さて、なぜ過剰取立は起きるのか?(イントロ)に対しては、非常に素晴らしいコメントを頂きありがとうございました。
実際、いつものごとく私が考えていたネタのほとんどは言い当てられてしまったわけですが、私が当初考えていたのは、次の4つのシナリオでした。
- 対Strategic Defult(又は情報の非対称性)
- 集合行為問題(又は囚人のジレンマ)
- シグナリング
- Behavioral Bias(Fairness)
というわけで、それぞれのシナリオについて順々に紹介してみます。

さて、なぜ過剰取立は起きるのか?(イントロ)に対しては、非常に素晴らしいコメントを頂きありがとうございました。
実際、いつものごとく私が考えていたネタのほとんどは言い当てられてしまったわけですが、私が当初考えていたのは、次の4つのシナリオでした。
というわけで、それぞれのシナリオについて順々に紹介してみます。
Strategic Defaultというのは、日本語にすると「戦略的債務不履行」という何かオモイ言葉になってしまいますが、要するに「本当は支払余力があるのに、もう返せまへん」と白旗をあげてしまうことを指します。
典型的には額縁の裏にへそくりがあるのに、借金取りに向かって「もううちには1円もないんです」と泣きつく構図ですが、ほかにも、アルバイトでも何でもして返済原資を調達する可能性があるのに、職につかずにぶらぶらするというのも、これに当てはまるでしょう。
このとき、借り手自身は自分の返済能力の有無を知っていますが、貸し手は、借り手の返済能力に対する情報を持っているとは限りません。
そのため、例えば、本当に返済能力がないのか、それとも、戦略的に返済能力がないことを装っているのかというを判別するために、(そんなことをしていいという意味ではありませんが)、本当に返済原資になる資産を持っていないのか畳をひっくり返して家捜しをするとか、行動を監視して隠れて高価な買い物をしていたりしていないかという形で、いわば一種のデュー・ディリジェンス(もっとも債務者や社会通念からみて、それが「デュー」(適切)だとは思えませんが)を行うことが考えられます。
あるいは、もっとシンプルに、債務者に有形無形の圧力をかけて、債務者自身にとって「戦略的行動」が割りに合わないと感じさせることも、経済学的には「合理的な」対応ということもできそうです。
こうした戦略的不履行が、実際にどの程度あり得るかは何とも言えないのですが、以前紹介したMicrofinanceが低所得者層への高利貸付でありながら90%を超える回収率を誇っているのは、こうした戦略的不履行を防ぐ仕組みを持っているからであると分析されていることを考えると、このシナリオも荒唐無稽というわけではないように思えます。
また、Microfinanceの文脈での議論を考えると、保証人による保証、短いサイクルでの督促・取立て、近隣に見える形での督促は、それぞれMicrofinanceで行われているGroup Lending、Frequent Repayment Installments、Public Repaymentに相応するメカニズムとして機能しているとも考えられます。
但し、Microfinanceでも指摘されているように、こうしたメカニズムは戦略的不履行の可能性を低下させる一方で、実際に返済能力を持たない債務者を苛酷な状況に置くことになります。
戦略的不履行を低下させるためのインセンティブ設計と実際に返済能力を持たない者に生じる苛酷な状態は常にジレンマにあります。その中で、仮に業者による苛酷な取立を抑制することを優先するのであれば、破産宣告の要件緩和と免責の要件厳格化を組み合わせながら戦略的不履行を行うことが債務者の割りに合わないようにしつつ、その過程の中で返済能力が現実にないことを債務者が証明できた場合には社会保障的な枠組みで救済を行うような方向性が考えられます。
実は、破産宣告の要件緩和と免責の要件厳格化は、昨年の米国の個人破産制度改正の方向性でもあり、これは近年の消費者金融の回収率の低さに対する対応としてなされたものです。勿論、背後にはクレジット・カード業界のロビーイング活動などきなくさい話もあるわけですが、単純に業者の行為規制を厳格化するだけでは戦略的不履行を防げなくなり、ある意味、より消費者にとってシビアな政策が必要になってしまう・・・そういう政策判断における対症療法の限界を示している事例だといったら言い過ぎでしょうか?
ただ、私自身は、日本の状況については、もう少し中道の途もあるのかなとは思っています。これは、次の集合行為問題の解決とも重なるので、それと合わせて考えてみましょう。(続く)
Posted by 47th : | 11:18 | Law & Economics
