Disclosure の全エントリー

クラブ・ディールと競争法

harryさんが紹介されていますが、PEのクラブ・ディールにアメリカの競争当局が興味を示し始めているという話が昨日のWall Street Journalでとりあげられていますが、New York Timesでも関連記事がとりあげられています。

もっとも、こうしたウォール街で見られる金融機関同士の協調行動と競争法の緊張関係は必ずしも新しい話ではありません。
NYTの記事では株式公募の際の共同引受けに関する1950年代のMorgan事件が紹介されていますが、買収における協調行動ということでいえば、(私訴ですが)1990年にWilliams法の開示規制の下でSECがレビューしたビッドについては反トラスト法違反とならないことを示唆する判決を第2巡回裁判所が出しているようです。

もっとも、この判決に対しては学界からの批判が強いようですし、90年代にはゲーム理論に基礎をおいた暗黙の協調行動(tacit collusion)に関する理論も目覚ましい発展をとげていることからするとウォール街的には安閑としているわけにはいかなさそうです。

もっとも、NYTの記事を見る限りはSubpena(正式な情報提供手続のための令状)が出されたわけではなく任意の質問レベルに留まっているようですから、何れにせよ結果が出るのはまだまだ先になりそうな気配ですが、競争法的にポイントになるであろう点についてメモ程度に。


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Posted by 47th : | 11:33 | コメント (2) | トラックバック (0) | 関連エントリー (0) | Securities : Disclosure

Going Privateのメリット?

1週間、ネット環境から切り離されていると、自分のブログが更新できないのは勿論のこと、他の方のブログも見ることができないので、その溜まったエントリーを拝見しているだけで、あっという間に夕方になってしまうわけで(笑)、本当にインターネット時代の情報量たるや恐るべしですね(※)。

色々と興味深い話はあったのですが、個人的な関心からいうと、やはり米ヘッジ・ファンドAmaranthの巨額損失事件に関する話(※2)が面白かったところです。そもそもヘッジ・ファンドをどう捉えて、どういう形で規制の枠組みをつくっていくのかという辺りは、それ自体として非常に興味深いテーマなわけですが、とりあえずこの辺りは実際に現場で活躍されている方々の考え方を拝見しているところで(※3)、まだアウトプット段階にはないのでパスします(笑)。

次に興味深かったのは、harry_gさんのウォールストリート日記でのMBO(LBO)関連記事3連発。

harryさんが書いているように、キャッシュフローが不安定でLBOには不向きというのが教科書的定説であったIT企業にLBOマネーが向かっているというのは、非常に興味深いのと同時に、若干の不安も感じないわけでもありませんが、何れにせよ、数か月前にharryさんとソフトバンクによるヴォーダフォンのLBOは謎が多いという話をしたのが思い出されます。

続いて、harryさんは、LBOによるGoing Private (非上場化)が増えた要因として言われていることのうち、「(短期の業績ばかりに注目する)ウォールストリートが嫌いだから」という理由と、「監視されるのはコリゴリだから」という理由に着目して、「現実はそんなに甘くはないのでは」ということを指摘されています。

harryさんが指摘されているように、私も非上場化によって経営者がより大きな自由を手に入れる、とか、よりのびのびと経営できるといった類の話は、かなり眉唾だと思います(※4)。

ただ、他方で、マネッジメントが自らの懐を潤すというのが主たる動機というのも、ちょっとシニカルに過ぎる気もしますし、非上場企業の増加はSOX法の施行による上場費用の増加とも相関関係があるという話もあるので、もう少し別の角度から、あり得るGoing Privateのメリットについて考えてみたいと思います。


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Posted by 47th : | 17:49 | コメント (2) | トラックバック (1) | 関連エントリー (0) | Securities : Disclosure

共同買付者と167条

ワールド・カップネタにうつつを抜かしている間に、村上氏は起訴に至ったようです。朝日新聞の記事を見ていても、検察のストーリーというのは、村上氏がLDを引き込んで「一緒にニッポン放送株式を買おうじゃないか」、と、けしかけたという話のようです。

このストーリーに関する?なところは、磯崎さんが素晴らしい整理をされていますんで、そちらをご覧頂くこととして、前から気になっている「共同買付者に対する167条の適用」について、余りブログ向けのネタでもないだろうと思って積み残しにしていた非常にテクニカルな点について見ておきましょう。

というわけで、以下の議論は、いつものようなローエコとかではなく、極めて実務家的なテクニカルな条文解釈の話ですので、興味のない方は、また明日ということで、法律家のやるテクニカルな条文解釈というのは、どんなものなのか怖いもの見たさと思う方は、続きをどうぞ。


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Posted by 47th : | 23:31 | コメント (2) | トラックバック (0) | 関連エントリー (6) | Securities : Disclosure

インサイダーとネット社会?

昨日の記事について、弾さんから「サイバースペースにおけるインサイダー定義の憂鬱」というTBをいただいたですが、その中で面白い話が。

問題は、何をもって「あなたしか聞いてない」のか、「一般株主も聞いているのか」が判定されるか、にあります。
例えば、上の製薬会社の社員が、このことをblogに書いた場合はどうなのか、SNSに書いた場合はどうなのか、ということです。
例えばblogの場合。これはblogという不特定多数、すなわち一般株主も見れる場所に書いてあるのだから、書かれた時点でインサイダー情報にな るのかならないのか。そしてSNSだったら、基本的にはインサイダー情報だけれども、それが書かれたのが日記ではなく株主コミュニティだった場合どうなる のか?

