Corporate Governance の全エントリー

有限責任と「親」の責任

GoogleによるYouTube買収に関して、YouTubeの抱える訴訟リスクはGoogle本体にどのような影響を与えるかが色々なところで議論されているようです。

より一般的にいえば、偶発債務を抱えた企業やリスクの高い事業を営む企業を買収する場合に、その影響をどう見積もるべきかという問題で、これは企業買収にあたってなされる典型的なQAの一つですので、ごく簡単に要点をまとめておきましょう。

有限責任の原則

まず、最初のスタート点は「有限責任」です。

つまり、法人格が別である限り、たとえ親子であっても、子供の責任を親が負うわけではないという原則です。

これが、Danさんが子会社の賠償責任は親会社に及ぶか?で指摘されている次の部分です。

もちろんGoogleを別個に訴えることは可能ですが、あくまでその場合はGoogleが被告であってYouTubeを被告にすることで自動的にGoogleのポケットに手が届くと思うのは間違いかと。

なお、当然ですが、Mergeしてしまった場合は話は別ですし、たとえ「単なる子会社」でも、YouTubeのB/SはGoogleのB/Sと連結されさ れます。YouTubeが損失を出せば、当然それはGoogleのB/Sにも響きます。が、もしYouTubeが損害賠償で債務超過になった場合、破綻さ せてしまえばGoogleはそれ以上の損害を被らないのではないでしょうか。

 また、磯崎さんが指摘されているように、スキームを組む上でも、こうした偶発債務の遮断は重要な考慮ファクターの一つであり、アメリカでは「合併」という言い方がなされても、実際には「三角合併」と呼ばれる、日本の株式交換類似のスキーム(※)が使われ、少なくとも「合併」後しばらくは法人格の独立は維持されることが多いわけです。

では、「有限責任」があれば「親」は「子」の負の財産を心配する必要はないんでしょうか?


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Posted by 47th : | 11:57 | トラックバック (0) | 関連エントリー (0) | Corporate Governance

Going Privateのメリット?

1週間、ネット環境から切り離されていると、自分のブログが更新できないのは勿論のこと、他の方のブログも見ることができないので、その溜まったエントリーを拝見しているだけで、あっという間に夕方になってしまうわけで(笑)、本当にインターネット時代の情報量たるや恐るべしですね(※)。

色々と興味深い話はあったのですが、個人的な関心からいうと、やはり米ヘッジ・ファンドAmaranthの巨額損失事件に関する話(※2)が面白かったところです。そもそもヘッジ・ファンドをどう捉えて、どういう形で規制の枠組みをつくっていくのかという辺りは、それ自体として非常に興味深いテーマなわけですが、とりあえずこの辺りは実際に現場で活躍されている方々の考え方を拝見しているところで(※3)、まだアウトプット段階にはないのでパスします(笑)。

次に興味深かったのは、harry_gさんのウォールストリート日記でのMBO(LBO)関連記事3連発。

harryさんが書いているように、キャッシュフローが不安定でLBOには不向きというのが教科書的定説であったIT企業にLBOマネーが向かっているというのは、非常に興味深いのと同時に、若干の不安も感じないわけでもありませんが、何れにせよ、数か月前にharryさんとソフトバンクによるヴォーダフォンのLBOは謎が多いという話をしたのが思い出されます。

続いて、harryさんは、LBOによるGoing Private (非上場化)が増えた要因として言われていることのうち、「(短期の業績ばかりに注目する)ウォールストリートが嫌いだから」という理由と、「監視されるのはコリゴリだから」という理由に着目して、「現実はそんなに甘くはないのでは」ということを指摘されています。

harryさんが指摘されているように、私も非上場化によって経営者がより大きな自由を手に入れる、とか、よりのびのびと経営できるといった類の話は、かなり眉唾だと思います(※4)。

ただ、他方で、マネッジメントが自らの懐を潤すというのが主たる動機というのも、ちょっとシニカルに過ぎる気もしますし、非上場企業の増加はSOX法の施行による上場費用の増加とも相関関係があるという話もあるので、もう少し別の角度から、あり得るGoing Privateのメリットについて考えてみたいと思います。


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Posted by 47th : | 17:49 | コメント (2) | トラックバック (1) | 関連エントリー (0) | Corporate Governance

上場・買収防衛は何のため?

(9/14 追記あり) 

東証に買収防衛策要求、金融相懇談会の最終報告書で(YOMIURI.ONLINE)

与謝野金融相の私的懇談会「証券取引所のあり方等に関する有識者懇談会」が13日にまとめる最終報告書で、東京証券取引所に対し買収防衛策の導入検討を求めることが明らかになった。
欧米の取引所などによる経営支配の懸念を未然に解消するためだ。しかし東証は、上場企業の買収防衛策について「株主利益を損なう恐れがある」として慎重な対応を求め、自らの防衛策導入にも否定的な姿勢を示しており、東証の対応が注目される。

まず、東証の擁護からするとすれば、東証自身は買収防衛策について「市場の評価を向上させることにより当取引所の基礎体力(足腰)を回避することで被買収リスクを回避」というのを基本方針とした上で、括弧書きで「他の上場会社が導入している一般的な買収防衛策の導入についても検討」としていたようですから(懇談会に西室社長から提出された8/29付け資料(pdf))、「欧米の取引所などによる経営支配の懸念」対策としての買収防衛策というアイディアは東証のイニシアティブによるものではないのでしょう。

当たり前といえば当たり前なのですが、私自身は買収防衛策そのものにはネガティブではありません。ただ、買収防衛策は単なるツールに過ぎません。

何のために上場を目指して、何のために買収を防衛するのかが、明確に意識されているのであれば、買収防衛策もありだと思いますが、そこが曖昧なままだと、そもそも防衛策をどう設計するかも定まりません。(一切支配権の移転を認めないのであれば、黄金株のようなものが簡便でしょうし、買収過程のコントロールであれば既存のライツ・プランが適しているでしょう)

何れにせよ、これを受けて更に東証の中でも議論がなされるのでしょうし、その中でツールの部分ではなく、そもそも論の部分で議論が深まっていくことが期待されます。

(9/14追記)

金融庁から「わが国証券取引所をめぐる将来ビジョンについて(論点整理(第三次))」が公表されています。

実際に公表されたものについては、上の報道とは違って、次のように大分穏当なトーンになっているようです。ちょっとフライング気味の報道だったようですね。

いわゆる買収防衛策導入の是否については、法令による主要株主規制 の下で、市場評価の向上や安定的な株主との関係構築により対応するこ とを基本とすべきとの考え方が取引所側から示された。他方で、この問 題については市場関係者等の意見も交えながら検討を継続し、実際に上 場する時点における市場環境等も十分見極めた上でその導入について 改めて判断していく必要性も認められよう。

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Posted by 47th : | 23:05 | コメント (3) | トラックバック (0) | 関連エントリー (0) | Corporate Governance

Who Monitors a Judge (in Tennis and others)?

