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村上氏 v 検察の第2ラウンド?

村上被告側、起訴事実の根幹否認 公判前整理手続き開始(asahi.com)

証券取引法違反の罪に問われた村上ファンド前代表の村上世彰(よしあき)被告(47)に対する第1回「公判前整理手続き」が16日、東京地裁で開かれた。 弁護側は、「インサイダー情報を認識した時期は04年11月だった」とする起訴事実の根幹を否認し、検察側と全面的に争う姿勢を明確にした。
・・・
検察側は、前代表が、ライブドア側からニッポン放送株を大量取得する方針を「04年11月8日」に聞き、直後の同月9日から05年1月26日までに計約99億5000万円で約193万株を買い増したとしている。
これに対して、前代表側は、検察側から開示された供述調書など証拠を分析した結果として、五つの争点を提示。(1)ライブドアは「04年9月15日」に 大量取得の方針を決定していない(2)「11月8日」段階では取得方針が前代表に伝達されていない(3)インサイダー取引の故意はない(4)重要事実を 知って買い集めたわけではない(5)買い集めのすべてが前代表の指示ではないとし、「買い増しはインサイダー取引にあたらない」と主張した。
・・・
弁護団によると、「検察側の主張する取得方針の決定時期はあいまい。この前提でインサイダー取引を認めれば実務にも影響する」と弁護団が説得し、前代表も「裁判所の判断を仰ぐべきだ」との考えに傾いたという。

ということで、やはりというか、村上氏が検察側の主張に大人しく従うということではなく、公判で検察側主張の弱点を徹底的に衝くということになるようです。
こうなると、最近特捜に異動されたあの方との対決も(あるのか知りませんが)楽しみになってくるところですが、ご参考までにということで村上氏逮捕関係の過去エントリーを今一度ご紹介しておきます。

ところで、私の勝手な戦前の予想からすると、新聞報道の限りでいうと、①情報を聞いた時期が1月28日まで引っ張られていることと、②共同買付者の点については争っていないというところに注意が惹かれます。

まずは事実関係で勝負できるシンプルな構成でいくという方針ということではないかと勝手に推測しますが、この辺りは弁護団の今後の戦略的にも注目したいところです。

先行する?堀江氏の公判も、弁護団と検察の間でのガチンコ勝負が繰り広げられているようですし、この訴訟も日本の今後の実務に色々な意味で影響を与えるものになるんでしょうね。

と、ごく簡単ですが、こんなところで。


Posted by 47th : | 20:48 | トラックバック (0) | 関連エントリー (0) | Securities

クラブ・ディールと競争法

harryさんが紹介されていますが、PEのクラブ・ディールにアメリカの競争当局が興味を示し始めているという話が昨日のWall Street Journalでとりあげられていますが、New York Timesでも関連記事がとりあげられています。

もっとも、こうしたウォール街で見られる金融機関同士の協調行動と競争法の緊張関係は必ずしも新しい話ではありません。
NYTの記事では株式公募の際の共同引受けに関する1950年代のMorgan事件が紹介されていますが、買収における協調行動ということでいえば、(私訴ですが)1990年にWilliams法の開示規制の下でSECがレビューしたビッドについては反トラスト法違反とならないことを示唆する判決を第2巡回裁判所が出しているようです。

もっとも、この判決に対しては学界からの批判が強いようですし、90年代にはゲーム理論に基礎をおいた暗黙の協調行動(tacit collusion)に関する理論も目覚ましい発展をとげていることからするとウォール街的には安閑としているわけにはいかなさそうです。

もっとも、NYTの記事を見る限りはSubpena(正式な情報提供手続のための令状)が出されたわけではなく任意の質問レベルに留まっているようですから、何れにせよ結果が出るのはまだまだ先になりそうな気配ですが、競争法的にポイントになるであろう点についてメモ程度に。


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Posted by 47th : | 11:33 | コメント (2) | トラックバック (0) | 関連エントリー (0) | Securities

インサイダー取引の被害者?

先日紹介したNYTが大々的に採りあげたアメリカの上場会社M&Aでのインサイダー疑惑ですが、その記事で記者は次のような締めくくりをしています。

When stocks gyrate because nonpublic information about deals has leaked out, many people are harmed.The most affected are those who sell shares in the company before it is taken over at a significant premium. An investor who sold Georgia-Pacific shares on Nov. 9, just before the unusual trading, missed a 46 percent gain. Those who sold the Andrx Corporation, just before unusual trading began last February missed, a 36 percent gain

(この文章の中ですら支離滅裂なところがあるのですが)どうも公表前に売却した株主はプレミアムをもらえないじゃないかと主張しているようなのですが・・・そもそも、インサイダー取引があってもなくても、公表前に株式を売却してしまえばプレミアムは受け取れないわけです
むしろ、公表前であっても、NYTが主張するように違法なインサイダー取引のせいで(この主張自体、疑うべき点があることは前の記事で述べましたが)株価が上昇するとすれば、公表前でも株価には一定程度のプレミアムが織り込まれるわけで、その意味では、公表前に株式を売却してしまった株主は、むしろ公表前の株価上昇のおかげで本来は得ることができなかったプレミアムを受け取ることができるわけですから、むしろ公表直前に売却した一般投資家は、情報の滲み出しのおかげで救われている側面があります。
NYTの記者も記事を書きながら、その矛盾に何となく気づいたのか、最初の文章では「買収によるプレミアムが受け取れない」といいながら、次の文章では「異常な株式取引の直前に株式を売却をした場合には」と微妙に表現を変えているのですが、「異常な株式取引の直前に株式を売却した人」は、インサイダー取引のない状態で株式を売却しているわけですから、インサイダー取引の被害者のように扱うのは、そもそも文章として意味をなしていないように思えます。

ここで言っているのは、せいぜいが「M&Aの公表のタイミングが遅れることによる投資家の損害」であって、直接にインサイダー取引から生じる問題ではありません。
何とかインサイダー取引とこじつけるとすれば、インサイダー取引によって利益をあげるために会社が公表を遅らせた場合ですが、アメリカの場合は、M&Aに関する開示のタイミングを不必要に遅らせれば、それだけで証券訴訟のリスクに曝されてしまうわけで、制度的にそうした意図的な公表タイミングの引き延ばしに対する相当の抑止力があるわけで、この抑止力ではインサイダー取引による利益取得の誘惑に対して不十分なものかどうかは、それ自体議論と実証の対象となるべきものであって、因果関係は自明ではありません。

そもそも、極論を言ってしまえば、株価が実際の企業価値の変動を的確に反映させることこそが一般投資家保護になるわけで、原因がインサイダー取引であれ、市場での噂であれ、公表すべき段階には至っていないが、買収が実行される可能性の高まりにつれて株価にそれが織り込まれるのであれば、それは投資家保護につながるとすら言えるわけです(※)。

だからこそ、インサイダー取引規制の制度設計には悩ましい部分が多く、アメリカでは法学と経済学の両面から論争が繰り広げられているわけですが、このNYTの記事は、そうした部分の消化が不十分だったようです。

・・・と、こんなことを思ったのは、私だけではないらしく、Business Law Prof Blogというブログを書いているOhio State UniversityのDale Oesterle教授も次のような感想を述べているので、ご参考までに。

The story does, however, struggle to define why insider trading is illegal, and Ms. Morgenson's list of "victims" is problematic. Her argument that stock sellers are injured, because they could have held their stock until after the announcement and recieved more value, makes no sense unless one assumes that only the higher price, created by insider trading, induced the sale, that the sellers would not have sold at the lower pre-announcement market price had there been not insider trading before the announcement.  This is a stretch for many sellers, who had decided to sell pre-announcement and get the market price, whatever it was.  Those that sold only on the rise, refusing to wait, accepted the risk that they would give up any more increases in the price.  Victims?  The real reason for the illegality of insider trading (the disadvantaged buyer who wanted to buy and could not at market prices pre-announcement) remains elusive to even educated reporters.

 

(※)もちろん、世の中はそれほど単純ではなく、インサイダー取引は情報伝達効果がある一方で、現在の株価水準が誤っているというシグナルも発してしまうので、一概にインサイダー取引を情報効率性の観点から肯定できるわけでもないのですが、インサイダー取引=悪という決めつけも同じぐらいに短絡的です。


Posted by 47th : | 12:22 | トラックバック (0) | 関連エントリー (2) | Securities

アメリカのM&Aの4割でインサイダー?

今朝のNew York Timesのトップ記事は、"Whispers of Mergers Set Off Suspicious Trading" ということで、NYTがカナダの調査会社に依頼した独自調査の結果、M&A公表の直前に対象会社の株価が上昇することが確認されたということで、40%以上のM&Aで違法なインサイダー取引がなされているとして、ネット版で4頁に亘る長目の記事を掲載しています。

日本語でも時事通信が、次のように伝えているようです(Yahoo!ニュース)。

27日付の米紙ニューヨーク・タイムズは、過去1年間の大型企業買収を調べたところ、インサイダー取引の疑いがある不審な株価の動きがその4割で見られた と報じた。一般投資家が買収情報を知らないうちに関係者だけが「ぬれ手で粟(あわ)」の巨額の利益をむさぼる違法行為が横行していることになり、同紙は制 度的な問題になりつつあると警告した。

ただ、元のスタディでのサンプルの選定法やアブノーマル・リターンの算出法を見ないと何とも言えないんですが、対象会社の株価の動きだけで「違法なインサイダー取引」があったと主張するのは、ちょっと強引と言う印象も拭えないところです。

いくつかの要因がありますが、M&Aの場合には、公表前の買収者(あるいは、その意図を受けた者)による対象会社株式の買付けは、ほとんど不可避です。
"Toe Hold"と呼ばれたりしますが、買収に先立って、対象会社の株式の一定割合(多くの場合、日本で言う大量保有報告書の提出義務にしっかからない5%未満)を取得することは、①実際に買付を行うことになった場合には、先に取得した分についてはプレミアムを支払わないでよく、②ホワイト・ナイトや競合する買収者が買収に成功した場合には、先に取得した分についてはプレミアムをもらうことができるので交渉費用の一部を回収できる、といった理由から、M&Aの教科書ではむしろ推奨されています(※)。
こうした買収者自身によるToe Holdの取得は、もちろん違法なインサイダー取引に当たりません。

また、(対象会社からではなく)買収者から情報を得て株式を取得する行為も、ストレートにはインサイダー取引規制には該当しないはずです(※2)。

あと、M&Aというのは、具体化すればするほど、資金調達やデュー・ディリジェンスなどで関係者は増えていきますし、直接に情報を受領していなくても、そうした活動を見て、市場はさまざまな憶測をします。NYTの記事では、サンプルから、そうした事例を除いていると言われていますが、市場に憶測が流れているかどうかを画定すること自体、それほど簡単な話ではありません(※3)。
(あと、時事通信でも4割がインサイダーと書かれていますが、そもそもサンプル数を90個に限定して、そのうち37個ということなので、4割というのは、そのうちのものでしかありません。アメリカの上場会社の買収案件は年間400-600件ぐらいあるので、例えば母数を500件とすれば、37件は7%強でしかないので、その意味でもミスリーディングですね)

というわけで、公表直前に株価の上昇があるとしても、それだけでは、その株価の上昇が違法なインサイダー取引によるものかどうかは、何とも言えないと言わざるを得ません。

それが対象会社からリークされた情報に基づくということであれば、M&Aの場合だけでなく、他の重要な情報開示にあたっても異常なリターンが観察されるかどうかということを見る必要があるでしょうし、買収会社側の方の株価の動き(※4)とも比較することで見えることもありそうです。

また、こうした「滲み出し」の現象自体は、決して新しい話ではなく、昔からよく知られています。
ただ、この「滲み出し」が「違法なインサイダー取引」に直結するかどうかは微妙な話ですし、SECや取引所にとっても、それほど目新しい話ではないはずです。

その意味で、記事に書かれていた次のSECの反応の冷たさは、何となく理解できるところがあります。

The S.E.C. would not comment on the study but said that it had looked at Measuredmarkets’ system and concluded that surveillance techniques of self-regulatory organizations like the New York Stock Exchange were more sophisticated.

