« イベント・スタディ的に見るオリジン東秀争奪戦 (2/17) | メイン | 花粉対策と株価対策の類似点 »

日本における敵対的買収に関する実証研究例

経済産業研究所(REITI)は、企業法にかかわる人間にとっては非常に興味深いディスカッション・ペーパーをWEB上で公表していて、私のように海外にいる人間にとっては非常に助かるので、折りをみてチェックしているんですが、今日、久々にチェックしたら大変興味深いディスカッション・ペーパーがアップされていたので、メモ代わりに。

胥 鵬「どの企業が敵対的買収のターゲットになるのか」

とりあえず、授業を受けながら、ざっと目を通しただけなんですが、計量的分析のアプローチを含めて、いろいろと考える材料になりそうな論文です。今学期受講しているregressionの授業の終わりまでにはlogit analysisもやると思うんで、そしたらまたゆっくりと考えてみたいと思いますが、とりあえず、実証分析の結果が正しかったとして、そこから導き出される結論についても、色々と議論の余地がありそうなところです。

ざっと見た範囲ですが、村上ファンドとSPJの行動原理が、米国のファイナンスの教科書に比較的忠実なターゲットの抽出を行っていることはいいとして、そのことから「村上ファンドやスティール・パートナーズのようなモノ言う株主の圧力は、1980 年代に米国の敵対的買収が企業価値向上に貢献したように、早期退出を促し企業価値を高める役割を果たす可能性が大きい」と結論づけられるかどうかという辺りがポイントになるのではないかという印象です。

いずれにせよ、こうした具体的データをベースにした研究が盛んになることは、個人的には嬉しいところです^^


Posted by 47th : | 12:25 PM

このエントリーのトラックバックURL:
http://WWW.ny47th.COM/mt/mt-tb.cgi/266

コメント

現在、企業の価値を評価する上で、そもそも、従来の
ようなキャッシュフロー・ベースのものでいいのか
どうか、ということが議論されています。

具体的には、例えば、自動車メーカーなどが典型ですが、
競争力の重要な源泉の一つに人材の質や無形の知的資産が
挙げられることは誰も否定しないと思います。

しかしながら、現在の企業価値の評価方法は、金銭的に
評価できるもののみをその対象としており、それが
企業の真の価値の評価となっているかどうかには疑問の
余地があることは論を待たないところです。

日本の経済学の実証分析一般に共通する
ことですが、アメリカの企業の経営手法一般に対する
手放しの評価があるように思えてなりません。

自動車産業が典型ですが、一部のMBAホルダーが集権的に
意思決定を行い、末端の従業員は組立作業に専念する
というシステムが、全ての分野の経営に最適なわけでは
ないことが近年の状況を見れば明らかだと思います。

また、非常に気になるのが、東大の某先生など、ごく一部の
労働経済学者が奮闘しておられますが、必ずしも労働経済
学の専門家、あるいは、経営学の専門家の声よりも、
ファイナンスの専門家の意見の方がとりあげられやすく、
現場をスポイルする法策の導入が進んでいるような気が
致します。

昨今、成果主義賃金の見直しの動きが進んでおりますが、
投資銀行やヘッジファンドなどと違って、ごく少数の
知的エリートが巨額の成果を生み出す分野に有効な
経営手法を、普遍的に妥当する経営の理論と錯覚し、
日本企業が自社の強みを自ら手放す動きが進むのでは
ないかという懸念に私は駆られています。

金融自由化の流れの中で、アメリカ企業は以前と比べ
本当に競争力が増したのか、企業の分野ごとに実証的に分析をする必要を強く感じます。

Posted by 通りすがり : February 18, 2006 12:47 PM

>通りすがりさん
貴重なコメントをありがとうございます。
私自身は、アメリカのM&Aの前線で活躍するプレイヤー達は、対象企業における無形のものをどう評価し、維持・発展させるかがノウハウの見せどころだと理解しているように思われますし、人的資源や無形資産は将来のキャッシュフローや比較優位性の源泉ですから、本来は相互に矛盾するものではないと考えています。
日本では、アメリカ型資本主義と日本型資本主義を対立構造的にとらえる見方がなお根強いように感じるときもあるのですが、古くから日本がそうであったように、外部のものをうまく採り入れながら、日本の置かれた特殊な文脈に適応させていくための知恵が、また求められているのではないかという気がしていて、それで「開発」の分野などにも目を向けながら、いろいろと考えているところです。
また、関連することを書くこともあると思いますので、お考えをお聞かせ下さい。

Posted by 47th : February 20, 2006 04:34 PM

コメントしてください




保存しますか?

(書式を変更するような一部のHTMLタグを使うことができます)

 
法律・経済・時事ネタに関する「思いつき」を書き留めたものです。
このブログをご覧になる際の注意点や管理人の氏素性はこちらにありますので、初めての方はご一読を。