昨日は延々とテニスのUS Openの話なんぞ書いたんですが、このブログの普段のテーマ的にみて今回のUS Openについて興味深かったのは、Challengeと呼ばれている(※)システムです。

大ざっぱにいうと、コートサイドの線審によるIN/OUTの判断に対して、プレイヤーが異議を申し立てると、その打球の軌跡がCG処理されてスクリーンに映し出されて、線審の判断を争えるというシステムです。
といっても無制限に異議を出せるわけではなく、1セットにつき各プレイヤー原則2回まで(タイブレークになると1回追加。異議が正しかった場合には(判定が覆った場合には)、その回数は減算されない)になっています。

US Openの公式サイトには、このChallengeに関する統計も掲載されているのですが、13日目までにチャレンジ総数が130回(男子)/53回(女子)で、線審の判定が覆されたのが38回(男子)/19回(女子)で、チャレンジ成功率が29.32%(男子)/35.85%(女子)、1試合当たりの平均チャレンジ数が3.42回(男子)/1.71回(女子)となっています。

これを見て誤審を多いと評価するか少ないと評価するかは難しい問題ですが、①プロのテニス・プレイヤーがチャレンジするのは余程自信がある場合だということと、②平均チャレンジ数にチャレンジ成功率をかけた1試合当たりの誤審数(※2)は1.00(男子)/0.613(女子)であること、③1試合当たりの平均ポイント数は217.6(男子)/134.9(女子)であることを考慮すると、相当に正確といっていいのではないかという気がします。(今日の男子準決勝の試合でも解説者が30%しか判定が覆らないというのは驚きだという話をしていました)

これだけなら、「テニスの線審って凄いね!」で終わってしまうわけですが、昨年のUS Openでは、(どっちか忘れてしまいましたが)ヴィーナス姉妹のどちらかの試合でミスジャッジが多発してちょっとした騒ぎになったりもしたわけです。
あの試合が特殊ケースだったとか、その試合でも今年のUS Openと同様の判定システムが導入されていれば(※3)意外と判定は覆らなかったという可能性も当然棄却できないわけですが、もう一つの可能性として考えられるのは、プレイヤーからの異議申立てシステムそのものが審判の判定の精度を高めたというものです。


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Posted by 47th : | 19:11 | コメント (2) | トラックバック (1) | 関連エントリー (0) | Corporate Governance

日本代表における「組織」と「個」の不幸な関係

ワールドカップは、いよいよベスト4ですね。

個人的にはイタリアが順当に勝ち上がり、開催国ドイツとの決戦というのがたまりません。
デコの復帰したポルトガルとキレキレジダンを擁するフランスの対戦も中盤での攻防が楽しみ(但し、ゴール前ではイライラが募りそうな予感が・・・)。

とワールドカップは盛り上がっているんですが、個人的には、7月いっぱいは、てんぱった状態が続くので、ブログの更新も滞りがちになるかも知れません。予めお詫びを。

ところで、Vaboさんの教えてくれた日本戦終了後の川渕会長のインタビューについて、書こう書こうと思って放っておいたので、このまま旬を過ぎてしまう前に、ちょっとメモ程度に思ったことを。

例の「史上最大の失言」については、色々な方が至極真っ当なことを仰っていますし、うっかりにせよ意図的にせよ、ご本人たちは「しょうがない」とか「許される範囲」と思っているんでしょうから、何れ笑い話として語り継がれていくんでしょう。
ちなみに、上場企業、例えばソニーの取締役が次期CEOの名前をうっかり記者会見で口にしようものなら、会社から正式なプレス・リリースを発表するまで会見は打ち切り、選任過程や情報管理の妥当性についてコンプライアンスの観点から検討がなされ、失言をした取締役の責任問題・・・ということになるぐらい重大な話ですが、日本サッカー協会は上場もしていないし、意思決定は全て会長の胸先三寸で決まるんだから、問題にならないということなんでしょう。

上場会社と違うといえば、「試合内容そのものについての分析は、技術委員会が分析をしてリポートを出すので、私自身の感想はここでは控える」と言いながら、ジーコ・ジャパンの4年間の総括は展開するというのも不思議は不思議です。論理的に考えると、①ワールドカップという総決算の3試合は、ジーコ・ジャパンの評価には関係ないので技術委員会のレポートを待つ必要はないのか、②そもそも技術委員会のレポートはジーコ・ジャパンの評価には関係ないということなんでしょうか。
上場企業でいえば、新事業のプロジェクトが赤字であることは確実で、その要因の分析はまだだけど、プロジェクトは成功だったと会見で言うようなもんでしょうか?
まあ、何れにせよ、上場会社的なガバナンスの常識は通用しないんでしょうから、いいんでしょうねぇ。

・・・と、本論と関係ない愚痴が長くなりましたが、本論は川渕会長の次の発言部分について(下線は筆者)。

ジーコ監督は、選手自身が考えるサッカー、自分たちが試合の中で臨 機応変に対応する力をしっかり身に付けさせようとした。「自分たちは強い」と自信を植え付けさせる4年間だったと思う。選手自身が失敗を恐れずに思い切っ てトライする初めての大会だったが、残念ながら成果には表れなかった。われわれも当然分かっていたことだが、組織だけで勝ち切るのは限界があって、個の力 を高めた上での組織力が、(W杯を)勝ち抜くためには絶対に必要不可欠なものであると、明確な形で見せ付けられた大会だったと思う

ジーコ監督がやってきたことは、ネガティブ・シンキングではなくて、「君たちはやれるんだ」という自信を植え付けさせるポジティブ・シンキングだったと思 う。今後もその方向を変えてはならないと思うし、それがジーコ監督がこのチームに残していったものだと思う。選手がそれを理解し、実現するレベルまでは残 念ながらいかなかったが、この方向性をわれわれサッカー協会は重く受け止めて、新たなチーム作りをしていきたい。今度の日本代表監督も、そのことを理解 し、監督のやりたいサッカーではなく、選手自身が判断し思い切ってトライする人を選ぶために今、交渉をしている

