東証の規則制定権をどう見るか?

黄金株の話に絡んで東証の規則制定権について、toshiさんとNEON98さんが非常に興味深いエントリーを立てています。ちょっとばたついているのと、お二人のエントリー(と、そこへの「辰のお年ご」さんのコメント)で、論点はかなり尽くされているような気がするので、単に備忘録代わりの紹介です。

とりあえず自分の立場は?・・・と考えてみると、取引所が上場物件の適格性を投資家保護という観点から考えて、上場基準に盛り込むこと自体には、基本的に反対ではありません。
黄金株に対する東証の規則案に否定的なのは、単に「内容に賛成できない」だけで、例えば、証券取引法で同じような規制がなされたとしても(その意味で民主主義的コントロールが反映したとしても)、反対のものは反対で変わらないだろうと思います。
逆に敵対的買収に限らず、企業情報の開示のレベルや内容の信頼性なんかで言えば、証券取引法所定のレベルにこだわらず、取引所として、インサイダー取引や相場操縦の予防的観点から、もっと取引所として積極的にアクションをとってもいいんじゃないかという気もするところなので、基本的には、東証は東証で頑張っていただき、明らかに証券取引法その他の法令と抵触するものについては金融庁がチェックを行うという枠組でいいような気がする・・・のですが、一点だけ、それで割り切れないのが、現に東証が持っている事実上の市場支配力の部分。
あとは取引所間で上場企業と投資家双方にとって一番魅力的なルールを提示すべく切磋琢磨してください・・・といえればいいのですが、現実はそういうわけにはいかないので、実際に導入された規則が必ずしもロックインされたユーザー(上場企業と投資家)にとって望ましいものではないときに、どういう是正手段を与えるべきなのか・・・この辺りが考えがまとまらないところです。

疲れた・・・自業自得だけど(Vertical Foreclosure)

ただでさえ試験前でてんぱっているのに、興味があるからという軽い理由だけで、ゼミの報告なんかを立候補するもんではありませんね・・・今回ばかりは、さすがに激しく後悔しております(- -);
テーマは、Vertical Foreclosureということで、News Corporation(FOXとかESPNFOX SPORTSを配信している会社です)がDirecTVの株式の34%を取得しようとしたときのお話です。
映像コンテンツの提供者が、媒体を買収するのは典型的な垂直的統合の一例ですが、こういう統合を競争法的にどう考えるかという問題には、いろいろと興味深いものがあります。
こっちに来て反トラスト法の経済理論を、ちゃんと勉強する前は、単に買収される媒体のシェアの大きさが問題なんじゃないの?と単純に思っていたんですが、そんな単純な話でもなく・・・特にDirecTVの事案では、当時のDirecTVのシェアというのはケーブルテレビに比べると、まだまだ小さく13%程度で、この13%のシェアしか有しない媒体の、しかも34%という部分的な株式の取得によって深刻な競争法的な影響が出るのかというところが、悩みどころ。
で、私の担当したのは、Northwesternの経済学教授のWilliam P. RogersonがFCCに提出した意見書の報告・・・で、何が大変だったかというと・・・
数式がうじゃうじゃと出て、解読できない・・・というわけではなく、全く数式は出てこないし、理屈も極めてシンプル・・・曰く「①DirecTVを取得するとケーブルテレビに対するNews Corpの交渉力が強くなっちゃうから価格が上昇してしまう」AND「②News CorpがDirecTV以外の事業者に番組提供を断ったり、オファー価格を上げたりしたら、最終的な価格もあがってしまう」というもの。
シンプルなのは、いいんですが・・・・余りにもシンプル過ぎて、何かおかしい・・・
現に、このRogersonの意見書に対抗する形で提出されたSalop=Shapiroほかの意見書は、Rogersonの意見書における検討は不十分だといって、がんがんに反論しているわけです。
・・・こっちにしておけばよかった・・・と思っても、あとの祭り・・・(そういえば、Rubinfeld教授も「Salop=Shapiroの報告の方が実は簡単なんだよね」と言ってたし・・・)
というわけで、このシンプルすぎるRogersonの意見の裏側にあるものを探して、行間を読まないといけない羽目に・・・これを普段の予習やテスト対策やペーパー準備の合間にやらなければならず・・・苦しみながら、何とか先ほどまとめた資料がこれ ・・・まあ、やっているうちに、Rogersonの言っていることも、そんなに無茶じゃないんじゃないかとは思ってきたんですが、如何せん、自分でゼロからモデルを組み立てたので、全く自信はありません。(一応、こんな形でモデル化はしているんですが・・・この中でも書いているように、そもそもMVPDのレベルでの価格決定メカニズムを全く無視して、所与のものとして扱っているので、これだけでも不完全・・・)
一週間でここまでやっただけでも、自分をほめてやりたい、と、甘っちょろいことを考えつつ、これを明日英語でプレゼンするのかと思うと、ため息が・・・明日の予習もあるのにぃ・・・しかも、今、Rogersonを全部Rodgersonとタイプしていることも発見・・・何だかなぁ・・・

大荒れ年俸更改・・・

中継ぎやってられん!藤川あまりの低評価に怒りの保留 (SANSPO.com)