 ・・・というわけで、NYTは鬼の首をとったような感じなんですが、個人的には、ちょっとチグハグな感じも受けたところです。

私だけが感じるのかも知れませんが、この記事には、「何だか分からないが機関投資家が怪しげなことをやって個人投資家を食い物にしている」という印象操作的なものを感じてしまいます。
例えば、この記事は、最後の部分で「インサイダー取引が被害者なき犯罪である」という学者の主張に対して、「いや、公表前に株を売ったたくさんの人と、買収会社は被害者だ!」と結んでいるわけですが・・・そのロジックがNYTにしては、ちょっとプリミティブ過ぎるような。
どの辺りがプリミティブかという話は、また次の機会に。

 

(※)もっとも、Toe Holdが、実際に、どの程度用いられているかについては議論はあります。 

(※2)もっとも、対象会社と買収会社との間で守秘義務契約が締結されていて、買収会社自身も自らが買収を計画していることを公表することに制約がかけられている場合には、信認義務違反が認められる可能性はあるかも知れませんね。

(※3)情報の種類にもよりますが、アナリストがレポートに書いていない情報であっても(あるいはアナリストがレポートに記載するよりも早いタイミングで)、機関投資家の間で市場動向に関する情報はやりとりされているでしょうし、その情報のやりとりを外部からトレースするのは通常は難しいんではないでしょうか。

(※4)一般にM&Aが公表されると、買収会社側の株価は下落することが知られているので、買収会社と対象会社の株価の動きを比較することで、投資判断の基礎となっている情報の精度を推測することもある程度できるかも知れません。


Posted by 47th : | 19:24 | トラックバック (0) | 関連エントリー (1) | Securities

審判の資質

勝つには勝ったけど、何かすっきりしない>イタリア-オーストラリア

前回も疑惑の判定は色々とあったんですが、それにも増して今大会は審判のせいで面白さが削がれてしまう試合が目につきます。
誤審そのものは、これだけスピードのある現代サッカーで、しかも出ている選手はファールをする方もされる方も(?)その道の達人ばかりなので、後でビデオで見て「やられたぁ」というのはあると思いますし、それも含めて試合の流れとか運のうちだとは思うんですが、見ている方のストレスが溜まるのが、今大会のカードの出し方。

もちろん、悪質なファールには厳しい態度で臨まないといけませんが、退場を含めたカードによる処分という権限が審判に与えられているのは、あくまで試合をコントロールする、あるいは、サッカーの本来の面白さを損なわないようにする、ためのはずですよね。

それが、審判がちゃんと見えていないところで、何かあって派手な転倒があればイエロー・レッドじゃ、みんなごろごろ転がり出すし、カードをもらった方も納得できないので審判への不信感は募るし、そのたびごとにプレイは中断するので選手のストレスも溜まるし、で、ストレスからプレーが荒くなって、またイエロー・レッド・・・で、4年に一度しかない貴重な試合が凡戦になってしまう、と。

世界の超一流どころのプレイヤーが集結する試合をコントロールするためには、どうやって選手からの信頼を得るかが重要なはずですが。。。その手段をイエロー・レッドに頼ってしまっているところがあるような気がします。
もちろん、ほとんどの場合、審判と選手は初顔合わせでお互いに信頼もへったくれもないでしょうし、世界のトップクラスの自信家どもを相手にしなきゃいけないという面で一筋縄でいかないことも事実ですが、世界のトップクラスで活躍し国の威信を背負ってピッチに立っている22人を、イエロー・レッドという「鞭」だけで威嚇して言うことをきかせようとするのも、土台無理な話です。

一瞬は大人しくなるかも知れませんが、審判が技術や自身のなさを「鞭」で補おうとしているだけだと見抜かれた瞬間に、審判に対するリスペクトはふっとび、コントロールどころの騒ぎではなく、サッカーの醍醐味はどこかに行ってしまいます。

理想論かも知れませんが、選手から審判に対する本当のリスペクトというのは、審判から選手に対する、あるいは、選手にとってその一試合が持っている「重み」に対するリスペクトがあって成り立つんではないでしょうか。
WCに出てくる選手で(ごく一部の例外を除いて(笑))、好きこのんでイエロー・レッドをもらいたがったり、相手の選手生命を壊したがっていたり、試合を凡戦にしたいと思っている連中はいないし、当たる方も当たられる方も、それぞれに高い技術を持っているわけです。
気をつけなくてはいけないのは、試合が進むにつれ、疲れ・ストレスから試合が荒れていくことであって、そうした場合にはプレイを止めたり、「頭を冷やさせるため」にカードが必要でしょうが、審判がカードを濫発して選手のストレス・メーターをあげるのは逆効果です。

・・・と、これはサッカーの話ですが、審判の資質という意味では、証券市場における審判に対するプレイヤーの信頼についても同じようなことを感じるところがあります。


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Posted by 47th : | 15:25 | コメント (12) | トラックバック (1) | 関連エントリー (15) | Securities

共同買付者と167条

ワールド・カップネタにうつつを抜かしている間に、村上氏は起訴に至ったようです。朝日新聞の記事を見ていても、検察のストーリーというのは、村上氏がLDを引き込んで「一緒にニッポン放送株式を買おうじゃないか」、と、けしかけたという話のようです。

このストーリーに関する?なところは、磯崎さんが素晴らしい整理をされていますんで、そちらをご覧頂くこととして、前から気になっている「共同買付者に対する167条の適用」について、余りブログ向けのネタでもないだろうと思って積み残しにしていた非常にテクニカルな点について見ておきましょう。

というわけで、以下の議論は、いつものようなローエコとかではなく、極めて実務家的なテクニカルな条文解釈の話ですので、興味のない方は、また明日ということで、法律家のやるテクニカルな条文解釈というのは、どんなものなのか怖いもの見たさと思う方は、続きをどうぞ。


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Posted by 47th : | 23:31 | コメント (2) | トラックバック (0) | 関連エントリー (6) | Securities

インサイダーとネット社会?

昨日の記事について、弾さんから「サイバースペースにおけるインサイダー定義の憂鬱」というTBをいただいたですが、その中で面白い話が。

問題は、何をもって「あなたしか聞いてない」のか、「一般株主も聞いているのか」が判定されるか、にあります。
例えば、上の製薬会社の社員が、このことをblogに書いた場合はどうなのか、SNSに書いた場合はどうなのか、ということです。
例えばblogの場合。これはblogという不特定多数、すなわち一般株主も見れる場所に書いてあるのだから、書かれた時点でインサイダー情報にな るのかならないのか。そしてSNSだったら、基本的にはインサイダー情報だけれども、それが書かれたのが日記ではなく株主コミュニティだった場合どうなる のか?

まず、問題を整理すると、ひとたびインサイダー情報になった情報は、(インサイダーではなく)上場会社自身が一定の定められた方法で公表措置をとらない限りは、たとえテレビのニュースで広められてもインサイダー性は解除されません。この一定の方法というのは、大きく分けると、①臨時報告書など証券取引法所定の開示書類の登録、②新聞など報道機関に対する公表、③取引所を通じた開示(東証の場合はTDNet)に分かれます(※)。
逆にいうと、自社のホームページにプレス・リリースを掲載しても、そのプレス・リリースが報道機関や取引所に渡されなければ「公表」にはなりませんし、マスコミにスクープされ全国版のニュースで報道されても会社自身が正式な開示をマスコミに行っていない限りは、たとえ日本中の半分が知ることになっても、依然として「未公表」事実です。

というわけで、「公表事実かどうか」=「インサイダー情報かどうか」というレベルでは、その情報がどの範囲に開示されたかは問題とはならないわけです。
上のルートで開示されていない重要事実は、全てインサイダー情報です。

では、(それが摘発されるリスクがどの程度あるかはひとまず措いておいて)掲示板やブログに書き込まれたインサイダー情報を見て、取引をしたら即インサイダー取引かといえば・・・ネットを通じた情報取得という面では、「重要事実の伝達を受けた」という要件との関係がポイントです。


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Posted by 47th : | 00:20 | コメント (2) | トラックバック (2) | 関連エントリー (5) | Securities

「聞いちゃったら」だめです

村上氏が残すもの」には、多くのコメントとTBを頂きありがとうございました。
で、頂いたTBを拝見させて頂いて補足した方がいいかなと思った点について、少しずつフォローアップをしようと思うんですが、まずは、念のため、この点から。

「聞いちゃったら」だめです

おそらく、弾さんの「聞いたもの負け」というキャッチフレーズが余りにも強烈だったんだと思いますが、21世紀生活研究所さん(「聞いちゃったインサイダー?」)のように「聞いちゃっただけでインサイダーというのは厳しすぎる」という具合にとられた方もいらっしゃったかも知れません。
 しかし、「こっちから聞いたんではない」とか、「儲けるつもりがなかった」とか、「そんな情報は使っていない」という類の言い訳はインサイダー規制では一切認められません。これは、現行法上、もっともクリアーな点の一つであって、その意味で村上氏が会見で「儲けるつもりがなかった」というのは通用しませんし、通用させる必要もないと私も思います(※)。

私が気になっているのは、仮に村上氏のリリースにあるような事実関係だとすれば(但し、この辺りは後述のように検察の主張は大分違うようですが)、聞いちゃったときの状況からすれば現実味の薄い話や、単なる願望レベルの抽象的な話であっても、インサイダー情報になるのか(※2)、という話です。
「聞いちゃったかどうか」が問題なんではなく、あくまで「聞いちゃった内容が何だったのか?」が問題ということです。 

なので、例えば、製薬会社の社員の友人と飲んでいて、「実はこの前発表した新薬の欠陥が分かって回収しなくちゃいけなくなりそうで、そのせいで首が飛びそうなんだよね。ローン組んだばっかしなのに、やってられないよ」と聞いてもいないのに一方的に愚痴られたとしても、その話を「聞いちゃった」以上は、その会社の株の売買はできません。持っているその会社の株は塩漬けです。
たとえ、「前から売るつもりだった」とか「結局、業績の上方修正と一緒の発表だったから株価は下がらなかった。むしろ上がって損したぐらいだ」と言うのは、何ら言い訳になりません。

なので、その意味で「聞いたもの負け」は、証券取引の基本的なルールであって、これ自体は言い訳は効かないので、その辺りは、どうか誤解しなで下さい。
極端なことを言えば、そういう気の置けない友達がいるとかで、インサイダー情報が望まないのに入ってしまうかもしれない会社の株は持たない方がいいと言ってもいいぐらいです。
(この辺りの、実務における心構えについては、ぐっちーさんが書かれているので、そちらも是非ご参照下さい。私も全面的に同意します(※3)・・・が、日本の場合、証券取引等監視委員会に相談してもノー・アクション・レターはもらえないので、結局、塩漬けにしたまま、インサイダー情報が公表されるまで待つか、どこかで委員会の感触を掴みながらリスクをとらざるを得ないというのがイタイところですが・・・)
その意味で、検察が「聞いちゃったこと」を問題視するのは、全然不思議なことではありません。 

