NYUよいとこ一度はおいで? [ 2006年03月23日 ]
3月も半ばになると、そろそろ上位校も含めてロースクールの合否も出てきます。
アメリカのロースクールの合否というのは大学の成績の占める割合がかなり高く、複数の上位校から入学許可が出るものです。どこを選ぶかというのは実に贅沢な悩みで、脇から見ると「その中ならどこでもいいじゃん」とも思うのですが、本人にとっては結構深刻なものです。
一番簡単なのはランキングですが、これは基本的にJD(学部生の3年コース)を意図したものであったり、ランキングで重視されるポイントに偏りがあったりということで、特に上位校の間ではランキングだけでは決め手にならないこともままあります。
というわけで、最近メールをくれた友人を含めて「贅沢な悩み」を抱える方々の参考までに、私の通うNew York University(NYU) Law Schoolを念頭に置きながら、Law School選択のポイントについて。
何をしたいのか?
やはり基本は、留学中に「何をしたいのか?」というところです。
もちろん、学生の本分は勉強なんですが、学校で学ぶことだけが勉強とは限りません。
英語でコミュニケーションをとる能力を向上することも大事ですし、そもそも異文化の中でそこに溶け込んで生活するということも留学の一つの大きな醍醐味です。
また、実務家になってからの激務で疲れ切った心身を癒したり、家族との時間を持つということも大事でしょう。
こうした色々な目標のバランスや優先度を考えてみることは大切です。
さらに、そもそも異国での生活というのは、それなりに大変です。環境の変化への耐性とか社交性とか、食べ物の好き嫌いとか、そういう日常のストレスに対する自分の適応能力とも相談しないといけません。
向上心に富んでいても、生活の負荷が大きすぎて体調を崩しては元も子もありません。
こういう点からNYUを考えると・・・まず、言えるのは「日本人が多い」ということでしょう。
これはNew Yorkという街自体としてもそうですし、NYUのロースクールに限ってみてもそうです。
・・・ということは、飲み会もついつい日本人同士になってしまったり、ロースクールでも日本人同士でのつきあいが深くなることになります。
私の場合、その前1年間アメリカの法律事務所に勤めているときに、性格的な問題もあるんですが、(日本好きなアメリカ人を除いて)普通のアメリカ人とプライベートでがんがん飲みにいったりするのは難しいし、逆に、表面的に付き合う分にはそんなに気合いを入れなくても何とかなると割り切ってしまったところあるんですが、もっと交友の幅を広げたいと思っている人や英語力を伸ばしたいと思っている人にとっては、ちょっとつらいかも知れません。
(まあ、周りに外国人はいくらでもいるので、日本人とのつきあいを少なくして、積極的に外国人に交わるということも可能なはずですが、人間の意思力というのは意外と弱いのですね。これが・・・)
逆にいえば、勉強を中心にと考えている人にとっては、生活面でのストレスがそれだけ少ないということも言えると思います。
日本人相手に授業の内容について議論をしたり、愚痴をこぼしたり、焼き鳥と日本酒で飲むということも簡単です。
そういう意味では、私にとっては、余計なところにエネルギーを使うことなく自分の好きな勉強に邁進できるという点は、結構メリットになっているような気がします。
次にいえるのは「都会である」ということでしょう。
何が言いたいかというと、いいレストランや飲み屋も豊富にあり、ミュージカルとかジャズ・クラブもあったりと、そういう形での遊びには困らない一方で、気が向けばちょっと車にのってゴルフに、とか、ショッピングモールに一日買い物に、とかいったことは難しいというところです。この辺りも、どういう生活スタイルを目指すのかというところにかかわってきます。
(もっとも、NYでも車で1時間も走れば素晴らしいゴルフ場はいくらでもあるので、一度慣れてしまえば結構行動範囲は広がるのですが)
あと、NYの中でもコロンビアとNYUでは若干雰囲気が違います。コロンビアはいわゆる「キャンパス」がちゃんとあって、大学構内と外の区分けがはっきりしているのですが、NYUはそうではなく、ワシントン・スクエア周辺の街の一角に関連施設が集まっています。
そういう意味では、ちょっと風情に欠けるところもあるのですが、NYUは、少し歩けばUnion SquareでVillageやSOHOに囲まれた賑やかな地域にあり、個人的には、この雑多な感じがとても気にいっていますし、食事をするところにも困りません。
何を学びたいのか?
