Corporate Finance の全エントリー

クラブ・ディールと競争法

harryさんが紹介されていますが、PEのクラブ・ディールにアメリカの競争当局が興味を示し始めているという話が昨日のWall Street Journalでとりあげられていますが、New York Timesでも関連記事がとりあげられています。

もっとも、こうしたウォール街で見られる金融機関同士の協調行動と競争法の緊張関係は必ずしも新しい話ではありません。
NYTの記事では株式公募の際の共同引受けに関する1950年代のMorgan事件が紹介されていますが、買収における協調行動ということでいえば、(私訴ですが)1990年にWilliams法の開示規制の下でSECがレビューしたビッドについては反トラスト法違反とならないことを示唆する判決を第2巡回裁判所が出しているようです。

もっとも、この判決に対しては学界からの批判が強いようですし、90年代にはゲーム理論に基礎をおいた暗黙の協調行動(tacit collusion)に関する理論も目覚ましい発展をとげていることからするとウォール街的には安閑としているわけにはいかなさそうです。

もっとも、NYTの記事を見る限りはSubpena(正式な情報提供手続のための令状)が出されたわけではなく任意の質問レベルに留まっているようですから、何れにせよ結果が出るのはまだまだ先になりそうな気配ですが、競争法的にポイントになるであろう点についてメモ程度に。


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Posted by 47th : | 11:33 | コメント (2) | トラックバック (0) | 関連エントリー (0) | Corporate Finance

高金利均衡についての補足 (2)

前回は(借り手優位の)「情報の非対称性」が高金利・高リスク層均衡を生み出す、ごく基本的なロジックを見てみたのですが、ここで自然と生じる疑問は、では上限金利規制は、この状況を崩すことが可能なのかという点です。

「利鞘」を考えてみる 

前回のごく単純なモデルに、新しいパラメータとして貸し手の「利鞘」を入れてみましょう。
つまり、前回は信用リスクに応じた金利でしか提示しないことを前提としましたが、ここでは借り手側は、自らの信用リスクに対して+7%までであれば貸し手側に「利鞘」を与えることを認めるとしましょう(※)。

つまり、低リスク層の借り手は、金利が17%までなら借入を行い、高リスク層の借り手は、金利が27%までなら借入を行うという具合に考えてみるわけです。

単純化のために、全人口を100(従って高リスク層と低リスク層の人口はそれぞれ50ずつ)とし、一人当たりの貸出は100として考えてみましょう。

まず、27%の提示する場合には、貸し手の利鞘は7×50=350になります。
一方、低リスク層に合わせて16%の金利を提示するとすると、貸し手の利鞘は、低リスク層への貸付で同じく350の利鞘を稼ぐことができますが、高リスク層への貸付は逆に▲3×50=▲150の損失を生むので、結局、純利得は200になってしまいます。

というわけで、利鞘を考慮に入れただけでは、前回の高金利・高リスク層均衡は動きません。単に、(20%,高リスク層のみ )という均衡が(27%、高リスク層のみ)となって、貸出ボリュームは変わらず、7%は貸し手側に入るだけです。

ここで上限金利を引き下げ22%に設定したとしましょう。
Xとしては、どういう金利設定をするのが合理的になるでしょう?


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Posted by 47th : | 11:04 | コメント (6) | トラックバック (0) | 関連エントリー (0) | Corporate Finance

高金利均衡について補足 (1)

先日の上限金利規制の論拠を考える: 情報の非対称性についてというエントリーに対して、法学徒のfujiさんから、次のようなコメントを頂きました。

「借り手の返済能力に関する情報の非対称性から(貸出金利=高金利、借り手の信用力=低返済能力)という形で均衡が成立している」とのことですが、この逆 選択の問題と貸出市場での割り当ての発生との関係が分からなくなりました。すなわち、銀行なら金利引き上げをする代わりに資金の割り当てをすることで市場 を調整しようとするはずなのに、消費者金融では銀行のような割り当ては発生せず金利は高金利で均衡しているのですよね。これは消費金融の経営者は倒産して も資金の調達先に自分のお金で賠償する必要がない(エージェンシー問題)からなのでしょうか。それとも消費者金融はやはり回収ノウハウが非常に高いからで しょうか。