まず、問題を整理すると、ひとたびインサイダー情報になった情報は、(インサイダーではなく)上場会社自身が一定の定められた方法で公表措置をとらない限りは、たとえテレビのニュースで広められてもインサイダー性は解除されません。この一定の方法というのは、大きく分けると、①臨時報告書など証券取引法所定の開示書類の登録、②新聞など報道機関に対する公表、③取引所を通じた開示(東証の場合はTDNet)に分かれます(※)。
逆にいうと、自社のホームページにプレス・リリースを掲載しても、そのプレス・リリースが報道機関や取引所に渡されなければ「公表」にはなりませんし、マスコミにスクープされ全国版のニュースで報道されても会社自身が正式な開示をマスコミに行っていない限りは、たとえ日本中の半分が知ることになっても、依然として「未公表」事実です。

というわけで、「公表事実かどうか」=「インサイダー情報かどうか」というレベルでは、その情報がどの範囲に開示されたかは問題とはならないわけです。
上のルートで開示されていない重要事実は、全てインサイダー情報です。

では、(それが摘発されるリスクがどの程度あるかはひとまず措いておいて)掲示板やブログに書き込まれたインサイダー情報を見て、取引をしたら即インサイダー取引かといえば・・・ネットを通じた情報取得という面では、「重要事実の伝達を受けた」という要件との関係がポイントです。


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Posted by 47th : | 00:20 | コメント (2) | トラックバック (2) | 関連エントリー (5) | Securities : Disclosure

「聞いちゃったら」だめです

村上氏が残すもの」には、多くのコメントとTBを頂きありがとうございました。
で、頂いたTBを拝見させて頂いて補足した方がいいかなと思った点について、少しずつフォローアップをしようと思うんですが、まずは、念のため、この点から。

「聞いちゃったら」だめです

おそらく、弾さんの「聞いたもの負け」というキャッチフレーズが余りにも強烈だったんだと思いますが、21世紀生活研究所さん(「聞いちゃったインサイダー?」)のように「聞いちゃっただけでインサイダーというのは厳しすぎる」という具合にとられた方もいらっしゃったかも知れません。
 しかし、「こっちから聞いたんではない」とか、「儲けるつもりがなかった」とか、「そんな情報は使っていない」という類の言い訳はインサイダー規制では一切認められません。これは、現行法上、もっともクリアーな点の一つであって、その意味で村上氏が会見で「儲けるつもりがなかった」というのは通用しませんし、通用させる必要もないと私も思います(※)。

私が気になっているのは、仮に村上氏のリリースにあるような事実関係だとすれば(但し、この辺りは後述のように検察の主張は大分違うようですが)、聞いちゃったときの状況からすれば現実味の薄い話や、単なる願望レベルの抽象的な話であっても、インサイダー情報になるのか(※2)、という話です。
「聞いちゃったかどうか」が問題なんではなく、あくまで「聞いちゃった内容が何だったのか?」が問題ということです。 

なので、例えば、製薬会社の社員の友人と飲んでいて、「実はこの前発表した新薬の欠陥が分かって回収しなくちゃいけなくなりそうで、そのせいで首が飛びそうなんだよね。ローン組んだばっかしなのに、やってられないよ」と聞いてもいないのに一方的に愚痴られたとしても、その話を「聞いちゃった」以上は、その会社の株の売買はできません。持っているその会社の株は塩漬けです。
たとえ、「前から売るつもりだった」とか「結局、業績の上方修正と一緒の発表だったから株価は下がらなかった。むしろ上がって損したぐらいだ」と言うのは、何ら言い訳になりません。

なので、その意味で「聞いたもの負け」は、証券取引の基本的なルールであって、これ自体は言い訳は効かないので、その辺りは、どうか誤解しなで下さい。
極端なことを言えば、そういう気の置けない友達がいるとかで、インサイダー情報が望まないのに入ってしまうかもしれない会社の株は持たない方がいいと言ってもいいぐらいです。
(この辺りの、実務における心構えについては、ぐっちーさんが書かれているので、そちらも是非ご参照下さい。私も全面的に同意します(※3)・・・が、日本の場合、証券取引等監視委員会に相談してもノー・アクション・レターはもらえないので、結局、塩漬けにしたまま、インサイダー情報が公表されるまで待つか、どこかで委員会の感触を掴みながらリスクをとらざるを得ないというのがイタイところですが・・・)
その意味で、検察が「聞いちゃったこと」を問題視するのは、全然不思議なことではありません。 

問題は、それでも親から相続してしまったとか、職業がファンドマネージャーという因果な商売でポートフォリオを組むために仕方なく持ってしまっていて、友達にも微妙な話はやめてくれよ、と常々言っているのに、数か月前に新薬開発の功績で昇進したと喜んでいた友人が「うーん、もしかしたらだけど、おれ飛ばされるかも知れないんだよね」とため息をついているのを聞いてしまって、「あ、何かあるらしい」と思ってしまったとか、夢はビル・ゲイツ越えという新興IT会社の社長が「おれの夢はトヨタのオーナーになることなんだよね」と聞いたら、どうなんでしょうね、というところです。


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Posted by 47th : | 22:38 | コメント (4) | トラックバック (7) | 関連エントリー (6) | Securities : Disclosure

村上氏が残すもの

(追記あり) 