問題は、それでも親から相続してしまったとか、職業がファンドマネージャーという因果な商売でポートフォリオを組むために仕方なく持ってしまっていて、友達にも微妙な話はやめてくれよ、と常々言っているのに、数か月前に新薬開発の功績で昇進したと喜んでいた友人が「うーん、もしかしたらだけど、おれ飛ばされるかも知れないんだよね」とため息をついているのを聞いてしまって、「あ、何かあるらしい」と思ってしまったとか、夢はビル・ゲイツ越えという新興IT会社の社長が「おれの夢はトヨタのオーナーになることなんだよね」と聞いたら、どうなんでしょうね、というところです。


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Posted by 47th : | 22:38 | コメント (4) | トラックバック (7) | 関連エントリー (6) | Securities

村上氏が残すもの

(追記あり) 

今頃、日本では凄い騒ぎなんだろうなと思いつつ、村上氏が日本時間午前11時からの記者会見で「インサイダー取引」を認めたという報道をネットで見ているところです。

M&AコンサルティングのHPには、早速村上氏個人名義で「ニッポン放送株式の売買について」と題するリリースが掲載されています(このPDFのファイル名も泣けます)。

これによると、村上氏の「認めた」事実経緯は次のようなものであったようです。

・・・2004 年11月と2005 年1月にライブドアの堀江社長(当時)をはじめ とする方々が弊社を来訪された際、同社がニッポン放送株式を5%以上取得したいとい う意向をお持ちであると伺いました。
・ただ、当時のライブドア社の財務状況に鑑みれば、ニッポン放送株式を5%以上買い集めることは不可能だと考えており、当該意向は、ライブドアの単なる願望だとしか受け止めておりませんでした。・・・
・しかしながら、上記のライブドアによる株式取得の意向は、証券取引法167 条、同法施行令31 条に規定するインサイダー情報としての5%以上の株式買い集め行為について の決定であると解釈されるものであり、このような情報を知った以上は、MAC アセッ トマネジメント社の実質的なオーナーであり、非常勤取締役である私は、同社によるニ ッポン放送株式の買付けを停止させる義務がありました。
・十分な注意を払わずに上述の義務を怠ってしまったことは、職業として株式投資に関わ る者としては失格であり、ファンド出資者の方々にご心配をお掛けするとともに、皆様 をお騒がせしたことにつきまして、ここに深くお詫び申し上げます。

村上氏が、何故この段階で認めたのかという点については、いろいろな憶測が可能でしょうが、事実については認めて勾留の長期化を避け、情状を確保しつつ、公判では弁護士を前面に立てて「村上氏立件へのハードルとその影響」であげた167条の構成要件解釈に関する点をつき無罪を争うというのが一つの見方でしょうか。

・・・ただ、もし村上氏が、それすらも争わず、およそ上に掲げたような事実関係の下でもインサイダー取引に該当するという先例(※)のみを残して、日本を去ったとしたら・・・この「先例」は166条インサイダーも含めて、日本の証券取引実務に落とす影が村上氏が愛想を尽かした日本市場に残す呪いなのかも知れません。

あるいは、村上氏が「改心」して、およそ上に掲げたような基準の下で、村上氏が心当たりのある犯罪に当たり得る行為を全て検察に情報提供したとしたら・・・

レッドソックスはバンビーノの呪いに86年間苦しめられましたが、さて、村上氏の呪いはどうなるか・・・と、いったら考えすぎなんでしょうか。


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Posted by 47th : | 00:05 | コメント (15) | トラックバック (25) | 関連エントリー (7) | Securities

村上氏立件へのハードルとその影響

きっと日本ではテレビや紙媒体も凄いことになっているんじゃないかと思いますが、海の向こうではネットぐらいしか情報源がありません。
それを見ていると、週明けにも立件ということで、基本的なストーリーは12月中に村上氏とLD側が接触した際にLD側の買付情報を村上氏が知って大量保有報告書で明らかになっている買増しを実施したということのようです。
これが基本ストーリーだとして検察の立件に立ちはだかる3つの法的なハードルと、もしそのハードルがクリアされてしまった場合に何が起こるかということを簡単にまとめてみましょう。

いつ「買付」は決定されたのか?

一つ前の記事でも書きましたが、日本のインサイダー規制においては、いつ「決定」がなされたかということが、大きなメルクマールになります。
これは法的な機関決定のタイミングではなく、その会社での意思決定の実態を踏まえて考えるべきとされています。過去の裁判例の傾向を見ると、LDの場合は社長である堀江氏が「決定」をすれば、取締役会での正式決議よりも前であっても「決定」はあったとみなされる可能性は高いでしょう。
問題は、堀江氏の中で、どの段階まで至れば「決定」と言えるかという点です。

例えば、12月に村上氏から提案された際に、ニッポン放送株式の取得も「将来的には」考えていたが、「具体的な」計画になったのは、フジテレビのTOBが開始された後で、ここから資金調達の手法なども具体的に検討し始めて、2月8日に間に合わせた・・・こういう事実関係の中で12月の堀江氏の心境をもって「買付」が「決定」されていたということはできるんでしょうか?

あるいは、12月の段階で堀江氏が社内でニッポン放送株式取得の是非についての検討を指示していたが、まだ検討中の段階であった場合は?

今回の場合は、その核心にいる堀江氏から証言をとることができるかが非常に微妙であり、その意味で堀江氏の内心に頼って事実を構築することにはリスクがあります。

そうすると、法解釈の問題として、「決定」のタイミングを早めることはできないか?、と、考えるのかも知れませんが、仮に上のように「抽象的な計画段階」や「検討段階」でも「決定」があったということになれば、単にファンドが苦しむというのではなく、上場会社の事業活動にも影響が出てきます。
例えば、自己株取得プログラムを決定するに際して、社内に他社との統合の「検討プロジェクト」があったら、当該プログラムによる自己株式取得にインサイダー規制の問題が生じてきますし、それ以上に、一応、東証の開示ルールではインサイダー情報が発生した場合には適時開示が求められていることからすると、そうした段階での適時開示が求められるというような話にもなってきます。

そういう意味で、検察が「決定」時期について、どのような法的解釈をとってくるのかは、ファンドだけでなく上場会社一般の実務にも影響を及ぼす可能性があるわけです。


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Posted by 47th : | 13:24 | コメント (8) | トラックバック (4) | 関連エントリー (7) | Securities

ファンドの活動とインサイダー規制

今にして思えばタイムリーな話なんですが、昨日、とある金融関係の人と飲んでいて、次のような質問を受けました。

ファンドが投資先企業にこまめにインタビューをして得た情報で株の売買をやることはインサイダー取引にあたるのか?

日本のインサイダーには、色々と難しいというか答えにくい質問がたくさんあるんですが、これはそうした質問の中でも最も難しい質問の一つです。
で、昨日の段階では、「ケース・バイ・ケースなんで・・・」ということで答えておいたんですが、今後村上氏の案件がどうなるかは別として、もっと広い文脈でファンドとインサイダー規制との関係は注目を浴びてしまうでしょうから、ちょっと一度整理しておいた方がいいかも知れません。

日本のインサイダー規制の基本的な構成

まず、日本のインサイダー規制の基となる条文は証券取引法166条ですので、この条文のエッセンスだけを切り出して確認しておきましょう(ちなみに、これは会社関係者インサイダーの話で、これとは別に買付関係者インサイダー規制があることについては、一つ前のエントリーを参照ということで)。

・・・「会社関係者」・・・であつて、・・・重要事実・・・を・・・知つたものは、・・・重要事実の公表がされた後でなければ、・・・「売買等」・・・をしてはならない。

原文は、ごちゃごちゃしていますが、こういうことであって、「会社関係者」が「未公表」の「重要事実」を(一定のルートで)知りながら、株式を売り買いしてはいけません、というのが基本的なルールです。

従って、あとは、ファンドが会社の関係者にインタビューをして知った事実を基に売買をすることについては、この各要件に照らして考えていけば、答えが出るはずなんですが・・・
 


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Posted by 47th : | 01:06 | コメント (7) | トラックバック (1) | 関連エントリー (7) | Securities

村上氏に買付関係者インサイダーの疑い?

(早速+6/2追記あり) 

インサイダー取引:村上氏を捜査 東京地検特捜部(毎日新聞)

「村上ファンド」を率いる村上世彰代表(46)に証券取引法違反の疑いがあるとして、東京地検特捜部が捜査を進めていることが分かった。05年のライブド アによるニッポン放送株買い占めが公開買い付け(TOB)に準じる行為に当たり、村上代表は買い付け情報を事前に知りながら同社株を売買したとされ、 TOBに関して禁じられたインサイダー取引の疑いがあるという。特捜部は証券取引等監視委員会とも連携し、既に関係者から聴取した模様だ。・・・
関係者によると、この時にライブドアが時間外取引で5%以上のニッポン放送株を買い集めた行為は、証取法上の「TOBに準じる行為」に当たるという。村上 代表は、ライブドアによる株取得情報を公表前に得てニッポン放送株を売買したとされ、特捜部はこうした行為が証取法の「公開買い付け者等関係者等が禁止さ れる行為」としてのインサイダー取引に当たる可能性があるとみている模様だ。

・・・というわけで、この「関係者」というのが誰かよく分かりませんが、この記事が正しいとすると、問題となっているのはライブドアによるニッポン放送株買付に際しての話のようです。
これがどう発展していくのかは、今の時点では予断を控えますが、とりあえず当時旧ブログの方で、今回問題となっているインサイダー取引と通常のインサイダー取引の違いをまとめているので、そちらをご紹介です。

この記事で書いているように、今回問題となっているのは、通常のインサイダー取引ではなく、買付関係者インサイダー取引です。この買付関係者インサイダーの一つの特徴が、問題となる取引は「売買」のうちの、「買い」だけで「売り」は問題とならない点。

というわけで、当時、村上氏はニッポン放送株の処分はやっていましたが、「買増し」はどうだったんだろう?ということで、この買付の前後のニッポン放送株に関するMACアセットマネッジメント(以下「MAC」と略します)の大量保有報告書を確認してみると・・・

  • 1/13 変更報告書(27条の25第1項)
    この報告書では、最後の売買は1月5日803,050株の取得で、この時点で18.57%保有ということになっています。
    こちらは、普通の大量保有報告書なので直近60日間の売買が報告されています。
  • 3/15 変更報告書(27条の26第2項)
    この報告書では、保有株式割合が18.57%から3.44%に落ちたので、証取法27条の26に定める「特例対象株券等」に落ちたということで、直近60日間の売買は報告されていません。 (この辺りについては、isolgue「敵艦スクリュー音、未だ無し!(ニッポン放送株:解決編)」をご覧下さい)

さて、そうすると、MACが証取法の規定を遵守していると仮定した場合、少なくとも、MACの持株割合が10%に下がる前に1%以上買いますことはできない(というか、していない)・・・と、もう少し歯切れよくいうと、(当事者たちはあくまで市場で誰が買ったか分からないと仰っていますが)ライブドアのToSTNET取引の相手方がMACであり、この2/8の時点でMACが8.57%以上の株式をライブドアに売ったのだとすれば、MACは2/8より前に1%以上のニッポン放送株式を買っていないということになります。

