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とはいえ、「裁判員制度に欠けているもの」

昨日の裁判員制度≒社外取締役?には、早速、色々なコメント・TBを頂きました。
ろじゃあさんにご指摘いただいたように、そもそも社外取締役制度に対するイメージそのものが食い違えば、思い描くものが違うわけですが、私が「似ているなぁ」と思ったのは、次のような点からで、この部分だけなら社外取締役制度に「似ている」という言い方はできるんじゃないかなという気がします。

  • 情報量・スキルにおいて圧倒的な蓄積を持っている第一次的な意思決定権限者の判断に対して、何らかの理由(利益相反関係や捜査機関よりのバイアス?)により「不信感」が存在する。
  • その「不信感」に対して、情報量・スキルにおいては遥かに劣るものの、「不信感」の原因からはリモートな(独立性のある)者にボーティング・キャストを与える。

もっとも、「社外取締役制度」がそもそもどの程度「ワーク」するのかというところは、このブログでも前に少し議論して、bunさんの言葉を借りて「消火器」みたいなものと説明したように、「万が一」のときにのみ作動する非常用システムじゃないの、というのが、私の見方なので、前回みたいな書き方になったわけです。
ただし、そういうセーフティー・システムとしては、既に三審制や(重大刑事事件については)再審制度といったものもあるわけで、ここに「裁判員制度」というのを付け加えることに、どの程度のプラス効果があるのかという「ベネフィット」の部分と、他方で従来生じなかったような形での判断エラーのような「コスト」を考えると、あんまり効率的なシステムではないんじゃないかというのが、私の現時点での感想です。
特に、この「判断エラー」のコストについては、①候補者のスクリーニング・システム(株主総会による選解任システム)、②「正しい」判断を行うことに対するインセンティブ(ストック・オプション等の報酬制度・経営者市場における「評判」による規律)、③不合理な判断に対するサンクション(取締役に対する責任追及訴訟・「評判」リスク)といった社外取締役制度には存在する制度的な安全弁が裁判員制度にはないので、この辺りで問題が生じるのかなという気がしています。
実際、長い歴史を持つアメリカの陪審制度でも①~③の問題というのは、うまく解決されていないのではないかという気がします。ただ、それでもなぜアメリカが陪審制度を維持するのかいえば、こうした判断エラーのコストを上回るベネフィットとして「社会階層対立の回避」という役割が期待されているんじゃないかというのが、私のもともとの出発点だったわけです・・・で、ここまで来るとお気づきの方もあると思いますが、私の議論の中には、「日本人は」とか「アメリカ人は」というのは余り登場しません。
私の議論が前提としている日米差は、あくまで社会的階層の構造なので、私の議論からすれば、日本でも今後人種・民族・所得・地域・身分などによる社会階層の対立構造が先鋭化すれば、そうした「対立回避のメカニズム」として裁判員制度が機能することも考えられるという結論に至ります。
今回、この辺りの議論の方法論的な部分の違いは、結構面白かったので、この点についてはまた別途考えてみたいと思います。

Posted by 47th : | 11:00 | Litigation : Jury System

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