今頃、日本では凄い騒ぎなんだろうなと思いつつ、村上氏が日本時間午前11時からの記者会見で「インサイダー取引」を認めたという報道をネットで見ているところです。

M&AコンサルティングのHPには、早速村上氏個人名義で「ニッポン放送株式の売買について」と題するリリースが掲載されています(このPDFのファイル名も泣けます)。

これによると、村上氏の「認めた」事実経緯は次のようなものであったようです。

・・・2004 年11月と2005 年1月にライブドアの堀江社長(当時)をはじめ とする方々が弊社を来訪された際、同社がニッポン放送株式を5%以上取得したいとい う意向をお持ちであると伺いました。
・ただ、当時のライブドア社の財務状況に鑑みれば、ニッポン放送株式を5%以上買い集めることは不可能だと考えており、当該意向は、ライブドアの単なる願望だとしか受け止めておりませんでした。・・・
・しかしながら、上記のライブドアによる株式取得の意向は、証券取引法167 条、同法施行令31 条に規定するインサイダー情報としての5%以上の株式買い集め行為について の決定であると解釈されるものであり、このような情報を知った以上は、MAC アセッ トマネジメント社の実質的なオーナーであり、非常勤取締役である私は、同社によるニ ッポン放送株式の買付けを停止させる義務がありました。
・十分な注意を払わずに上述の義務を怠ってしまったことは、職業として株式投資に関わ る者としては失格であり、ファンド出資者の方々にご心配をお掛けするとともに、皆様 をお騒がせしたことにつきまして、ここに深くお詫び申し上げます。

村上氏が、何故この段階で認めたのかという点については、いろいろな憶測が可能でしょうが、事実については認めて勾留の長期化を避け、情状を確保しつつ、公判では弁護士を前面に立てて「村上氏立件へのハードルとその影響」であげた167条の構成要件解釈に関する点をつき無罪を争うというのが一つの見方でしょうか。

・・・ただ、もし村上氏が、それすらも争わず、およそ上に掲げたような事実関係の下でもインサイダー取引に該当するという先例(※)のみを残して、日本を去ったとしたら・・・この「先例」は166条インサイダーも含めて、日本の証券取引実務に落とす影が村上氏が愛想を尽かした日本市場に残す呪いなのかも知れません。

あるいは、村上氏が「改心」して、およそ上に掲げたような基準の下で、村上氏が心当たりのある犯罪に当たり得る行為を全て検察に情報提供したとしたら・・・

レッドソックスはバンビーノの呪いに86年間苦しめられましたが、さて、村上氏の呪いはどうなるか・・・と、いったら考えすぎなんでしょうか。


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Posted by 47th : | 00:05 | コメント (15) | トラックバック (25) | 関連エントリー (7) | Securities : Disclosure

村上氏立件へのハードルとその影響

きっと日本ではテレビや紙媒体も凄いことになっているんじゃないかと思いますが、海の向こうではネットぐらいしか情報源がありません。
それを見ていると、週明けにも立件ということで、基本的なストーリーは12月中に村上氏とLD側が接触した際にLD側の買付情報を村上氏が知って大量保有報告書で明らかになっている買増しを実施したということのようです。
これが基本ストーリーだとして検察の立件に立ちはだかる3つの法的なハードルと、もしそのハードルがクリアされてしまった場合に何が起こるかということを簡単にまとめてみましょう。

いつ「買付」は決定されたのか?

一つ前の記事でも書きましたが、日本のインサイダー規制においては、いつ「決定」がなされたかということが、大きなメルクマールになります。
これは法的な機関決定のタイミングではなく、その会社での意思決定の実態を踏まえて考えるべきとされています。過去の裁判例の傾向を見ると、LDの場合は社長である堀江氏が「決定」をすれば、取締役会での正式決議よりも前であっても「決定」はあったとみなされる可能性は高いでしょう。
問題は、堀江氏の中で、どの段階まで至れば「決定」と言えるかという点です。

例えば、12月に村上氏から提案された際に、ニッポン放送株式の取得も「将来的には」考えていたが、「具体的な」計画になったのは、フジテレビのTOBが開始された後で、ここから資金調達の手法なども具体的に検討し始めて、2月8日に間に合わせた・・・こういう事実関係の中で12月の堀江氏の心境をもって「買付」が「決定」されていたということはできるんでしょうか?

あるいは、12月の段階で堀江氏が社内でニッポン放送株式取得の是非についての検討を指示していたが、まだ検討中の段階であった場合は?

今回の場合は、その核心にいる堀江氏から証言をとることができるかが非常に微妙であり、その意味で堀江氏の内心に頼って事実を構築することにはリスクがあります。

そうすると、法解釈の問題として、「決定」のタイミングを早めることはできないか?、と、考えるのかも知れませんが、仮に上のように「抽象的な計画段階」や「検討段階」でも「決定」があったということになれば、単にファンドが苦しむというのではなく、上場会社の事業活動にも影響が出てきます。
例えば、自己株取得プログラムを決定するに際して、社内に他社との統合の「検討プロジェクト」があったら、当該プログラムによる自己株式取得にインサイダー規制の問題が生じてきますし、それ以上に、一応、東証の開示ルールではインサイダー情報が発生した場合には適時開示が求められていることからすると、そうした段階での適時開示が求められるというような話にもなってきます。

そういう意味で、検察が「決定」時期について、どのような法的解釈をとってくるのかは、ファンドだけでなく上場会社一般の実務にも影響を及ぼす可能性があるわけです。


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Posted by 47th : | 13:24 | コメント (8) | トラックバック (4) | 関連エントリー (7) | Securities : Disclosure

ファンドの活動とインサイダー規制

今にして思えばタイムリーな話なんですが、昨日、とある金融関係の人と飲んでいて、次のような質問を受けました。

ファンドが投資先企業にこまめにインタビューをして得た情報で株の売買をやることはインサイダー取引にあたるのか?