さすがに後段の部分については、記者からつっこみが入って、次のように弁解しています。

「監督のしたいサッカー」でなく、「選手がしたいサッカー」と言う と表現が極端に聞こえるが、選手を重視する――やはり監督にも「チームのあり方」があるので、それを全部無視するわけじゃない。しかし、その時々で選手が ベンチ(監督)を見るのではなくて、いろいろな局面でも自分で判断できることが大事であって、選手たちが思い切ってトライし、自分の考えで難局を突破して いく、そういうものを植え付けてほしいという意味。監督の作りたいサッカーはなくていい、というわけではまったくない。ジーコも決してそうじゃない。「選 手自らが考えるんだ」ということを強調して表現しただけ。

と、この発言を見ていて、非常に不安になったのが、川渕会長に依然として残るトルシエ・アレルギーと、非常に根本的なところに存在する「組織」と「個」との関係に対する誤解です。


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Posted by 47th : | 11:02 | コメント (4) | トラックバック (1) | 関連エントリー (1) | Corporate Governance

日本代表とコポガバを強引に結びつけてみる、の巻

普段拝見させていただいているブログでも、昨日の日本戦については色々コメントがされていて、参考にさせていただいているのですが、その中でマスコミのヘッドラインを並べて「なんか、甘いような。。。何かをごまかしているような。。。。何かから目を背けているような。。。」とコメントされている方がいて(ご迷惑になるといけないのでリンクは貼りませんが)、全くもって同感です。

既にジーコ采配については、いろいろと批評がされているわけですが、その議論の行き着く先は「監督が変われば強くなる」ということかも知れませんが、本当にそうなんでしょうか?

例えば、日本が22日のブラジル戦で、①ブラジルに2点差をつけて勝って予選突破したら、②2点差をつけて勝ったが予選突破できなかったら、③ブラジルに勝ったが1点差だったら、④ブラジルと引き分けたら、⑤ブラジルに1点差で負けたら・・・それぞれの場合のジーコ・ジャパンに対する「評価」は、どうなるんでしょう?

もちろん、「評価」において、目に見える「結果」は大事ですし、WCでの成績というのは、究極的な目標の一つであることは確かです。
企業経営になぞらえていえば、経営者の能力を測る上で株価とか、会計利益というのは大切な要素であることは否定できません。でも、株価の上がる原因が投機目的に売り買いでもいいというわけではありませんし、会計利益の源泉が本業とは関係ない金融取引からのものであったり(笑)、収益のあがっているコア事業を売却してあげた一過性の収益であってもいいという話ではありません。

そもそも、株価や会計利益のような外から素人が見ても一見明白な結果だけで経営者のよしあしが測れるのであれば、経営陣と独立した取締役会のようなガバナンスの仕組みは要りません。

ガバナンスには色々な要素がありますが、その中でも重要なのは、中長期的な課題とそれに適切に対応した評価指標の設定、そしてその実行状況のモニタリングです。

ジーコ監督の率いた4年間の日本代表において、どのような課題が設定され、その進捗を測るためにどのような指標が設定されたのか・・・何れにせよ退任が確実なジーコについて論じるだけでなく、こうしたガバナンスのあり方を見つめないと、結局、監督のクビをすげかえても同じことが続いてしまうんではないかという気もするところです。

国民は株主と違ってマネッジメント(監督)をモニターする取締役会(日本サッカー協会)のメンバーを選ぶことはできないところが違うわけですが、それでも、こういうガバナンスという視点からも色々と考えていくことは、4年後、8年後を考えると重要なんではないかという気がします。

最後に、今日のWCですが、まずはシェヴァのWC初得点と予選突破に望みをつないだことにまずはほっと一息、で、ラウールの流れを変える技ありの一発に座布団1枚ということで。


Posted by 47th : | 22:27 | コメント (7) | トラックバック (2) | 関連エントリー (1) | Corporate Governance

制度設計論としての日銀総裁の運用規制

結果だけ見れば、イングランドとスウェーデンの順当勝ちなんでしょうが、どちらも見応えがありました。
ジョン・テリーの神業的サポートがなかったら、トリニダート=ドバゴ先制で試合の流れも変わっていたでしょうし、パラグアイもスピードのあるカウンターからいいミドルを何本も撃ってましたからねぇ。
もっとも、トリニダート=ドバゴに関していえば、まだ予選通過の一縷の望みは残っているわけですから、頑張って欲しい、けど、スウェーデンがここで消えるのも勿体ないんですが・・・いずれにせよ予選最終戦ではスリリングな同時進行が今から楽しみです。

と、最近は、ワールドカップネタで入るのが恒例になりつつありますが、日銀総裁の利益相反行為規制問題について、ちょっと。

まず、そもそも個別株も持っていたとか、そういう話も出てきているようですし、(個別株をどこまで禁止すべきかは議論があるとしても(後述))そういう意味では「脇が甘い」どころか、 デフェンスの意識すらなかったようですから、世間の非難を一身に浴びてしまっているのは仕方ないのかなとは、私も思います。
結局、アイドルに彼氏がいてはいけない・・・というのが古ければ、アイドルは飲酒喫煙してはならないという価値観を持っている人々をファン層に抱えているアイドルが、それを不用意にもスクープされれば、アイドル生命の危機に直面するのは自然の流れなんで、既に成人していたとか、法律には反していないとかそういうことは何ら問題ではないんでしょう。

なので、そうした価値観を持っている方々が総裁辞任を求めることに異を唱えるつもりはないんですが、その「価値観」をベースにルールを組み立てようとするのは、いかがなものかというのが、法律家から見た違和感の全てです。おそらく、bewaadさんが、珍しく田中(秀臣)先生を始めとした経済系の論客の方々と真っ向から対立しているのも、その辺りにあるのではないかと思う、今日このごろ。

今回の件が大きな話になったのは、普通に見れば、「それ」が村上Fだったからですが、それでは村上氏をバッシングしているマスコミ・検察の流れに乗ってしまっているので居心地が悪い・・・そこで、そもそも日銀総裁としての利益相反規制に反している、あるいは、現行ルールでは反していないとしても、本来規制されるべき行為であるという問題の立て方で議論をする・・・そのこと自体は、利益相反ルールの規制に関する議論として精緻に詰められるのであればいいのですが、その段になると、「たとえ村上F以外のファンドに対する出資であっても許されなかった」という結論に持っていくために相当無理な立論をされているというのが正直な印象です。