と、少し脱線してしまいましたが、学生の本分である「勉強」ということに関していえば、まずNYUの「弱み」から見てみると・・・
一つめは「会社法」の講師陣が若干弱いところです。
論文的にはKahanはいいところなんですが・・・授業は余りimpressiveではないという噂も聞きます。
もっとも、その辺りはどうも自覚があるらしく、昨年はYaleからRomano、今年はHarvardからCoatesを呼んで、しっかりと補強しています。今年は誰かまだ分かりませんが、流れから言うと、①HarvardからKraakmanかRoe、②UTからBlack、③大穴でBebchuk・・・辺りではないかと勝手に予想しています(笑)。
何といっても、現在のNYUのCorporationのDirectorは大御所Allen(元Delaware Chancery)ですから、その辺りの人脈は相当にあるでしょうし、何だったらAllen自らという手もあるかも知れません。
また、会社法関係のゼミも若干手薄な印象を受けます。
率直にいうと会社法関係を厚くやりたいのであれば、同じNYでもColumbiaの方がいいかも知れません。
これまた私の場合は、会社法関係はちょっとお腹いっぱいなところもあったので(笑)、余り気になりませんでしたが。
もっとも、伝聞ですが、証券取引法を教えているChoiの授業をとった人の話では、相当によかったらしいですし、ゼミもやっているようなので、それをとるといいのかも知れません。
・・・で、次は「強み」ですが、まず言えるのは、コースの多彩さではないかと思います・・・といっても、他のロースクールのカリキュラムと比較したわけではないので、何とも言えませんが、例えば、Behavioral Law & Economics やLaw & Developmentをゼミではなく、コースとして提供しているところは、やはり珍しいのではないでしょうか?(他にもLaw & Animalとかありましたが)
今まで自分の考えたこともなかったものの見方を教えてくれる授業が豊富にあるというのは、私にとっては結構大きな魅力ではないかという気がしています。
次に、Trade RegulationとTaxは相当に充実しています。この何れかに興味がある人にとっては、非常にいいのではないかと思います。
あと、Stern(ビジネス・スクール)の授業をとることができるのもメリットです。Sternでは、M&AやRestructuring、Corporate Financeといったコースがロースクールの学生にも開かれている上に、今期の私のようにregression analysisの授業を聴講するということもできたりします。
もう一つ、NYという土地柄、実務家と接する機会が多いのもメリットです。前期のゼミでも実務家がゲスト・スピーカーとして3度ほど来てくれましたし、後期のゼミでもやはり4人の実務家がゲストとして来て、色々と議論をすることができました。
最後に、もうこれは印象だけなんですが、何というかNYUには在野精神みたいなものを勝手に感じています。
最近紹介しているEasterlyは経済学部の教授ですが、Harvard系の主流派に喧嘩を売ってみたりとか・・・教授陣も自分よりも年下だけど抜群に頭の切れるのが教えているとか・・・なんかestablishされていない感じがあって、そこが個人的には好きだったりします。
色々と理屈はつけましたが、自分のことを思い出すと、最後に選ぶときには、何となくそうしたestablishされていない、これから伸びていくという雰囲気に惹かれていたような気がします・・・で、実際に入ってみて、ますます好きになったと(笑)。
長くなりましたが、「贅沢な悩み」を抱えている人への何かの足しになれば幸いです。
なお、これを読んでいるNYUの同期・卒業生、あるいは他校の方々のコメント・TBも歓迎いたします。
Posted by 47th : | 23:49
| Law School