日本のインサイダーには、色々と難しいというか答えにくい質問がたくさんあるんですが、これはそうした質問の中でも最も難しい質問の一つです。
で、昨日の段階では、「ケース・バイ・ケースなんで・・・」ということで答えておいたんですが、今後村上氏の案件がどうなるかは別として、もっと広い文脈でファンドとインサイダー規制との関係は注目を浴びてしまうでしょうから、ちょっと一度整理しておいた方がいいかも知れません。

日本のインサイダー規制の基本的な構成

まず、日本のインサイダー規制の基となる条文は証券取引法166条ですので、この条文のエッセンスだけを切り出して確認しておきましょう(ちなみに、これは会社関係者インサイダーの話で、これとは別に買付関係者インサイダー規制があることについては、一つ前のエントリーを参照ということで)。

・・・「会社関係者」・・・であつて、・・・重要事実・・・を・・・知つたものは、・・・重要事実の公表がされた後でなければ、・・・「売買等」・・・をしてはならない。

原文は、ごちゃごちゃしていますが、こういうことであって、「会社関係者」が「未公表」の「重要事実」を(一定のルートで)知りながら、株式を売り買いしてはいけません、というのが基本的なルールです。

従って、あとは、ファンドが会社の関係者にインタビューをして知った事実を基に売買をすることについては、この各要件に照らして考えていけば、答えが出るはずなんですが・・・
 


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Posted by 47th : | 01:06 | コメント (7) | トラックバック (1) | 関連エントリー (7) | Securities : Disclosure

村上氏に買付関係者インサイダーの疑い?

(早速+6/2追記あり) 

インサイダー取引:村上氏を捜査 東京地検特捜部(毎日新聞)

「村上ファンド」を率いる村上世彰代表(46)に証券取引法違反の疑いがあるとして、東京地検特捜部が捜査を進めていることが分かった。05年のライブド アによるニッポン放送株買い占めが公開買い付け(TOB)に準じる行為に当たり、村上代表は買い付け情報を事前に知りながら同社株を売買したとされ、 TOBに関して禁じられたインサイダー取引の疑いがあるという。特捜部は証券取引等監視委員会とも連携し、既に関係者から聴取した模様だ。・・・
関係者によると、この時にライブドアが時間外取引で5%以上のニッポン放送株を買い集めた行為は、証取法上の「TOBに準じる行為」に当たるという。村上 代表は、ライブドアによる株取得情報を公表前に得てニッポン放送株を売買したとされ、特捜部はこうした行為が証取法の「公開買い付け者等関係者等が禁止さ れる行為」としてのインサイダー取引に当たる可能性があるとみている模様だ。

・・・というわけで、この「関係者」というのが誰かよく分かりませんが、この記事が正しいとすると、問題となっているのはライブドアによるニッポン放送株買付に際しての話のようです。
これがどう発展していくのかは、今の時点では予断を控えますが、とりあえず当時旧ブログの方で、今回問題となっているインサイダー取引と通常のインサイダー取引の違いをまとめているので、そちらをご紹介です。

この記事で書いているように、今回問題となっているのは、通常のインサイダー取引ではなく、買付関係者インサイダー取引です。この買付関係者インサイダーの一つの特徴が、問題となる取引は「売買」のうちの、「買い」だけで「売り」は問題とならない点。

というわけで、当時、村上氏はニッポン放送株の処分はやっていましたが、「買増し」はどうだったんだろう?ということで、この買付の前後のニッポン放送株に関するMACアセットマネッジメント(以下「MAC」と略します)の大量保有報告書を確認してみると・・・

  • 1/13 変更報告書(27条の25第1項)
    この報告書では、最後の売買は1月5日803,050株の取得で、この時点で18.57%保有ということになっています。
    こちらは、普通の大量保有報告書なので直近60日間の売買が報告されています。
  • 3/15 変更報告書(27条の26第2項)
    この報告書では、保有株式割合が18.57%から3.44%に落ちたので、証取法27条の26に定める「特例対象株券等」に落ちたということで、直近60日間の売買は報告されていません。 (この辺りについては、isolgue「敵艦スクリュー音、未だ無し!(ニッポン放送株:解決編)」をご覧下さい)

さて、そうすると、MACが証取法の規定を遵守していると仮定した場合、少なくとも、MACの持株割合が10%に下がる前に1%以上買いますことはできない(というか、していない)・・・と、もう少し歯切れよくいうと、(当事者たちはあくまで市場で誰が買ったか分からないと仰っていますが)ライブドアのToSTNET取引の相手方がMACであり、この2/8の時点でMACが8.57%以上の株式をライブドアに売ったのだとすれば、MACは2/8より前に1%以上のニッポン放送株式を買っていないということになります。

とすると、最初に戻って、買付関係者インサイダーが成立するためには、①ライブドアがニッポン放送株を5%以上取得することを決定していて、かつ、②ライブドアの関係者が村上氏にその事実を伝達し、③その事実を知りながらニッポン放送株式を買いましたということが立証されなくてはいけません。
仮に村上氏が1/5の後、2/8までの間に買増しを行っていないとすれば1/5以前の取得の際に、少なくとも①ライブドアがニッポン放送株を5%以上取得することを決定していなくてはならないわけです
まあ、この間に1%未満の買付行為があって、そこを問題視しているという可能性もあるんですが・・・もしそうだとすると、ライブドアは村上氏を信頼して相談を持ちかけたのに、村上氏は、それを使って一儲けした・・・でも、1%以上は買わなかったという話になるわけですが・・・なんか、「せこい」んですよね。出し抜くなら、5%ぐらい噛まして、鮮やかに出し抜けばいいし、1%に満たないステークスのために、相手との信頼関係を損ないかねないようなことをするというのも何かしっくりこないものがあります。

何れにせよ、今回のシチュエーションでは、仮に上記①~③が立証されたとしても、④村上氏による買増し行為が、ライブドアの意を受けて後にライブドアに株式を売却することを合意した上での行為であったとすれば、村上氏とライブドアは「共同買付者」であって、買付関係者インサイダーには引っかからないという解釈の余地も残っているところです(ただ、ここは文言解釈上微妙というのは、旧エントリーをご覧下さい)。
もっとも、当時は、当事者は、確か、お互い市場で売却したのであって誰に売ったかは分からなかったと言っていたはずなので、こういう話になると、当時のライブドアによる株式取得の経緯の際の適法性が怪しくなってくるわけですが・・・