実は、前回のエントリーを書いたときに、えらくあっさりと書いて終わってしまったんですが、それは、皆、掲示板の議論をさっと見て、あっさりと理解してしまったのか、はたまた、余りにもマニアックそうなんで、そもそもあっさりと読み流されたのか、何れにせよ、経済学徒の方はともかくとして、一応、法律系ブログであるこのブログ(笑)に少なからずいるはずの法学徒の方には、必ずしも直観的になじむ議論じゃないような気もするんだけどなぁ・・・と思っていただけに、fujiさんのコメントは我が意を得たりのところがありました。

また、非常に興味深い問題提起も含まれているので、「情報の非対称性」が借り手と貸し手の行動にどのように影響するのかというロジックを、法学徒を意識して、なるべく直観的に分かりやすい形での解説を試みてみましょう。
なお、fujiさんにとっては、既に理解されている辺りのところから話が出発してしまうので、多少、迂遠かも知れませんが、前回のエントリーでは何のことかよく分からなかったという人のため、と、議論の前提の確認ということで、多少丁寧にロジックを追ってみたいと思いますので、その辺りはご容赦を。

ただ、前回のエントリーでも触れたように、「情報の非対称性」を現実の消費者金融の金利引下げ問題に応用するには、実証的にも理論的にもなお多くのハードルを抱えています。その意味で、今回のエントリーは、あくまで頭の体操とか、ファイナンス理論への理解を深めるという観点で見てもらって、現実の金利引下げ問題とは少し距離を置いた方がいいかも知れません。


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Posted by 47th : | 18:20 | コメント (23) | トラックバック (0) | 関連エントリー (0) | Corporate Finance

Going Privateのメリット?

1週間、ネット環境から切り離されていると、自分のブログが更新できないのは勿論のこと、他の方のブログも見ることができないので、その溜まったエントリーを拝見しているだけで、あっという間に夕方になってしまうわけで(笑)、本当にインターネット時代の情報量たるや恐るべしですね(※)。

色々と興味深い話はあったのですが、個人的な関心からいうと、やはり米ヘッジ・ファンドAmaranthの巨額損失事件に関する話(※2)が面白かったところです。そもそもヘッジ・ファンドをどう捉えて、どういう形で規制の枠組みをつくっていくのかという辺りは、それ自体として非常に興味深いテーマなわけですが、とりあえずこの辺りは実際に現場で活躍されている方々の考え方を拝見しているところで(※3)、まだアウトプット段階にはないのでパスします(笑)。

次に興味深かったのは、harry_gさんのウォールストリート日記でのMBO(LBO)関連記事3連発。

harryさんが書いているように、キャッシュフローが不安定でLBOには不向きというのが教科書的定説であったIT企業にLBOマネーが向かっているというのは、非常に興味深いのと同時に、若干の不安も感じないわけでもありませんが、何れにせよ、数か月前にharryさんとソフトバンクによるヴォーダフォンのLBOは謎が多いという話をしたのが思い出されます。

続いて、harryさんは、LBOによるGoing Private (非上場化)が増えた要因として言われていることのうち、「(短期の業績ばかりに注目する)ウォールストリートが嫌いだから」という理由と、「監視されるのはコリゴリだから」という理由に着目して、「現実はそんなに甘くはないのでは」ということを指摘されています。

harryさんが指摘されているように、私も非上場化によって経営者がより大きな自由を手に入れる、とか、よりのびのびと経営できるといった類の話は、かなり眉唾だと思います(※4)。

ただ、他方で、マネッジメントが自らの懐を潤すというのが主たる動機というのも、ちょっとシニカルに過ぎる気もしますし、非上場企業の増加はSOX法の施行による上場費用の増加とも相関関係があるという話もあるので、もう少し別の角度から、あり得るGoing Privateのメリットについて考えてみたいと思います。


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Posted by 47th : | 17:49 | コメント (2) | トラックバック (1) | 関連エントリー (0) | Corporate Finance

Who Monitors a Judge (in Tennis and others)?