とすると、最初に戻って、買付関係者インサイダーが成立するためには、①ライブドアがニッポン放送株を5%以上取得することを決定していて、かつ、②ライブドアの関係者が村上氏にその事実を伝達し、③その事実を知りながらニッポン放送株式を買いましたということが立証されなくてはいけません。
仮に村上氏が1/5の後、2/8までの間に買増しを行っていないとすれば1/5以前の取得の際に、少なくとも①ライブドアがニッポン放送株を5%以上取得することを決定していなくてはならないわけです
まあ、この間に1%未満の買付行為があって、そこを問題視しているという可能性もあるんですが・・・もしそうだとすると、ライブドアは村上氏を信頼して相談を持ちかけたのに、村上氏は、それを使って一儲けした・・・でも、1%以上は買わなかったという話になるわけですが・・・なんか、「せこい」んですよね。出し抜くなら、5%ぐらい噛まして、鮮やかに出し抜けばいいし、1%に満たないステークスのために、相手との信頼関係を損ないかねないようなことをするというのも何かしっくりこないものがあります。

何れにせよ、今回のシチュエーションでは、仮に上記①~③が立証されたとしても、④村上氏による買増し行為が、ライブドアの意を受けて後にライブドアに株式を売却することを合意した上での行為であったとすれば、村上氏とライブドアは「共同買付者」であって、買付関係者インサイダーには引っかからないという解釈の余地も残っているところです(ただ、ここは文言解釈上微妙というのは、旧エントリーをご覧下さい)。
もっとも、当時は、当事者は、確か、お互い市場で売却したのであって誰に売ったかは分からなかったと言っていたはずなので、こういう話になると、当時のライブドアによる株式取得の経緯の際の適法性が怪しくなってくるわけですが・・・

何れにせよ、これまた法的には色々と論点があるということで、今後の推移は冷静に見ていきましょうということで。取り急ぎ。

(追記)

買付関係者インサイダー(167条)という趣旨の報道は、今のところ毎日だけのようですし、磯崎さんも 

「166条じゃなくて167条じゃないか」てなことをおっしゃる方もいらっしゃるようですが、どうなんでしょうか。

と仰っているので、上の話は、あくまで毎日新聞の記事が正しかったらという前提ですので、そこのところはご注意を。

(6/2追記)

その後の新聞報道を見ていると、1月5日以前に、①ライブドアによる買付情報を知っていた、という方向性と、②フジテレビのTOB開始の情報を知っていたという観測が見られるようです。

①ということになると、2月8日の1か月以上前の時点でライブドアが株式取得の「決定」がなされていたことになりますが、その間にフジテレビTOBという大きな状況変化が起きているわけで、これがなかったら取引ボリュームにかかわらず株価がTOB価格に張り付くという特殊な状況は起きなかったわけですから、その意味でも買付「決定」が12月にあったと言えるかは少し微妙。

②ということになると、TOB自体の準備は当然1か月前からやっているでしょうから、「事実」としては存在している可能性は高いわけですが・・・TOB情報を知って株を買い集めることは、市場買付と比べると摘発されるリスクは遙かに高いことを考えると、逆に、村上氏ほどの百戦錬磨の強者が何の法的なロジックもなく、そんな危ないことをやるのか、というところが腑に落ちないところです。


Posted by 47th : | 19:18 | コメント (4) | トラックバック (2) | 関連エントリー (6) | Securities

CBは「特異点」?

SOの費用認識はCBを殺すか?」というエントリーで会社法勘のリハビリをかねてつっこんでみたところ、磯崎さんから「会社法下の転換社債と「裸の特異点」」という鋭い切り返しを頂きました。

「誰も入ったことのない洞窟」を一人で探検するのは心細いので、ツッコミ大歓迎であります。

と仰っていただいたので、引き続き、ツッコミをして、「一括法は滅び行くごとが運命付けられているのか?」ということを考えてみる・・・前に、「一括法」は「特異点」という磯崎さんの指摘に対して、ちょっと抵抗(?)しておこうかと思います。

磯崎さんは、会社法下でSOの費用認識が必要になったことをもって、次のように述べられています。

つまり、会社法による大きな転換は「オプションの公正価額は算定できるのが前提」ということであり、今や(この5月以降)、新株予約権の価額を会計上計上しなくていいのは、「転換社債」の要件を満たす場合だけであって、数学っぽく書くと、下図のように、(特に公開企業の場合)この部分だけが唯一の「特異点」になっているように思えます。

この後に続くブラックホールの話には、悲しいことについていけなかったので、ここでは「特異点」というのは、「一人だけ変わった奴」という意味合いぐらいで考えてみますが、「特異点」かどうかというのは、結局、母集団をどう捉えるかという問題によって変わってくるので、母集団と分類軸についてコンセンサスがないと、CBを「特異点」扱いすることはできないはずです・・・で、この母集団と分類軸については、磯崎さんが暗黙に仮定している定義に対して、次の疑問が即座に思い浮かびます。


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Posted by 47th : | 00:12 | コメント (2) | トラックバック (0) | 関連エントリー (1) | Securities

SOの費用認識はCBを殺すか?

最近、実質、開発ネタと消費者金融ネタで、アイデンティティの喪失を感じ始めている私ですが、久々に磯崎さんの「会社法下の転換社債(「区分法」と「一括法」)」に対して、ツッコミを。

磯崎さんの問題意識は、いわゆる転換社債型新株予約権付株式については、負債部分とオプション部分を別個に計上する会計処理(区分法)ではなく、一体として負債として計上する処理(一括法)が認められていることに関してなのですが、両者の違いを具体的に指摘された上で次のように締めくくられています。

なぜストックオプションを費用化する会計基準が施行されても、転換社債にだけオプションバリューを認識しない「一括法」が認められる会計基準になっているのか。なぜ、ストックオプション会計基準では、どういう処理にするかのカンカンガクガクの検討の過程が非常に多くのボリュームを割いて説明されているのに、社債の処理では、
(以下引用部分)
金融商品会計意見書の考え方は、以前の転換社債と経済的実質が同一である会社法に基づき発行された転換社債型新株予約権付社債の会計処理にも適用することが可能と考えられるため、発行者側については、以前の転換社債と同様に、一括法と区分法のいずれの方法も認められることとし
(引用終了)
と、数行で片付けてしまっているのか?
これは、「区分法」の強制により、転換社債市場が消滅すること(サードインパクト)を恐れる何者かによるインボー「大人の事情」によるものなんでしょうか?

何か「大人の事情」の香りもしないわけではありませんが、そういう怖い世界には立ち入らずに私の方はあくまで理屈の世界として考えてみることにします。
というわけで、理屈の上で考えてみると、ストック・オプション(以下「SO」と略します)のオプション部分のバリューを適切に評価して認識する趣旨というのは、必ずしもCBを含むファイナンス目的のオプションの取扱いと結びつくものでもないんじゃないかという気もするところです。


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Posted by 47th : | 01:17 | トラックバック (1) | 関連エントリー (1) | Securities

SEC不要論

薬物規制撤廃を訴えるLibertarian EconomistのJefferey Mironが、今度はSEC(証券取引委員会)不要論を訴えています。

A better approach to reducing corporate malfeasance is a combination of two policy changes: repealing the corporate income tax and eliminating the Securities and Exchange Commission.

Repealing the corporate income tax would make corporate accounting far more transparent since most complications arise from (legal) tax avoidance behavior.

Eliminating the SEC would make investors bear full responsibility for monitoring corporate behavior. This occurs to a substantial degree already, since the SEC cannot effectively monitor all the firms subjects to its regulations. But eliminating the SEC would spur additional private monitoring and strenghten investor incentives to engage in due diligence.

要するにSECをなくすことによって、投資家はよりリスクに対して敏感になって、もっとちゃんと監視やデュー・ディリジェンスをやるので、問題はなくなると。

これには後日談があって、マンキュー先生が、「まあ、それを言ったら警察も要らなくなるやね」とちくりとやったら、かなり大まじめに、「いや、普通の犯罪と違って、証券犯罪の場合、投資家は自ら契約関係に入っているという点で決定的に違う」と言い返していたりします。

本気で賛成するかどうかはともかくとして思考実験としては、こういう議論は面白いところです。

Mironの主張は、単に刑事訴追を不要と言っているのか、それとも開示の程度・内容も投資家と会社の私的自治に委ねる(=法定開示制度を撤廃する)というところまで主張するのか、今ひとつ分からないところがあるんですが、Mironの元記事はSOX404自体が過剰規制じゃないかという主張から始まっているので、単に非犯罪化(decriminarization)というに留まらず、そもそもSECが規則を制定する必要はない、つまり法定開示制度は不必要という方向まで行き着くんでしょうね。

そうすると普通の犯罪とのアナロジーでいけば、何を犯罪とするかについても、私人間の契約で定めるのが望ましいということになるわけですが・・・皆さんは、どう思います?


Posted by 47th : | 00:38 | トラックバック (0) | 関連エントリー (0) | Securities

中央青山への処分の「重さ」の?

ようやく試験も終わり、そのまま試験の結果も出ていないのに見込み卒業式まで終わってしまっているんですが、何か緊張の糸がゆるんで、すっかりだらけてしまっています。

というわけで、中央青山の業務停止命令については、噂段階でちらっと触れて以後、きちんとフォローしていなかったんですが、その後以下のように金融庁の処分が下っています。

 平成18年5月10日金融庁「監査法人及び公認会計士の懲戒処分について

で、これについて印象を・・・とも思ったんですが、実は正直いって、次の処分の「重さ」をどう考えていいのかがよく分からないところがあります。

(2)処分内容

業務の一部停止2ヶ月(平成18年7月1日から平成18年8月31日まで)
[停止する業務] 証券取引法監査及び会社法(商法特例法)監査(法令に基づき、会社法(商法特例法)に準じて実施される監査を含む。)。ただし、一定の監査業務を除外するものとする(詳細は別紙1)。

これについては、新聞報道などでは契約企業との契約をいったん解除しないといけないとか、この期間は法定監査対象企業に対するサービス提供は一切禁じられるいう感じのトーンも見られます。もしそうだとすると、実質的には、この処分の影響は2か月という短期の問題ではなく、一旦清算しろと言っているのと同じような意味合いになるんでしょうが・・・

ただ、金融庁処分の文言と別紙1の書きぶりを見ていると、ここで停止されているのは法令に直接基づいた行為、つまり「監査証明」に限られているような印象もあります。
特に、業務停止の例外として「6月決算会社」については「8月」だけが除外されていますが、私の理解しているところでは、監査実務の実際としては、決算期直後から現場レベルでは監査法人と会社の密接な連携というのはあるはずですし、それがないと3か月以内に計算書類をファイナライズするというのは難しいはずです。
とすると、6月決算会社について7月は業務停止の対象となっているというのは、こういう実務レベルでの活動まで禁じるという趣旨ではなく、「法律に基づいた監査証明を行うことができない」という意味合いになっているような気がします。この辺りは11月決算の半期報告書についても8月だけが処分の例外とされているのと同じところ・・・というわけで、もし仮に監査証明だけを意識しているのであれば、一見の厳しさとは裏腹に別紙1と合わせて考えると、実質的なダメージはほとんどないということになってしまいます。

もしそうだとすると、この「一見厳しいが、実務的には影響は限定的な処分」を、企業が監査法人の乗り換えをしようと思えばできる時期にやるというのは、絶妙のタイミングを狙った一手ということになります。