何れにせよ、これまた法的には色々と論点があるということで、今後の推移は冷静に見ていきましょうということで。取り急ぎ。

(追記)

買付関係者インサイダー(167条)という趣旨の報道は、今のところ毎日だけのようですし、磯崎さんも 

「166条じゃなくて167条じゃないか」てなことをおっしゃる方もいらっしゃるようですが、どうなんでしょうか。

と仰っているので、上の話は、あくまで毎日新聞の記事が正しかったらという前提ですので、そこのところはご注意を。

(6/2追記)

その後の新聞報道を見ていると、1月5日以前に、①ライブドアによる買付情報を知っていた、という方向性と、②フジテレビのTOB開始の情報を知っていたという観測が見られるようです。

①ということになると、2月8日の1か月以上前の時点でライブドアが株式取得の「決定」がなされていたことになりますが、その間にフジテレビTOBという大きな状況変化が起きているわけで、これがなかったら取引ボリュームにかかわらず株価がTOB価格に張り付くという特殊な状況は起きなかったわけですから、その意味でも買付「決定」が12月にあったと言えるかは少し微妙。

②ということになると、TOB自体の準備は当然1か月前からやっているでしょうから、「事実」としては存在している可能性は高いわけですが・・・TOB情報を知って株を買い集めることは、市場買付と比べると摘発されるリスクは遙かに高いことを考えると、逆に、村上氏ほどの百戦錬磨の強者が何の法的なロジックもなく、そんな危ないことをやるのか、というところが腑に落ちないところです。


Posted by 47th : | 19:18 | コメント (4) | トラックバック (2) | 関連エントリー (6) | Securities : Disclosure

CBは「特異点」?

SOの費用認識はCBを殺すか?」というエントリーで会社法勘のリハビリをかねてつっこんでみたところ、磯崎さんから「会社法下の転換社債と「裸の特異点」」という鋭い切り返しを頂きました。

「誰も入ったことのない洞窟」を一人で探検するのは心細いので、ツッコミ大歓迎であります。

と仰っていただいたので、引き続き、ツッコミをして、「一括法は滅び行くごとが運命付けられているのか?」ということを考えてみる・・・前に、「一括法」は「特異点」という磯崎さんの指摘に対して、ちょっと抵抗(?)しておこうかと思います。

磯崎さんは、会社法下でSOの費用認識が必要になったことをもって、次のように述べられています。

つまり、会社法による大きな転換は「オプションの公正価額は算定できるのが前提」ということであり、今や(この5月以降)、新株予約権の価額を会計上計上しなくていいのは、「転換社債」の要件を満たす場合だけであって、数学っぽく書くと、下図のように、(特に公開企業の場合)この部分だけが唯一の「特異点」になっているように思えます。

この後に続くブラックホールの話には、悲しいことについていけなかったので、ここでは「特異点」というのは、「一人だけ変わった奴」という意味合いぐらいで考えてみますが、「特異点」かどうかというのは、結局、母集団をどう捉えるかという問題によって変わってくるので、母集団と分類軸についてコンセンサスがないと、CBを「特異点」扱いすることはできないはずです・・・で、この母集団と分類軸については、磯崎さんが暗黙に仮定している定義に対して、次の疑問が即座に思い浮かびます。


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Posted by 47th : | 00:12 | コメント (2) | トラックバック (0) | 関連エントリー (1) | Securities : Disclosure

SOの費用認識はCBを殺すか?

最近、実質、開発ネタと消費者金融ネタで、アイデンティティの喪失を感じ始めている私ですが、久々に磯崎さんの「会社法下の転換社債(「区分法」と「一括法」)」に対して、ツッコミを。

磯崎さんの問題意識は、いわゆる転換社債型新株予約権付株式については、負債部分とオプション部分を別個に計上する会計処理(区分法)ではなく、一体として負債として計上する処理(一括法)が認められていることに関してなのですが、両者の違いを具体的に指摘された上で次のように締めくくられています。

なぜストックオプションを費用化する会計基準が施行されても、転換社債にだけオプションバリューを認識しない「一括法」が認められる会計基準になっているのか。なぜ、ストックオプション会計基準では、どういう処理にするかのカンカンガクガクの検討の過程が非常に多くのボリュームを割いて説明されているのに、社債の処理では、
(以下引用部分)
金融商品会計意見書の考え方は、以前の転換社債と経済的実質が同一である会社法に基づき発行された転換社債型新株予約権付社債の会計処理にも適用することが可能と考えられるため、発行者側については、以前の転換社債と同様に、一括法と区分法のいずれの方法も認められることとし
(引用終了)
と、数行で片付けてしまっているのか?
これは、「区分法」の強制により、転換社債市場が消滅すること(サードインパクト)を恐れる何者かによるインボー「大人の事情」によるものなんでしょうか?

何か「大人の事情」の香りもしないわけではありませんが、そういう怖い世界には立ち入らずに私の方はあくまで理屈の世界として考えてみることにします。
というわけで、理屈の上で考えてみると、ストック・オプション(以下「SO」と略します)のオプション部分のバリューを適切に評価して認識する趣旨というのは、必ずしもCBを含むファイナンス目的のオプションの取扱いと結びつくものでもないんじゃないかという気もするところです。


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Posted by 47th : | 01:17 | トラックバック (1) | 関連エントリー (1) | Securities : Disclosure

SEC不要論

薬物規制撤廃を訴えるLibertarian EconomistのJefferey Mironが、今度はSEC(証券取引委員会)不要論を訴えています。

A better approach to reducing corporate malfeasance is a combination of two policy changes: repealing the corporate income tax and eliminating the Securities and Exchange Commission.