昨日は延々とテニスのUS Openの話なんぞ書いたんですが、このブログの普段のテーマ的にみて今回のUS Openについて興味深かったのは、Challengeと呼ばれている(※)システムです。

大ざっぱにいうと、コートサイドの線審によるIN/OUTの判断に対して、プレイヤーが異議を申し立てると、その打球の軌跡がCG処理されてスクリーンに映し出されて、線審の判断を争えるというシステムです。
といっても無制限に異議を出せるわけではなく、1セットにつき各プレイヤー原則2回まで(タイブレークになると1回追加。異議が正しかった場合には(判定が覆った場合には)、その回数は減算されない)になっています。

US Openの公式サイトには、このChallengeに関する統計も掲載されているのですが、13日目までにチャレンジ総数が130回(男子)/53回(女子)で、線審の判定が覆されたのが38回(男子)/19回(女子)で、チャレンジ成功率が29.32%(男子)/35.85%(女子)、1試合当たりの平均チャレンジ数が3.42回(男子)/1.71回(女子)となっています。

これを見て誤審を多いと評価するか少ないと評価するかは難しい問題ですが、①プロのテニス・プレイヤーがチャレンジするのは余程自信がある場合だということと、②平均チャレンジ数にチャレンジ成功率をかけた1試合当たりの誤審数(※2)は1.00(男子)/0.613(女子)であること、③1試合当たりの平均ポイント数は217.6(男子)/134.9(女子)であることを考慮すると、相当に正確といっていいのではないかという気がします。(今日の男子準決勝の試合でも解説者が30%しか判定が覆らないというのは驚きだという話をしていました)

これだけなら、「テニスの線審って凄いね!」で終わってしまうわけですが、昨年のUS Openでは、(どっちか忘れてしまいましたが)ヴィーナス姉妹のどちらかの試合でミスジャッジが多発してちょっとした騒ぎになったりもしたわけです。
あの試合が特殊ケースだったとか、その試合でも今年のUS Openと同様の判定システムが導入されていれば(※3)意外と判定は覆らなかったという可能性も当然棄却できないわけですが、もう一つの可能性として考えられるのは、プレイヤーからの異議申立てシステムそのものが審判の判定の精度を高めたというものです。


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Posted by 47th : | 19:11 | コメント (2) | トラックバック (1) | 関連エントリー (0) | Corporate Finance

医療法人の株式会社化雑考 (5・完)

前回は、「株式会社化」ということのうちエクイティ性の資金(株式等)を取り込むことと、「営利性を追及すると公共性が損なわれる」という耳障りのいい主張にはコーポレート・ファイナンス的に関係があり得るというところをほのめかしたわけですが、今回は、その結論部分です。

残余請求権と有限責任

そもそも「エクイティ」というものをどう性格付けるかということについては、色々な考え方があるんですが、一般には、その本質は「残余請求権者」(residual claimant)であることに求められています(※)。
「残余請求権者」というのは、もっと大ざっぱにいえば、次の二つの意味合いを持ちます。

  1. 会社に利益が出ない限りは(※2)、出資は無駄になる。
  2. 会社に利益が出た場合には、利益は全て自分のものになる。

ところで、1.については、少し補足が必要です。
株式会社制度をはじめ、現在のビジネスを営む法人に関しては、いわゆる「有限責任」が認められています(大きな例外は(有限責任組合以外の通常の)組合です)。ですので、多くの場合は、「会社に損失が出ても、エクイティ・ホルダーは出資額以上の負担は強制されない」という性質を持っています。

