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貸金業者が売っているものは何なのか?

neon98さんに反論してみる・・・の巻で直球を投げ込んでみたところ、neon98さんから「市場」が成立することのメリットとデメリットというピッチャー返しを頂きました。

neonさんは「化学反応はたぶん生まれないと思いますが、お許しください」とご謙遜されますが、neonさんの次の文章を読んだときに、私はある意味「なるほどこれかぁ」と思ったわけです。

私が根本的に違うなと感じる、敢えて言うならこの点を無視して議論するのはナンセンスだと思うのは、

「装飾品市場を考えると価格が高いグッチやエルメスはリッチな人が買うが、消費者金融市場を考えると価格が高い高金利商品は貧しい人が買う」

という点です。金銭に個性はありませんから金融商品として設定できる個性は限定されています。無担保かつ審査を厳格にせずに迅速に貸し出しをする市場においては、貸し手の調達金利を無視すれば、ほぼ借り手の信用力によって商品の価格(=金利)が決まります(マクロ的要因はこの議論では無視してよいでしょう。)。つまりはいい商品を高く売るのではなく、同じ商品を貧しい人に高く売るわけです。

neonさんが、消費者金融を、「いい商品を高く売るのではなく、同じ商品を貧しい人に高く売」っていると考えているのであれば、上限金利規制は当然の話になります。しかし、ロジックで考えれば、「同じ商品」を「貧しい人にだけ高く売りつけることができる」状況は、①貧しい人に、より安い価格で売りつけようとする競合する売り手がおらず(あるいは価格協定が成立している)、かつ、②「安い価格」で買うことのできる「金持ち」が貧しい人に利鞘を乗せて売却する裁定取引の機会がないことが最低限必要です。

しかし、高所得者層に売る商品と低所得者層に売る商品が「同じ商品」=「金銭」であれば、誰でも「金銭」を持っている人であれば消費者金融に参入できるはずで、少なくとも①の前提は成り立たないはずです。ここに、経済学からみたときの、neonさんの誤解が潜んでいます。いえ、neonさんに限らず、ファイナンスにも造詣の深いTeajunさんの次の記述ですらneonさんと同じ種類の陥穽にはまってしまっているように思われます。

利子率は要求収益率であって、リスクに見合う分だけとるものだというのは、ファイナンス理論を知っている皆が知る原則だと思います。
どう考えても、僕には、消費者金融が負っているリスク(債務者のデフォルト、訴訟、その他)が、29.2%に見合うとは思えないんですよね。
全然違う投資形態ではありますが、「3件中1件大成功すればよし」とされるPEで30%、「10件中2件成功すればたいしたもの」、とされるベンチャー投資では40%くらいが、平均的な要求収益率です。
さらに社債の格付などでも、29.2%なんてのは、めったにみない数字です。
これらと消費者金融との比較が難しいのは分かりますが、こういった投資を脇で見ながら皮膚感覚的に、やっぱり「29.2%は高い」と感じている僕がいます。

経済学的な観点から見たときに、neonさんとTeajunさんが見落としているものは、「消費者金融業者が売っているもの」の正体です。

金融取引における利子の一要素が信用リスク・プレミアムであることは間違いありません。そして、信用リスク・プレミアムという観点からだけでみれば40%が高い、あるいは100%を超える金利は暴利以外の何者でもないという感覚は理解できないわけではありません。もっとも、どのぐらいのデフォルト・リスクであれば40%の金利になるかというと、1-(100/140)=28.6(%)です。これが、そんなに高い水準かは感覚の違いかも知れませんが、そんなにあり得ない水準ではないように私には思われます。

今、具体的にイメージを持ってもらうために消費者金融業者Xがターゲットとする消費者層の平均デフォルト率を20%としてみましょう。 この場合の信用リスク・プレミアムは25%です。

では、消費者金融業者は、この消費者に25%で貸すべきでしょうか?
答えは否です。消費者金融業者にとって、25%の信用リスク・プレミアムは仕入原価に過ぎません。
金融業者が真に付加価値をつけるのは、信用リスク・プレミアムではなく貸主と借主の間に介在して、両者のマッチングを可能ならしめる金融仲介サービスです。

今、NYで私が突然猛烈な腹痛を覚えたとしましょう。慌てて病院に駆け込んだところ、緊急手術が必要だと言われました・・・が、病院は私の保険では手術費用はカバーされないといいますが、手術には2万ドルかかるといいます。日本には円建ての預金で300万円があるものの、ドル建ての預金は円ドルレートが良くなるのをじたばたと待っていたため、丁度ドル預金は底をつきかけています。私は、苦しみの中で、今私に2万ドルを貸してくれれは必ず返すと言い張りますが、病院は保険もなくアメリカでの勤め先も親類もいない日本人の言うことを相手にしてくれません・・・

今、この瞬間、私のデフォルト・リスクは0%であるにもかかわらず、このままでは誰も私にお金を貸してくれる人はそこにはいません。けれども、病院のスタッフの中に、「必ず返せる」という私の言葉を信じて、私の代わりに銀行からお金を借りてくれる人がいれば私は助かります。

私のデフォルト・リスクはゼロなので、私は、その人に元本さえ返せばいいのでしょうか?
あるいは、銀行から借り入れる際の利息は仕方ないが、それ以上のものは払う必要はないのでしょうか?