Repealing the corporate income tax would make corporate accounting far more transparent since most complications arise from (legal) tax avoidance behavior.

Eliminating the SEC would make investors bear full responsibility for monitoring corporate behavior. This occurs to a substantial degree already, since the SEC cannot effectively monitor all the firms subjects to its regulations. But eliminating the SEC would spur additional private monitoring and strenghten investor incentives to engage in due diligence.

要するにSECをなくすことによって、投資家はよりリスクに対して敏感になって、もっとちゃんと監視やデュー・ディリジェンスをやるので、問題はなくなると。

これには後日談があって、マンキュー先生が、「まあ、それを言ったら警察も要らなくなるやね」とちくりとやったら、かなり大まじめに、「いや、普通の犯罪と違って、証券犯罪の場合、投資家は自ら契約関係に入っているという点で決定的に違う」と言い返していたりします。

本気で賛成するかどうかはともかくとして思考実験としては、こういう議論は面白いところです。

Mironの主張は、単に刑事訴追を不要と言っているのか、それとも開示の程度・内容も投資家と会社の私的自治に委ねる(=法定開示制度を撤廃する)というところまで主張するのか、今ひとつ分からないところがあるんですが、Mironの元記事はSOX404自体が過剰規制じゃないかという主張から始まっているので、単に非犯罪化(decriminarization)というに留まらず、そもそもSECが規則を制定する必要はない、つまり法定開示制度は不必要という方向まで行き着くんでしょうね。

そうすると普通の犯罪とのアナロジーでいけば、何を犯罪とするかについても、私人間の契約で定めるのが望ましいということになるわけですが・・・皆さんは、どう思います?


Posted by 47th : | 00:38 | トラックバック (0) | 関連エントリー (0) | Securities : Disclosure

中央青山への処分の「重さ」の?

ようやく試験も終わり、そのまま試験の結果も出ていないのに見込み卒業式まで終わってしまっているんですが、何か緊張の糸がゆるんで、すっかりだらけてしまっています。

というわけで、中央青山の業務停止命令については、噂段階でちらっと触れて以後、きちんとフォローしていなかったんですが、その後以下のように金融庁の処分が下っています。

 平成18年5月10日金融庁「監査法人及び公認会計士の懲戒処分について

で、これについて印象を・・・とも思ったんですが、実は正直いって、次の処分の「重さ」をどう考えていいのかがよく分からないところがあります。

(2)処分内容

業務の一部停止2ヶ月(平成18年7月1日から平成18年8月31日まで)
[停止する業務] 証券取引法監査及び会社法(商法特例法)監査(法令に基づき、会社法(商法特例法)に準じて実施される監査を含む。)。ただし、一定の監査業務を除外するものとする(詳細は別紙1)。

これについては、新聞報道などでは契約企業との契約をいったん解除しないといけないとか、この期間は法定監査対象企業に対するサービス提供は一切禁じられるいう感じのトーンも見られます。もしそうだとすると、実質的には、この処分の影響は2か月という短期の問題ではなく、一旦清算しろと言っているのと同じような意味合いになるんでしょうが・・・

ただ、金融庁処分の文言と別紙1の書きぶりを見ていると、ここで停止されているのは法令に直接基づいた行為、つまり「監査証明」に限られているような印象もあります。
特に、業務停止の例外として「6月決算会社」については「8月」だけが除外されていますが、私の理解しているところでは、監査実務の実際としては、決算期直後から現場レベルでは監査法人と会社の密接な連携というのはあるはずですし、それがないと3か月以内に計算書類をファイナライズするというのは難しいはずです。
とすると、6月決算会社について7月は業務停止の対象となっているというのは、こういう実務レベルでの活動まで禁じるという趣旨ではなく、「法律に基づいた監査証明を行うことができない」という意味合いになっているような気がします。この辺りは11月決算の半期報告書についても8月だけが処分の例外とされているのと同じところ・・・というわけで、もし仮に監査証明だけを意識しているのであれば、一見の厳しさとは裏腹に別紙1と合わせて考えると、実質的なダメージはほとんどないということになってしまいます。

もしそうだとすると、この「一見厳しいが、実務的には影響は限定的な処分」を、企業が監査法人の乗り換えをしようと思えばできる時期にやるというのは、絶妙のタイミングを狙った一手ということになります。

レピュテーションを意識し、かつ、監査法人変更を行うだけの余裕やシステム的なバックグラウンドのある企業は契約を解除するでしょうが、大部分の企業は中央青山がこの処分の意味合いと改善策をきちんと説明すれば残ってくれるだろうということであれば、バランス的には悪くない落としどころという気はします。

何れにせよ、その意味で金融庁による短い処分文言をどう解釈するかによって、この処分の「重さ」は全く変わってくるような気がするんですが、何せ情報が不足しているんで・・・この辺り、どなたかご存じの方がいらっしゃれば教えて頂けると幸いです。

何れにせよ、今回の処分は、今後の監査法人への行政・刑事的処分設計を考える上で試金石となるケースのはずですので、処分側が事前にどの程度の「重さ」を想定していたのか、実際の影響との間に大きなズレは生じなかったか、生じたとすればその要因は何だったのかといった辺りの政策評価の視点からのフォローアップがきちんとなされるとよいのですが・・・諸外国との比較も含めて、この辺りを実証的に分析するのは、大学院レベルでのいいペーパーのネタにもなりそうなところですよね(・・・と、誰かがやってくれないかと期待してみたりする)


Posted by 47th : | 18:04 | コメント (11) | トラックバック (0) | 関連エントリー (0) | Securities : Disclosure

阪神・村上氏の交渉と情報規制

ようやく一つインクラスのテストが終わって反動が来ていますが、明日ももう一つインクラスがあるんで気は抜けません。

テストの愚痴をぶちまけたいという欲望もあるんですが、ちょっと気になる記事が・・・

阪神・阪急経営統合案、村上氏側が提案…ファンド発表 (Yomiuri Online)