この残余財産請求権と有限責任の組み合わせの結果、エクイティ・ホルダーは、「成功すればたくさんの利益が出るが、失敗した場合の損失も大きい」ビジネス運営を行う強いインセンティブを持つことになります。
いわゆる「ハイ・リスク・ハイ・リターン」のプロジェクトですが、これは、例えば銀行のように貸付の形で資金を提供している債権者からすると迷惑な話です。

銀行のような貸付債権者(デット・ホルダー)は、事業が成功しても「利子」という一定額しかもらえません。対して、損失が出た場合には、元本すら返ってこないことになるわけで、利子分以上のリターンを稼ぐことには関心がありません。
従って、こうしたデット・ホルダーは「ロー・リスク・ロー・リターン」のプロジェクトを好むわけです。

つまり、プロジェクトの選択に対して、エクイティ・ホルダーとデット・ホルダーの関心は、往々にして対立することがあるわけです。


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Posted by 47th : | 15:00 | コメント (15) | トラックバック (0) | 関連エントリー (4) | Corporate Finance

スキルとセオリー:Tirole"The Theory of Corporate Finance"

そろそろ8月も終わってしまうわけですが、この夏何をしているかといえば・・・基本的にはだらだらして、ブログを書いているだけなんですが・・・orz・・・ほかには、気の向くままに、腰を落ち着けて読みたかったけど読めなかった本などを眺めています。

どういう本が多いかといえば、圧倒的に経済学とかコーポレート・ファイナンス系で、少なくとも純粋な法学ものの本を手にとる確率は非常に低かったりします。

その中でもお気に入りは、Jean TiroleのThe Theory of Corporate Financeです。
著者は、産業組織論で定評ある教科書を執筆しているフランス人の経済学者ですが、この本は今年出版されたばかりの比較的新しい本です。

コーポレート・ファイナンスの教科書というと、Ross et al(邦訳)やBrealy=Myers(=Allen)(邦訳上 同下)が有名で(※)、特段数学や経済学の造詣がなくてもファイナンス理論のエッセンスを掴めるという意味で非常に優れた教科書であることには疑いはないのですが、個人的には、何か物足りないものを感じていました。

Tiroleの上掲書は、そんな私の心の隙間(?)をぴったりと埋めてくれる本でした。
時間やリスクによる割引やポートフォリオ理論、場合によっては基本的なミクロ経済学の知識は当然の前提とされていて、(シンプルなものであっても)数式を使ったモデリングも前提の明確化を含めて厳格にやっているという意味では、Ross et alやBrealy=Myersと同様の意味での「入門書」ではあり得ないのですが、それでもコーポレート・ファイナンスを理解したいと考えている法律家に薦めるとすれば、Tiroleの方かなという気がします。


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Posted by 47th : | 13:27 | コメント (2) | トラックバック (0) | 関連エントリー (0) | Corporate Finance

医療法人の株式会社化雑考 (4)

前回までは、情報の非対称性を主な要因として医療において市場がうまく働いていないんじゃないかという仮説を考えてみたんですが、コメント欄でbunさんから指摘を受けたように、その他にも医療市場が成立しにくい可能性というのは、いくつかあげられます。

思いつくままにあげてみると・・・

  1. 地域性:医療における地理的な市場というのは、ある程度限定されていて(次にあげるように緊急性の問題もあるでしょうし、通院の負担や(入院の場合の)見舞いの便利)、たとえ評判がある程度機能していても、遠くの名医より近くのヤ○を選んでしまう。
  2. 緊急性:事故や急病で救急車で運ばれる場合が典型ですが、そこまでせっぱ詰まっていなくても、車を買う時みたいに事前に雑誌やネットで情報を収集し、カタログをもらい、候補となる車種を比較検討して・・・といったことを医師選びについて行うことは稀でしょう。
  3. 需要の非弾力性:需要の(価格)弾力性というのは、特売になると普段は買わないカップ麺をまとめ買いしてしまうように、価格の変化に対して需要がどのぐらい敏感に変化するかということですが、直観的には、病気や健康に対しては、「あっちの病院だと1万円安いから」といったことで病院選びをするわけではないでしょうし、ましてや保険制度の下では見かけの価格はそんなに変わらないので、ますます弾力性は弱くなっているんじゃないかという気がします。(「見かけの」といったのは、例えば払う金額が同じでも、受けられる医療の質やリスクが異なれば、実質的な価格は異なり得るからです。)

