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信託型ライツ・プランと(ひさびさの)頭の体操

信託型ライツ・プランが、いろいろと出ているようです。
「ようです」とか人ごとみたいな言い方をしていていいのかという問題はあるのですが、個人的にはあんまり好みではないので、必要に迫られつつも、信託型の分析をするのは面倒くさいなぁ、と思っていたら、磯崎さんのところで以下のとおり、詳しい解説が。

さすが磯崎さん、法務面だけでなく税務面も押さえて、しかも分かりやすく解説されてて凄いなぁ・・・とか、暢気なことを考えていて、ふと我にかえって考えてみると、これって弁護士にとっては、かなり怖いといえば、怖いことではないかという気がしてきました。


例えば、仮に磯崎さんがクライアントだったとすると、法務・税務面も含めて、すさまじく鋭い質問が次々に浴びせかけられてしまって、適当な答をしようものなら、冷たい視線を注がれるのは必至・・・
もっといえば、磯崎さんのブログを読んでいる方にしてみれば、無料で読めるブログに書いていることについてしどろもどろになる弁護士に、何で高い報酬を支払わなあかんねん、ということになりかねないわけです。
今まで法律知識の囲い込みで食いつないできた弁護士にとっては、結構、これは大変なことではないかという気がします・・・と、これまたひとごとみたいに言っているのも、自分が直接かかわっていないからですが、例えば、ということで、磯崎さんが指摘されている「なぜ、信託銀行が新株予約権を取得する形をとらないのか?」という点について、即興でどこまで答えられるかというと・・・(注:以下、本当に「即興」ですので、裏はとっていない点あしからず)

なぜ、信託銀行が行使しないか?

業法上の問題?

まず、考えられるのは銀行法と独占禁止法上の株式保有規制ですかね?
銀行法と独占禁止法で、確か銀行は5%を超えて事業会社の株式を保有できなかったはずで、仮に信託銀行がライツを自ら行使すると、ここへの抵触が問題となってきます。
もっとも、例外的に、受託者として保有している株式で、議決権行使について受益者の指図に従うこととなっているものであれば、この5%算定の枠の外になっていたと思うのですが、「一定基準日における不特定多数の株主」を受益者とするときにも、この例外が適用されるのか?、とか、受益者が特定できなかったり、諸事情で受益者への分配ができなかった株式はどうなるのか?、といったことを考えると、信託銀行が自ら行使するというのは難しいような気もします。

投信法との関係

もう一つすぐに思いつくのは、投信法との関係です。信託に行使価額相当額の金銭を委託して、これが行使価額の払い込みに充当されると、投信法にいう投資信託に該当する可能性が出てくるような気がします。
このリスクそのものは、新株予約権という金銭以外の財産を信託するSPC型ではない直接型にもあって、直接型について、一応お墨付きが出ていることからすれば、程度問題という側面もあるのでしょうが、厳密にいうと別の種類のリスクということになってくるような気がします。

開示規制?

理屈の上では信託型の場合には、一般株主に分配するものとして受益権(指図権)、新株予約権、株式という3つがあるのでしょうが、株式の分配の場合は証取法上の売出し規制との関係を考える必要があるように思います。
これは、本当は新株予約権自体の分配のときにも同じなのですが、発行価額と行使価額の合計が1億円未満に抑えていると違う状況になるのかも知れません。(実は昔考えたときには、行使価額1円というのは、余り考えていなかったので、この点は詰めて考えたことがありません)

手残株の処理?

机の上では、信託銀行が株式を引き受けるといっても、それは一時的なことで、最終的には全て一般株主に分配されることになる「はず」です。
しかし、実際には名義書換失念株、所在不明株主、外国株主etc・・・で、信託銀行の手許に株式が残ってしまう可能性があります。
この場合の手残株をどう処理するかというところで、自己新株予約権の取得や消却と違って、相対による自己株式の取得については会社法上厳しい手続的規制がかかってしまいます。
というわけで、株式の場合「残ったから消してしまいましょう」というわけにはいかず、手残り株の処理やその間の議決権や配当受領権の処置という困難な問題が残ってくることになりそうです。

税務上のインプリケーションの違い?

最後に、これは本当に直感的なものなのですが、信託レベルで行使する場合には、莫大な額の行使益が一時的に認識されるわけです。磯崎さんは、すぐに無償分配すれば、損金で相殺できると仰るのですが、寄附金認定されてしまうと益だけが残ってしまう形になってしまうような気がします。ただ、この問題は、新株予約権の場合にも同様の問題は生じ得るので、理論的に見れば、程度問題なのですが、市場価格のついている株式と、一義的な時価算定の困難な新株予約権では実務的なリスクは変わってくるような気もします。まあ、この辺りになると、弁護士としては「そうした心配もあるので、よく税務の専門家の方に御相談下さい」という話になってくるわけですが・・・

でも、こういう世界は楽しかったりします

・・・と、以上、思いつくままに「即興で」磯崎さんの疑問の一つに、自分ならどう答えるかということを考えてみたのですが、こういう具合に色々な観点から問題をつめていってリスク評価することが求められる世界というのは、きつくもありつつ、「楽しい」ような気がします。
「楽しい」というと不謹慎なのかも知れませんが、「とりあえず弁護士のお墨付きがあればいい」というのではなく、持っている能力が試されて、それによって淘汰が進んでいく・・・そういう世界になれば、弁護士の絶対的人数が増えると質が下がるなんていう「心配」もしなくていいようになると思います。
というわけで、久々にちょっとマニアックな法律家的な頭の体操をしてみましたが、何せ記憶に頼っているので(・・・6月になったら、ちゃんと勉強します)、間違い、思い違い等ありましたら申し訳ありません。

Posted by 47th : | 13:20 | Takeover Defense : Defense Mechanism

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