前回も書いたように、日銀総裁の職務というのは、およそあらゆる金融活動に影響を与えているので、全ての資産を現金化してタンス預金とした場合ですら「世間から些かなりとも疑念を抱かれること」はあり得ます。

そういう意味で、この規程は訓示以外の何者ではなく、これを規範として適用することには無理があります。(規範性を認めたとしても、福井総裁の行為が該当するかどうかに関する議論はbewaadさんが、いつものように精緻にやっておられますので、そちらをご覧頂くのがいいと思います)更に、「適用」の場面もさることながら「制度設計」の段階において、この服務規程が参照されて「疑念を抱かれるからファンドはだめ」といった議論をすることには、ほとんど何の意味もありません。
別の言い方をすれば、日銀が今回の一件に懲りて、この服務規程を削除したり、「世間から些かなりとも」を「諸般の状況に照らして著しく」に変更すれば論者の方々は納得するという話ではないのでしょうから、その意味でも日銀総裁の利益相反規制に関するあり方を考えるにあたって、この服務規程の「些かなりともの疑念」をベースに論じるべきではありません(※)。

従って、日銀総裁の利益相反規制問題を、きちんと論じるのであれば、問題とされるべき利益相反の内容は何で、どのような規制手段が望ましく、それを規制することのコストとベネフィットはどうなっているのかという点が論じられなければいけないわけですが、ファンドは勿論のこと、個別株に至ってすら、こうした基本的な論点についても分析は十分になされていないのではないでしょうか。

ちなみに、ちょっとFRBのHPを見てみたら、次のようなQAを発見しました。


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Posted by 47th : | 01:46 | コメント (4) | トラックバック (1) | 関連エントリー (0) | Corporate Governance

SEC不要論

薬物規制撤廃を訴えるLibertarian EconomistのJefferey Mironが、今度はSEC(証券取引委員会)不要論を訴えています。

A better approach to reducing corporate malfeasance is a combination of two policy changes: repealing the corporate income tax and eliminating the Securities and Exchange Commission.

Repealing the corporate income tax would make corporate accounting far more transparent since most complications arise from (legal) tax avoidance behavior.

Eliminating the SEC would make investors bear full responsibility for monitoring corporate behavior. This occurs to a substantial degree already, since the SEC cannot effectively monitor all the firms subjects to its regulations. But eliminating the SEC would spur additional private monitoring and strenghten investor incentives to engage in due diligence.

要するにSECをなくすことによって、投資家はよりリスクに対して敏感になって、もっとちゃんと監視やデュー・ディリジェンスをやるので、問題はなくなると。

これには後日談があって、マンキュー先生が、「まあ、それを言ったら警察も要らなくなるやね」とちくりとやったら、かなり大まじめに、「いや、普通の犯罪と違って、証券犯罪の場合、投資家は自ら契約関係に入っているという点で決定的に違う」と言い返していたりします。

本気で賛成するかどうかはともかくとして思考実験としては、こういう議論は面白いところです。

Mironの主張は、単に刑事訴追を不要と言っているのか、それとも開示の程度・内容も投資家と会社の私的自治に委ねる(=法定開示制度を撤廃する)というところまで主張するのか、今ひとつ分からないところがあるんですが、Mironの元記事はSOX404自体が過剰規制じゃないかという主張から始まっているので、単に非犯罪化(decriminarization)というに留まらず、そもそもSECが規則を制定する必要はない、つまり法定開示制度は不必要という方向まで行き着くんでしょうね。

そうすると普通の犯罪とのアナロジーでいけば、何を犯罪とするかについても、私人間の契約で定めるのが望ましいということになるわけですが・・・皆さんは、どう思います?


Posted by 47th : | 00:38 | トラックバック (0) | 関連エントリー (0) | Corporate Governance

中央青山への処分の「重さ」の?

ようやく試験も終わり、そのまま試験の結果も出ていないのに見込み卒業式まで終わってしまっているんですが、何か緊張の糸がゆるんで、すっかりだらけてしまっています。

というわけで、中央青山の業務停止命令については、噂段階でちらっと触れて以後、きちんとフォローしていなかったんですが、その後以下のように金融庁の処分が下っています。

 平成18年5月10日金融庁「監査法人及び公認会計士の懲戒処分について

で、これについて印象を・・・とも思ったんですが、実は正直いって、次の処分の「重さ」をどう考えていいのかがよく分からないところがあります。

(2)処分内容

業務の一部停止2ヶ月(平成18年7月1日から平成18年8月31日まで)
[停止する業務] 証券取引法監査及び会社法(商法特例法)監査(法令に基づき、会社法(商法特例法)に準じて実施される監査を含む。)。ただし、一定の監査業務を除外するものとする(詳細は別紙1)。

これについては、新聞報道などでは契約企業との契約をいったん解除しないといけないとか、この期間は法定監査対象企業に対するサービス提供は一切禁じられるいう感じのトーンも見られます。もしそうだとすると、実質的には、この処分の影響は2か月という短期の問題ではなく、一旦清算しろと言っているのと同じような意味合いになるんでしょうが・・・

ただ、金融庁処分の文言と別紙1の書きぶりを見ていると、ここで停止されているのは法令に直接基づいた行為、つまり「監査証明」に限られているような印象もあります。
特に、業務停止の例外として「6月決算会社」については「8月」だけが除外されていますが、私の理解しているところでは、監査実務の実際としては、決算期直後から現場レベルでは監査法人と会社の密接な連携というのはあるはずですし、それがないと3か月以内に計算書類をファイナライズするというのは難しいはずです。
とすると、6月決算会社について7月は業務停止の対象となっているというのは、こういう実務レベルでの活動まで禁じるという趣旨ではなく、「法律に基づいた監査証明を行うことができない」という意味合いになっているような気がします。この辺りは11月決算の半期報告書についても8月だけが処分の例外とされているのと同じところ・・・というわけで、もし仮に監査証明だけを意識しているのであれば、一見の厳しさとは裏腹に別紙1と合わせて考えると、実質的なダメージはほとんどないということになってしまいます。

もしそうだとすると、この「一見厳しいが、実務的には影響は限定的な処分」を、企業が監査法人の乗り換えをしようと思えばできる時期にやるというのは、絶妙のタイミングを狙った一手ということになります。