阪神、藤川球児投手(25)が28日、甲子園球場内の球団事務所で契約更改に臨み、4800万円増の7000万円の球団提示を保留した。希望額とは2000万円の開きがあり、「この額なら中継ぎやめます」と爆弾条件も突きつけた。
(中略)
今季、最強セットアッパーとして、セ界を震撼させた。プロ野球新記録の80試合登板、防御率1.36、53ホールドで最優秀中継ぎのタイトル受賞など、前人未到の快挙でリーグ優勝に貢献したのに・・・ 「今回は非の打ち所のない成績を残せました。ぼくからの歩み寄りはありません。提示額とけっこう差がありますが、ぼくは“これぐらいは最低です。これぐらいもらえないと同じポジションでやる意味はない”と伝えました」

とりあえず、本当にVの功労者だと思うんで、何とかして欲しいというファン心理が先に立つんですが、このVの後の年俸関係のごたごたって、本当にどうにかならないんですかねぇ?
理屈的には、典型的な不完備契約の例なんですが、それにしたって、もう少し合理的なフォーミュラを最初に提示することは無理なんですかね?
「査定ポイントが蓋を開けてみないと分からない」という話をよくきくんですが、これって、ぼったくりバー・・・あるいは、超高級レストラン?の逆バージョンみたいなもので、飲むだけ飲んでお勘定を見たら「何それ、きいてないよ」という状況ですよね。
徒に年俸をあげることが球団として正しい選択だとは思いませんけど、余りにも年俸更改で選手側の期待水準との開きが大きくなってしまうとインセンティブ問題(過小投資問題)が生じてしまうわけで、この辺りも、結構経済学的なアプローチが有効な分野なんじゃないかと思うんですが・・・・えっ?問題提起だけじゃなく、自分でやれ?
今は独禁法の経済分析のゼミのプレゼンとペーパーに追われているんで、冬休みになったら、また考えてみます。はい・・・ああ、でも本当に、お願いなんで、藤川には、もうちょっと色をつけてやって下さい。

CARの推移でみる新日本無線TOB

ゼミの発表やらペーパーでてんぱっているので、更新がとぎれがちですが、ちょっと新日本無線TOB前後の株価の動きを、ごく単純なイベント・スタディの手法で見てみましたので、ご参考までに。

CAR_1102_1125.jpg

データは11/2から11/25まで、リスクフリーレートは10年もの国債、βはブルームバーグの公表している値を使って、TOPIXとのARをシンプルに計算しただけのものです。(株価、指数値は全て各日の終値ベース)
このチャートの中では、Day 4 = 日清紡によるTOB(840円)の発表、Day 12=村上ファンドによる対抗TOB(900円)の発表となっています。(明らかにCARがジャンプしているので、一目瞭然ですが^^;)。
まあ、一社だけの動きを云々することは、本来は適切ではないんですが、ここまでの株価の動きだけでも、市場の効率性を考える上ではなかなか興味深い事象が・・・
金曜日には日清紡がTOB価格上昇を発表しているので、それに対する反応も注目ですね。

東証規則改正案の公表

「黄金株」原則禁止?でとりあげた東証の規則改正の要綱試案が公表されましたね。

買収防衛策の導入に係る上場制度の整備等について(要綱試案)

うわさ通り、黄金株(拒否権付株式)の原則禁止が盛り込まれています。

「上場株式が備えるべき基本的かつ重要な権利が著しく損なわれる状態」と しては、デッドハンド型※のライツプランの導入及び拒否権付株式(商法222 条9項)の発行(政策的理由により国が保有するような場合を除く)を考えて いますが、これに追加すべきものの有無等について引き続き検討します。

前にも書いたように「拒否権付株式」というのでは、現在用いられているタイプの優先株式でも、これに当たる可能性があるので、少なくともここでいう「拒否権付株式」がどこまでを指すのかは、もっと詳細な検討が必要なはずのところです。
特に、新会社法では、「ある種類の株式の全部取得制度」が導入されているので、株主総会の特別決議を押さえることができれば、何れにせよ拒否権付株式は消滅させることが可能(なはず)なので、防衛策としての拒否権付株式の有用性は相当に限られています。なので、(11/23修正 葉玉氏のコメントをご参照下さい)拒否権付株式についても、全部取得決議に拒否権を有するようなデッドハンド型でない限りは、その弊害というのは非常に限定されているので、ライツ・プランと比べて、そこまで「毛嫌い」する必要はないと思うんですが・・・むしろ、拒否権だけの問題であれば、委任状勧誘を先行させなくてもTOBで2/3超取得できれば、あとは時間の問題とういところもあるんですけどね。
「追加すべきものの有無」は検討するということですが、このリストアップをより制限的でない方向に解釈する方向での検討も是非進めていただきたいところです。
あと気になったのは、東証がサンクションを課す方向で検討しているものとして、あげられている中の次のパターン。

  • 新株予約権を利用したライツプランのうち、新株予約権の割当対象株主の確定後に当 該新株予約権の発行が中止される可能性があるもの(アメリカでもとられているDistribution Date確定後のwindow periodが禁じられる?この発想でいくとDistribution DateとFlip-inをずらすのも禁じられる??)
  • 取締役の解任に係る株主総会につき、総議決権の過半数を超える数の議決権を有する株主の出席を要することとし、又は出席した株主の議決権の3分の2を超える賛成を要することとする定款の変更(会社法施行後)(何れにせよ直後の定時株主総会では決戦がなされる日本で、あえて臨時総会での解任の可能性を「強制」する必要はある?買収者に単にレバレッジを与えるだけ?)
  • 取締役の解任決議の要件を加重している会社によるライツプランの導入(会社法施行後)(これも同じ。そこまで神経質になるべきもの?)

