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米国企業年金制度の「抜け穴」

(6/8追記あり)
日本の年金問題と同じく、アメリカでも社会保障(social security)問題が第2期ブッシュ政権の最大の課題の一つとして重要視されていますが、このニュースは、ひょっとしたら企業年金のあり方にも多くの問題を投げかけるきっかけとなるかも知れません。

Pension Loopholes Helped United Hide Troubles (New York Times)

Loopholes in the federal pension law allowed United Airlines to treat its pension fund as solid for years, when in fact it was dangerously weakening, according to a new analysis by the agency that guarantees pensions. That analysis is scheduled to be presented at a Senate Finance Committee hearing today

この記事によれば、倒産によりUnited Airlineには830億ドル(8~9兆円)の積立不足があったことが判明したにもかかわらず、倒産までの間の財務報告では積立は十分で追加資金は不要とされており、それを可能としたのが、ここでいう抜け穴(loophole)だということです。


企業年金制度のloopholeには保険数理(actuarism)の特殊性を利用したものもあるようですが、Unitedの隠れた積立不足の要因となったのは、次のようなシステムだそうです。

But the pension agency's analysis of United's case shows that the rules for tracking contributions made in prior years have also caused a great deal of trouble. The rules allow companies that put in more than the required minimum in any given year to keep the excess amount on their books and to use it to offset their required contributions in years when cash is tight.

These excess contributions from the past are kept in a running tab called a credit balance.

The trouble is that at United, as at many companies, money contributed in the 1990's was invested in assets that lost value during the bear market that began in 2000. But the pension rules allow companies not only to keep their pension credit balances on the books at the original amount, but they are even permitted to allow their credit balances to compound in value at some interest rate determined by the plan's actuary.

要は過去に拠出した資産の価値が目減りしているにもかかわらず、拠出した際の超過拠出分は簿価をベースとして計算されるという制度に問題があったということのようです。
今日、上院の委員会で報告がなされることになっていますが、この抜け道に対して立法的対策がなされた場合には、多くの米国企業にダメージを与える可能性を持っています。
日本でも企業年金については、米国にならって確定拠出型への移行が進みつつありますが、米国で起きたこうした問題は、これから日本でも起こり得るということになるのか?・・・はたまた、積立不足の問題については、バブルのときに膿を出し切ったので、今更こうした問題は起きにくいということになるのか?・・・この辺りはどうなのか、気になるところです。

(6/8 追記)
上院での公聴会の結果は、次のとおりで、米大手航空会社は現在のルールを変えたらつぶれるしかないと「開き直り」を見せたようです。

At Senate Hearing, Airline Executives Say They'll Need More Pension Relief

Mr. Steenland of Northwest and Mr. Grinstein of Delta warned that they had large mandatory pension contributions coming due at the end of the year, when a two-year-old pension relief measure expires. They said that they would not have the cash to make the contributions, and warned that they might have to seek bankruptcy protection if Congress did not permit them to postpone payments.

盗人に追い銭みたいな話でプレゼンテーションをした上院議員は怒り心頭のようですが、かといって、うまい解決策もないとうことで、New York Timesは次のように言っています。

The senators' questions and remarks suggested that they agreed with the general idea that the pension law was flawed and needed to be amended. But there was no sign that they agreed on the specific type of changes they might seek.

ひょっとしたら、本当にこれがアメリカ経済の思わぬpitfallになってくるかも知れません。

Posted by 47th : | 13:05 | Corporate Governance

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コメント

こんにちは。

日本では1997年に企業が有する厚生年金基金の財政計算に時価評価が導入され、予定利率も5.5%というバブル後においては天文学的な数値から、柔軟に引下げが行うことができるようになっていたかと思います。したがって、単純に字面だけ比べた限りでは、日本にはそのような問題は生じ得ないように見えます(自信なし)。

しかしながら、その頃に「米国ではエリサ法というものがあり、その基準を満たすために潤沢に積立が行われている。それに比べて日本では・・・」という論調のもとで退職給付会計を学んできたものにとっては、にわかに信じがたい話です。

Posted by KOH : 2005年06月08日 10:53

>KOHさん
ありがとうございます。
今回の問題は、どちらかというと拠出が現物で行われた場合の(拠出者側での)評価方法のせいで生じた問題のようです。
単なる推測ですが、米国では企業が株式や債券等で積立金を拠出することが多かったので、こうした問題が深刻化したのかも知れません。
バブル時代には、株で拠出するどころか、基金の運用対象も厳格に縛られていた日本では余り縁のない話なのかも知れませんね。

Posted by 47th : 2005年06月08日 11:31

 
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