他にもあるかも知れませんが、とりあえず医療において市場がうまく機能していないと疑う理由には事欠かない感じです(※)。

何れにせよ、医療市場自体の競争性と課題というのは、それ自体で一つの分野をつくることができそうな話でしょうから、この辺りで切り上げて、本題(のはず)だった「株式会社化」の意義に戻ってみましょう。


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Posted by 47th : | 13:59 | コメント (12) | トラックバック (0) | 関連エントリー (4) | Corporate Finance

何故ライツ・プランは機能するのか( or機能しないのか) (2)

前回は、ライツ・プランというのは買収者が取得した株式の価値を希釈化させて、買収費用を高めるものであって、絶対的に買収を阻止する仕組みのものではないという話をした上で、この「追加費用」というのをどう考えるかが買収防衛策の機能的な面でのポイントだという前振りをしたわけです。

ホワイト・ナイトはM&Aを殺す?

と、直接にライツ・プランの機能を云々する前に、「支配権市場」という「市場」が成立することがどういうことか、次のような議論から始めてみましょう。

しばしば、買収対抗策の中でも「ホワイト・ナイト」を探すことは、より高い価格をつける買い手を探してくるものだから、株主利益に適った買収防衛策であるという話を耳にします。
つまり、1000円でTOBをかけられたときに、対象会社経営陣が1100円でTOBをかけてくれるホワイト・ナイトを捜してくることに成功すれば、株主は100円高い価格をもらうことができるので、株主利益に適っているという話です。

このストーリー自体は、いったん買収が起きてしまった後の状況を前提にすると、正しい話なのですが、「後からホワイト・ナイトを連れてくることができるという可能性」が買収者のインセンティブに与える影響を考えると、実は、株主にとっては必ずしも手放しで喜べる状況ではなかったりします(※)。

少しややこしい話になりますが、順をおって考えてみると、こういうことです。

まず、最初の買収者が株価が割安な企業を探して、その評価をするためには、それなりのコスト(探索費用)がかかります。もちろん、買収が成功すれば、この費用も回収できるわけですが、逆に言うと、買収が失敗に終わると、この費用というのは無駄になってしまうわけです。

ところで、「いい買収先」の探索には色々なやり方があるわけですが、一番、「楽」なやり方は何でしょう?

 


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Posted by 47th : | 09:57 | コメント (1) | トラックバック (0) | 関連エントリー (1) | Corporate Finance

何故ライツ・プランは機能するのか( or機能しないのか) (1)

日本ではお盆休みで、誰がどこを参拝したという話が話題になっているようですが、私にはその問題を論じる能力も気力もないので野次馬モード。
上限金利規制の話の続きも悪くないかなと思ったんですが、ちょっと目先を変えてtoshiさんのブログのコメント欄で話題になっていた買収防衛策の機能について簡単に整理してみようかなというところで。

ライツ・プランの効果:経済的価値の希釈化

「買収防衛策」というと、何だか買収を完全に阻止することができる万能のツールのような印象も与えるんですが、残念ながら?、あるいは、幸いにして?、アメリカで一般的なフリップ・イン型ライツ・プランをベースに日本に現在導入されている買収防衛策は、一応理念としては(※)、そういう絶対的なものにはなっていません。

ごくごく簡単に言ってしまうと、無断駐車を防ぐために空地に鉄条網を貼り巡らすのではなく、出入りは自由にできるけど、看板にでかでかと「無断駐車は壱萬円」と書かれているようなもんです。