・・・どうも何というか、投資家保護というのは、経営陣の地位保全を防止することとイコールだと思っている節があるんですが・・・ある程度の地位の安定性があるからこそ、経営ができるところもありますし、日本の場合は、アメリカのような期差任期制はとれないので、定時株主総会がキリになるというのは、それなりにいいバランスだと思うんですが、それを買収者側にシフトすることが、投資家を本当にベターオフするのか・・・何だか、少し「過剰防衛」気味という印象もありますが、どうでしょう?

株式交換の税制改正-現金への課税が問題?

今日は、何かネタが多い日ですが、まあ、こういう日もあるんでしょう・・・

株式交換方式の企業再編、株主の税優遇見直し (NIKKEI NET)

企業が別の企業の株式を取得する場合、株主から保有株式を受け取る代わりに自社株に加え現金を渡すことが難しくなる見通しとなった。現行税制では一定額の現金までは課税を免除しているが、政府は2006年度中にも株主が現金を受け取れば課税対象にする方向だ。年末の与党の税制調査会で決定し、来年の通常国会に提出する税制改正法案に盛り込む。

ちょっと、この説明には?が・・・
私の記憶が確かなら(っていうか、1年以上前の知識になってしまうのですが)、現行税制でも、現金の交付額は一定割合まで(5%?)、それを超えると特例の適用はないので、会社法現代化で可能となるような端数調整分ではなく、正面から対価の相当額を現金で支払うようなパターンは、元々特例ではカバーされなかったはず。
多分、今回の改正というのは、平成13年の組織再編税制導入の時からの国税庁悲願の株式交換の法人税法本法への組み込み(組織再編税制による統一的処理)の話ではないかと思うのですが、そうだとすれば、端数調整の範囲であれば、従来通りOKなんじゃないでしょうか?
組織再編税制への編入のインパクトは・・・というよりも、実務家として一番心配だったのは、今まで問われなかった同一事業要件が問われるようになることだったんですが、そこはどうなるんでしょう?
なぜ、これがネックかといえば、持株会社が株式交換を使って他の会社を買収しようとするときに、同一事業要件を充足できない可能性が高いからです。(まあ、他にも、いろいろあるんですが、税務当局からみると「邪道」と言われそうなんで)
まあ、それこそが国税の狙いでもあるんでしょうが、少なくとも完全子会社の営んでいる事業はカウントできるようにするか(今はカウントしませんよね?)、完全子会社との合併に際して親会社の株式を交付するような三角合併の場合にも子会社レベルで共同事業要件が満たされていれば、適格を認めて欲しいところです。
何れにせよ、会社法現代化で組織再編の手法が多様化しても、税法が今のままでは、いろいろと不都合がでるところが多いので、その辺りも含めて見直しがなされるといいですね。

「値下がり防止策」の「業界としての検討」の先にあるもの

奥田経団連会長、値下がり防止策「業界で検討を」 (NIKKEI NET)

日本経団連の奥田碩会長は21日の記者会見で、三洋電機やパイオニアの経営が悪化していることに関連して「値引きをしないような方策を業界全体で考えないとマージンを取れない」と述べ、デジタル家電などの値下がり防止策を家電業界として検討する必要があるとの認識を示した。

 奥田氏は「販売価格を大手の小売業者にコントロールされており、新しい製品を出してもあっという間に値段が下がる」と指摘。家電メーカーが製品の価格政策を協議すれば談合と受け取られかねないが、奥田氏は「構造的な問題を皆が意識をしないといけない。(価格に関する)具体的な話をしなかったらよいのではないか」と述べた・・・

・・・さて、「(価格に関する)具体的な話をしなかったらよいのではないか」・・・というのは、もちろん、そんなことはありません。価格を維持するためには、何らかの形でアウトプットを制限しないといけないわけですが、販売数量の制限や地域分割も典型的なカルテルですし、川下業者に対して共同で取引拒絶するのもアウト・・・というよりも、「業界としての値下がり防止策」をさせないのが、独占禁止法の最大の目的といっても過言ではないので、この取組を許してしまうのは、独占禁止法の自己否定みたいなもの。
内心はどうであれば、この前のマイクロソフト事件の話でもあったように、こういうことを公で発言してしまうと、逆にあらぬ疑いをかけられないかという心配も・・・
ただ、奥田会長は、以前にもアメリカの自動車メーカーを救済するために日本車の値上げを考えるべきだといった発言をされているので、ひょっとしたら、奥田会長はかなり確信犯的にこの発言をしているのかも知れないという気もしてきました。
独禁法の世界では、競争により退出する企業が現れても、それは社会全体で見れば、最適な資源分配達成の一過程と見るわけですが、実際には企業の退出というのは、ものすごーーいエネルギーを必要とするわけですし、その資源が適切により必要性の高い産業に割り当てられるとも限りません。特に人的資源というのは、そんな容易に調整できるわけではありませんし、歴史からみれば、10年は一瞬でも一人の人間にとっての10年は極めて大きいわけで、資源分配の再調整のタイムスパンが人間の時間感覚と一致しているというわけではありません。
結局、アメリカを見ていても、競争を激しくやった後で企業が淘汰されても、他の産業への資源の分配が促されるわけではなくて、債務だけ整理されてすぐに再生されて、同じ産業に資源が再投入されているだけのようにも見えます。それでも、長期的にみれば、資源分配の調整はなされているのかも知れませんが、果たして市場に頼った調整が他の調整に比べて常に優れているのかは、一概に言えないような気もします・・・
ただ、他方で、「和をもって尊し」は、「馴れ合い」と紙一重なわけで、そのバランスをどうとるかも悩ましいところ。
まずは、今の競争法の枠組の中での分析能力を身につけるべく勉強しているわけですが、奥田会長の発言に、「その先」に考えなくてはいけない問題をつきつけられたような気がしました。

