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Katrinaが開けたもの

日本でも報道されていると思うのですが、Katrinaの被害は凄まじいことになっています。今、目の前でつけているテレビでも、New Orleansで、無数の人々が路上やフットボール・スタジアムの脇にうずくまっている映像が映し出され、その中には年端のいかない子供や老人の姿も多く見られます。
そして、また、それほど注意しなくてもすぐに気づくのは、そこにいる人々のほとんどが黒人やヒスパニック系の人々だということです。
ニュースや新聞を見ていると、既に今回の件が単なる天災ではなく、人災の側面を持っていることが指摘されています。どこまでが根拠に基づいた話なのか、それとも災害の後に生け贄の子羊を探し出したくなるというヒステリー的な反応によるものなのかは分かりませんが、とりあえず指摘されているファクターや特徴を思いつくままに挙げてみると・・・


  • New Orleansの洪水の危険は20年来指摘されていて、堤防施設の増強の必要性も毎年議題にのぼっていたのに、米国政府はここ数年、却って治水関係予算を削減してきた。(有名な経済学者のクルーグマン教授の論説によれば、9・11の前にはFEMA(Federal Emergency Management Agency)が最も可能性の高い3つの危機の一つとしてNew Orleansでの洪水被害を挙げていたそうです。)
  • 洪水被害にあった人たちは、低所得者層に集中している。この原因の一つとして、これらの低所得者層は避難勧告を受けても、十分な移動手段を有していなかったことが挙げられる。
  • 移動手段の欠如による災害拡大の可能性については、昨年末の東南アジアの津波災害のときに認識されていて、FEMAの高官が「米国は津波災害の国に比べて人口の移動性が確保されているので安心である」と発言していた。
  • Katrinaは、突然やってきたのではなく、数日かけてフロリダを経由してメキシコ湾岸にやってきたのにもかかわらず、政府は十分な計画を整備していなかった。
  • 救援活動が迅速になされていない。理由の一つとして、一般的にいって、こうした自然災害がなされた場合の、連邦政府と州政府の協調や、軍隊による支援などの手順や体制が確立されていなかった疑いがある。
  • 軍関係のリソースの大きな部分が、イラクに投じられており、軍による効果的な支援活動ができなくなっている。
  • 災害地では武装集団による略奪や暴行が多発しており、救助活動を効果的に行おうにも安全性が確保されない。(昨日は支援物資を運ぶ軍のヘリコプターに対する銃撃があったようです)。
  • 政府の対応のまずさや、「洪水は誰も予測できなかった」とか具体的な救助・復興のプランを示すことができず、抽象論に留まった大統領演説に絡めて、ブッシュ政権への不信感が(少なくともニューヨークの新聞では)強まっている。etc...

まだ漠然とした感じなのですが、今回のハリケーンはBush政権が対テロの旗印の下で直視を避けてきたアメリカ内部の経済的・民族的・思想的・地域的、etc・・・の分裂問題を掘り起こしてしまう可能性があるような気がします。とりあえず、今日はさわりだけですが、今回のハリケーンに関連して今後米国内に生まれてくる問題は、10年、20年後の日本が直面する可能性もあるような気がします。
文中にも紹介しましたが、クルーグマン教授の以下の論説は、とても端的に今回のハリケーンがつきつけた問題とアメリカの今の雰囲気を表しているような気がしますので、興味のある方には、ご一読をお勧めいたします。

Posted by 47th : | 12:20 | 時事

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コメント

前の記事にもコメントしたのですが、こっちの記事も読んだらコメントしてみたくなりました。日本が将来、同じような問題に直面するであろうという点については、まさに、ここ一年くらい、ずっと感じていたことでした。日本でも、今後、貧富の差が拡大し、世の中にストレスがたまりまくった状況になるのではないかと。この点、アメリカは、既にそういう状況に陥っているわけで、社会に蔓延するストレスを、戦争を続けることによって発散してきたように見えます(まったく勝手な感覚ですが)。日本は、アメリカみたいに戦争によって、そういった社会のストレスを発散できない以上、どうなるのか心配です。将来の日本では、社会のストレスがたまりまくり、どんどん異常な犯罪者や現象が現れるような気がしています。

Posted by blackfields : 2005年09月02日 20:00

>Blackfieldsさん
私自身必ずしもちゃんと理解しているわけではなく、また、生かじりしている範囲では必ずしも全面的に同意をするものではないのですが、今回の状況をみていると、(アマルティア・)セン教授の指摘する危機的状況の際の資源配分問題について、もっと掘り下げて考える必要があるのかなという気がしています。

Posted by 47th : 2005年09月03日 01:01

明かな人災ですね。イラク問題のランディングに気をとられていて寝耳に水だったのでしょうか。

米軍の軍事費の使い方くらいヨソモノが口を挟めない出費も珍しいですが、そういうとっぱらいの出費の行き着く先の常というのがありまして、例えば米軍のコーヒーメーカーは1台60万円するそうですね。この値段第一感、比喩的に言って腐臭がします。寄生虫がわいている。米国の軍事費の健全性?について多くのことを語っていると思います。なんでこういうお金が今回の治水に回らないのか、寄生虫の栄養を最終最後誰が支払っていることになるのか、そろそろ他国民も考える必要がありそうですね。経済とはとんでもないところをつなぐもので、もしかしたら我々が払っているのかもしれないですから。

Posted by bun : 2005年09月03日 06:13

>bunさん
ニューオリンズの市長は、まさにそれでぶち切れ状態で、イラクに使う金があるのに、国民を救う金はないのかと、とても市長とは思えない(いい意味ですけど)品の悪さでブッシュ政権を罵っています。
誰もがうすうす気づきながら、「9・11を忘れたのか」という十字軍の御旗の前に直接触れるのを避けていたパンドラの筺を、Katrinaという自然が無理矢理こじ開けてしまったんじゃないかという気がします。
ニュースで、ひっきりなしに流れる映像から感じる「やりきれなさ」というのは、ある意味、9・11の時の映像に匹敵するものを感じるんですが・・・日本では、どんな感じで扱われてるんですかね?

