質とequipmentの品質の区別が困難な場合に生じるfinger-pointing problem (Winにアプリをインストールして調子が悪いときに、Winのせいにしたくなるあれ?)や、補修サービス限定にですが、account control(定期的な訪問が将来の消費者の購買行動に影響を与える)とか、Replacement のタイミングのdistortion(社会的に望ましい水準よりも長い期間equipmentが用いられること)を防ぐといった議論があるようです。

・・・と、とりあえず(私の理解している限りでは)こんな感じになっています。
結論については、迷ってはいるんですが、equipment marketが真に競争的ならaftermarket monopolyは基本的に認めてもいいんではないかと・・・ただ、悩ましいのは寡占市場の場合ではないかと思っています。
ただ、まだきれいに考えがまとまらないまま時間切れになりそうなんで、ペーパーでは上のような既存の議論に対する一定の評価を加えた上で(bunさん指摘のように、ちょっとモデル論は後退させて、定性的な議論をメインにしようと思います)、寡占市場において発生する問題のアイディアだけを書く感じになるのかなと思っています。
何れにせよ、今回、皆様からコメントを頂き、大分頭が整理されました。本当にありがとうございます。
競争法(&経済学)に関しては、まだまだ勉強中の身ですが、これからも色々とご教示いただければ幸いです。

Posted by 47th : | 11:23 AM

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