今の日本のライツ・プランというのは、大体20%でトリガーされて、トリガーされると買収者以外の株主の持株数は2倍になるという感じになっているんですが、この仕組みをベースに買収防衛策を無視してTOBを行った場合に買収者がどれぐらいの「罰金」を課されるかというと・・・時価総額が1000億円、株式数が100で、(非現実的ですが)プレミアムなしのTOBを行ったと仮定すると、次のような感じになります。


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Posted by 47th : | 12:28 | コメント (2) | トラックバック (0) | 関連エントリー (1) | Corporate Finance

「一括法」は滅びゆく運命なのか?(1)

(磯崎さんの指摘により仕訳修正)

さて、というわけで、何とも前置きが長くなってしまいましたが、本題である「一括法」と「区分法」の比較に入っていきましょう。

二つの「区分法」

まず、最初に、「一括法」との比較対象である「区分法」には二つの区分法があることを確認しておく必要があります。
これは、既に磯崎さんが「会社法下の転換社債(「区分法」と「一括法」)」というエントリーで、次のように指摘されているところです。

これだけ[引用者注:金融商品会計基準注解(注15)1]読むと発行価格100%を、社債部分(例えば95%)とオプション部分(同5%)に分けるようにも読めますが、「金融商品会計に関する実務指針」 のIII説例による解説、説例26「転換社債の会計処理(区分処理)」のとおり、社債の額面は(返済義務なので)満額100%で計上しなきゃダメですか ら、オプションバリュー部分が100%の外書きになります。

つまり、①実際の払込金額の「内枠」でデット部分とオプション部分の価値を配分する「区分法」と、②デット部分については「額面」で固定しておいて(※)、オプション部分の価値を「外枠」で計上する「区分法」の二つがあるわけです。
以下では、便宜のため、前者を「「内枠」区分法」と呼び、後者を「「外枠」区分法」と呼ぶことにします。また、単に「区分法」と言ったときには、実務で使われている「「外枠」区分法」を指すものとします。 


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Posted by 47th : | 00:20 | コメント (5) | トラックバック (0) | 関連エントリー (0) | Corporate Finance

CBは「特異点」?

SOの費用認識はCBを殺すか?」というエントリーで会社法勘のリハビリをかねてつっこんでみたところ、磯崎さんから「会社法下の転換社債と「裸の特異点」」という鋭い切り返しを頂きました。

「誰も入ったことのない洞窟」を一人で探検するのは心細いので、ツッコミ大歓迎であります。

と仰っていただいたので、引き続き、ツッコミをして、「一括法は滅び行くごとが運命付けられているのか?」ということを考えてみる・・・前に、「一括法」は「特異点」という磯崎さんの指摘に対して、ちょっと抵抗(?)しておこうかと思います。

磯崎さんは、会社法下でSOの費用認識が必要になったことをもって、次のように述べられています。

つまり、会社法による大きな転換は「オプションの公正価額は算定できるのが前提」ということであり、今や(この5月以降)、新株予約権の価額を会計上計上しなくていいのは、「転換社債」の要件を満たす場合だけであって、数学っぽく書くと、下図のように、(特に公開企業の場合)この部分だけが唯一の「特異点」になっているように思えます。

この後に続くブラックホールの話には、悲しいことについていけなかったので、ここでは「特異点」というのは、「一人だけ変わった奴」という意味合いぐらいで考えてみますが、「特異点」かどうかというのは、結局、母集団をどう捉えるかという問題によって変わってくるので、母集団と分類軸についてコンセンサスがないと、CBを「特異点」扱いすることはできないはずです・・・で、この母集団と分類軸については、磯崎さんが暗黙に仮定している定義に対して、次の疑問が即座に思い浮かびます。


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Posted by 47th : | 00:12 | コメント (2) | トラックバック (0) | 関連エントリー (1) | Corporate Finance

SOの費用認識はCBを殺すか?

