一つめは、ASIAはポップ・バンド、もっと言えばAORだという思い込みだ。
これは多分にスタジオ・アルバムのプロダクションの問題もあるが、生で聞くASIAは疑いようのないハード・ロックだ。
Carl Palmerのリズムはズシッと腹に響き、Steve Howeのギターは歪ませ方こそ控え目ながらリズム隊との絡みも絶妙に多彩なリフを刻む。
Johnのベースは相変わらずのヘビーさと存在感で言うに及ばず。
意外だったのはGeoff Downes。
もっと大人しいイメージだったのだが、時にはハモンドを使い分け、バッキングでもソロでも目一杯の存在感を見せる。
もう一つは、ASIA=John Wettonバンドだという思い込みだ。
JohnのソロツアーでASIAを聞いた「つもり」になっていたのが、今更ながらに恥ずかしい。
4人のメンバーが、持てる個性と技をぶつけ合う真剣勝負と、そこから生まれるケミストリーは、バンド、それも最上級のプログレ・バンドのそれだ。
"One Step Closer"をはさんで、Steveが奏でる印象的なイントロ…YESの名曲"Roundabout"で、この4人の力量とケミストリーが余すところなく発揮される。
やはりYESはJohn Andersonじゃないと…とも思いつつ、John Wettonの深い声も悪くはない。
何よりも、あのポップな中に変拍子と複雑な展開を交えた緊張感という魅力が完璧に表現されている。
今日集まった観客も、余程のプログレ好きとみえて、Roundaboutで乗りまくる。
見た目は死神博士化しているSteve Howeだが、独特の音遣いは健在で、音だけ聞いていると、歳は分からない。
結成後初期に作った曲だという"Without You"と"Cutting It Fine"の後はGeoffとSteveがそれぞれソロを披露する。
今日はいくつかSurpriseがあるというCarl Palmerのアナウンスと共に、John Wettonのところに拡声器が持ち込まれ、Geoffが銀色のジャケットとサングラスをかけて登場する。
勿論、始まったのはBugglesの"Video Kills Radio Star"
(確か)MTVが最初に流したビデオ・クリップがこれだったはず。
このバンドに合っているかどうかという疑問はなきにしもあらずだが、はしゃぎまくるGeoffの姿にしばし和み。
今日は過去のメンバーのバックグラウンドを振り返っていると言うことで、お次はCarlの番。
始まったのは、"Fanfare For The Common Man"
実は、つい先日ダウンタウンの教会でシンセサイザーでPicture at Exhibitionを弾いていて、その弾き方がまたKeithを思わせて、無性にELPが聞きたくなっていたのだが…
Carl Palmerにひたすら圧倒される。
Geoffも頑張っていたが、このドラムに対抗するには、キーボードにナイフ突き立てないとダメだわ。確かに。
すっかり汗をかいた後は、"The Smile Has Left Your Eye"で一段落。
すると、Steveがマンドリンを持って登場。
何が始まるのかと思っていたら、Geoffが、あの印象的なアルペジオ・フレーズを始める。
そう、何と"Don't Cry"をマンダリンを使って、アコースティック・アレンジである。
意表を衝かれたが、中世の宮廷音楽風を狙ったのか…悪くはないが、やっぱり普通のアレンジの方がこれはよかったかも知れない。
そんなもやもやを吹き飛ばしたのは、これまた意外な"Court of the Crimson King"
何で第3期の曲じゃないの?という疑問はあるのだが、メロトロン(本物?)のあのイントロが流れ出したら、もう関係なし。
どっか違う世界に行ってしまった間のあるRobert Frippなんて放っておいて、この4人でクリムゾンを復活させて欲しいと思ったのは、ぼくだけではないはず。
ついでに、"21st Century Schizoid Man"とか"Epitaph"とか、"Book of Saturday"とか"Fallen Angel"(※)とか"Red"とかやって欲しいと思ったが、願いは虚しく(?)、"Here Comes Feeling"から"Heat Goes On"、そして、この日のハイライトの一つCarl Palmerのドラム・ソロへと移っていく。
Neil Peartも凄かったが、Carl Palmerもやはり凄い。
手数の多さは言うまでもないが、緩急と強弱の使い分けが絶妙。
やはり、世界最高峰のドラマーは違う。
鳴りやまない拍手に続いて、"Only Time Will Tell"から"Sole Survivor"へと流れて本編は終了。
アンコールは、少し意表をついて"Ride Easy"のアコースティック・バージョンから。
そして、再びエレキに持ち替えたSteveのギターから、あの印象的なイントロのコード・ストロークが流れ始めて、遂に"Heat of the Moment"が始まる。
フロアも声を揃えて、このロック史に残るメロディを歌い上げる。
一度エンディングを迎えた後で、名残を惜しむように、更にCarlのドラムにのって、Johnがフロアにマイクを向けて何度もコーラスを歌わせる。
何度目のコーラスかも忘れた頃に、Heat of the Momentも終わりを迎え、2時間弱のライブは終わりを告げた。
今回の再結成がいつまで続くのかは分からないが、今日のライブを終えて、深く心に刻み込まれたのは、「ASIAあなどるべからず」ということであった。
(※)分かる人には分かると思うが、もう一つのブログのタイトルは、ここからとっている。