問題提起から大分間が空いていますが、別に忘れているわけではなく、ちょうど今やっているMicrofinance関係の問題意識と重なるところがあるので、それが終わってからぼちぼちやろうと思っているんですが、早くも影響が現実かしているようなので、メモ代わりに。
過払い返還5百億円、灰色金利制限で増 消費者金融4社 (asahi.com)
貸金業者に対し、利息制限法の上限を超える「グレーゾーン金利」分の返還請求が相次ぐ中で、武富士やアイフルなど消費者金融大手4社が返還に応じた額が、 昨年4~12月で358億円に達したことがわかった。最高裁判決などで借りた側に有利な司法判断が定着して返還額は急増。05年度は500億円近くに達する見込みだ。業者側は過払い金の総額を公表していないが、会計上返還すべき債務への計上を求める動きもあり、影響はさらに拡大するとみられる。(中 略)消費者金融大手4社でみると、05年4~12月の返還額は、武富士128億円、アコム87億円、プロミス75億円、アイフル68億円。武富士では前 年同期より6割増で、同期間の当期利益(369億円)が25%減った一因になった。アイフルもすでに05年3月期実績の倍近いという。前期の実績を明かさないアコムとプロミスも、返還額の急増は認めている。(中 略)借り手を支援する法律家グループは、業者側が返還すべき過払い金の総額を明確にし、契約者への債務として会計処理するよう要求。今月初め、日本公認会計士協会などに指導を申し入れた。仮に一括して会計処理する場合、多額の引当金の積み増しが必要で、業績にさらに大きな影響が出ることが予 想される。
ということで、やはり財務的にも相当のインパクトがあるようです。
少しマニアックな意味で注目なのは、消費者サイドの弁護士から引当金の積み増しのプレッシャーをかけているところでしょうか?
うがった見方をすると、「引当金を積む」=「返還すべきと企業も認識している」ということで訴訟や和解を有利に進めるという意図があるのかも知れませんが、余りにも鞭打つと逆に貸し渋りとかも出てくるかも知れません。この辺りのところは、消費者サイドの弁護士の方々はどう考えているのか、少し興味があるところです。
高金利でずるずると貸付を行ってしまうことによって多重債務者問題が深刻化しているという見方に立てば、この場合の貸し渋りは望ましいという判断があるのかも知れませんが・・・企業金融とのアナロジーでいうと、現在の貸金業者の与信管理が合理的になされていて貸出市場がある程度効率的に機能しているのであれば、高金利ローンへの借り換えによるデッド・オーバーハングの解消の可能性が絶たれてしまうことは、一概に借り手保護に資するとは言い難いはずです。
企業のデッド・オーバーハングと、個人のそれは必ずしも性質が同じではないかも知れませんが、やはり、この辺りの理論的な関係を整理しておかないと、本当の意味での消費者保護にはならないような気もします。
ところで、今回の判決が株価にどういうインパクトを与えているかということで、武富士とアイフルのチャートを。
ちょっと面白いのは、1/13の第2小法廷判決のあと、1/19に第1小法廷が、1/24には第3小法廷が相次いで同旨の判断を示したんですが、後の2つはほとんど株価に影響を与えていないところ。
前回のドンキと比べると、この株価の動きはかなり効率市場仮説に近い動きに見えます。
なお、1/13の時価総額へのインパクトは武富士で400円×1億5000万株=600億、アイフルで1000円×1億5000万株=1000億ということで、市場は単純な当期利益へのインパクト以上のインパクトがあると見ているとも考えられます。
ちなみに、1/27にも両者の株価は大きく下落しているんですが(特にアイフル)、これは金融庁による貸金業融資ルール変更の動きに反応したもののようです。
これもある意味、同じ類のインパクトですので、これを入れるとマーケットへのインパクトは約倍・・・司法判断はこれだけのインパクトを持っているということですね。