レピュテーションを意識し、かつ、監査法人変更を行うだけの余裕やシステム的なバックグラウンドのある企業は契約を解除するでしょうが、大部分の企業は中央青山がこの処分の意味合いと改善策をきちんと説明すれば残ってくれるだろうということであれば、バランス的には悪くない落としどころという気はします。

何れにせよ、その意味で金融庁による短い処分文言をどう解釈するかによって、この処分の「重さ」は全く変わってくるような気がするんですが、何せ情報が不足しているんで・・・この辺り、どなたかご存じの方がいらっしゃれば教えて頂けると幸いです。

何れにせよ、今回の処分は、今後の監査法人への行政・刑事的処分設計を考える上で試金石となるケースのはずですので、処分側が事前にどの程度の「重さ」を想定していたのか、実際の影響との間に大きなズレは生じなかったか、生じたとすればその要因は何だったのかといった辺りの政策評価の視点からのフォローアップがきちんとなされるとよいのですが・・・諸外国との比較も含めて、この辺りを実証的に分析するのは、大学院レベルでのいいペーパーのネタにもなりそうなところですよね(・・・と、誰かがやってくれないかと期待してみたりする)


Posted by 47th : | 18:04 | コメント (11) | トラックバック (0) | 関連エントリー (0) | Securities

EU会社法・証券取引法の試験問題

昨日受けたHopt教授のEU Corporate Law & Securities Regulationは、2時間の制限時間で概ね次のような内容の問題でした。(括弧内は配点)

 

I.1. EU委員会が現時点でCorporate Law Action Planを見直すに当たって、あなたがそのカウンセルだとしたら(40%)

(a) 課題事項から落とすべきと思うものはどれか?

(b) 逆に、より力を注ぐべきと思うことはどれか?

I.2.、以下の問に簡潔に答えよ。(10%)

(a)ヨーロッパ会社(European Companu)は有用か?

(b)One-tier BoardとTwo-tier Boardのどちらが望ましいか?

 

II.1 以下の事例についてヨーロッパ法の観点から答えよ。(40%)

ヨーロッパの上場企業のCEOとCFOは米国上場企業に対する友好的公開買付けの交渉のために米国にわたっていたが、基本合意締結にこぎつけた。しかし、会社としての正式な承認のためには取締役会での承認を得なくてはならないため、その承認を得るために彼らは帰国の途についた。その途上で、彼らは自社の法務部門と大株主であるインベストメント・バンクのトップに電話をかけ、基本合意について合意が成立したことを伝えた。

(a) 彼らの行為は適法か?会社はどの時点で開示義務を負うか?噂が流れた場合はどうか?

(b) 電話会社の職員Aは、その電話の内容をたまたま聞くことができたため、当該会社の株式を即座に購入した。また、インベストメント・バンクは、当初、当該会社の株式を売却する予定であったが、その情報を聞いて売却をとりやめると共に、自社の顧客である機関投資家に対して当該会社の株式の購入を推奨した。彼らの行為はヨーロッパ法に違反するものか?

II.2 以下の問に簡潔に答えよ。(10%)

(a) 企業買収指令12条について、国際的企業買収に関して問題となる点は何か?

(b) ヨーロッパSECは設立されるべきか?

 

・・・というような内容で日本語なら2時間で何てことはないんですが、時間のプレッシャーがある中で英語で書こうとすると結構ぎりぎりで・・・書きやすいII.の方から始めたら最後の方はもうきつきつでした。

ちなみに、ドイツ人の悩みに共感を示さない私は、I.(a)の筆頭にEuropean Private Companyと並んで、最低資本金制度なんて、オフショア設立が認められるのであれば議論しても無駄で、もっと総合的に債権者保護を考えるべき、と、あっさり言ってしまいました。まあ、Hopt教授は、ドイツ人にしてはかなりリベラルで、ご本人が授業中に最低資本金制度について数年かけてStudyをやれと言われても、何やっていいかわからないと仰っていたのでOKだと信じているんですが。


Posted by 47th : | 12:03 | トラックバック (1) | 関連エントリー (0) | Securities

阪神・村上氏の交渉と情報規制

ようやく一つインクラスのテストが終わって反動が来ていますが、明日ももう一つインクラスがあるんで気は抜けません。

テストの愚痴をぶちまけたいという欲望もあるんですが、ちょっと気になる記事が・・・

阪神・阪急経営統合案、村上氏側が提案…ファンド発表 (Yomiuri Online)

阪神電気鉄道の筆頭株主で、村上世彰氏が率いる投資ファンド(村上ファンド)は3日、インターネットのホームページを通じてコメントを発表し、「阪神と阪急ホールディングスとの統合案は今年2月以前に私どもから阪神に提案し、その際、阪神は拒絶した」と、折衝の内幕の一部を暴露した。
阪神は「4月まで、ある企業との経営統合を、盛んに当方に提案していた」ことも明らかにした。

そもそも、今回の件は大量保有報告書における目的の記載のあり方(どこまでなら「純投資」と言えるのか)とか、それへのサンクションという現行証券取引法における問題点を浮き彫りにしている点でも興味深いと思って見ていました。
つまり、最初は「純投資」ですよ、といって株を買いだしておきながら、やっぱり「経営支配だ」と居直られてしまうことを、どうやって防ぐのかというお話です。
まあ今回の場合は、そもそも45%もとった時点で、誰も本気でそう信じていないかも知れませんが、例えば、5%程度を取得した段階で、この買収者がどの程度まで株を買いますのか、とか、経営関与をしていくのか、という情報は、一般投資家にとっては投資判断において重要な情報ですよね。
大量保有報告書におけるミスリーディングな記載に対するサンクションについては、前から気になっているので、帰国前にはどこかで調べておきたいと思ってはいるんですが・・・おそらくアメリカでは大量保有報告書(Schedule 13(d))の不実記載も投資家による証券訴訟(10b-5)の対象となるリスクがあるので、買収者側も買収計画とか経営関与の意図についての開示を慎重にやっているということだと思うんですが、この辺りは何れどっかできちんとやるとして、今回のポイントは最後の「4月まで、ある企業との経営統合を、盛んに当方に提案していた」という辺りです。

M&Aコンサルティングからの5/3付けプレス・リリースを拝見すると、次のように書かれています。

そもそも、阪急との統合案は、本年2月以前から私どもから阪神電鉄に提案し、その際は阪神側 はこの提案を拒絶したものであります。そして、4月までは、ある企業との経営統合について盛んに 当方に対し提案していました。

日本の証券取引法上よく分からない、というか、余り想定されてこなかったのは、こうした買収者と対象企業との交渉における情報のやりとりや提案に関するインサイダー規制における取扱いです。

買収者と対象企業とが一定の合意に達するためには、ある程度交渉の機密性は求められます。
他方で、買収者と対象企業の交渉の行方は株価に大きな影響を与えますから、投資家としては、その情報を一刻も早く知りたいでしょう。また、もし、秘密にされている情報を何らかのルートで手に入れれば、その情報を使って株式市場で利益を得ることもできるでしょう。
更に、交渉の過程で対象企業が買収者に対して非公開の重要な経営情報を開示したり、あるいは、買収者がデュー・デリジェンスを行って非公開情報にアクセスすることができた場合に、もし買収者が依然として市場で自由に株式を売買できるとすれば、どうでしょう?

何も、この問題は買収者にだけかかってくるわけではありません。例えば、対象会社がホワイト・ナイトに対して非公開情報を開示して、それを下にホワイト・ナイトが市場で買い増しを進めたり、買収者からの株式の譲受を求めたとしたら・・・

買収に絡むこうした情報のやりとりと買収者・ホワイトナイトによる株の買い増し・売却には、本来、常にインサイダー規制との関係が問題になります。

この辺りは、インサイダー規制の原則論だけを振り回しても、妥当な結論が得られるわけではなく、また、平時における情報開示の程度とも関連して、非常にテクニカルな部分に踏み込んだ議論が必要になるのですが、これまで日本では買収が比較的少なかったこともあって、余り議論されてこなかった部分です。

買収防衛策の設計やTOBルールばかりに注目が集まっていますが、買収に絡む制度設計は、買収を取り巻く情報規制(買収者側及び対象会社の情報開示義務の内容、インサイダー規制、相場操縦規制)の設計と不可分一体のはずです。

この「2月以前から・・・提案し、その際阪神側は・・・拒絶した・・・そして、4月まで・・・当方に対して提案」という時期の書き方も味があるんですが、これまで日本の買収関連制度に問題を投げかけてきた村上氏が投じた大きな一石となるような予感もするところです。


Posted by 47th : | 21:48 | コメント (2) | トラックバック (1) | 関連エントリー (1) | Securities

SEC内部の不協和音?

S.E.C. to Issue Guidelines on Subpoenas to Journalists (New York Times)

Dow JonesのコラムニストとCNBCの"Mad Money"(経済番組?)の司会者に対して、ヘッジ・ファンドと共謀して株価操縦を行ったという嫌疑で、サピーナ(Subpoena:一種の捜査令状)が出されたことに関連して、修正憲法1条で保障された表現活動への萎縮効果が生じるという批判が噴出したため、SEC委員長のCox氏が、ジャーナリストに対してサピーナを発する場合のガイドラインを早急に策定すると発表した・・・というお話です。

いろいろな意味で日本で起きている現象と対比すると興味深いのですが、特に次の下りは注目に値します。

The enforcement of the S.E.C. subpoenas was suspended, at least temporarily, after reporters called the commission on Friday to prepare articles about them. Mr. Cox issued a statement Monday that rebuked the enforcement division for failing to inform him and other officials about the subpoenas.
Mr. Cox told reporters on Thursday that he did not intend for his Monday statement to chill the enforcement division from acting aggressively in prosecutions, and he took issue with critics who have said that the subpoenas illustrate that staff lawyers have been overly zealous. He also expressed strong support for the work of financial journalists, saying they had a "similar mission" to that of the commission.

