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フィードバックとトライ・アンド・エラー

個人情報保護法1年、識者から「法改正必要」の指摘も (Yomiuri.net)

個人情報保護法が全面施行されて1日で丸1年。
 法制定にかかわった国会議員や政府の検討部会などの委員を務めた識者らに、読売新聞がアンケート調査したところ、回答者の多くが、相次ぐ過剰反応や公益情報の非開示を懸念し、運用見直しだけでなく法改正の必要性を感じていた。・・・

回答者のうち、「保護法の運用は適正」としたのはゼロ。混乱や不適切な運用が、「一部」または「かなりある」が30人、「そもそも法に欠陥がある」が5人だった。
 必要な対策(複数回答)については、「法の趣旨や必要な情報提供への理解を求める啓発」「明確な解釈指針」が各16人、「実態調査」「省庁の指針見直し」が各14人だった。
 33人は何らかの法改正が必要と指摘。「行政機関個人情報保護法に、情報の有効利用、公益情報提供についての規定を盛り込む」「公益情報を共有可能にするため、個人情報の保護の範囲などを見直す」は、いずれもその半数を超えた。
 過剰反応や不適切な運用の原因では、「個人情報を悪用した犯罪など治安悪化を背景に、住所や氏名も明かしたくないという意識が広がっている」が 24人と最多。国や自治体のPRや研修不足で、「法の趣旨が理解されていない」が22人、「法や条例の適用範囲や解釈に混乱がある」が18人に上った。

昨日の記事とも関連しますが、「「運用は適正」としたのはゼロ」という結果は、法案作成段階での政策立案能力や立案過程という面から考えると何とも寂しいところです。

ただ、法令というのは、先に実験室で実験してみてからというわけにはいかないのも確かなところです。
やる前から「ああでもない、こうでもない」とこねくり回し過ぎたり、(実際には達成し得ない)最適解を追及しようとすると、結局現状維持のままということにもなりかねない・・・ということを、昨日の記事にTBしていただいたgo2cさんの記事を読みながら考えていたところだったので、個人的にタイムリーな話でした。

こうして実際の運用に関してフィードバックを得て、それによって法令が修正されていくのであれば、多少思い切った方向で舵を切ってみるというのもいいんだと思います。

もっとも、誰もが「おかしい」とか「悪法」だと思っていても、一度既成事実化してしまった現状を変えるための労力が余りに大きく、結局、「悪法」が「悪法」のまま放置される状態になる可能性もあるわけで、その辺りは気をつけて見ていきたいところです。(なお、これは一般論の話で、個人保護法が「悪法」だと言っているわけではありません。為念)

事前の政策立案については慎重さを欠いて大胆に行動しておきながら、それを改める段階ではあれこれと理由をつけて尻込みするという組み合わせが一番まずいんで。


Posted by 47th : | 14:01 | Foundations of Law

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47th氏のふぉーりん・あとにーの憂鬱のエントリにて、個人情報保護法に関する記事が紹介されていました。以下、元記事を引用します。 個人情報保護法1年、識... [続きを読む]

トラックバック時刻: 2006年04月04日 09:50

コメント

 コメントありがとうございました。
 自分は、試験的な実施(トライアンドエラーってようするにそういうことですよね?横文字苦手なんで)には反対です。例えば、情報公開法のような行政をはじめとする国家権力を対象としたものなら分かるのですが、駐車禁止の厳格化のような一般人相手のようなものでは、特に反対です。
 なぜなら、27年日本に住んでいて、一度決められたことは、なかなか変わらない国であると感じているからです。まあ日本という特定の国について考えなくても、一般論として、国家権力は自らを縛らない法規性の緩和に消極的になる、ということは考えられるのではないでしょうか?国家権力にはそれをする動機がないですから。だから、私人を対象とした法規性のトライアンドエラーって、ちょっと危険な気がしますが、どうでしょうか?
 ですから、このエントリの後半の47thさんの懸念のほうが現実的なのかな、という感想を持ちました。
 

Posted by すべりしらず : 2006年04月04日 09:37

若干異なる視点ではあったのですが、TBをさせて頂きました。

今回の個人情報保護法の話や駐車禁止の厳格化のお話を通じて、立法過程でも政策運用過程でも「フェア」ということがもっと大切にされることが必要ではないかと感じています。

特に、国民が国家に対して「フェアである」ことを強く求めていけば、国家(≒政権与党?)に対して「悪法を改める動機付け」になっていくのではないか・・・というのは楽観的過ぎる考え方でしょうか?

Posted by Swind@立石智工 : 2006年04月04日 10:06

>すべりしらずさん
日本語だと試行錯誤ということになるんだと思いますが、現状維持をよしとするバイアスは、逆に現状が非効率な状態であっても、変化によるメリットが明らかな場合のみしか動かないという状況ももたらしますよね。
今の状況が余り変わらないのが望ましいということだと、そうした現状維持バイアスを維持ないし強める方向の考え方が有効だと思うのですが、私自身は、社会の変化のスピードを考えると、日本の現状維持バイアスが強すぎるのではないかと思っていて、積極的に試行錯誤していく姿勢があれば、それを評価していきたいなと考えています。
>Swindさん
TBありがとうございます。
非常に示唆に富むお考えだと思います。ただ、問題は何を「フェア」と見るかというところですよね。
例えば駐車禁止の運用でも画一的にやるのがフェアなのか、それとも、状況に応じた柔軟な対応をやるのがフェアなのか・・・フェアという概念が、色々な場面で重要なことは実は実証研究でも確かめられているのですが、そのフェアの概念をどういう具合に規定して政策の導入していくのかというところについては、アメリカの議論をみても錯綜しています。
何れにせよ、非常に重要なお話ですので、機会があればその辺りの議論も何れ紹介したいと思っています(・・・と、宿題が積み上がっていく・・・)

Posted by 47th : 2006年04月04日 12:10

 
法律・経済・時事ネタに関する「思いつき」を書き留めたものです。
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