黄金株上場禁止は「あり得ない」?・・・

経財相「黄金株有する企業、上場認めない理屈あり得ない」 (NIKKEI NET)

与謝野馨経済財政・金融担当相は22日の閣議後記者会見で、東京証券取引所が特定株主に株主総会での拒否権を与える「黄金株」を発行している企業の上場を認めないよう基準の変更を検討していることに対し・・・「他の株主の権利を制限してはならない」としつつも、「会社法上許された企業防衛策をもった企業が新しく上場するときには、それは広く株主が知っている事実であるから、そのことをもって上場基準を狭めるというこは理屈のうえではおかしい」との考えを述べた。

「会社法上の適法性」と「上場基準」は全くイコールでないので、譲渡制限が典型のように会社法上は適法だけど上場企業としてはアウトというのは、あり得ないわけではない・・・と、脊髄反射的に反応してしまいそうな見出しだったのですが、与謝野大臣発言の発言をちゃんと見ると、そんな(いくらなんでも)単純な見方をしているわけではなく、「新しく上場するときは」という限定を付した上で、適切な開示の下での投資家の選択に委ねるべしというお話のようです。
ほぼ同意しつつも、なお、取締役の選解任をダイレクトにコントロールできるような拒否権については、なお悩みは残るところです。うーん。

新日本無線へのTOB-Interesting Case Study

村上ファンド、新日本無線にTOB (NIKKEI NET)

村上世彰氏が代表を務めるエム・エイ・シー(東京・港)は21日、新日本無線の全株式の取得を目指しTOB(株式公開買い付け)を実施すると発表した。新日本無線株は、日清紡が子会社化を目的に今月9日からTOBを開始しており、今回の買い付けは対抗的なTOBとなる。日本ではこうした対抗的な買い付けが実施されるのは珍しい。

TOBの理由についてエム・エイ・シーは、日清紡の買い付け価格が新日本無線の潜在的企業価値を下回る水準であるためとしている。買い付け価格は1株900円と、現在実施されている日清紡のTOB価格より60円高い。期間は11月21日から12月15日で、新日本無線株の50.01%以上(議決権ベース)を取得できない場合はすべての応募株券の買い付けを行わない。

ということで、早速、M&AコンサルティングのHPをチェックすると、プレスが出ていました。

新日本無線への公開買付け開始に関するお知ら (株式会社エムエイシー)

この中で、公開買付けの目的について、次のように述べられています。

本公開買付けは、新日本無線の株主としての観点から、平成17 年11 月8 日に発表された日清紡績株 式会社(以下「日清紡績」といいます。)による新日本無線への公開買付けに異議を唱えるものであります。日清紡績による公開買付けは資本市場の観点から非常に歪な資本異動である上に、以下の点において、新日本無線及びその親会社である日本無線株式会社(以下「日本無線」といいます。)の株主価値最大化に反しているものと考えています。

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「マンション自壊」のおそれと「梁のたわみ」・・・

テストというか、ゼミのペーパーの締め切りを3週間後に控え、この週末は論文のスキミングと基本的な構想をたてていたのですが、こちらのニュースを見て、あまりの衝撃・・・

耐震性偽装、倒壊の恐れ新たに5棟…全棟の強度公表へ (読売新聞)

首都圏のマンションなど計21棟の耐震性が偽装されていた問題で、新たに東京都港区や新宿区などのマンション5棟の強度が不足し、震度5強の地震で倒壊する恐れがあることが20日、国土交通省などの調査でわかった。・・・国交省の調べで強度不足が新たに判明したのは、いずれも船橋市内にある建設中のマンション3棟。このうち、「グランドステージ船橋海神(かいじん)」は、建物自体と家具や住民などの重量にも耐えられない構造。地震などで外部の力が加わらなくても倒壊する恐れがあり、「基礎的な計算をしただけで、強度不足が分かった」(国交省関係者)という。

外部の力が加わらなくても倒壊・・・と思って、国交省のHPを見ると、「読売新聞11月20日(日)朝刊1面の記事に関して」というリリースがあるので、読んでみると・・・

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「黄金株」原則禁止?