元々、Cox氏は、前委員長のDonaldsonが余りに規制強化に傾きすぎだったという批判を受けて昨年選任された委員長ですから(関連記事「SEC委員長の退任」)、そういう観点から眺めると、単にこの事件だけなのか、それとも、今後、こうした形でSECの執行方針に何らかの歯止めをかける方向にいくのか・・・なかなか興味深いところです。


Posted by 47th : | 00:38 | トラックバック (0) | 関連エントリー (0) | Securities

1/3ルールはどこへ行く

何だか色々と今週はばたばたしていて、更新が滞っているんですが、何だか丁度1年前に話題となった論点が、またまた話題となっているようですので、話題の論点について興味のある方へのご参考ということでドリコム自体のものも含めて過去記事をまとめてみます。

とりあえず、こうした記事でも触れているように、現行法に照らして違法かどうかということと、そもそも規制自体は合理的かどうかは全く別の話で、ライブドアにしても今回の件にしても、問題は「悪法だからといって守らないでいいということにはならない」という点であって、(私の見方からすると)「悪法」である1/3ルールを更に強化すべき・・・市場内外を問わず1/3以上取得した者には一律にTOB義務を課すべし、というような方向に向かうことがないよう祈るばかりです。
(「コントロール・プレミアムを必ず分配しなくてはならない」という法制の下では、そもそも支配株主(売主)側での支配権を売却するインセンティブが弱まるために、友好的な買収も起きにくくなる可能性があります。また、そもそも支配株主がガバナンスにかけるコストを支配権プレミアムで回収することができないとすれば、支配株主もガバナンスに費用をかけるインセンティブを喪失してしまう(か、他の形でガバナンスのコストを回収しようとする)わけで、買収防衛策嫌いで有名なコロンビアのギルソン教授なんかも、ある程度の支配権プレミアムをとらせることが望ましいといっていたりするわけで)

TOBの最中の市場での株式の買い集めについても余り強く規制しようとすると、対抗ビッドが起きにくくなったり、ホワイトナイトを見つけにくくなることもありますし、裁定取引がしにくくなると商いの厚みがなくなって一般株主の換価手段も限定されてしまうので、規制を強化するにしても、くれぐれもその辺りのバランスを考えて欲しいところです。

ん、なぜ対抗ビットやホワイトナイトが現れにくくなるのか、って?
今回の事案とは明らかに事情が違うんでしょうが、一般的にいうと、後発でビッドに参加する側にとっては、最終的に対抗TOBを開始するにしても、株主や競合相手に対してビッドへの真剣さをコミットしたり、あるいは、最終的に対抗ビッドで敗れた場合に保有株を競合相手に売却することで買収費用の一部を回収するといったことのためには、予め一定程度を市場で買い集めてからTOBに入ることが合理的だったりするからです。

ちなみに、件の事件そのものについては、よく分からないんですが、差し障りがありそうな気もするんで、今後とも触れないと思いますので、あしからず<(_ _)>


Posted by 47th : | 14:12 | トラックバック (0) | 関連エントリー (0) | Securities

上場廃止と投資者保護

ニューヨークは記録的な大雪です。 

今週はAntitrustの授業でのプレゼンや、ちょっと片付けなくてはいけない仕事もあるので、元々外出をする予定はなかったのでいいのですが、歴史的な暖冬から一転、歴史的な大雪というのも、何というか恐いものです。

というわけで、ヘビーなエントリーもお休みですが、ちょっと気になったのでクリップだけ。

ライブドア株、粉飾固まれば上場廃止へ・東証方針 (NIKKEI NET)

この記事によると「ライブドア前社長の堀江貴文容疑者らが証券取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)の罪で起訴されるか、証券取引等監視委員会が同容疑で告発すれば上場廃止を決める方針」ということになっています。

昨年のカネボウの時にも問題となりましたが、上場廃止というのは、株式の流動性を奪ってしまうわけで、理由が粉飾のような場合には、粉飾の被害者である株主に対して、さらに鞭を打つことにもなりかねません。

それでも、場合によっては、取引所に対する全体的な信頼を確保するために、厳しい措置も必要になります。

ただ、そうだとしても、報道されているとおりだとすると、2つの点で釈然としないものは残ります。 

一つめは、何をもって上場廃止のトリガーと考えるかというところです。

報道の中での言葉のあやなのかも知れませんが、「起訴」又は「告発」をトリガーとするということは、捜査機関の判断を基準として受け入れることを意味しています。
私は、刑事裁判において有罪が確定するまで待たなければならないというつもりはありません。刑事裁判において無罪とされても、それは無実であるとは限りません。その意味で、東証が、投資者保護という観点から、自らの判断基準を確立して、それに沿ってサンクションを課すことそれ自体はあり得る選択肢だろうと思います。

ただ、それは東証自身が得た証拠や資料に基づいて、サンクションを課することが適切だと判断した場合の話です。東証が、どのような形で事件についての情報を獲得・整理しているのかは分かりませんが、単に捜査機関の判断(結論)を受け入れるだけだとすれば、それが、取引所に対する信頼を確保することになるのか疑問が残ります。

もう一つの点は、取引所によるサンクションの究極の目標は、投資者の保護であり、それには「被害者」である問題企業の無辜の株主の救済と、取引所全体に対する公正さへの信頼の保護という2つの面のバランスが必要ではないかというものです。
捜査機関は、(少なくとも建前としては)、法に従って罪を摘発し罰を科すことが仕事であり、その結果生じる複雑な社会的影響を考慮すべき立場にはありません。しかし、取引所がサンクションを課すのは、法的な罰を社会的なサンクションで補充する(法的な罰を受けている者に、更に石を投げる)ことではなく、その事件が究極の顧客である投資家に対して及ぼす副作用をコントロールするためです。

例えば、過去の罪について上場企業が自ら厳しい内部処分やガバナンス体制の構築を求める一方で、その高いハードルを満たす限りにおいて、上場を維持させ、責任ある企業としての再生をバックアップすることが、その企業の無辜の投資家の救済と取引所全体に対する信頼を維持するために望ましい場合もあるのだろうと思います。

ライブドアの件について、最終的にどういう判断を行うかはともかく、東証に求められるのは、過去の事実と現在の状況に対する証拠(資料)による認定と、それを踏まえた上での将来のあるべきバランスを考慮した対処であるべきではないでしょうか。
東証には、「市場の管理者」として、捜査機関にはない「柔軟性」を生かした対応をして欲しい・・・まだ、最終的な結果は分かりませんが、上の新聞記事を読んで、そのようなことを思ったりしました。


Posted by 47th : | 16:50 | コメント (7) | トラックバック (1) | 関連エントリー (0) | Securities

Obvious Errorルールの導入かな?

東証:異常注文時に売買契約取り消しも 西室会長が意向 (毎日新聞)

東京証券取引所の西室泰三社長兼会長は6日、みずほ証券の誤発注のように明らかな異常注文があった場合、成立した売買契約を取り消す制度を導入する考えを明らかにした。・・・西室会長は「新たなルール作りのため、証券取引所の試案を出したい」と語り、民法上の「錯誤無効」に準じ、事後に無効とする誤発注の範囲など、枠組みを検討する考えを示した。

・・・ということのようで、以前紹介したAMEXのルールのような方向に行くんでしょうか?

とりあえず、クリップだけ・・・そういえば、錯誤無効の話も終わってないなぁ・・・


Posted by 47th : | 11:23 | トラックバック (0) | 関連エントリー (0) | Securities

徒然なるままに、ライブドア事件

今朝のNYは明るい陽射しの中、何だか既に春が来てしまったかのような錯覚も覚えるような穏やかさですが、日本はいかがでしょう?

呑気に”24" Season5のことを書いて惰眠をむさぼっている間に、ライブドア強制捜査、株価は下落、東証はシステム・キャパで取引制限、関係者から亡くなった方も出て、当のライブドアは開示注意銘柄へ・・・

私も、授業の予習そっちのけで脊髄反射的なエントリーを連発したわけですが、まあ、こういう記事は、だいたい、①書いている時はアドレナリンが出ているので、うわぁっと書けてしまう、ところが②時間をおくと「書きすぎたなぁ」と悔悟の念がじわじわとおそってくる、でも、③新しい情報や見方に触れると、また何か言いたくなって①に戻る・・・と、学習能力に欠けた行動パターンを繰り返すんですよね。
そういえば、1年前のまさにニッポン放送とライブドアの時もそうだったようなぁ、と、思って、あのとき書いたことを見直したりすると、そのぐらいの時間をおいてブログを見ると、何だか他人が書いたような錯覚を覚えてきて、人ごとのように「へぇ、そんなこと考えてたんだ。ふぅーん」と思ったり・・・気分的には小学校や中学校の時に自分の作文とかを読むようなもんで、これはこれで個人的には面白いものです。

そういう意味で、やはり恥ずかしい内容でも、とりあえずそのときの印象を書いておくというのは、いいのかなという気がします・・・と、前置きが長くなってしまいましたが、とりあえず今の時点で心に浮かんでいることを、簡単に。

証取法158条と捜査手続

依然として情報量は十分ではないんですが、とりあえず今の時点で受けている印象からいうと、検察は、個々の情報開示や怪しげな決算手法の違法性ではなく、それら全体としてファンダメンタルズから乖離した相場を作出した行為を問題視しているような気もし始めてきました。

158条(風説の流布・偽計取引)は、「別件」じゃないのということを一瞬考えたのですが、どうも最近はそうでないような気がしています。にもかかわらず、手続的な点でひっかかるのは、実は別件捜索・差押えの問題ではなく、158条が対象とする犯罪事実の特定性の問題なのかも知れません。

例えば、粉飾も情報開示の問題も、158条の下での「偽計取引」の一内容だという立場をとれば、①捜索・差押えの対象を極めて広範に設定できる、②控訴段階で罪状を個別の法定開示書類の不実記載(粉飾)に切り替えても、別件捜索・差押えということにはならない(はず・・・すっかり忘れたんですけど、基本は公訴事実の同一性の問題ですよね?)という意味では、非常に検察側にとっては使いやすい罪状ということになります。よく考えてみれば、「偽計」をおよそファンダメンタルズから離れた相場を意図的に作り出そうとする一切の試みととらえれば、刑法でいえば「手段はどうであれ、他人の意思に反して財産を移転する罪」というような条文があるようなもので、窃盗・強盗・詐欺・恐喝・横領・背任・・・要するに財産犯全体をカバーする罪状があるようなもんで、一度、そうした解釈が裁判所に受け入れてもらえれば、捜査段階での実行行為の特定の重要性は非常に低くなってしまいます。

その辺りから考えると、やはり今回の令状請求にあたっての捜査機関の法律構成が手続的なところでの肝ではないかという気がしているところです。
 


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株価をつり上げて売り抜けるのはインサイダー取引か?

さっきの会計的話のエントリーに比べると、こちらは我々(法律家)にとっては結構整理しやすい話の割りに、ひょっとしたら一般の方には分かりにくいのかもと思ったのがインサイダー取引の話です。

rasさんのコメントを引用させていただきますと

本件の本質的なまずさは、投資組合を介したインサイダーに当たる点ではないのでしょうか?
売却後に収益をどれほどあげたとしても、買収を発表し株価を吊り上げて売り抜ける方法それ自体に問題があるような気がします。

株式分割のような①重要事実が、②未公表の段階で、③会社関係者が、④株式を売買等をするとインサイダー取引にあたるわけですが、今回の場合は、株式の入手方法は「株式交換」であって「売買等」に該当しないので、LD株の入手段階をインサイダーに問うのは難しいところです。(これは、「原始取得」は「売買等」に該当しないという立法担当者による解説が一般に実務で受け入れられているからで、立法論的には議論の余地はあり得ます)

次に、株式分割が公表されて株価があがった後で売却した点については、株式分割という重要事実は既に公表されていますので、「未公表の重要事実」を用いたということにはなりません。なので、こっちの方は、インサイダーで引っかけるのは難しいところです。かなりひねるとすれば、今回のスキームの裏側自体が「重要事実」(公表されれば株価は下がるor上がらなかったはずということで)として、これを「未公表の重要事実」と捉えて、株式の売却をインサイダーとして捉えるというところでしょうか?

ただ、更に投資組合の意思決定者(業務執行組合員)がインサイダーであるか、一次情報受領者であることを別に立証しなければいけません。

・・・というあたりで、何か株価が上がったところで売り抜けてというところを見るとインサイダーっぽいのですが、必ずしもストレートにインサイダーにあたるわけではないのが今回の事案で、どちらかというと相場操縦的な方向性が本質ではないかと思われます。そういう意味でも、「よくできている」スキームで、結構この辺りの規制構造に詳しい人もいたんでしょうが・・・

ただ、言うまでもありませんが、株式分割をやることを聞いた第三者が予め市場で株を買ったような場合には、こっちは(一次情報受領者である限り)インサイダー取引にひっかりますね。

・・・と、ごく簡単ですが、こんなところで。 


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会計ルールに「穴」はないのか?