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メールをした友人ってほかにもいるのかなあと思いつつ、せっかくこのようなエントリーを立てていただいたので、多少考えていることを。何をしたいのか、というのは根本的ででも一番難しい問いかけですね。限られた時間で欲張りすぎても何もできないし、逆に目標を持たないと短い時間でただ何となく過ごしたことになってしまいそうです。環境適応能力という点では、幸いにして雑草のような生命力を持っているのであまり心配していません。現在の職場も普通の人よりは外人が多いので、外人と付き合う面倒臭さも分かりますし、でも逆に通常の日本人よりはそれをあまり気にしない自分もいたりします。場所はNYかそれ以外かという点では、むしろあえてNY以外のアメリカを見てみたいという気持ちもあるのですよねえ。勉強については、これはアメリカで学ぶということに限られないのですが、仕事上いろいろと経験してきたことをそろそろもう一度じっくり勉強することで自分の中で整理してみたいという気持ちがあります。だから、最新の議論もいいですけど、何か自分の背骨になるような基本的だけど本質的なものを一つでも学びたいなあという漠然とした思いがあります。確かに47thさんにメールはしましたけど、人に聞いて答えが出るものでもないということはよく分かっていますので、悩むことのできる選択肢が多少はあることに感謝しつつ、もう少しの間悩んでみようと思います。
Posted by taka-mojito : 2006年03月24日 10:02
47thさんがNYUに決めたと聞いたとき、「日本人社会でもNYUは伸びるなあ」と思いました(笑)。あ、それから、ゴージャス系多趣味のtaka-mojitoさんがNYに来たら、勉強は難しいかもしれませんよ(笑)。
Posted by ぶらっくふぃーるず : 2006年03月24日 11:36
>taka-mojitoさん
悩んでいる間が一番楽しいのも事実ですので、思う存分お悩み下さい(笑)
>ぶらっくふぃーるずさん
いや、taka-mojitoさんなら睡眠時間を削ってでも、勉強もしつつNYを味わいつくすことでしょう(笑)
Posted by 47th : 2006年03月24日 15:06
住宅コストがべらボーに高い?ことを伺っておりましたので(^^;)それをを除けば、いいことが多いよなあって印象を受けました(^^)。
Posted by ろじゃあ : 2006年03月24日 18:10
本題からはそれるかもしれませんが・・・本当は出願のときにもっと考えるべきなのでしょうが、実は、ロー・スクールの合格通知が2月・3月に届き始めてから初めて、より真剣に、具体的に、かつ、深く、「何のために留学するのか?」、「アメリカで、ロー・スクールで何がしたいのか?」ということを悩み始めてしまったことを思い出しました。その答えを見つけるために、ブログを書き始めたようなものです(笑)
Posted by fantasticmomonga : 2006年03月24日 22:28
>ろじゃあさん
そうそう、ベラボーですよ(笑)。
ただ、NJなんかにすると大分状況は変わるみたいです。
>モモンガさん
出願のときは、なかなかそこまで気が回らないですよね。
ある意味、どこであれ、そこでうまく適応していくものという面もありますよね。
ブログによる自己発見って、結構効果ありますよね^^
Posted by 47th : 2006年03月25日 13:48
>JD(学部生の3年コース)
とありますが、JDは法学博士の3年コースですよね?
Posted by PhD : 2006年10月03日 03:06
>PhDさん
アメリカの法学制度というのは、ちょっと歪んでいて(笑)、JDはJuris DoctorということでDoctorという名称こそ付きますが、他国でいえば法学の専門教育としては最初の過程で学士やunder graduateに当たります。
噂では、昔は普通にBachelorだったのが、ヨーロッパに行くとDoctorの肩書きがないと馬鹿にされるということで、Doctorを付けることにしたとか何とか・・・
何れにせよ、日本で言う法学士がJD、修士がMaster (LLMと呼ばれる外国人向けのコースもMasterの一種です)となっていて、いわゆる博士課程はSJDと最初に「S」が付くことになっています。
なので、アメリカ人でJuris Doctorと言ったからといって、「博士課程終わったんだ」と思うと、大きな誤解になるわけです(というよりも、アメリカ人はそうした誤解が狙いでこういう名前をつけたようですが(笑))。
Posted by 47th : 2006年10月03日 11:49
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