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サックスとアンジェリーナ・ジョリーの重荷 (1)

花粉症のせいか、何か昨日ぐらいから、また目がしょぼしょぼして頭が痛くて、予習もはかどらない・・・と、ブログでぐちをこぼしてもしょうがないんですが、そんな中、昨日の夕方、同時刻帯に行われた予備校によるNY Barの説明会をぶっちして、行ってきました。

何に?・・・前にもこのブログで紹介したWilliam Easterlyが"Elusive Quest for Growth"に続く新刊"The White Man's Burden: Why the West's Efforts to Aid the Rest Have Done So Much Ill And So Little Good"を発表したということで、その発売記念講演会です。
(なお、Foreign AffairsでSenがMan without Planという書評を書いています)

そらまめさんによると、タイトルの"The White Man's Burden"という言葉は19世紀末の詩ということです。wikipediaで見てみると、一見すると帝国主義を称揚しているようで、実は、それを韜晦した詩ということのようです。

昨日のBook Eventで買ったばかりなので、もちろん、まだ読んでいないのですが、プレゼンの内容からは、帝国主義(?)を称揚しているのはタイトルだけで、あとは徹底的にこきおろしているようです(笑)。

この本についての、ちゃんとしたレビューは専門家の梶ピエール先生の続稿を待つとして、私は、プレゼンの中身についてメモと感想を。


開発をめぐる2つの悲劇

Easterlyのプレゼンテーションは、まず、自分の本ではなく、Easterly以上に著名なエコノミストの著書の紹介から始まります。

それが、Jeffrey Sachsの著書"The End of Poverty: Economic Possibilities for Our Time"です。(・・・というか、だったはず。実はメモっていないので、プレゼンのときに、「あのSachsの新著ね」と勝手に思いこんだだけで他のだったら申し訳ありません)

先日Boardersに行ったときに見かけたので買おうかなとも思ったんですが、そのうちバーゲンが始まるだろうと思って購入を見送ってしまった本です。ということで、これまた未読なんですが、Easterlyは、SachsとU2のBonoの”It's up to us"という言葉をひいて、(おそらく皮肉をこめて)これが"White man's burden"を表現していると述べ、開発をめぐって「二つの悲劇」が起きていると述べます。

Easterlyは、この本でSachsが指摘することー未だに世界にはたった10セントの薬があれば救うことのできる命が極度の貧困の中で失われているということを「第一の悲劇」として指摘します。

その上で、二つめの悲劇として、この状況を改善するためになされた過去50年間の2.3兆ドルの援助が、たった10セントの薬についてすら何も達成できていないことを、「第二の悲劇」として指摘します。

Easterlyは、Sachsが深く関与して作成されたUNのMDGs(Millenium Development Goals)は、第一の悲劇に対して、「更に金をつぎ込むこと」が処方箋だと信じているが、それは「第二の悲劇」をより深刻化させるだけに過ぎないとして激しく批判します。

そして、「第二の悲劇」が深刻化する要因として「"FIA"の欠如」をあげます。

”FIA"というのは、Easterlyの造語で(ちなみに、Easterlyは「”FIA"というのは、皆聞いたことがないと思うけど、"CIA"よりも、もっと秘密性の高い機関なんだよ」とかいったユーモアを交えて話すので退屈しないんですよね)、"Feedback""Incentive""Accountability"の頭文字を組み合わせたものです。

Easterlyは、UNのプランは、いくつもの素晴らしい目標やプランが提示されているが、誰一人としてその実行について責任を負わない仕組みになっているといって、一種の悪徳商法(Millenium Development Scam)だと呼んで、激しく批判します。

Planners vs Searchers

Easterlyは、Sachsのように、DCやニューヨークで、机の上で貧困撲滅のための素晴らしい設計図を描こうとするエコノミストを"Planners"と呼びます。

彼らは、世界からの貧困の撲滅という壮大な夢を与えてくれる上に、(そのためには実に多くの関係者の関与が必要ということを理由として)結果として、お金さえ出せば、そのお金の使い方について誰も責任をとらなくても済むスキームを提案するので一般受けがいいーそういって、EasterlyはSachsと並んでPlannerを代表するエコノミスト(?)としてAngelina Jolieをあげます。

「貧困の撲滅のために、先進国はもっとお金を出すべきだ」-ところが、実際には過去50年間のデータを見れば、援助額と経済成長には(変数のコントロールをした後でも)無関係どころか、負の相関があることが分かっているとしたらどうでしょう?

あるいは、2000年に設定したMDGsの目標が2005年の評価において、全く達成されていないことが判明したとしたらどうでしょう?

Easterlyは、3つの考えられる選択肢をあげます。

  1. 目標不達成について説明責任を求める
  2. 援助額の増大を求める
  3. SachsとAngelina Jolieの共演したビデオクリップをつくる・・・

もちろん、実際に起きたことは、2と3です。
先進国のエコノミストの叡智を集めて作成したはずの計画とそれに基づく巨額の資金援助が効を奏していないことを実際に目の前にしながら、Plannerの対策は、より多額の資金援助を求めることと、Angelina Jolieと一緒に貧困撲滅の夢を売ることだった・・・これがプロ野球チームの監督やプロサッカーチームのマネージャーだったらどうなるのか考えてみるのは、なかなか興味深いところです。
巨額の補強費を5年間投じた後で、「もっと補強費が必要だ」とか「ファンをつなぎとめるためにカリスマ・タレントを使ったプロモーション・ビデオをつくろう」と提案する監督宣伝広告をするべきだと主張する監督やマネージャーがいたとしたら、どう思うか?・・・まあ、答えは言うまでもないはずですが、プロスポーツチームの運営と開発の世界は全く違うので、どうも同じ常識は通用しないようです。

・・・と、脱線してしまいましたが、ここまではEllusive Quest for Growthでも述べられていたところと基本的に同一の路線です。
ここからの代替策の提示が、少し目新しいところですが、若干長くなってきたので、この辺りで一回区切りましょう。

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Posted by 47th : | 12:06 | Law & Development

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トラックバック時刻: 2006年03月23日 05:55

コメント

引用まで頂いてありがとうございます。
写真つきでサックス、ボノ、アンジェリーナ・ジョリーをこき下ろす(?)といって言いか分かりませんが批判するプレゼンスタイルは私にとっては衝撃でした。聞く立場としては面白いことこの上なかったのですが。
シリーズ楽しませてもらってます。

Posted by そらまめRRZ : 2006年03月23日 01:00

>そらまめさん
少なくとも外見や話しぶりからは、そんな攻撃的な人とは思えませんよね。
一般受けを狙ったのか・・・それとも、実際に開発の現場に携わっている人間として、想像以上の苛立ちを感じてきたのかも知れませんね。

Posted by 47th : 2006年03月23日 15:05

 
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