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US Lawへの誘い? (3)

前回の終わりに紹介したSheppard教授の発言-ファシズムとcivil law countryの相関関係(correlation)が存在する-に、苦いものを感じながらも、最初は「まあ、スルーしておくか」と思ったのですが、他の学生がこの話題にくいつき始め・・・「理由は私にも分からないが」などと言っておきながら、「common law countryの国は過去の先例を通じた多様な議論を大切にするが、civil law countryは条文で与えられる法律を絶対視する傾向があるのが関係しているかも知れない」とか、これまたcivil law countryの国は言論統制があるかのような一見もっともらしいが、実は全くの誤解に基づく理論などを、これまた披瀝し始めたので、さすがに黙っていられなくなって、発言してしまいした(・・・我ながら、まだまだ「青い」)

これを相関関係(correlation)というなら、例えば、王政の国はファシズムに走らなかったが、ファシズムに走った国はみんな民主主義だったわけで、民主主義とファシズムは相関関係があることになるし、そういうのは学術的とか統計学的な意味での「相関関係」(coorelation)と言うべき話ではありませんよね。

一瞬、「何を言っているんだこいつは?」という顔をされた後(まあ、私の英語が今ひとつだったせいもあるかも知れませんが)、さすがは議論には異様に強いアメリカ人ならではの「論点すり替え」の切り返し。

スペインは王政だったよ。

フランコ政権は王政というのか?と思いつつ、それがどうやって成立したかなんて知識はない(というか、昔ならったかも知れないが忘却の彼方にある)私は、この論点ずらし切り返しを正面から叩くことはできないので、

なら、別の言い方でいえば、イスラム教の国はファシズムに走らなかったけど、キリスト教の国はファシズムに走ったから、相関関係(correlation)があるというのでもいいんですけどね。

これに対する教授の対応はといえば・・・

でも、civil law countryがファシズムに走ったという「事実」は否定できないし、私はその「事実」を指摘しただけなんだよ。

・・・と、これを聞いて、馬鹿らしくなって戦意喪失。
なぜ「馬鹿らしい」のかといえば・・・

  • もし、Sheppard教授が「相関関係」(correlation)という概念と単なる「事実」の違いを理解していなくて、「相関関係」という用語を使ったのであれば、そこから議論を始めないといけなくなるので、講義のテーマから大きく逸脱するし、今の私の英語力で統計学上の概念を英語で語ると時間がかかるので不毛。
  • もし、Sheppard教授が「相関関係」(correlation)という用語が単なる「偶然の一致」以上の含意を含む強い言葉であることを理解していた上で、わざと私の指摘をすり替えたのだとすれば、真面目に議論する気がないということなので、これ以上続けても論点のすり替えでかわそうとするだけなので不毛。

・・・と、思ったわけです。もっと言えば、まさか実証分析花盛りの今のアメリカで、ロー・スクールのfacultyで統計学の基礎概念を知らない人がいるとは思わないので、後者の可能性が高いだろうと推察したわけですが・・・
発言した後で、ちょっと後悔しましたが、まあ、言いたいことを言うのがアメリカのロー・スクールの場ということで、その練習もかねたということで前向きに考えつつ・・・ロー・スクールでの勉強の意味というのは、アメリカ人の得意な一見もっともらしい議論や相手を論駁するためだけの議論のテクニックに騙されないようにしつつ、学ぶべきものを学ぶという、いわば真贋を見極める目を養うところにもあるのかもなぁ・・・などと思いました。
そういう意味では、「US Lawへの誘い」としては、ある意味完璧だったのかも知れません・・・さらにいえば、もしSheppard教授がそこまで意図していたとしたら・・・うーん、やはりアメリカのロー・スクールのfacultyは恐るべし・・・

Posted by 47th : | 11:14 | Law School

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コメント

Introductionなのに、大変そうな授業ですねえ。そのCivil Lawとファシズムを結びつけるのは、ひどすぎるような気がしました。まあ、ファシズムは、イギリスやアメリカに追いつこうとして、急いでいたという過程で育ってきたようなところがあって、他方、そういう国は、急いで国内の法制度を整えるために法典を作ったということでCivil Law国になっていったということなんでしょうか(まったく知識はありませんが)。いずれにせよ、その教授、確たる根拠もないのに、教壇でそんな話をするべきではないですね。

Posted by blackfields : 2005年09月02日 19:39

47thさん、こんにちは。ロースクールが始まるときっと更新頻度が激減するんだと思ってましたけど、頑張られますね。あまり無理のないようにしてください。議論は、「青く」ていいんだと、思います。私の場合は言いたいことの10分の1も発言できないまま、終わりました。日本人ならではの奥ゆかしさも考えものだなあと思いながら、昔ながらの生活習慣はすぐに変わるわけでもなく、授業の中での発言回数はやはりとぼしいものでした。それでもたまに果敢に議論に挑んでは敗れさることもあり、それはそれで悪くないと思いました。願わくば、自分にまともな英語力と知能があれば、と毎日自覚しながらでしたけど、楽しかったです。文化も背景知識も違うなかでの議論は難しいものだと思えただけでも私には収穫でした。続きを楽しみにしています。

Posted by neon98 : 2005年09月03日 00:48

>Blackfieldsさん
Sheppard教授は、教え方も悪くはなく、教育に情熱を持っているし、ジョークも交えたりして、なかなか「いい人」であり「いい教師」ではあると思うんですが、それだけに何だかちょっと「困った」感じでした。

