遅ればせながら、ソフトバンク・ヴォーダフォンについて (1) [ March 19, 2006 ]
正直、これを典型的なLBOと呼んでいいのかは微妙なところもあるんですが、とりあえずスキームとしてはLBOですし、規模としてもLBOとしては空前の規模ということもあり、一応、時流にのって、このブログでも触れてみようかと思います・・・って、自分でも何故かよく分からない後ろ向きさ加減ですが、とりあえずデータの整理から始めてみましょう。
ディールに関する基本情報
まずは、公式情報として両社のプレス・リリースです(以下、ソフトバンクを「SB」、Vodafone Group PLCを「VD」、ヴォーダフォン株式会社を「VDJ」、買収用のソフトバンクの100%子会社("Bidco")を「BC」と略します)。
もう一つ重要な情報源としてR30さんの起こした孫社長のインタビューとQ&Aの速記録と同氏のインプレッションもあげておきます。
まず、SBのプレス・リリースの中でのディールの説明を見てみましょう。
方法: | ソフトバンク全額出資子会社によりボーダフォン発行済普通株式の約97.7%を取得 |
株式価値: 約1.75兆円の予定 |
資金調達(予定): | ソフトバンク出資 | 2,000億円 | ヤフー株式会社出資 | 1,200億円 | LBOによるノンリコースローン | 1.1兆円~1.2兆円 | |
ボーダフォンインターナショナルホールディングスB.V.は、ソフトバンク全額出資子会社に対し、3,000億円相当の優先株式 新株予約権(発行価額は無償)、1,000億円相当の劣後債の投資を行う予定であり、当該投資総額4,000億円は上記買収の支払いに充当される見込みで す。 |
役員: | ボーダフォンPLCは、ソフトバンク全額出資子会社に対し、上記優先株式等を保有している間、取締役1名を指名することができます。 |
売主: | ボーダフォン インターナショナル ホールディングスB.V. ボーダフォンPLC等ボーダフォン・グループ各社 他 |
株式取得日: | 1~2ヶ月中 |
これにVDのプレスや記者会見から判明する情報を追加すると・・・
- VDは企業価値(enterprise value)の公正価値を約1.8兆円(89億ポンド)と算定
- 対価の内訳は、①現金68億ポンド、②額面金額3000億円のBC優先株式と③額面金額1000億円のBCへの劣後ローン(優先株式と劣後ローンの公正価値として合計11億ポンド)
- クロージング時点で支払われる以上の対価に加えて、VDは2013年3月31日以降、2006年4月1日から2013年3月31日までの累積EBITDAが一定水準を超えた場合(孫社長によると3.35兆)、BCの株式の10%を引き受ける権利が付与される(行使価額は不明ながら、VDの公正価値の評価を考えると、少なくとも1億ポンド程度の公正価値は有する?)
- SBはVDJの外部負債8億ポンドを引受け
- 優先株式は、①2013年3月期までは無配当で、その後は額面に対して12%の割合の優先配当が発生し、②(いつでも?)BC側から償還可能、③取締役1人を指名可能
- 劣後ローンは、①年率5%、②2013年9月30日以後返還請求可能、③BCの買収用負債に劣後
- SBはVDJに対する全株式買付のTOBを行う義務を負い、VDは当該TOBに応募する義務を負担する。
- SBがファイナンスに失敗するか、TOBを実施しない場合には、600億円の違約金の支払義務が発生
- 負債について:2006年9月までに、1.1兆~1.2兆のブリッジ・ローンを、①シンジケート・ローン(シニア、メザニン)、②ネットワークインフラ設備の証券化・流動化、③リースファイナンス等に移行し、年間3000億円規模のEBITDAを使って有利子負債を返済。
- 買収後の事業について:現在年間1.5兆円程度の売上げを2.5兆円規模に、回線数は約1500万回線から2600万回線に。
- 新会社の設備投資について:「これまで2000億円規模の投資をVFではやっていますが、同じレベルはやっていくと思います。それに加えて3Gのつながりにくいところへの補強、ユーザーキャパシティも増やしていきたいと思っています。」(R30氏の速記録より)
こうしてみると、なかなか面白いディールであること、つまり、表面的にはLBOでありながら、LBOの王道には必ずしも沿っていないディールであることが分かるわけですが、各論に入る前に恒例となりつつあるチャートを見ておきましょう。
まずはSBから。
こちらはVDです。
Posted by 47th : | 03:08 PM
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