レピュテーションを意識し、かつ、監査法人変更を行うだけの余裕やシステム的なバックグラウンドのある企業は契約を解除するでしょうが、大部分の企業は中央青山がこの処分の意味合いと改善策をきちんと説明すれば残ってくれるだろうということであれば、バランス的には悪くない落としどころという気はします。

何れにせよ、その意味で金融庁による短い処分文言をどう解釈するかによって、この処分の「重さ」は全く変わってくるような気がするんですが、何せ情報が不足しているんで・・・この辺り、どなたかご存じの方がいらっしゃれば教えて頂けると幸いです。

何れにせよ、今回の処分は、今後の監査法人への行政・刑事的処分設計を考える上で試金石となるケースのはずですので、処分側が事前にどの程度の「重さ」を想定していたのか、実際の影響との間に大きなズレは生じなかったか、生じたとすればその要因は何だったのかといった辺りの政策評価の視点からのフォローアップがきちんとなされるとよいのですが・・・諸外国との比較も含めて、この辺りを実証的に分析するのは、大学院レベルでのいいペーパーのネタにもなりそうなところですよね(・・・と、誰かがやってくれないかと期待してみたりする)


Posted by 47th : | 18:04 | コメント (11) | トラックバック (0) | 関連エントリー (0) | Corporate Governance

EU会社法・証券取引法の試験問題

昨日受けたHopt教授のEU Corporate Law & Securities Regulationは、2時間の制限時間で概ね次のような内容の問題でした。(括弧内は配点)

 

I.1. EU委員会が現時点でCorporate Law Action Planを見直すに当たって、あなたがそのカウンセルだとしたら(40%)

(a) 課題事項から落とすべきと思うものはどれか?

(b) 逆に、より力を注ぐべきと思うことはどれか?

I.2.、以下の問に簡潔に答えよ。(10%)

(a)ヨーロッパ会社(European Companu)は有用か?

(b)One-tier BoardとTwo-tier Boardのどちらが望ましいか?

 

II.1 以下の事例についてヨーロッパ法の観点から答えよ。(40%)

ヨーロッパの上場企業のCEOとCFOは米国上場企業に対する友好的公開買付けの交渉のために米国にわたっていたが、基本合意締結にこぎつけた。しかし、会社としての正式な承認のためには取締役会での承認を得なくてはならないため、その承認を得るために彼らは帰国の途についた。その途上で、彼らは自社の法務部門と大株主であるインベストメント・バンクのトップに電話をかけ、基本合意について合意が成立したことを伝えた。

(a) 彼らの行為は適法か?会社はどの時点で開示義務を負うか?噂が流れた場合はどうか?

(b) 電話会社の職員Aは、その電話の内容をたまたま聞くことができたため、当該会社の株式を即座に購入した。また、インベストメント・バンクは、当初、当該会社の株式を売却する予定であったが、その情報を聞いて売却をとりやめると共に、自社の顧客である機関投資家に対して当該会社の株式の購入を推奨した。彼らの行為はヨーロッパ法に違反するものか?

II.2 以下の問に簡潔に答えよ。(10%)

(a) 企業買収指令12条について、国際的企業買収に関して問題となる点は何か?

(b) ヨーロッパSECは設立されるべきか?

 

・・・というような内容で日本語なら2時間で何てことはないんですが、時間のプレッシャーがある中で英語で書こうとすると結構ぎりぎりで・・・書きやすいII.の方から始めたら最後の方はもうきつきつでした。

ちなみに、ドイツ人の悩みに共感を示さない私は、I.(a)の筆頭にEuropean Private Companyと並んで、最低資本金制度なんて、オフショア設立が認められるのであれば議論しても無駄で、もっと総合的に債権者保護を考えるべき、と、あっさり言ってしまいました。まあ、Hopt教授は、ドイツ人にしてはかなりリベラルで、ご本人が授業中に最低資本金制度について数年かけてStudyをやれと言われても、何やっていいかわからないと仰っていたのでOKだと信じているんですが。


Posted by 47th : | 12:03 | トラックバック (1) | 関連エントリー (0) | Corporate Governance

訴追と防御のバランス:会社による弁護費用支払いをめぐって

実は先週から両親がNew Yorkに遊びに来ている上に、来週からはロースクールの春学期試験が始まり、その準備と並行してゼミのペーパーも書かなくてはいけないという、なかなかしびれる状況にあるため更新が滞っています。

ただ、旬の話は書き留めておかないと忘れてしまうので、New York Timesからのこんな記事を。

Judges Press Companies That Cut Off Legal Fees (New York Times)

The judge in the tax-shelter trial of former tax professionals at KPMG last week ordered a hearing to determine whether prosecutors had improperly put pressure on the accounting firm to stop paying the defendants' legal bills....
This shift from a long tradition of paying such costs, one that is codified in many companies' bylaws and in some states' laws, has come since the Justice Department set guidelines in 2003 amid a sweeping crackdown on corporate fraud.
The guidelines, contained in the so-called Thompson memorandum... lay out factors that prosecutors can weigh when deciding whether to seek an indictment of a company — a virtual death knell for many companies, as it was for the accounting firm Arthur Andersen in 2002. Among the guidelines is to stop advancing lawyers' fees to employees caught up in investigations.
Other principles spelled out in the memorandum have drawn fire from defense lawyers in recent years, in particular one that encourages companies to waive their attorney-client privilege...The United States Sentencing Commission recently announced that it was dropping language in its own guidelines that encouraged waiving the privilege if white-collar defendants wanted leniency in sentencing.

要するに、司法省が、犯罪の嫌疑に関して会社自身を訴追するかどうかを決する際に、会社が役員や従業員のための弁護費用を支払っていると不利に取り扱われる=訴追される可能性が高まるために、嫌疑がかけられた場合に、会社が役員・従業員のための弁護費用の支払いを止めてしまうことがあるという話です。

そもそも犯罪の嫌疑がかけられている役員・従業員のための弁護費用を会社が支払うという発想に対して日本では嫌悪感が強いのかも知れませんが、その点については次のように書かれています。

...The cutting off of legal fees "is the hardest one to justify," said Stephen J. Bronis, a Miami lawyer who is the chairman of the white-collar crime section of the American Bar Association. The suggestion "flies in the face" of existing laws and the constitutional right to representation and a fair trial, he said.
...Defense lawyers, including Mr. Bronis, said that to avoid indictment, companies may feel that they have no choice but to show cooperation with investigators by cutting off legal fees, among other things.
...Less money for legal fees have can a notable impact, particularly in complex cases that turn on an arcane tax code. It means sifting through fewer papers in search of evidence, doing less case research, filing fewer motions, hiring fewer expert witnesses, doing fewer background checks and not hiring trial consultants.
It can also mean not being able to hire a top-notch lawyer to appeal a conviction. A truly indigent defendant receives a court-appointed lawyer, but that lawyer may not necessarily be the most skilled at handling complex cases.