東証、「黄金株」を原則禁止・違反なら上場廃止も (NIKKEI NET)

東京証券取引所は上場企業が特定株主に株主総会での拒否権を与える「黄金株」を導入することを原則として禁止する方針を固めた。・・・黄金株は来年施行の会社法で発行しやすくなるが、特定の株主だけを優遇するため「投資家平等の原則に反する」と東証はみている。企業価値の向上につながる買収まで排除するなど自由な投資を制約する面もあるとみて、上場企業の導入を原則禁止する方針を打ち出した。

前にちょっと冗談めかして、黄金株は、既に上場企業に存在するという話をしたのですが、あれは要するに「拒否権」ということだけ採りだしたら、一般に出ている無議決権優先株だって「黄金株」になっちゃうので、もし規制するのであれば定義をどうするかが非常に大切だということを言いたかったのですが・・・禁止ということになると、ますます、「黄金株」が何を指しているのかということが問題となりそうです。

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Corporationの宿題

今学期とっている、CoatesのCorporationでは、期末の試験(In Class & Tak Home)以外に、Homeworkがあるのですが、これが元Wachtell(アメリカでトップのM&Aファーム)のパートナーらしい宿題で、指定された上場会社に対するTake Overの準備のための対象会社の支配権に関して分析したメモをつくるというもの。
私の割当ては、AOLやケーブルテレビで有名なTime Warner Inc.
株主構成やインサイダーの持株比率、取締役の選解任方法や少数株主の総会招集権の有無等を、ベースとなる会社法と比較した上で、最終的にこの会社の支配権をとるために、どのぐらいの期間が必要になるかを簡単にまとめなきゃいけないのですが、一つ注意書きが・・・

1頁を超えた部分は一切考慮対象にしない。

つまり、この盛りだくさんな内容を、きっちり1頁に収めないといけないわけで・・・そうすると、どうなるかというと、どこにもFontもSpaceも、marginの指定もないのをいいことにこんな感じになります。
上下左右のmarginを削り、フォントは9pt Times Roman、行間は最小・・・ほとんど嫌がらせ以外の何者でもないんですが、結構、周りの日本人に話を聞いても、みんな同じような感じです。
・・・せめて、2頁にしてくれれば、もうちょっとは見やすくなるんですが・・・
ただ、宿題そのものとしては結構面白く、知識としては分かっていたはずのことでも、開示資料を追ってCharter, Bylaws, Certificate,Proxy,10K, 10Q,8K,F4...を丹念に読むのは、いろいろと新鮮でした^^
ちなみに、Time Warnerは、Staggered BoardもPoison Pillも、Golden Parachuteもなし。というわけで、かなり潔いわけですが、といっても、ちゃんとblank check preferredはあるので、morning after pillを入れるのに障害はありませんし、デラウェア州一般事業会社法203条の事業結合制限法の適用もあるので、全くの丸腰ということでもありません。
ただ、株主に対する開示は非常に充実していて、個人的には好感を持つことができました。

会社法トリビア:アメリカでは20%以上の公募増資に株主の承認が・・・

昔から、一度ちゃんと読まないといけないと思っていながら、放っておいたものの一つに、株式発行に関するNYSE Ruleがあります。
会社法現代化の試案が講評された頃から、「アメリカの取引所ルールでは20%以上の新株発行は株主の承認がないといけない」という話が、まことしやかにささやかれていたんですが、何でもありのアメリカの会社法の世界を垣間見ていた者からすると、正直いって「本当かいな?」という思いもあって、いつかちゃんと見てみないととは思っていたんですが・・・会社法現代化でも、早々と新株発行に株主総会という話は消えたので、優先度が落ちて放っていたんですが、今日のCorporationの授業で出てきたのをきっかけに読んでみると・・・
よく話題になるのは、NYSE RUle (Listed Company Manual) 312.03(c)だと思いますので、見てみましょう。

(c) Shareholder approval is required prior to the issuance of common stock, or of securities convertible into or exercisable for common stock, in any transaction or series of related transactions if:
(1) the common stock has, or will have upon issuance, voting power equal to or in excess of 20 percent of the voting power outstanding before the issuance of such stock or of securities convertible into or exercisable for common stock; or
(2) the number of shares of common stock to be issued is, or will be upon issuance, equal to or in excess of 20 percent of the number of shares of common stock outstanding before the issuance of the common stock or of securities convertible into or exercisable for common stock.

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Affirmative Actionの功罪をめぐるSander-Ho論争

明日のQuantitative Methodの課題は、ロースクールの入学における黒人へのAffirmative Actionの功罪ということで、Richard H. Sander, A Systematic Analysis of Affirmative Action in American Law Schools, 57 Stanford Law School 367 (2004)をきっかけとした、以下の論争。

まず、アメリカだなぁ、と思うのは、二人のバックグラウンド。
SanderはUCLAの教授で、NorthwesternでJDとEconomicsのPh.D.をとっている。
一方のHoは、YaleのJD・・・って、まだ学生じゃんと思ったら、HavardのGovernmentで、こちらもPh.Dをとっていて、既にpaperをいくつか発表しているなかなか強者。
で、中身の方はといえば・・・