磯崎さんの「営業投資有価証券」の怪というエントリーに、次のようなコメントをしました。

次の問題は、これは「違法」なのか「ルールの穴をうまくついた取引」だったのかというところですね。こちらは、相当難問な気がします。

そのコメントについて、磯崎さんから会計ルールの「穴」というエントリーで、次のようなご指摘を受けました。

私は、非常にシンプルに考えてまして、(もし報道されているような取引を意図的に行ってたのだとしたら)明確に「アウト」だと考えてます。
誤解を恐れずに大胆なことを言えば、「会計に『ルールの穴』なんか無い」、と言えるかと思います。
(中略)
で、「公正なる会計慣行」とはいったい何かというと、「企業会計原則」をはじめとする会計の諸規定などとされており、それでも全部の事象がルール化できる わけがないですから、ある処理や表示が「公正なる会計慣行」に準拠しているかどうかというのは、まさに監査法人や公認会計士という訓練を受けた「人間」が 判断をすることになるわけです。
(中略)
会計原則でいう「真実」とは、「絶対的な真実」とは違って、業種・業態や人間の判断によって若干ゆらぐ性質の「相対的真実」である、てなことが言わ れ、「罪刑法定主義」とか「租税法律主義」というのとは違って、(明文の)ルールに沿っているかどうかが問われるのではなく、会計の目的(大原則)にそっ ているかどうかが問われると考えます。もちろん、「相対的真実」なので、人によって若干考え方が違う面はありますが、「企業の財政状態や利益を適正に表示 すること」は大原則中の大原則。にもかかわらず資本取引と損益取引を混同して利益を大きく表示しようというのは、会計で最も避けなければならないことなわ けです。つまり、財務諸表論の1時間目で習うようなお話。
いくら明文のルールに書いてなくても、会計士100人に聞いて100人ともが「なんじゃそりゃ?」と言う会計処理や表示は、「公正なる会計慣行」とはいわないと思います。
(中略)
しかも、検察が入って処理に粉飾の容疑がかかっている状況で、「あれは正しい処理だった」と主張する会計士は確実にゼロだと思われますので(笑)、 よって、その処理は「公正なる会計慣行を斟酌したもの」ではありえないですし、ということはすなわち、いくら明文の規定のどこに書いて無いにしても、その 処理や表示は確実に「法律違反」かと思います。

たぶん、多くの人は磯崎さんの仰ることに賛成されるんじゃないかと思いますし、会計士というプロフェッショナルの職業倫理の世界において、今回のような取引にOKを出すべきかといえば、それは違うというのも同意します。

ただ、それでも、ひとたび「責任」や「刑罰・行政罰」の世界の話として、それが「違法」かと言われれば、それは別の話ではないかという疑問が残ります。例えば、法律の世界でも、「明文では明らかではないけど、趣旨から考えると違法とされる可能性のある取引」というのは、いくらでもあり、まさに、その典型の一つがライブドアがニッポン放送株式買収の際に用いた「ToSTNET-1を用いた時間外取引」だったわけです(この辺りの詳細は過去記事(これとかこれとかこれとか)をご参照下さい)。

過去記事の中でも書きましたが、件の事件以前の段階で、こういう取引についての多くのビジネス・ロイヤーの立場は「OKを出すべきではない」ということだったと思います。ただ、他方で、実際にそれが起きたときに、それが「100%違法になる」というものでもありません。
その意味では、あれは我々からみれば「制度の穴」だったわけで、それを「利用すべきでない」とは言えても、実際に利用した人間を必ず「法律違反」に問えるかというと、そういうわけでもないと考えていたわけです。(最終的には、なぜか金融庁長官の解釈でお墨付きが出てしまったような形になってしまった後で法律改正がなされたわけですが・・・)

で、私には会計にもこの種の「ルールの穴」というのは、やっぱりあるんじゃないか、という気がしています。別に今回の取引が妥当だとは誰も思っていませんが、「資本取引と損益取引を混同して利益を大きく表示しようというのは、会計で最も避けなけれけばならない」という「財務諸表論の1時間目で習うようなお話」というのは、「穴」を許さないようなものなのか?というところを、ちょっと素人なりに考えてみようと思います。

なお、私の目的はライブドアの擁護ではありません。ただ、法律家というのは、司法試験受験の過程で憲法の考え方を相当にたたき込まれるせいか、本能的に国家権力がフリーハンドを持つことに強い警戒感を持っているので、「粉飾」という概念が事実上捜査機関に大きな裁量を与えてしまうんじゃないかということもまた非常に気になるわけです。これは、「何で弁護士は大量殺人犯を弁護するのか?」というのと少し似ているのかも知れません・・・(まあ、ライブドアは大量殺人犯ではないわけですが・・・)


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Posted by 47th : | 10:47 | コメント (6) | トラックバック (2) | 関連エントリー (0) | Securities

なるほど・・・これが「粉飾」ということですか

とりあえず、今から授業なんで、詳しいことは後にしますが、こちらのNIKKEI NETの記事で、(早合点かもしれませんが)ようやく今回問題とされているカラクリが見えてきたような気がします。

ライブドアグループの証券取引法違反事件で、ライブドア本体が実行したとされる粉飾決算の手口が18日、明らかになった。企業買収の際、株式交換名目で新規発行した自社株の売却収入を還流させ、ライブドアの利益に計上するのが主な方法。自社株の処分は本来は資本取引なので利益に計上しない。経常利益を実際よりかさ上げして好業績を装い、株価を引き上げるなどの目的だったとみられる。

・・・というわけで、続きはまた後ほどということで

(追記)

KOHさんの記事によると、昨日の日経夕刊の段階ではちょっと意味の分かりにくい記事だったようですが、上の記事の表現なら分かるかなと・・・

早合点かも知れませんが、会計的に間違っているかもしれないところは、誰か指摘していただけるのを期待しながら、多分、こういうことなんだろうという話を。(追記の追記:「粉飾」とかぎかっこつきで書いているのは、報道でいわれていた「粉飾」というものという意味で、私自身は、今回の会計処理が本当に「粉飾」(会計ルールに反したもの)に該当するものなのか、それとも「会計ルールの盲点をついたもの」なのかという部分については、まだ判断がつきかねています。繰り返しになりますが、「妥当かどうか」と「違法かどうか」は、別の話なので、後者の問題については会計の専門家の方の議論なんかも聞いた上で、改めて考えてみる予定です。)
 


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Posted by 47th : | 18:04 | トラックバック (7) | 関連エントリー (0) | Securities

ライブドア本体(単体)粉飾疑惑の気になるところ

・・・というわけで、今ひとつわけのわからないマネー社買収絡みは「別件」で「本件」はこっちということなんでしょうか?

最初に、念のために申し上げておきますと、私はライブドアのファンではありませんし、個人的には、適法かどうかは別として同社の戦略が妥当かといわれれば首を傾げる方です。
結局のところ、ライブドアの手法を賞賛し、資金を投入してきたのは「市場」で、やり方はどうであれ、「持っていれば損はさせない」という意味で人気を集めてきたわけです。ある種の「人気商売」にとっては、スキャンダルは致命的になるわけで、そもそも強制捜査のきっかけを与えてしまったことそのものが、最終的な結末はどうであれ、「人気商売」としてのビジネス・モデルにおいては失敗だったんではないかという気がします。
ライブドアを祀り上げたのも「市場」なら、見放すのもまた「市場」であって、今回の件をきっかけに、ある意味でヒステリックな市場反応が生まれていることについては、自然の流れということじゃないかと・・・そういう意味においては、私は結構冷めてます。

・・・とはいえ、そのことと法律の解釈とか手続的適正というのは別の話です。社会的に石を投げられることと、それが法によって裁かれることは違います。
「社会が石を投げるから、罰(刑罰・行政罰)を与えていい」のなら、法律とかはいらないわけで、もっといえば、「社会が石を投げるかどうか」が基準に裁かれるところには法的安定性とか予測可能性といった経済的活動の基本は確保されません。というわけで、いろいろと今回の捜査機関の立場について疑問を提示してみようというのが、私の立ち位置というところです。

・・・と前置きが長くなりましたが、報道による、今回のライブドア本体の「粉飾決算」についても、いろいろとよく分からないところがあるんで、つらつらと思ったことなどを。会計にわたる部分は、ひょっとしたら何か勘違いがあるかも知れませんので、もしお気づきのことがあれば教えて頂けると幸いです。


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Posted by 47th : | 00:45 | コメント (8) | トラックバック (4) | 関連エントリー (0) | Securities

ライブドア事件にみる経済事犯リテラシー

一夜経って、また、いろいろと情報が増えてきています。私のアクセスできる情報というのは、基本的に新聞のネット記事なんですが、マスコミの情報も錯綜しているようです。

そんな中、個人的に興味をひいたのは、asahi.comの宮内取締役のインタビュー記事です。

「買収を発表する前にすでに対象の出版社を買収していたといわれるが、先に株式を取得していたのは投資事業組合で、(ライブドアの金融子会社である)ライブドアファイナンスが9割以上を出資する企業再生ファンド。ファンドの最終決定者も当社ではない」
「その後、バリュー社がこの出版社を欲しがったので売却した。一方、バリュー社の株式分割は当時の株価をかんがみて実施したもので、すべて別々の取引。一連の取引に見えるとすれば私の落ち度だ」

昨日の記事で書いたように、ファンドの仕組的にみれば、ファンドの資金提供者と意思決定者は別になっていて、ファンドを通じて取得した企業と資金提供者の間の支配関係は切断されているというのは普通の話で、上のインタビュー記事からすると、今回のファンドもそういう類の話だったということを示唆しているようです。

で、こうした場合に、ファンドの運営している企業が軌道にのったところで、資金提供者自体が連結に組み込むために株式を直接保有したり、グループ会社とくっつけたりする・・・というのは、「よくある」とは言いませんが、珍しいという話でもないような気が知るんですが、どうなんでしょうね?

とすると、今回の場合の問題は(粉飾云々はおいておいて)、①株式交換という手法を使ったこと、②ファンドの資金提供者に関する情報を開示しなかったこと、③ファンドによる取得から株式交換までが6か月程度(短い?)ということ、④株式交換から実行までの間に株式分割をしたこと・・・といったところに特殊性があるんでしょうか?

ただ、もし、風説の流布にせよ偽計にせよ、実行行為(犯罪の行為)が、株式交換のアナウンス自体にあるという立場をとるなら、④の問題は実行行為後の話であって、直接には関係ないような気もするところです。(あえて言うとすれば、株式交換によって取得した株式を売却するというところで「有価証券の取引のため」という目的要件につなげることかも知れませんが・・・ただ、株価の上昇の大きな要因は株式分割であって、それ自体は違法な行為ではないとすれば、これも主張としては弱いような気がしますが・・・でも、このasahi.comの記事を見ていると、株式分割による株価上昇が悪いとみているような・・・このロジックは何なんでしょう???・・・わからん・・・)

というわけで、やっぱり何が嫌疑なのか私には分かりません、そんな私向けなのか毎日新聞に「ライブドア:強制捜査のポイント、株式交換・分割のQ&A」という記事が。


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Posted by 47th : | 16:38 | コメント (8) | トラックバック (2) | 関連エントリー (1) | Securities

なんで「風説の流布」なんだろう?