当たり前の話ですが、企業レベルで犯罪の嫌疑がかけられた場合には、分析しなくてはならない資料は膨大な量であり、また、弁護士なら誰でもいいという訳ではなく、そうした事件のためのスキルが必要です。

これがあって初めて武器対等という話になるわけですが、そのための弁護費用は膨大な額に上ります。
会社の業務との関連で嫌疑をかけられた場合には、会社が弁護費用を補填することができるというのが、アメリカの会社法上の一般的な整理なのですが、これに対して「会社法上やってもいいかも知れないが、そんなことをすれば会社自体を起訴するぞ(それがなければ、会社は不起訴にしてやってもいい)」と言われれば、役員・従業員、特に従業員が実質的な防御をすることは極めて難しくなるわけです。

他方で、本当に違法行為に関与していた場合には、そうした役員・従業員は自業自得というところもあるのが、制度設計としては悩みどころです。ただ、そのメリット・デメリットを考慮した上での一つのバランスが会社法上の整理であって、これを無意味にしてしまうようなガイドラインを司法省が定めることについては、問題が残ることも確かです。

もっとも、それ以上に私の印象に残ったのは「悪いことをした(と疑われている)奴には情けをかける必要はない」という発想ではなく、訴追側と防御側のバランスで物事を考える姿勢の部分ということで、ご紹介まで。


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「自主規制」強化と競争法 (1)

昨日に引き続いて業界団体(事業者団体)の活動と競争法の関係するお話です。

上場企業監査、登録制に 会計士協会が自主規制強化 (asahi.com)

日本公認会計士協会(藤沼亜起会長)は6日、上場企業を監査する監査法人や公認会計士の個人事務所に、07年度から登録制を導入すると発表した。一 定の水準に満たない事務所は登録リストから除名し、上場企業の監査を続けることが事実上難しくなる。・・・
 ・・・監査法人の評価などを担当する同協会の品質管理委員会に新組織を設け、上場企業の監査を手がける全事務所に登録を求める。登録事務所には、品質管理体制について文書で提出させ、要求水準に達しているかをチェックする。
 申告した水準の業務を実行できなかった事務所には協会が改善を勧告するが、不十分な場合は除名を含めた処分を出す。
 監査法人や会計士は法律上、上場企業の監査を手がけることに特別な制限はない。しかし、協会の登録から除名されると評価が低下し、投資家の信頼を重視する上場企業の監査からは、事実上排除されるとみられる。

さて、「上場企業の監査水準の向上」は、少なくともそれ自体は社会的にも望ましくみえる目的ですし、現に与謝野金融相も「自分たちの力と判断で運営し、不祥事を少なくしていこうという努力は高く評価したい」「(登録制の)運営を暖かく見守っていかなければならない」と評価しているようです(NIKKEI NETの記事より)

こういう善意に満ちた創意工夫をしようとしているときに水を差すようなことを言うので弁護士は嫌われるんですが、動機としての善意は結果としての善を何ら保証するものではありませんし、ある行動の持つ負の側面を見つめることが社会的にみてより望ましい結果をもたらし得ると信じて、この取組において生じ得る競争法上の問題に触れてみたいと思います。


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SOX404制定過程での内部統制論の整理

neon98さんが内部統制懐疑論(1) (2) で、非常に興味深いエントリーを書かれています。非常に興味深く、また、考え方の方向性については、私も同感ですので、是非興味のある方はご覧になっていただきたいんですが、私自身の整理と、より深くnenon98さんのエントリーを味わうための調味料として、Sarbences-Oxley Act of 2002(SOX)の404条に関するSECルール制定の際の内部統制論の整理を簡単に紹介しようかと思います(ちなみに、元ネタはRule制定の際のSECのリリースで、とりあえず以下の記述は、それに全面的に依拠したものであることにご注意を)。

まず、そもそもInternal Control(内部統制)という概念は会計から発達したもので、1977年には、Foreing Corrupt Practices Act(FCPA)において、"internal accounting controls"という用語の下に、以下の点を確保するためのシステム統制を公開会社に要求しています。

  • 取引が経営陣の一般的あるいは個別の授権に従ってなされること
  • 取引がGAAP等に従った財務書類の作成及び資産のaccountability(会計帳簿への適切な計上ぐらいの意味?)の維持に必要な形で記録されること
  • 資産へのアクセスが経営陣の一般的あるいは個別の授権に従ってのみなされること
  • 資産の記録されたaccountabilityが合理的な周期で現存する資産と比較され、いかなる差異に関する適切な対応がとられること

その後、1980年代から1990年代にかけて、内部統制という概念は、より広範な企業活動に適用されるべきと言う主張が高まり、有名なCOSOのFrameworkにつながります。

COSOのFrameworkでは、内部統制は以下の3つの領域について、「取締役会、経営陣及び他の従業員によって実施され、目的の達成について合理的な保証を付与するようにデザインされたプロセス」を指すものとして定義されています。

  • 業務の有効性及び効率性(effectiveness and efficiency of operations)
  • 財務報告の信頼性(reliability)
  • 適用ある法及び規則のコンプライアンス

更にCOSO Frameworkでは内部統制は、以下の要素からなるものとされています。


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Posted by 47th : | 19:54 | コメント (2) | トラックバック (0) | 関連エントリー (0) | Corporate Governance

新会社法における定款自治の限界?