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Behavioral Economics の悩ましさ

ふと思いついて書いたペッキング・オーダーのもやもやについて、思いがけず色々なコメントを頂き、ありがとうございました。特に獏さんともりたさんのコメントのやりとりを見ていて、改めてBehaivoal Economics って悩ましい世界だなと痛感。
(一応、念のために書いておくと、Behaivoal Economicsというのは「行動経済学」とか訳されたりして、ファイナンスの分野に適用されると「行動ファイナンス」(behavioral finance)といって、日本でも紹介が始まっていますが、認知心理学的な知見を応用して、従来の経済学が前提としてきた「合理的」な主体ではないということを明らかにして・・・そこからは?・・・従来の経済モデルの批判的検討を目指すのか、それともモデルの再構築を目指すのか?・・・うーん、説明しようとして、やっぱり分かっていないことが判明(涙))
この前の論点そのものについてのコメントは、少なくともオリジナルを読んでからじゃないと、余りにも空中戦になっちゃいそうなんで避けますが、ふと思ったことを書き留めておくと・・・
大体、すべからく人間は非合理なものなので、身の回りを探せば、「うっかり」とか「ど忘れ」なんかも含めて非合理な行動は山のように転がっているわけですが、多分、多くの非合理性は個人的なテイストの違いみたいなものと同様に、ある程度のボリュームをとれば、経済行動に対する影響は残差として処理できてしまうので、問題は残差として処理ができないようなシスティマティックなバイアスの有無ということになりそうです。
例えば、タクシーの運転手の中には、月曜日は「休みぼけ」で働く気がしない人もいるかも知れませんが、逆に月曜日はリフレッシュしてノリノリな人もいてサンプルが多くなると中和されるのであれば、この「休みぼけ」という現象を分析に取り入れる必要はないわけです。
ところが、有名な例のように、雨の日などタクシーの稼働率が高く、単位時間当たりの収入が多い日の方が、逆に労働時間が短くなるとういことが、サンプルを多くしても傾向的に見られれば、これをモデルに採り入れる必要が出てきます。
かくもBehavioral Economicsでは、実証的なアプローチが重要だということを、遅まきながら実感・・・しかも、Behavioral Economicsの悩ましいのは、実証的というのが、心理学的な知見に基づいた個人レベルでの行動パターンに関するものと、ある特定の経済活動単位で見た場合のパターンの2段階で必要になってきそなところ・・・
その上、個人のレベルで見られる行動パターンと経済的活動を結びつける際のモデル造りにも、色々と問題がありそうなところです。とりあえず、一つ思いつくのは、多くの経済活動は、純粋な個人ではなく、組織単位で意思決定がなされるところ。
例えば、一人でやれば、お馬鹿さんなことをやるとしても、3人寄れば文殊の知恵で、お互いの行動を客観的にチェックすることで、個人レベルで見られた非合理性が解消される可能性もありそうです・・・そういえば、Behavioral Economicsでよく扱われている事例は、「個人」投資家とか、「個人」タクシーとか、何れも「個人」レベルの話で、会社とか機関投資家レベルでの話は余りないような気もします。
この辺りが、Behavioral Approachを知識として持っていても、何かモデルに組み入れづらいと感じる原因かも知れません。
何れにせよ、こういう意味でのBehavioral Economicsのアプローチの有用性と限界については、もう少し勉強しないといけないんでしょうね・・・というわけで、春学期はBehaviral Law & Economicsの授業をとることに決定。
facultyは、イスラエル出身の若手で、某教授によるとNYUの次代のスター候補の一人とのこと。
Course Descriptionは以下の通り。

The law aims to control, guide, or facilitate many aspects of human behavior. To achieve these goals legal policymakers should benefit from an accurate account of how people make decisions. Research in psychology and behavioral economics has demonstrated that in many circumstances the standard rational choice model of neoclassical economics, which has also dominated the economic analysis of law, fails to provide a satisfactory account of human decision-making. As a result, a new model is emerging—a model informed by a more nuanced understanding of the interrelations between the law, economics and psychology of decision-making. This course will explore the implications of this new model for legal policy. Topics will include law enforcement, decision-making by judges and juries, pre-trial settlement negotiations, contract law and contracting, market manipulation and securities regulation, tort law and products liability, and antidiscrimination and affirmative action.

風営法中間試験回答

ご存じの方も多いかと思いますが、neon 98さんが、日本のラブホテルとその規制に関してアメリカのロー・スクールの教授が書いた論文を詳細に紹介されています((1) (2) (3))。
で、neon98さんが、最後に出題を。

1. 今までの論述を参考に既存の風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律の枠組みでラブホテルを規制するとした場合に、どのように定義規定を設けるべきか。理由を含めて簡潔に記述せよ。

2. 他に異なる規制アプローチが考えられるか。長所・短所を比較検討のうえ、もっとも望ましいアプローチを簡潔に記述せよ。

〔制限時間24時間以内。いかなる文献の参照も可能とする(但し、引用すること)がコピー&ペーストは不可とする。回答はトラックバックによること。以上。検討を祈る。〕

ちょっとCorporationで疲れた頭をほぐすために、挑戦してみます。

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マイクロソフト訴訟「秘話」?