今日はアメリカはMartin Luther King Dayということで学校も休みだったんで、New Jerseyの日本食スーパーに買い物がてら、そこで出店している山頭火でラーメンなんかをすすってたんですが、つらつら考えてみるに、今回の容疑が「風説の流布」というところが、純粋に法的な意味で興味深いですね。

報道の内容を聞いている限りは、今回の件というのは、どこまでいっても、要はライブドアが自分のコントロール下にある企業の情報について開示の内容やタイミングを操作したという話ですよね?

少なくとも証券取引法上は、流通市場において開示すべき内容というのは、有価証券報告書と臨時報告書の提出義務の中にとりこまれていて、これに関する不実記載やmaterial omission(重要事項の不記載)を罰するというのが本来のルートです。

これらの法定開示書類の対象とならないけど市場に影響を及ぼすかも知れない情報については、従来は、取引所規則での適時開示義務と、インサイダー規制で間接的に開示が促されるという状況にあったんじゃないかと思います。

もちろん、文言的には、157条から159条も適用は可能なわけですが、どちらかというと、これらは発行会社以外の第三者による相場操縦を念頭に置いてきたんじゃないかと・・・(あ、でも発行・売出しの時には安定操作が絡むか・・・)

今回、風説の流布を使ったというのは、その意味で興味深いんですよね。もしかしたら、風説の流布が日本版10b-5的な規定として使われていくのかも知れないなという予感もあります・・・ただ、その場合、日本では刑事罰一本槍なんで、立証のレベルが高いとか、罪刑法定主義とのバランスといったあたりが問題となりそうな・・・

まあ、これは、目先の事件が云々というよりも、かなり傍観者的な観点なんですけど、今後、日本における証券取引法の執行が盛んになっていくとすれば、解釈論上の結構大きなターニング・ポイントになるのかもしれません(まだ、起訴すらされていないわけですが・・・)


Posted by 47th : | 22:27 | コメント (2) | トラックバック (7) | 関連エントリー (1) | Securities

ライブドア強制捜査-「風説の流布」の法的論点

昨日見た24のシーズンVが余程強烈だったのか、逆境サスペンス系の夢を見て夜中目を覚ましたりしている間に、日本ではもっと大変なことが起きていたみたいですね。ろじゃあさんからのコメントを見て、日本のニュースを見てびっくり。

東京地検、証取法違反容疑でライブドア本社など家宅捜索 (NIKKEI NET)

ライブドアの関連会社が2004年に企業買収した際、買収方法について虚偽情報を開示し、虚偽の決算を公表していた疑いが強まり、東京地検特捜部は 16日、証券取引法違反(風説の流布など)の疑いで、六本木ヒルズ(東京・港)内のライブドア本社や堀江貴文社長の自宅など関係先を家宅捜索した。今後、堀江社長ら幹部の事情聴取と押収資料の分析を進める。  
(中略)
調べによると、東証マザーズ上場の関連会社、ライブドアマーケティング(当時バリュークリックジャパン)は04年10月、出版業のマネーライフ社を株式交換で買収すると公表。しかし、実際には公表前に買収先企業の株主に現金を渡して事実上、傘下に収めており、開示した内容が虚偽だった疑いが持たれている。

ここであげられている「風説の流布」というのは証券取引法158条において、次のように規定されています。

何人も、有価証券の募集、売出し若しくは売買その他の取引若しくは有価証券指数等先物取引等、有価証券オプション取引等、外国市場証券先物取引等若しくは 有価証券店頭デリバティブ取引等のため、又は有価証券等の相場の変動を図る目的をもつて、風説を流布し、偽計を用い、又は暴行若しくは脅迫をしてはならな い。

相変わらず読みにくい条文ですが、まず、客観的には、「風説の流布」(虚偽あるいは根拠のないことを広めること)という行為が必要になります。ただし、これだけでは十分ではなく、これはいわゆる「目的犯」ですので、(a)「取引のため」 OR (b)「相場の変動を図る目的」のどちらかを満たさなければいけません(あと「故意」も必要ですが、「目的」が認定されれば「故意」がないというのは、余り考えられないところです)。

とりあえずNIKKEIの報道によると、バリュークリックジャパンによるマネーライフ社の株式交換に関する発表が問題ということのようですが・・・ちょっと、これだと分かりにくいですね。asahi.comの記事の方が、もう少し詳しいようです。


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Posted by 47th : | 09:44 | コメント (8) | トラックバック (12) | 関連エントリー (1) | Securities

証券取引と民法95条適用の可否(3)

前回は、次のような事例について錯誤無効の適用を認めるのかどうかということを問題提起してみました。

Case 2
一般投資家のXは、有料配信の速報ニュースで"TCI"に対するSECの調査が入ったことを知り、即座に手許に保有していたTele- Communication Inc.の株式の売却を証券会社Aに委託した。その際XはAの担当者aに対して「"TCI"にSECの調査が入ったという話を聞いた。なので、Tele- Communication Inc.を早めに処分したい」と伝えてた。その直前にAの自己売買部門のディーラーbは、たまたま同じニュースを知り、過去の経験から誤解をする投資家が出ることを予想し、ブローカー部門の担当者全員にTele-Communication Inc株式の売却注文が入った場合には注文を取り次ぐ前に自分に知らせるように指示をしていた。aは、そのニュースの存在を知らなかったが、bからの指示に従ってXがTele-Communication Inc株式の大口売却をしようとしていることを連絡した。その際に、Xが注文の際に話した売却の理由についてもbに伝えていた。bは、Xの売り注文と合わせる形で買い注文を出し、最終的にXとAとの間で取引が成立した。その後、Xは"TCI"がTranscontinental Realty Investor. Inc.の証券コードであることを知った。

前回UPした後で「証券会社が客の不利なことをやったら、それには反感がありそうだよな」と思ったので、ちょっとパターンを変えてみて、単なる友達のYさんが取引相手だった場合なんて、どうでしょう?


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Posted by 47th : | 21:12 | コメント (12) | トラックバック (0) | 関連エントリー (1) | Securities

証券取引と民法95条適用の可否(2)

前回から少し間があきましたが、ぼちぼち続きを。(例のごとく、民法についは記憶が頼りなんで、変なところがあればご教示をお願いしたく)

「適用」≠「無効」

これまでにいただいたコメントや他のブログの論調を拝見していると、証券取引に民法の意思表示の規定が適用になると証券取引が極めて不安定なものになってしまうのではないかという点の懸念があるようです。
この点は、ちょっと私が舌足らずだったのかも知れませんが、「適用がある」ということは、「取引が無効になる」ということとはちょっと違います。いくらある規定の「適用」があっても、「要件」が満たされないと取引の効力を否定することはできません。
そして、元々民法の意思表示規定の下でも、無効や取消が主張できる場合は非常に限定されていて、そうそう滅多には効力が否定されるものではありません。日常生活でも「あんなん詐欺じゃん」と言いたくなるようなことや「そんなつもりじゃなかったんだけど」ということは多いわけですが、実際に訴訟を起こして取消や無効が主張できるかというと、これは全然別の問題です。
例えば、今回扱っている民法95条(錯誤)の条文はこんな感じになっています。

意思表示は、法律行為の要素に錯誤があったときは、無効とする。ただし、表意者に重大な過失があったときは、表意者は、自らその無効を主張することができない。

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Posted by 47th : | 16:27 | コメント (3) | トラックバック (0) | 関連エントリー (1) | Securities

投資サービス法報告案公表

もう一つ、投資サービス法に関する報告案が公表されていますね。多分、会社法現代化と並んで重要で、取引所の機能についても、示唆に富むことが書かれています。
うーん、留学中にここまで重要な法改正が続くと、本当に戻ったときは浦島太郎になってしまうんじゃないかと心配・・・


Posted by 47th : | 01:18 | コメント (2) | トラックバック (1) | 関連エントリー (0) | Securities

誤発注問題はアメリカではどうなるのか、ちょこっと調べてみた

もうやめるといいながら、どっぷり浸かっている誤注文問題なんですが、まあ、だから何だというところもありつつ、こういうトラブルに関してはいろんな意味で経験豊富なアメリカでは、どうなるんだろう、ということを、ちょこっと調べてみました。
えらい断片的なリサーチなんで、全然包括的なものではないんですが、例えばAMEX(カードではなく取引所の方です^^)では、Rule 135A.で、取引所に取引の取消権限が与えられているようです。

Rule 135A. Cancellations of, and Revisions in, Transactions Where both the Buying and Selling Members Do Not Agree to the Cancellation or Revision

(c) In the event of (1) a disruption or malfunction in the use or operation of any facility of the Exchange or (2) extraordinary market conditions or other circumstances in which the nullification or modification of transactions executed on the Exchange may be necessary for the maintenance of a fair and orderly market or the protection of investors and the public interest, a Senior Floor Official may review any transactions arising out of or reported through any facility of the Exchange... A Senior Floor Official acting pursuant to this paragraph may declare any Amex transaction null and void or modify the terms of any such transactions if the Senior Floor Official determines that (1) the transaction is clearly erroneous, or (2) such actions are necessary for the maintenance of a fair and orderly market or the protection of investors and the public interest;...

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証券取引と民法95条適用の可否 (1)

UBS「契約無効」で返上打診 誤発注巡る巨額利益 (asahi.com)

みずほ証券による誤発注問題で、約120億円の利益を出したUBSグループが「契約の無効という形で利益を返上できないか」と日本証券業協会などに打診していることが、明らかになった。同協会は利益を得た証券会社が日本投資者保護基金に自主返上する形で決着を模索しているが、「それでは海外の株主に説明しにくい」というのが打診の理由とみられる。ただ、今回の取引を「契約無効」と見なすのは法的に難しく、調整にはなお時間がかかりそうだ。
(中 略)
関係者によると、同グループは返上方法として基金への拠出ではなく、もともとの売買契約を無効にすることを要望しているという。いったん確定した利益を「世論」や「業界団体から要請」に応じる形で返上した場合、海外の株主に対して合理的な説明が難しいと判断している模様だ。

契約を無効にする場合、民法の「錯誤による契約」にあたることを理由にするとみられ、一般的な取引でも、売るつもりのないものを取り違えて売ってしまった場合などに適用される。

ただ、無効が成立するためには、売った方に重大な過失がないことが条件になる。専門家は「異常を知らせる警告を無視して発注したみずほに重過失がある可能性が高く、無効が成立するのは難しい」(野村修也・中大法科大学院教授)とみている。

仮に、契約無効が成立するとなると、特定の投資家の契約だけでなく、個人を含むすべての投資家との契約が無効と見なされ、UBS以外でも利益の返上の義務が生じることになる。実現は困難な状況だ。

もうやめておこうとも思ったのですが、一度自分の頭を整理する意味で、ちょっとこの問題について、問題の所在を整理してみる気になりました。ただ、論点は多岐にわたるので、少しずつやっていきましょう。
ただし、私の手許には日本の民法、商法総則、証券取引法の文献は一切ありません(江頭先生の会社法ぐらいはありますが^^)。なので、これから書くことのほとんどは、おぼろげな記憶が頼りです。なので、その辺りは割り引いていただき、また、思い違いがあったら遠慮なく指摘していただくということで宜しくお願いしたいと思います。


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Posted by 47th : | 00:08 | コメント (6) | トラックバック (1) | 関連エントリー (1) | Securities

 
法律・経済・時事ネタに関する「思いつき」を書き留めたものです。
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