いとう先生のところで、新会社法における「定款自治」の限界について非常に興味深い考察がされています。

きっかけは営業譲渡における「重要な一部」に関する規定(467条1項2号)の解釈ですが、そこから話が発展して、新会社法29条の解釈について議論がなされています。
問題なのは、定款に記載できる事項のひとつである「その他の事項でこの法律の規定に違反しないもの」の部分で法務省の担当者の論稿によれば、これは「法律とは無関係に定款で一定の事項を定めるもの(たとえば事業年度の定め)を意味する」とされているようです。
これについて、いとう先生が次のように批判されています。

しかし、そのような理解には疑問がある。理由は単純で、そのような理解に立てば、新会社法29条は、新会社法の規定は明示的に条文に示されていない限りすべて強行規定だと定めていることになってしまうからだ。そうではなく、新会社法の規定が強行規定かどうか、各規定についてどの程度の定款による逸脱が許容されるかは、あくまで各規定の趣旨にもとづいて検討すべき問題であり、また、各規定についての解釈は、可変的なものだと考えるべきであろう。新会社法29 条は、すべての株式会社に、つまりは閉鎖会社や、その中でも有限会社型の会社にも適用される規定なのだから、この規定の意味を法務省の役人の解説のように解することはどう考えてもおかしい。

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Posted by 47th : | 12:36 | コメント (8) | トラックバック (1) | 関連エントリー (0) | Corporate Governance

コントロールとキャッシュ・フローの分離雑考(イントロ)

今週は金曜日にMPREなるBar関係の試験があるのと、来週月曜日はコーポレート・ファイナンスの2回目の試験があるので、ちょっと重い記事を書く時間はなさそうなんですが、紅の牛さんの「市民球団が危ない」と磯崎さんの「タイガース上場(等)と種類株式の活用(「多様なガバナンス」の可能性)」で種類株式を使った球団上場の可能性について触れられていたので忘れないうちに、この問題について、考えなきゃいけない話を五月雨式にメモしておきましょう。

ベンチャー・ステージと公開会社での意味の違い

ベンチャー・ステージで種類株式を使ってキャッシュフローに対する権利割合とコントロールに対する割合を変えるというのは、特にアメリカでは珍しい話ではないんですが、ここでは議決権を有しない(or少ない)資金提供者は、非常に洗練された少数の投資家や金融機関が想定されているので、予めどういう状況が生じた場合にはコントロール権が復活するかとか、どういう行動規制を加えるかということについて、契約でかなりきちんと合意しておける状況があります。なので、「コントロール権がない」というのは、予め当事者が合意した範囲や条件の下でベンチャー起業家の経営に干渉しないことを意味するだけで、経営状況とかについての情報はちゃんと入手できるし、ある条件にひっかかればコントロールを奪ったり、とりわけ追加資金の調達なんかについては拒否権を有したりといった形で「無議決権投資家」も実質的に自分の権利を守る手段は持っているわけです。


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Posted by 47th : | 09:46 | トラックバック (4) | 関連エントリー (0) | Corporate Governance

村上氏は取引所の株主として不適格?

村上氏の大証株20%以上取得、月内にも却下・金融庁方針 (NIKKEI NET)

金融庁は17日、大阪証券取引所の株式について20%以上の取得認可を求めているMACアセットマネジメント(東京・港)の村上世彰氏の申請を却下する方針を固めた。
(中略)
金融庁が懸念しているのは、上場審査や不公正取引の監視など大証の「自主規制機能」に村上氏が影響を与える恐れがあるという点だ。たとえば村上氏が未公開企業の株式を購入し、大証の大株主としての立場を利用して優先的にこの会社を上場させるといった事態を想定している。

私は、どちらかというと村上氏の行動に対しては厳しい見方をする方なのですが、この「金融庁の懸念」については、さすがに首を傾げざるを得ませんでした。


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Posted by 47th : | 21:38 | トラックバック (1) | 関連エントリー (0) | Corporate Governance

「社長保有株式の無償譲渡」の不思議(その2)

日本駐車場さんが発表した社長保有株式の一般株主への無償譲渡についての話の続きです。
前回の最後に、社長の保有株式比率を下げて、その分一般株主の持分を増やすということが目的なら、何で株式の無償消却をやらないんだろう?ということを言ったのですが、まず、こういう発想が出てくるのは何故かというと、次のような点で無償消却の方が、その目的達成のためには「便利」だからです。

手続きの「簡便さ」

「株式の無償消却」というのは、要するに手持ちの株式の一部をキャンセルしちゃうということなのですが、社長の持っている株式の一部を無償でキャンセルしちゃえば、発行済株式総数が減りますから、結果として、一般株主の持っている持分「割合」が増えることになります。
しかも、一般株主側では何の手続きも要らず、また、会社と社長との間で株式の一部を会社に渡すだけで済むので決済とかの手続費用も不要になるわけで、その意味ではコスト面でも「お得」ということになりそうなところです。
今回のプレスリリースを見ると、譲渡にかかる諸費用は社長さんが負担されるということですけど、「株式の無償消却」を使えば、かなり費用の節約になるはずです。


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Posted by 47th : | 11:15 | コメント (3) | トラックバック (1) | 関連エントリー (0) | Corporate Governance

「社長保有株式の無償譲渡」の不思議

久しぶりに紙ベースの新聞を読んでいると、確かにネット版にはない情報に面白い話が色々あるもんですね。
今朝の日経の大機小機も面白かったのですが、17面中程の「日本駐車場 社長保有株ただで譲渡」もインパクトがありました。
NIKKEI NETには記事がないようなので、プレスリリースを見てみると・・・現在38.1%を保有している代表取締役社長の保有株式を発行済株式総数の2.5%を上限として既存株主に無償で譲渡するという内容になっています。
どうして、こんなことをやるんだろう?・・・というのが、まず気になるわけですが、プレス・リリースによると以下のようなところが理由のようです。


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Posted by 47th : | 10:58 | コメント (2) | トラックバック (0) | 関連エントリー (0) | Corporate Governance

「擬似外国会社」規定と「レース」 (2)

前回書いたように、疑似外国会社の問題というのは、決して新しい問題ではないわけですが、とはいえ会社法現代化の「字面」というのは厄介で、現在、存在している疑似外国会社の取り扱いをめぐって、今後、いろいろ問題が出てくることが予想されます。

一度死にかけた「疑似外国会社」規定

ただ、この「厄介さ」というのは、別に想定外というわけではなかったはずで、実は、会社法現代化の過程で一度は疑似外国会社規定そのものを撤廃する方向へと針が大きく振れた時期があります。
2003年10月に公表された会社法現代化に関する要綱試案の段階では、疑似外国会社規定を廃止する案が選択肢の一つとしてあげられていて、パブリック・コメントの結果でも、この廃止案の支持率が高かったために、一度は「疑似外国会社」規定は廃止寸前までいったのですが、最終的には「疑似外国会社と取引する者の取引安全を重視」して疑似外国会社規定は若干の修正の下で存置されることになりました。