今世紀(といっても、まだ数年ですが)最大の米国競争法に関する判決といえば、多分2002年に米国司法省がマイクロソフトをシャーマン法2条(違法な独占の維持)等で訴えたマイクロソフト訴訟ということになると思いますが、今学期、Quantitative Method と Antitrust Law & Economics でお世話になっているRubinfeld先生は、実は、そのときの司法省側の実質的なチーフだったらしく、今週のゼミでは、いろいろとそのときの「裏話」が。
差し支えのなさそうなところを、いくつか挙げると・・・

  • Rubinfeld先生は、実は、ごく初期のWindowsに関連する訴訟でマイクロソフトを手伝ったことがあり、もちろんそのことを知っているビル・ゲイツは、Rubinfeld先生が司法省側でマイクロソフトを提訴したことに、相当おかんむりだったらしく、法廷でRubinfeld先生をかなりきつい言葉で罵った(らしい)。
  • マイクロソフトはWindowsは競争にさらされている(従って、OSを独占しているわけではない)ということを立証するために、いろいろな「潜在的脅威」をあげたが、Linuxなんかと並んで、かなりマイナーなOSも「将来Windowsを脅かすかも知れない」とマイクロソフトが法廷でキャンペーンをしたところ、その開発会社の株は一時的に高騰・・・しかし、その後、倒産だか、売却だかでどこかに行ってしまった(らしい)・・・
  • ネットスケープのシェアを70%とするマーケット・サーベイがマイクロソフトから出されたところ、同時にそのサーベイを行ったエキスパートに対して、ビル・ゲイツが「30日以内にネットスケープのシェアが70%であることを証明するようなサーベイが欲しい」と書いたメールがディスカバリーで提出され(・・・訴訟提起後にこんなメールのやりとりがなされること自体が信じられないような失態・・・)、エキスパートに対する反対尋問で、そのメールを示されながら「これでもエキスパートとして、サーベイの結果は信頼性があると断言できますか?」と問われ、絶句・・・最終的には、「それでも、まあ、そう信頼できないわけではない」と言った(らしい)・・・

まあ、そういう小ネタ系もさることながら、やはり印象的だったのは、Rubinfeld先生が、マイクロソフトが、「OS市場を独占していない」という、極めて弱い主張を延々と行うのではなく、「OS市場は独占状態にあるかも知れないけど、これは自然独占で、それ自体は正当な競争の産物だし、ブラウザの一体化は消費者の利便のための技術革新の一環」と言われたら、裁判官の心証は随分変わっていたかも知れないと言っていたことです。
もっとも、Rubinfeld先生が言っていたのは、マイクロソフト事件では、ビル・ゲイツが「ネットスケープとJAVAの台頭はWindowsのポジションに対する脅威だから、これをmatchしてbeatしなくちゃいけない」と書いたメールがディスカバリーで見つかるなど、ネットスケープ潰しの「意図」を証明する文書が、信じられないほどたくさん出てきたので、それがやっぱり致命的だったんだろうと・・・
マイクロソフト事件というのは、理論的に見ても、極めて色々な問題を提起する大変興味深い事件であり、実務的にもその後のシャーマン法2条の活用のきかっけとなった大変重要な事件なんですが、その舞台裏で大きな役割を占めたのは、反トラスト法のことなど全く気にもかけていなかった独裁者の軽率なメールだったというのは、なかなか興味深いお話でした。

ペッキング・オーダーの「もやもや」

月曜日のCorporate Financeのテストは、一応終了したんですが、手応えが前回ほどはなく・・・まあ、βを使った残差の推定方法の基礎やイベント・スタディの基礎なんかはつかめてきたんで、NPVの計算に終始した前回よりは「実」はあったので、よかったということにします。
ところで、Corporate Financeの世界は、非常にパラドックスの多い世界なんですが、その中でも個人的に未だに納得した説明を見たことがないのがペッキング・オーダー理論のパラドックスです。
・・・そもそも、何でペッキング・オーダーの話を突然持ち出したのかといえば、toshiさんが「内部留保と企業価値」に関して研究してらっしゃるというのを書いていらっしゃったからです。文面からすると、かなり実証的な方向からのアプローチをしてらっしゃるようで、成果が公表されるのが非常に楽しみなんですが、理論的にみても、「なぜ企業が内部留保をしたがるのか?」というのは、いろいろと謎が多いところです。
・・・というわけで、その「内部留保」に関するファイナンス理論で、一応、今のところ標準的に受け入れられている「ペッキング・オーダー理論」について、私がいっつも感じている「もやもや」を、なるべく分かりやすくというのが今日のテーマです。
「内部留保」に関するファイナンス理論として、古典的なのは、モジリアーニ=ミラーの定理という奴があって、詳しいことははしょりますが、一つの含意として、企業レベルでの法人税効果を考えれば、負債利子は益金から控除されるので、企業の資金調達は負債を用いた方が有利であるというのがあります。
これからいくと、「内部留保」というのは、一種の「株主資本」なわけですから、資金調達は内部留保でやるよりも、節税効果のある負債を用いた方が好ましいという話になります。

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買収防衛策トリビア:フリップ・オーバーの謎

ボストンに留学中のdtkさんのブログで、アメリカの敵対的買収防衛策について、こんな質問が・・・

いわゆるpoison pillの一つにFlip-over planというのがある、とある。内容としては、X社をどこかの会社(仮にY社とする)が買収しようとする動きに備えて、X社が自社株主に対してY社株の購入権を付与するというもののようだ。購入権で購入する価格は市価よりも安価と設定する
(中 略)
1. 何故これがpoison pillとして機能し得るのか?確かに株数の増加によりY社の経営陣がY社に対して有している影響力は低下するだろう。でも、poison pillとしては何だか迂遠な気がする。どうも何か理解を間違えているような気がする。
2. もう一つ。そもそもY社はこれに応じないといけない根拠は何か?買収前にX社が勝手にやったことのはず。買収してX社を支配下においたから拒否できないということか?本人が無権代理人の立場を相続したようなものだとしたら拒否しても良いと思えたりするのだが…