Posted by 47th : 2005年09月03日 00:53

>neon98さん
ありがとうございます^^
私も、せっかくなので、いろいろと頑張ってみようと思っているところです。ま、あんまり疲れすぎない限度にしておきますけど^^

Posted by 47th : 2005年09月03日 01:04

いつも興味深く読まさせていただいております。当方某コモン・ロー法域で資格をとったものです。

なかなかおもしろい話題で、私も経験したことなのでコメントさせていただきます。

私が某コモン・ロー法域で学部生をやっていたときも、コモン・ローのシビル・ローに対する優位性ということについて学ばされました。曰くコモン・ローは法曹参加者によってオーガニックに発展した法制度だが、シビル・ローは独裁的革命政権によって導入された制度である、と。後者はナポレオン法典やドイツ統一後のプロシア政権によるドイツ法を指しているわけです。シビル・ローは法典解釈がその基礎となるので、法典学者の地位が相対的に重要となり、したがって権威主義的になってしまうが、法廷弁論の中で発展していくコモン・ローはより民主的な要素を内包している、と議論は続きます。

まぁ、権威主義と言われたときにはこっちも「そうかなぁ」と思いましたが「ファシズム」とまでいわれた日にゃちょっと「なんか言ってやらにゃぁ...」という気にはなるでしょう。

ただし新会社法の外国会社問題でパブコメ無視して、大学教授の主張をそのままいれてしまい、わきの甘い醜態を衆目にさらけ出した某シビル・ロー国の近況を見ますと、権威主義ぐらいはあたっているのかもしれません。

しかし私の資格国など、法曹と政治が一部の階級に支配されていたことから第一次世界大戦後に地主階級の経済状況が悪化するまで土地所有に関する法制度が改革できなかった例もありますから、一概にコモン・ロー=民主的、シビル・ロー=ファシズムとはいえないと思いますね。

もともと政治と法律は「鶏と卵」みたいなものです。法制度がこうだから政治はこう、なんて乱暴な議論はできないはずです。現在は政治、法律、経済が三つ巴で「鶏と卵」している時代ですから、ますます安易な結論づけは避けるべきでしょう。

ただ確かなことは法曹界が主役のコモン・ローの国では実務者が力を持っていたおかげで、近代的法律事務所の国際的な発展にシビル・ローの国の実務者に比して一日の長がある点でしょうか。

それではまた。

Posted by Yute : 2005年09月03日 03:48

どうやら問答無用の先天的な「事実」なるものがあるとお考えなんでしょうか、その点がやっかいですね。対象となっている事柄の確度にかかわらず、なんにつけ言及するだけでとりあえずは言及者の意見表明に過ぎないですし、どんな使い方であれ、言葉を使うこと自体が既に恣意であり政治であると思いますが・・・。無責任なケセラセラの相対主義でなくて。

統計プロパーに言わせれば、そもそもありとあらゆる「相関」が全てウソであると開き直りでなく言える可能性も「棄却」できません(笑)。データというものはそもそも無意識にランダムに「ねーせんせー。面白そうでしょ。僕を調べて調べて」とか言いながら都合良く三々五々集まってくるものではなく、しかるべき結論を出そうとしてしばしばお金なんか払いながら、自分の狙った結論に資するデータを集めるものなのですから。
civil warをあらかじめそのような見方で見ているからこそ、そのような発言になるんだと思います。辞書の定義通りの偏見。

それにしても、もはやあまり真偽が検討されることなくcivil law=goodということに決まってしまっているらしいところに敢えて絡んだ勇気に拍手。貴殿が異を唱えられたことを永く記憶させていただきます。とまれ47thさんが発言すると長いホットな議論になるというNYU随一の伝説ができる日を楽しみにしております。47thって日本人知ってるか?とこちらが日本人と知るや否や問われそうなくらい(笑)。

たまには明らかに間違っている主張をしてみて「うそだぴょーん、なわけねえべ」とかもやってみてください。煽ってるみたいでなんですけどヤツらこそ平気でやりますからね、遠慮はいりません(笑)。

冗長になりました。失礼しました。

Posted by bun : 2005年09月03日 05:54

civil law=evilでした失礼しました。

Posted by bun : 2005年09月03日 05:57

>yuteさん
私もコモン・ローの持つオープンさというのは、基本的には好きなのですが、物事というのは常に表裏一体の部分があって、この制度の維持には相当のコストがかかっているという印象を持っています。大事なのは、その辺りの「強み」「弱み」を見極めることのはずなのに、コモン・ローは素晴らしいという結論が先にあり、それを裏付けるために、縁遠いファシズムの話を、学問的な用語でいかにももっともらしく話したという姿勢がたまらなかったんですよね。
>bunさん
私は、実は結構天の邪鬼なんで、多数説とか一般的見解とかを見ると、自分の立場にかかわらず、石を投げてみたくなる性質があるので・・・ご期待に添えるように頑張りますです!!

Posted by 47th : 2005年09月03日 11:27

みせかけの相関ということで反撃を思いついたので使ってください。「common lawの国はロクな車作らない」というのはいかがでしょうか。

   日本 =トヨタ・日産・ホンダ
   ドイツ=BMW・ポルシェ・フォルクスワーゲン
  イタリア=フェラーリ・フィアット・

こんなにというくらい圧倒的で明らかに「有意(significant)」な差があり、「事実」と言っていいでしょう(笑)。GMがこけて凹んでいる直後なので効くかもしれませんよ(笑)。

天の邪鬼万歳。期待しています。

Posted by bun : 2005年09月03日 23:20

 
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