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Posted by 47th : | 17:15 | トラックバック (4) | 関連エントリー (0) | Corporate Governance

「経営・知的資産小委員会中間報告書(案)」の公表について

前に「裏側」情報の開示は投資家を救うか?というエントリーで触れた産業構造審議会新成長政策部会経営・知的資産小委員会中間報告書(案)が公表されました(・・・長い名前・・・)
企業価値研究会と違って、本体は6ページのコンパクトな意見書なので、気軽に読めると思うのですが、内容は、ちょっと考える必要があるんじゃないかという気もします。


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Posted by 47th : | 13:57 | トラックバック (1) | 関連エントリー (0) | Corporate Governance

「擬似外国会社」規定と「レース」 (1)

ろじゃあさんによると日経朝刊で擬似外国会社に関する会社法821条がとりあげられていて、これで外資系会社が取引を継続できなくなると騒いでいるらしい・・・とのこと。

今頃になって騒いでいるのか、あるいは最近ネタが解禁になったのか・・・いずれにしろ外資系会社について問題だろうことはよくわかるが、証券化のSPCやM&Aや事業再生関係の債権や資産の買取のためのSPCも問題となり得る規定。既存の譲り受け分や既発債などの取り扱いについてはとうの昔に手当て済だとは思うが、今頃になって外資系証券についてこれが問題になるということは、まだ証券化関係等で未対応の主体も多いということなのかなぁ。

ちゃんと調べたことはないのですが、外資系の金融機関(投資顧問なんかも含めて)ではバミューダあたりに○○Securites Ltd. (Japan)とか置いてやっているところは結構あるので、擬似外国会社は「継続的取引ができない」と言われてしまうと、やはり、それなりに困るところは多いのではないかと^^;
ただ、ろじゃあさんの仰るとおり、この問題は、そんなに目新しい話ではありませんよね。


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Posted by 47th : | 13:58 | トラックバック (3) | 関連エントリー (0) | Corporate Governance

米国における投資家のプレッシャーと企業の対応~Siegelの場合

Siebel directors under fire

For many companies, annual shareholder meetings typically are dull affairs. But for Siebel Systems Inc., its gathering June 8 may represent no less than a referendum on the software company's future.

Under mounting pressure to distribute some of its $2.2 billion in cash to shareholders or contemplate a sale, the embattled San Mateo, Calif., vendor of customer management software can expect a hostile crowd at the gathering in San Francisco.
(中略)
Siebel shareholders Jana Partners LLC, a San Francisco fund with $4 billion under management, and Providence Capital Inc., a New York investment firm, have threatened to withhold their votes for Tom Siebel and management's other directors. Providence Capital president Herbert Denton was unavailable for comment, but he previously called Siebel a "decaying asset" and in April staged a meeting of shareholders to discuss strategic alternatives for the company.

CRM(Customer Relationship Management)のコンサルタント会社もIRは専門外ということですかね・・・また、続報が入ったら追記します。


Posted by 47th : | 11:00 | トラックバック (0) | 関連エントリー (0) | Corporate Governance

SOXのお値段

Economistの記事より

A price worth paying?

The cost of all this is steep. According to one study that has attracted a lot of attention, the net private cost amounts to $1.4 trillion. This astonishing figure comes from a paper by Ivy Xiying Zhang of the William E. Simon Graduate School of Business Administration at the University of Rochester. It is an econometric estimate of “the loss in total market value around the most significant legislative events”i.e, the costs minus the benefits as perceived by the stockmarket as the new rules were enacted. In principle, this ought to reflect all the anticipated costs and benefits, direct and indirect, that impinge on company values. If this number were true, SOX would have to prevent an awful lot of unforeseen losses due to fraud before it could be judged a good buy.

"million"とか"billion"じゃなくて、"trillion"というと、普段使う機会がないので、ぴんとこないのですが、要は1.4兆ドル・・・1円100円計算でいうと・・・104兆円・・・
このリサーチの数字を信じていいのかどうかという問題が大きいわけですが・・・もう一つのお値段のお話として


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米国企業年金制度の「抜け穴」

(6/8追記あり)
日本の年金問題と同じく、アメリカでも社会保障(social security)問題が第2期ブッシュ政権の最大の課題の一つとして重要視されていますが、このニュースは、ひょっとしたら企業年金のあり方にも多くの問題を投げかけるきっかけとなるかも知れません。

Pension Loopholes Helped United Hide Troubles (New York Times)

Loopholes in the federal pension law allowed United Airlines to treat its pension fund as solid for years, when in fact it was dangerously weakening, according to a new analysis by the agency that guarantees pensions. That analysis is scheduled to be presented at a Senate Finance Committee hearing today

この記事によれば、倒産によりUnited Airlineには830億ドル(8~9兆円)の積立不足があったことが判明したにもかかわらず、倒産までの間の財務報告では積立は十分で追加資金は不要とされており、それを可能としたのが、ここでいう抜け穴(loophole)だということです。


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「裏側」情報の開示は投資家を救うか?

上場企業、経営の「裏側」開示を・経産省が導入促す (NIKKEI NET)

経済産業省は上場企業に対し、経営実態や成長戦略を細かく開示する「知的資産・経営報告書」の作成を促す。客単価の推移や受けつけたクレームの数など有価証券報告書ではわからない経営関連指標の公開も求め、投資家が企業の将来性を判断する目安にする。開示基準案を10日にも公表し、まずは企業による自発的な導入を目指す。

この記事だけからではよく分からなかったので、METIのサイトを見てみると、どうやら、これは6月10日に開かれる産業構造審議会新成長政策部会知的資産小委員会で審議される「知的資産経営開示ガイドライン(案)」のことを指しているようです。


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これを報酬規制の問題というべきか?

久々に巡回したこちらのブログで見かけた記事。

Clawback Provisions for Legal Fees of Convicted Officers

大雑把にまとめると、米投資銀行のメリル・リンチが、エンロンがらみの不正取引に関与していた元従業員の刑事事件のために(一審だけで)十ン億の弁護士費用を負担しており、これが問題ではないかという趣旨の話です。

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Posted by 47th : | 11:54 | トラックバック (1) | 関連エントリー (0) | Corporate Governance

 
法律・経済・時事ネタに関する「思いつき」を書き留めたものです。
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