Posted by 47th : 2005年09月03日 11:33

ブログへのコメントありがとうございました。
 47thさんのブログは、とても勉強になるので、毎日楽しみにしています。
 新しいエントリーも書きましたので、よかったら、遊びに来てください。 

Posted by taejunomics : 2005年09月04日 10:26

NHKでも、今回のニューオリンズの状況について「被害が集中した地域は、貧困層が多く・・・」と、今回の被害拡大の原因としてやんわりと所得格差の問題を指摘しています。画面に出てくる被災者のコメントも、「逃げろっていっても、そんなカネないよ」、「ガソリンが高くて車も使えないし・・・」と、避難勧告以前の生活レベルの方が多かったことが伺えます。

嫌な話ですが、阪神大震災の時、実は行政が最も頭を悩ませた一つとして、遺体収容先の確保だったそうですね。折りしも防災の日の前後であることや、7月に震度5の揺れがあったことから、三越、高島屋といった大手デパートでも防災用品コーナーが設けられています。「自分の身は自分で」ということが基本ではありますが、「ないに越したことはないけれど、必要性が出てきた時は使わざるをえない」というモノこそ、実は災害など緊急性の高い場面では最も必要とされるのではないでしょうか。しかもそういう物に限って個人ベースでは対応できない物が多いのではないかと思うのですが、地方にしろ中央にしろ、遺体収容所が必要になるレベルまで、本当に想定しているのか、甚だ疑問です。

いろんな意味で、海の向こうの他人事とは思えません。

Posted by 悪童 : 2005年09月04日 21:37

47thさんへ
久々のニューヨーク、人ごみがすごくてびっくりしましたが、明日が休みのせいですかね。
経済の問題と考えれば、原油価格がこの先どうなるのかという問題が注目されたりするわけでしょうが、47thさんが重視しているように、アメリカのシステムそのものに対する見直しというか本来の機能回復が問題とされる契機になり得るのかもしれませんね。その意味ではパンドラの箱というのはそのとおりなのだと思います。でも、そのような議論以前に、あの本州と同程度のエリアでいまだ放置されている状況があるというのはほんとに何とかならないものか・・・立場を超えて皆さんが思っているんだと思います。いずれにしろ被害者の皆さんには「合掌」であります。

Posted by ろじゃあ : 2005年09月04日 23:34

>悪童さん
人間ってネガティブなことは考えたくないものですが、事前に冷静な視点できちんとネガティブ面を見つめることが、いざというときの被害の拡大を防ぐことになるんですよね。
ちょっと前にファシズムがどうたらこうたらという話を書いたのですが、「テロとの戦い」の「大義」の前に所得格差の問題や地域の危機管理の問題へのリソースの配分が否定されてきたとしたら、(まあ、第二次大戦の時のファシズムと一緒にすると怒られちゃいますが)やっぱり、アメリカですら(アメリカでこそ?)全体主義的な発想からは自由ではいられないということなのかなという気もします。
日本では、過去にルイジアナのような状況は起きなかったということは、将来的にも起きないことを何ら保証するものではないわけで、特に日本の場合は人口密集地域直撃の地震の場合について、直接的な被害のみならず、こうした二次的、三次的被害、あるいは、そういう事態におけるリソースの適正配分のあり方について色々と考えるべきことがありそうですよね。

Posted by 47th : 2005年09月06日 16:38

先日、羽田上空から東京を見る機会がありましたが、海とこれだけ首都機能が近いのだと、改めて感じました。東京の場合、水害もさりながら例えば巨大地震で湾内のコンビナート崩壊→海に石油流出→引火ということもあり得るよな~と、映画の話のように、いくらでも災害が想定できそうな気がしました。

日曜日にあった集中豪雨でも、杉並(大丈夫でしたか?)あたりの水没は、かなりひどかったらしく、水道橋あたりに神田川の遊水スペースや、幹線道路の下に排水施設を作ったりと、対策を講じた後でも被害が出るわけですから、いわんや・・・。

アメリカの現状について、これもNHKが8月に被爆問題をシリーズで放送していた時に触れていたのですが、国内でだんだん平和主義を主張することが難しくなってきている、と平和活動家のコメントとして取り上げられていました。そりゃ一歩先んじれば、反戦、引いては現政府批判ということになる訳ですが、一般国民の間でも「それならテロ攻撃を認めるのか」みたいな風潮があるようですね。

と・・・相変わらず、テレビ聞きかじりの知識ばかりでお恥ずかしいのですが、また現地の様子など、いろいろなテーマを上げていただくと、うれしいです。

Posted by 悪童 : 2005年09月07日 02:20

 
法律・経済・時事ネタに関する「思いつき」を書き留めたものです。
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