まず、既に敵対的買収防衛策まで話が進んでいることに驚き・・・うちは、まだ取締役の忠実義務なのに・・・
で、次に、至極まっとうな疑問に「うんうん」と頷く。
要するに、フリップ・オーバーというのは、買収が終了した後に、他の会社と合併するときに、ライツを持っている人は、相手会社の株を有利な条件でもらえてしまうという仕組みなんですが、「買収が完了しちゃったら意味ないじゃん」というのと、「他の会社(合併相手)の発行する株式をもらえる権利を、勝手に作ってもいいんかいな?」という疑問があるのは当然のところです。
詳しいところは、「企業買収防衛戦略」の中に書いてるんですが、自分で読み直しても、何かややこしいので、簡単にエッセンスをご紹介いたします。

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会社法トリビア:「黄金株」は・・・

Hardwaveさんのところで知ったこの記事に関連して、会社法トリビアを一つ。

敵対的買収に拒否権、上場企業にも「黄金株」容認案 (asahi.net)

敵対的買収に対する適正な防衛策のあり方を検討している経済産業省の企業価値研究会(座長・神田秀樹東大大学院教授)が、上場企業であっても、買収者による合併・経営統合などの提案に拒否権を持つ「拒否権付き株式(黄金株)」の導入が認められるべきだとした提言案の全容が1日、明らかになった。
(中 略)
「黄金株」は、1株でも合併や経営統合などの重要事項に拒否権を発動できる株式を、あらかじめ友好的な企業など「ホワイト・ナイト(白馬の騎士)」に割り当てておく仕組みだ。市場で普通株式を買い占められても、黄金株を持つ株主が拒否権を発動すれば、敵対的買収者による合併・経営統合ができなくなる。株主総会で3分の2以上の賛成を得て定款を変更すれば、今も発行でき、非上場企業では、中小企業の経営者が特定の親族に経営権を相続させたい場合などに使われているという。

・・・ここでトリビアを一つ。
「黄金株」は・・・・・・上場企業にも存在する。

合併とか株式交換とかに限ってみれば、今でも、種類株式は、拒否権を特別に設定しなくても、(法定)種類株主総会で組織再編には実質的に拒否権を持っています。なので、この前紹介した預金保険機構が持っている無議決権優先株式も、合併とか株式交換に際しては、実質的に拒否権を持っています。
というわけで、銀行とかの組織再編関係のプレス・リリースを見ていただければ、種類株主総会の日程が設定されている(はず)・・・預保はその種類の優先株式の100%株主なので、預保は今でも銀行の組織再編については、拒否権を持っています。そうすると、組織再編とかをブロックできるのが「黄金株」ということになると、これも「黄金株」の一種ということで。(なお、元ネタを見ると、石油公団が持っていた拒否権付株式のようなものを念頭においているようなので、研究会では、多分、組織再編以外にも、資産譲渡や新株発行(さらに取締役の選解任)なんかに拒否権を持たせるような、もうちょっと広範囲のものを「黄金株」と言っていたんだと思いますが)
この「無議決権優先株式なのに、合併とか株式交換で拒否権が発生しちゃう」というのは、実務的には、結構悩みどころで、むかーし出した「新しい株式制度」という本の中で、定款で拒否権を外せるようにした方がいいんじゃないでしょうか、ということを書いたんですが、これが効いたかどうかはともかくとして、会社法現代化では、この辺りが無事手当されております(322条2項)。
さて、逆にいうと、実は、この法定株主総会の存在のおかげで、普通の無議決権優先株式が、買収防衛策に転じたりということも可能だったりします。まあ、公開会社で優先株式を出しているところは、銀行を除くと、事業再生絡みだったりするので、決して数は多くないんですが、こういう会社を買収しようと思うと、優先株式対策というのを別途考えないといけないんですよね。
・・・以上、ちょっとした会社法トリビアでした。

ソニーのトラッキング・ストック終了・・・

子会社連動株式の一斉転換に関するお知らせ (10月26日付ソニー・プレスリリース)

ソニー株式会社(以下「ソニー(株)」)は、本日開催の取締役会において、ソニーコミュニケーションネットワーク株式会社(以下「SCN)を対象とした子会社連動株式を、2005年12月1日(木)(一斉転換日)をもってソニー(株)普通株式に転換する方法にて終了させることを決議いたしましたので、下記のとおりお知らせいたします。

商事法務のメルマガで知ったのですが、ソニーのトラッキング・ストックが終了するんですね。
結局第一号案件のあと、続くものが現れなかったわけですが、トラッキング・ストックそのものには色々な使い方があるはずです。
特にM&Aが今後発展していく中で、シナジーに関する不確実性を止揚するような形で買収対価としてトラッキング・ストックを使うような手法は、まだまだ可能性があるんじゃないかと思います。
その意味では、ソニーの案件は、誕生から終了までのサイクルを大きな問題なく済んだというところで、トラッキング・ストックの1号案件としては大きな意味があったんじゃないでしょうか。

 
法律・経済・時事ネタに関する「思いつき」を書き留めたものです。
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