そうではありませんよね。
そのままでは手術費用を調達できない私に代わって銀行からお金を借りてくれる人の提供してくれるサービスは、大きな価値を持っています。

消費者金融業者が提供する金利は、信用リスク・プレミアム+この金融仲介サービスの対価です(厳密にいうと、更にtime value of moneyの部分がありますが、本筋とは関連がないので割愛します)。

この金融仲介サービスの対価は借り手の信用リスクの絶対値(期待値)とは直接の関係がありません。
信用リスクの期待値が高くても、その検出のコストが低く回収コストも低ければサービスの対価は安くなるでしょうし、あるいは、絶対額としてある程度のコストがあっても、貸出額の絶対額が大きければ割合としては小さくなります。一般的にいって、企業貸付や大規模な貸付はリスクに関するデータの入手が比較的容易ですし(その究極が格付けですね)、信用補完手段が入手可能であったりする上に、一件ごとのボリュームが大きいので、貸出額に比べてサービスの対価の「割合」は小さくなります。

これに対して、個人無担保貸付けはリスクに関する情報の入手が困難な上に、信用補完手段の入手も容易ではなく、一件あたりのボリュームも小さいため、貸出額に比較したサービス対価の「割合」は高くなるのはむしろ自然なことです。
実際、個人無担保貸付けにおける仲介サービス機能は企業貸付や担保貸付とは異なるノウハウが必要であることが知られています。

従って、デフォルト・リスクとの比較で「適正な」サービス対価(スプレッド)を決めることは、経済学的には全くナンセンスです。むしろ、直観的には、デフォルト・リスクが高い層については、より審査コストがかかるのでスプレッドは線形ではなく、乗数的に増加するとしても不思議はありません。

では、「適正な」サービス対価(スプレッド)はどこから求められるのでしょう?先ほどのNYでの病院の例に戻ってみましょう。

私は、病院のスタッフに日本円で300万円≒2万5000ドル強を1週間以内に必ず払うから、私の代わりに手術代2万ドルを借りてくれる人はいないか探しました。けれども、誰も手を挙げてくれません。そこで私は、1週間で3万ドルを返すと叫びました。すると、おずおずと人のよさそうな事務員が「わかった。おれが何とかしてやろう」と言ってくれました。安心した私の意識は、そこでとぎれました・・・

 

本当に何か不吉な例でいやなんですが、敢えて金利を計算するとすれば、単利計算でも2万5000ドル返済として年利6500%強、3万ドル返済で13000%です。
でも、見ず知らずの日本人の言葉を信じて2万ドルを銀行から借りてあげることの対価として5000ドルは本当に法外な値段なんでしょうか?

でも、いくら「法外だ」と叫んでも、その値段で誰も仲介してくれなければ無駄な話です。
その手間をとるに値するといってくれる人がいて初めて取引は成立します。
これが「市場取引」ということの意味であり、金利が価格という意味です。
より正確にいえば、消費者金融市場の価格とは貸出金利から信用プレミアムを差し引いたスプレッドです。
このスプレッドの値としていくらが適切か?・・・その答えを与えてくれるのが市場です。

だからこそ、私が消費者のデフォルト・リスクではなく、消費者信用市場で超過需要が発生しているかどうかを上下金利規制の水準を図るのに用いたわけです。これに対して、neonさんは、デフォルト・リスクの側から高い・低いを論じているわけで、この点で、経済学的に見ると、消費者金融業者が売っている「商品」を見落としていることになるわけです。

また、neonさんは、その金利の意味合いについても、大切なことを見落としています。

年率40%のローン市場を考えてみましょう。この市場を閉鎖したときに発生する「被害者」って誰なんでしょう?この市場で上限金利規制がなければ融資を受けられ、かつ返済が可能であったであろう債務者?といわれると私の中では???が並んでしまいます。

そうでしょうか?私の中では100%台でもいくらでも思い浮かびますが・・・

今、日々のアルバイトでぎりぎり暮らしを立てている苦学生のA君がいたとしましょう。A君のバイトの支払日は1週間後ですが、そんなとき通学に使っていた自転車を盗まれてしまいました。A君の住んでいるところは不便な場所で自転車がなければ駅までとても辿り着けません。
自転車は1万円あれば買えますが、給料日前の余裕のなさもあって、とても今はそんな出費はできません。さりとて、自転車がないとバイトにすら行けません。
そこで、A君は1万円を前借りできないかとバイト先に相談したところ、事務処理費用として200円がかかるがOKだと言われて、喜びました。

単利、1年50週として、この場合の実質的な年利を計算して見てください。

・・・簡単ですね。100%です(笑)
これが「年利」のマジックです。

一つは、消費者金融は融資期間において相当短かったり、額も少なかったりするものがあるということです。この場合、絶対額としては少額でも「年利」にするとびっくりするような数字になることがあります。