阪神電気鉄道の筆頭株主で、村上世彰氏が率いる投資ファンド(村上ファンド)は3日、インターネットのホームページを通じてコメントを発表し、「阪神と阪急ホールディングスとの統合案は今年2月以前に私どもから阪神に提案し、その際、阪神は拒絶した」と、折衝の内幕の一部を暴露した。
阪神は「4月まで、ある企業との経営統合を、盛んに当方に提案していた」ことも明らかにした。

そもそも、今回の件は大量保有報告書における目的の記載のあり方(どこまでなら「純投資」と言えるのか)とか、それへのサンクションという現行証券取引法における問題点を浮き彫りにしている点でも興味深いと思って見ていました。
つまり、最初は「純投資」ですよ、といって株を買いだしておきながら、やっぱり「経営支配だ」と居直られてしまうことを、どうやって防ぐのかというお話です。
まあ今回の場合は、そもそも45%もとった時点で、誰も本気でそう信じていないかも知れませんが、例えば、5%程度を取得した段階で、この買収者がどの程度まで株を買いますのか、とか、経営関与をしていくのか、という情報は、一般投資家にとっては投資判断において重要な情報ですよね。
大量保有報告書におけるミスリーディングな記載に対するサンクションについては、前から気になっているので、帰国前にはどこかで調べておきたいと思ってはいるんですが・・・おそらくアメリカでは大量保有報告書(Schedule 13(d))の不実記載も投資家による証券訴訟(10b-5)の対象となるリスクがあるので、買収者側も買収計画とか経営関与の意図についての開示を慎重にやっているということだと思うんですが、この辺りは何れどっかできちんとやるとして、今回のポイントは最後の「4月まで、ある企業との経営統合を、盛んに当方に提案していた」という辺りです。

M&Aコンサルティングからの5/3付けプレス・リリースを拝見すると、次のように書かれています。

そもそも、阪急との統合案は、本年2月以前から私どもから阪神電鉄に提案し、その際は阪神側 はこの提案を拒絶したものであります。そして、4月までは、ある企業との経営統合について盛んに 当方に対し提案していました。

日本の証券取引法上よく分からない、というか、余り想定されてこなかったのは、こうした買収者と対象企業との交渉における情報のやりとりや提案に関するインサイダー規制における取扱いです。

買収者と対象企業とが一定の合意に達するためには、ある程度交渉の機密性は求められます。
他方で、買収者と対象企業の交渉の行方は株価に大きな影響を与えますから、投資家としては、その情報を一刻も早く知りたいでしょう。また、もし、秘密にされている情報を何らかのルートで手に入れれば、その情報を使って株式市場で利益を得ることもできるでしょう。
更に、交渉の過程で対象企業が買収者に対して非公開の重要な経営情報を開示したり、あるいは、買収者がデュー・デリジェンスを行って非公開情報にアクセスすることができた場合に、もし買収者が依然として市場で自由に株式を売買できるとすれば、どうでしょう?

何も、この問題は買収者にだけかかってくるわけではありません。例えば、対象会社がホワイト・ナイトに対して非公開情報を開示して、それを下にホワイト・ナイトが市場で買い増しを進めたり、買収者からの株式の譲受を求めたとしたら・・・

買収に絡むこうした情報のやりとりと買収者・ホワイトナイトによる株の買い増し・売却には、本来、常にインサイダー規制との関係が問題になります。

この辺りは、インサイダー規制の原則論だけを振り回しても、妥当な結論が得られるわけではなく、また、平時における情報開示の程度とも関連して、非常にテクニカルな部分に踏み込んだ議論が必要になるのですが、これまで日本では買収が比較的少なかったこともあって、余り議論されてこなかった部分です。

買収防衛策の設計やTOBルールばかりに注目が集まっていますが、買収に絡む制度設計は、買収を取り巻く情報規制(買収者側及び対象会社の情報開示義務の内容、インサイダー規制、相場操縦規制)の設計と不可分一体のはずです。

この「2月以前から・・・提案し、その際阪神側は・・・拒絶した・・・そして、4月まで・・・当方に対して提案」という時期の書き方も味があるんですが、これまで日本の買収関連制度に問題を投げかけてきた村上氏が投じた大きな一石となるような予感もするところです。


Posted by 47th : | 21:48 | コメント (2) | トラックバック (1) | 関連エントリー (1) | Securities : Disclosure

取締役・役員報酬の開示に関するSEC提案

こちらも、とりあえず備忘のために紹介だけです(リンク先はPDFですのでご注意を)。

SEC Proposed Rule:Executive Compensation and Related Party Disclosure

一つ特徴的なのは、定量的な開示だけではなく、報酬制度の設計の意図や内容について文章による説明を義務づけるというところでしょうか。

既に、財務情報について導入されているManagement Discussion &  Analysis (MD&A)の開示を報酬にも応用しようという発想のようです。

報酬分野は、有名なDisney事件もありますし、つい最近もHPの前CEOへの退職慰労金の支払いに関して訴訟が提起されたりと今後株主訴訟のターゲットになっていくことも予想される分野ですので、開示のあり方については、企業側も相当に神経を尖らせていると思われます。

また、日本への影響もあり得る話ですので、引き続き注目していきたいと思います。
 


Posted by 47th : | 00:31 | コメント (3) | トラックバック (0) | 関連エントリー (0) | Securities : Disclosure

SEC規則改正案(Best Price Rule etc.)

