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記事も書かずば撃たれまい・・・

という、しゃれにもなっていないようなことを、たまに思います。
基本的に、ブログでは、恥もさらしながら、結構思いついたことをそのまま書いているのですが、やっぱり「これは書かない方がいいんだろうな」というネタがあるんですよね。
一つは当たり前ながら、本職に密接にかかわるところで、抽象的な評論すらしにくいものというのは、やっぱり色々と出てくるわけです。弁護士の場合は、守秘義務というボトムラインさえ守っていればというのがあって、官僚の方のブログのように万が一所管事務との関連を疑われるといけないので実名をさらすことができないというような制約はないんですが、そうは言っても、やっぱり何か書きにくいという話はあります。
で、もう一つは、逆に、全く門外漢の分野に関することです。
いや、本当に全然畑違いだったら「素人考えなんですけど」ということでいいわけですが、微妙なのは、法律関係だけど専門外のところです。
こっちも言ってみれば「素人」なんですが、何せ一応法律関係だったりすると、あんまりあほなことを書くと「あんたそれでも弁護士?」と白い目で見られそうな気がして書けなかったり・・・あとは、何か感情的な反応を呼び起こしてしまうかも知れないので避けた方がいい・・と思って書かないこともあります。
今日もまた、そんなもやもやした気分を抱えながら、何か書きたいんだけど書かない方がいいんだろうなと思って、口をつぐんでしまうわけです。


・・・といいつつ、ちょこっとだけ。
私の専門外といえば、(修習時代の教官には怒られそうですが)刑事関係。
そんな素人の私にとって、何かしっくりこないのが広島の女児殺害事件です。
本当に痛ましい事件で、栃木の事件同様、真犯人に対しては厳罰をもって対処すべきだと思います。
ただ、報道を見る限りは、決め手はDNA鑑定の結果とペルーでの同種前科の存在のようにも見えます。
一方で自白は事件の核心部分についても曖昧で変遷しているようです。
被疑者逮捕前は重要なポイントとされていた段ボールに付着した指紋や特殊な粘着テープとの関連性についても、ネットでの報道を見る限り余り話題となっていないようです(。。。私が知らないだけかも知れませんけど)
また、こちらで指摘されているように、DNA鑑定の「試料」の入手経路についても明らかにされていませんし、DNA鑑定一般に関しては、その精度も試料のコンディションや鑑定方法によってケース・バイ・ケースのようですし、出現頻度についても外国人の場合で考慮すべきことはないのかという問題も残っているような気がします。
もちろん、被疑者には、疑うべき「事情」が多いことも事実ですし、もし、真犯人・・・もとい、検察、裁判所を経て有罪として確定した場合には、量刑において、いかなる情状酌量の余地もないと思います。
ただ、真実への道というのは、一見ほどやさしくはなく、思いこみが強いときほど、その過程で陥るかも知れない陥穽には特に気をつけなくてはいけませんし、特に弁護人の視点からいえば、あらゆる可能性について警察の捜査過程を批判的にチェックしなければいけないんじゃないだろうか・・・などということを、刑事にはとんと疎い金儲け至上主義のビジネス・ロイヤーの分際で思ったりしたわけです。
・・・うーん、やっぱり、何か書かない方がよかったですかねぇ・。。

Posted by 47th : | 01:41 AM

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コメント

今回のようなテーマでは、
法律家の方が書かれると重みが違いますので、
どんどん書いていただければと思います。
海外にいらっしゃってもご存知かとは思いますが、
広島の事件ではペルー人が犯人という見方が支配的で、
大勢の関心はすっかり栃木に移ってしまっています。
広島県警が、乱暴なことをしていなかったらよいのですが……。
トラックバック、ありがとうございました。

Posted by tmreij : December 6, 2005 09:49 AM

「官僚の方のブログのように万が一所管事務との関連を疑われるといけないので実名をさらすことができない」。例の「武器の非対称性」の議論に関連するかのような。。。(笑)