最近、実質、開発ネタと消費者金融ネタで、アイデンティティの喪失を感じ始めている私ですが、久々に磯崎さんの「会社法下の転換社債(「区分法」と「一括法」)」に対して、ツッコミを。

磯崎さんの問題意識は、いわゆる転換社債型新株予約権付株式については、負債部分とオプション部分を別個に計上する会計処理(区分法)ではなく、一体として負債として計上する処理(一括法)が認められていることに関してなのですが、両者の違いを具体的に指摘された上で次のように締めくくられています。

なぜストックオプションを費用化する会計基準が施行されても、転換社債にだけオプションバリューを認識しない「一括法」が認められる会計基準になっているのか。なぜ、ストックオプション会計基準では、どういう処理にするかのカンカンガクガクの検討の過程が非常に多くのボリュームを割いて説明されているのに、社債の処理では、
(以下引用部分)
金融商品会計意見書の考え方は、以前の転換社債と経済的実質が同一である会社法に基づき発行された転換社債型新株予約権付社債の会計処理にも適用することが可能と考えられるため、発行者側については、以前の転換社債と同様に、一括法と区分法のいずれの方法も認められることとし
(引用終了)
と、数行で片付けてしまっているのか?
これは、「区分法」の強制により、転換社債市場が消滅すること(サードインパクト)を恐れる何者かによるインボー「大人の事情」によるものなんでしょうか?

何か「大人の事情」の香りもしないわけではありませんが、そういう怖い世界には立ち入らずに私の方はあくまで理屈の世界として考えてみることにします。
というわけで、理屈の上で考えてみると、ストック・オプション(以下「SO」と略します)のオプション部分のバリューを適切に評価して認識する趣旨というのは、必ずしもCBを含むファイナンス目的のオプションの取扱いと結びつくものでもないんじゃないかという気もするところです。


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Posted by 47th : | 01:17 | トラックバック (1) | 関連エントリー (1) | Corporate Finance

自己株買付とROEの微妙な関係

GMによるスズキ株式放出に関して、Apricotさんから非常に興味深いコメントを頂きました。

まず、Apricotさんの「スズキは6日はむしろ下がっていて、7日に大幅反発しています」というコメントをきっかけに、確認してみたのですが、日本時間の6日朝の段階ではGMによるスズキ株式放出はアナウンスされておらず、その後、日本の場が閉じたあとで買取方式が自己株式買付であることが発表され、翌朝までにToSTNET2で買付が完了しています。

ということは、7日のスズキの株価の上昇は、GMとの提携解消に反応したというよりは、自己株式取得という手段に反応したと見るのがいいようです。

まず、自己株式取得には一般に株価を押し上げる効果があるという実証研究の結果があるので、その意味では、自己株式取得に反応してスズキの株価が上がることは不思議ではないように思われます。

ただ、この株価上昇の効果は、自己株式取得が、現在の株価が企業の潜在的な収益性に比べて割安な水準にあるという経営者の認識を示すというシグナリング効果で説明されるのが一般です。今回の自己株式取得は、スズキ経営陣のイニシアティブではなく、GM側の意向を反映したものであることは明らかなので、この説明は難しいように思われます。

で、そこでApricotさんのコメントの中に見られる説明が出てくるわけです。

私は、(少なくとも日本の)市場関係者での主流な見方は、ROEの上昇とか、資本コストの低減(株式の益回りより負債の調達金利が安い)といったあたりだと思っていたのですが。

motherskyさんも、同様の趣旨のコメントを下さっていますが、このROEと自己株式買付の関係の話は、平成6年の自己株式買付規制緩和の頃に話題になったんですが、理論的に考えると、ちょっと不思議なところがあるんですよね。
(・・・といっても、私が不思議に思っているだけで、何か勘違いしている場合には、教えて頂けると幸いです)


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Posted by 47th : | 00:18 | コメント (8) | トラックバック (0) | 関連エントリー (0) | Corporate Finance