SECが昨日公表した規則案について、備忘代わりに。
一つめは、TOBにおける"Best Price Rule"の取り扱いについて (SEC Press Release 2005-176)
アメリカのTOBルールでも、いわゆる買付価格の平等原則と同様のもの(Best Price Rule)があり、TOBをいったん開始した場合には、特定の株主を優遇する価格を提示することはできないわけですが、従来、取り扱いについて疑義があったのが、対象会社の経営陣や取締役に対して買収者が高額の報酬パッケージを提示する場合でした。
アメリカの場合、ほとんどの取締役や経営陣は、なにがしかの株式を持っているために、これが株式の対価として取り扱われると、とんでもないことになるわけです。
この点について、新しく提案されたルールでは、一定の報酬パッケージは証券の対価には当たらない=Best Price Ruleの適用を受けないことを明確にするということになりました。
これは、結構画期的といえば、画期的。
もう一つは、SECの正式リリースは、まだ見あたらないのですが、日本企業にとって重要かも知れないSOXのRule404適用範囲の緩和(NYTの記事)
この記事によるとMarket Valueが700M未満の企業については、悪名高いSOX404(内部統制のcertification)が免除になる予定とのこと。
もう一つ、外国企業については、アメリカでの流通量が5%未満で、かつ、アメリカ在住の株主の割合が10%未満の場合には、registerationを廃止できるということも提案されているようです。
直近で日本企業にどのぐらいの影響があるのかは分かりませんが、ちょっと注目しておく必要がありそうな話です。


Posted by 47th : | 10:32 | コメント (3) | トラックバック (0) | 関連エントリー (0) | Securities : Disclosure

知的資産経営開示ガイドラインの公表

前に「裏側」情報の開示は投資家を救うか?と「経営・知的資産小委員会中間報告書(案)」の公表についてでとりあげた経済産業省の産業構造審議会新成長政策部会経営・知的資産小委員会がまとめている知的資産経営の開示ガイドラインが公表されました。
財務情報以外の情報で投資家にとって、より有用な情報を提供しようというプロジェクトの趣旨そのものは賛同できるのですが、その手法としての開示の内容やその責任関係といった技術論的な部分では、依然疑問が残ることも確かです。
例えば・・・


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Posted by 47th : | 10:30 | コメント (3) | トラックバック (0) | 関連エントリー (0) | Securities : Disclosure

「経営・知的資産小委員会中間報告書(案)」の公表について

前に「裏側」情報の開示は投資家を救うか?というエントリーで触れた産業構造審議会新成長政策部会経営・知的資産小委員会中間報告書(案)が公表されました(・・・長い名前・・・)
企業価値研究会と違って、本体は6ページのコンパクトな意見書なので、気軽に読めると思うのですが、内容は、ちょっと考える必要があるんじゃないかという気もします。


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Posted by 47th : | 13:57 | トラックバック (1) | 関連エントリー (0) | Securities : Disclosure

SOXのお値段

Economistの記事より

A price worth paying?

The cost of all this is steep. According to one study that has attracted a lot of attention, the net private cost amounts to $1.4 trillion. This astonishing figure comes from a paper by Ivy Xiying Zhang of the William E. Simon Graduate School of Business Administration at the University of Rochester. It is an econometric estimate of “the loss in total market value around the most significant legislative events”i.e, the costs minus the benefits as perceived by the stockmarket as the new rules were enacted. In principle, this ought to reflect all the anticipated costs and benefits, direct and indirect, that impinge on company values. If this number were true, SOX would have to prevent an awful lot of unforeseen losses due to fraud before it could be judged a good buy.

"million"とか"billion"じゃなくて、"trillion"というと、普段使う機会がないので、ぴんとこないのですが、要は1.4兆ドル・・・1円100円計算でいうと・・・104兆円・・・
このリサーチの数字を信じていいのかどうかという問題が大きいわけですが・・・もう一つのお値段のお話として


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Posted by 47th : | 10:38 | コメント (2) | トラックバック (0) | 関連エントリー (0) | Securities : Disclosure

米国企業年金制度の「抜け穴」

(6/8追記あり)
日本の年金問題と同じく、アメリカでも社会保障(social security)問題が第2期ブッシュ政権の最大の課題の一つとして重要視されていますが、このニュースは、ひょっとしたら企業年金のあり方にも多くの問題を投げかけるきっかけとなるかも知れません。

Pension Loopholes Helped United Hide Troubles (New York Times)

Loopholes in the federal pension law allowed United Airlines to treat its pension fund as solid for years, when in fact it was dangerously weakening, according to a new analysis by the agency that guarantees pensions. That analysis is scheduled to be presented at a Senate Finance Committee hearing today

この記事によれば、倒産によりUnited Airlineには830億ドル(8~9兆円)の積立不足があったことが判明したにもかかわらず、倒産までの間の財務報告では積立は十分で追加資金は不要とされており、それを可能としたのが、ここでいう抜け穴(loophole)だということです。


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Posted by 47th : | 13:05 | コメント (2) | トラックバック (0) | 関連エントリー (0) | Securities : Disclosure

「裏側」情報の開示は投資家を救うか?

上場企業、経営の「裏側」開示を・経産省が導入促す (NIKKEI NET)

経済産業省は上場企業に対し、経営実態や成長戦略を細かく開示する「知的資産・経営報告書」の作成を促す。客単価の推移や受けつけたクレームの数など有価証券報告書ではわからない経営関連指標の公開も求め、投資家が企業の将来性を判断する目安にする。開示基準案を10日にも公表し、まずは企業による自発的な導入を目指す。

この記事だけからではよく分からなかったので、METIのサイトを見てみると、どうやら、これは6月10日に開かれる産業構造審議会新成長政策部会知的資産小委員会で審議される「知的資産経営開示ガイドライン(案)」のことを指しているようです。


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Posted by 47th : | 12:56 | コメント (4) | トラックバック (1) | 関連エントリー (0) | Securities : Disclosure

 
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