Posted by ぶらっくふぃーるず : December 6, 2005 10:15 AM

ご指摘の懸念に賛同します。確かにしっくりきません。某国については国際政治で一波乱あった直後だけに、国策捜査的な要素の有無に注目せざるを得ません。

Posted by bun : December 6, 2005 12:22 PM

>tmreijiさん
私は刑事系は疎いんで「何とも」なんですが、手続の適正さというのは、単に人権保護とかそういうドグマだけではなく、捜査の過程で起こり得るエラーを効率よくチェックするために考え抜かれた叡智だという気がしているので、この話が妙に気になってしまって、ぐぐっていたら大変素晴らしいご意見だったのでリンク&TBさせていただきました。
>ぶらっくふぃーるずさん
禁深読み。素直に読みましょう。
>bunさん
私は天の邪鬼なんで、余りにも怪しい「状況」が揃いすぎる一方で、ダイレクトな「証拠」が乏しいと、その「状況」そのものを疑ってしまうタイプで・・・相手が本当に好意でしてくれることにも「裏」を考えてしまう性格にもつながっているので、やっかいなんですが・・・bunさんにも、そこはかとなく同じ匂いを感じるのは、気のせいでしょうか?

Posted by 47th : December 6, 2005 05:05 PM

何か隠し玉を持ってるっぽいですな、これは。
この手の大きな事件の場合、警察(検察)は公判維持を
意識して、重要証拠の1つや2つは公表せずに持っておきたがるのが通例です。それの質によっては、えらいことになるかも
知れませんね。

それが何かをスッパ抜くのが新聞の仕事なんで、
各紙の広島県警捜査1課担の皆様には期待しております、はい。

Posted by ??? : December 6, 2005 07:09 PM

おはようございます。
常時、外国人の刑事事件を1件担当している立場からしますと、初動捜査のデュー・プロセスに問題のある場面というのは十分考えられると思います。最近のDNA鑑定の精度は格段に飛躍しており(だからこそ、逆に15年前の足利事件については再審請求がなされているわけでして)被疑者が残している指紋やゴミからでも採取できますし、長期内偵も可能です。ただ試料採取の方法や、任意提出時における通訳の問題などは、争うつもりなら、最高裁まで争える論点はあります。ただ、実際のところ、外国人の人権問題を扱う弁護団が結成されるものでもないかぎり、国選弁護人には限界が存在いたします。そもそも、国選弁護人は原審かぎりですし、接見、公判含め通訳人を介するために準備には倍以上の時間と手間を要しますし(しかしながら国選報酬は同じ)、なによりも文化の異なる人たちとのコミュニケーションに多大の労力を費やします。日本の刑事訴訟制度に不安(冗談ではなく、窃盗でも死刑になるのではないか、とおそれる人もいます)を持つのが当然でしょうから、外国人の場合は、やみくもに否認するケースも多く、刑事訴訟制度において、いかに被疑者、被告人の人権保護が図られているか、刑法でどのような量刑となっているか、判決のあと、刑事手続きを離れて、行政手続にどのように移行するのか、を一から説明しなければ、真実を弁護人に話してもくれません。
したがって、どうしても捜査の違法性など、被告人との意思疎通が綿密でないとむずかしい論点については、手が回らないのが現状だと思います。
このたびのケースにつきましても、警察や弁護人が、犯人の同一性に関連する事情を報道に公表している姿に違和感を覚える方も多いと思いますが、犯行現場付近の住民不安を少しでも早く抑えようとの意図もあったのではないか、と思います。もし、私がこの弁護人の立場で、マスコミから「不安を抱える住民のために、被疑者がどのように対応しているのか、公表してもらえませんか」と質問されたとき、果たして毅然として「弁護人と被疑者との信頼関係に影響しますから、ここでは差し支えます」と言えるかどうか。かなり逡巡するところです。

Posted by toshi : December 6, 2005 10:09 PM

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