ペッキング・オーダーの「もやもや」

月曜日のCorporate Financeのテストは、一応終了したんですが、手応えが前回ほどはなく・・・まあ、βを使った残差の推定方法の基礎やイベント・スタディの基礎なんかはつかめてきたんで、NPVの計算に終始した前回よりは「実」はあったので、よかったということにします。
ところで、Corporate Financeの世界は、非常にパラドックスの多い世界なんですが、その中でも個人的に未だに納得した説明を見たことがないのがペッキング・オーダー理論のパラドックスです。
・・・そもそも、何でペッキング・オーダーの話を突然持ち出したのかといえば、toshiさんが「内部留保と企業価値」に関して研究してらっしゃるというのを書いていらっしゃったからです。文面からすると、かなり実証的な方向からのアプローチをしてらっしゃるようで、成果が公表されるのが非常に楽しみなんですが、理論的にみても、「なぜ企業が内部留保をしたがるのか?」というのは、いろいろと謎が多いところです。
・・・というわけで、その「内部留保」に関するファイナンス理論で、一応、今のところ標準的に受け入れられている「ペッキング・オーダー理論」について、私がいっつも感じている「もやもや」を、なるべく分かりやすくというのが今日のテーマです。
「内部留保」に関するファイナンス理論として、古典的なのは、モジリアーニ=ミラーの定理という奴があって、詳しいことははしょりますが、一つの含意として、企業レベルでの法人税効果を考えれば、負債利子は益金から控除されるので、企業の資金調達は負債を用いた方が有利であるというのがあります。
これからいくと、「内部留保」というのは、一種の「株主資本」なわけですから、資金調達は内部留保でやるよりも、節税効果のある負債を用いた方が好ましいという話になります。


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ソニーのトラッキング・ストック終了・・・

子会社連動株式の一斉転換に関するお知らせ (10月26日付ソニー・プレスリリース)

ソニー株式会社(以下「ソニー(株)」)は、本日開催の取締役会において、ソニーコミュニケーションネットワーク株式会社(以下「SCN)を対象とした子会社連動株式を、2005年12月1日(木)(一斉転換日)をもってソニー(株)普通株式に転換する方法にて終了させることを決議いたしましたので、下記のとおりお知らせいたします。

商事法務のメルマガで知ったのですが、ソニーのトラッキング・ストックが終了するんですね。
結局第一号案件のあと、続くものが現れなかったわけですが、トラッキング・ストックそのものには色々な使い方があるはずです。
特にM&Aが今後発展していく中で、シナジーに関する不確実性を止揚するような形で買収対価としてトラッキング・ストックを使うような手法は、まだまだ可能性があるんじゃないかと思います。
その意味では、ソニーの案件は、誕生から終了までのサイクルを大きな問題なく済んだというところで、トラッキング・ストックの1号案件としては大きな意味があったんじゃないでしょうか。


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保振がMSCBを使った擬似公募増資に対応

証券保管振替機構が「新株予約権付社債の取扱い対象の拡充について~証券会社の総額買取型新株予約権付社債の取扱いに関する制度要綱~」を公表しています。
「証券会社の総額買取型新株予約権付社債」というのは、要はMSCBを証券会社が引受けて株式に転換しながら投資家に売り捌くという例のスキームです。
内容はテクニカルなので、まあ備忘録程度なのですが、これについているデータを見ると、平成16年中は50銘柄3475億円だった発行総額が、今年に入って5月まで35銘柄3005億円ということで、着実にマーケットは広がっているようです。
まあ、それは証券会社も発行会社も、通常の公募に際して必要になる引受審査とか届出書、目論見書の作成(とその責任)が不要といわれれば、魅力的ですし、実質はその証券会社の顧客にだけディスカウントで上場株を売るようなものなので、証券会社にとっては顧客獲得としてもいいわけで、発行は増えますよね・・・
っていうか、これこそ取引所とか規制機関が、あり方を本気で考えるべき問題だと思うんですけどねぇ・・・


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法律・経済・時事ネタに関する「思いつき」を書き留めたものです。
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