もう一つは、消費者金融における利息の負担の重さは、元本額に対する金利負担によって定めるのではなく、借り手の稼ぎ出すキャッシュフローとの割合で定まるものであって、「投資」と同じ感覚で金利を比べることは何の意味もないということです。

経済学的にいえば、消費者に対する貸付は「投資」ではなく、異時点間の「消費」の選択の媒介という話ですが、要は今の1万円が1週間後の2万円よりもその人にとって価値があるということはいくらでもあるということです。
上の例では自転車が盗まれましたが、会社が倒産するかも知れないし、突然病気になるかも知れない、あるいは、田舎の両親が倒れるかも知れない・・・人間の生活の上では、そうした予期せぬ出費を伴うイベントが存在します。
貯金があれば、そうした場合に対応できるでしょうが、ぎりぎりで生活している人は、そのままでは無理です。
最初の病院の例と同じく、今、手許に5万円があれば田舎の親のところに行けるのに、それが手に入らなければどうすればいいんでしょう?
20%の上限金利の中で、こうした場面でも供給は本当になされるんでしょうか?
1か月5万円20%ということは、消費者金融業者のとれる利息は833円です。
全く貯金もなく定職にもついていないバイトと奨学金でぎりぎり暮らしている学生が、里帰りするための飛行機代が欲しいといっている・・・833円ならよくて、1000円はだめな理由はどこにあるんでしょう?

・・・最初はちょっとだけにしようと思っていたのに、大分長くなってしまいましたし、最後の方は眠くなってきたので、支離滅裂になっているところもあるんですが・・・
ただ、金融サービスというのは、決して金を右から左に流してあぶく銭を儲けているだけの仕事ではありません。
(なお、金融サービスの生み出す価値に関する経済学的な分析は、中里実先生の名著「金融取引と課税」をご覧になると法律家でもよく分かるかと思います。金利を①time value of money、②信用リスク・プレミアム、③金融サービスへの対価に分けるのも、元々中里先生の著書で勉強したものです)
また、消費者金融における「適正なスプレッド」というのは、消費者側のデフォルト・リスクから逆算して出るような類のものではなく、そのサービスにどのような価値を認めるかという、まさに需要と供給の作用によって定めるものです。
目に見えにくいので、分からないかも知れませんが、それへのアクセスが失われてしまった場合に、最も被害を受けるのは貯蓄がないために消費の時点を前倒しにすることができない本当の低所得者層であることは、経済学的なロジックからは、かなり強固な結論だと私は思っているのですが・・・もし、ここまでの経済学としてのロジックにおいて私に思い違いがあれば、ご指摘いただけば幸いです。

もちろん、この基礎的なロジックの上で、①消費者金融市場が競争市場として機能していない、②システィマティックな行動バイアスが存在するという主張はあり得ます。ただ、それ以前の段階で、結構「経済学の基礎的なロジック」が理解されていないような気がしたので、私のできる範囲で、なるべく丁寧に説明してみた次第です・・・でも、これは疲れます。
①と②の議論について、求むヘルプ!の気分です。

(4/22追記)

社説:消費者金融規制 金利の引き下げは当然だ (毎日新聞)

 また、過剰貸し付けは経済学的には供給過剰の状況にあるから起きる。中間整理では灰色金利をなくし出資法の上限金利、年29・2%を金額により年 15~20%となっている利息制限法金利に一本化することを提案しているが、業界は上限金利引き下げは、ヤミ金融の増加を招くと反論している。
  しかし、ヤミ金被害は多重債務がきっかけになることが多く、金利と直接に結びつけるには無理がある。ましてや、中堅以下でも調達金利は4%程度だ。ところ が、金利決定は市場ではなく、業者側が一方的に行っている。利用者は完全に受け身なことを考えれば、引き下げは正当である。

・・・いや、本当に、頭痛と虚しさが・・・ここでいう「過剰貸し付け」という現象と経済学的な供給過剰(超過)の概念が「過剰」という日本語でしかつながっていないこととか、現象として価格を供給者が決定していることと市場メカニズムは全く矛盾しない・・・というか、この理屈なら、業者の決めた値段でしか買えない缶ジュースの価格は市場で決まっていないことになるわけで(笑泣)・・・これだったら「経済学の理論は、現実の多重債務者の姿を見ていないもので意味がない」と切り捨ててもらった方がまだマシです・・・はぁ

 

Posted by 47th : | 02:16 | Law & Economics

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コメント

蛇足ながら。
沖縄で盛んな日掛け金融は、出資法の特例として確か54.75%の金利が認められていますね。回収員が毎日貸付先を回って回収するため、人件費が高いためです。本来は零細業者にしか貸付が出来ないのですが、利息制限法改正以降に増えた新規参入組の中には個人に貸し付ける所もあり、色々トラブルとなっているようです。実態を調べてみられると、利息制限解除後のシミュレーションの一つとして有効かも知れません。

Posted by な : 2006年04月22日 03:35

>なさん
アメリカでは似たようなものとして、Payday Loanというのがあります。こちらは手数料も含めた実質金利で見ると100%以上の実質金利になるのがざらのようです。
確かに、沖縄の事例が興味深いのは、事業者に限っているところですね。その状況であれば、消費者からの需要が出るのは、自然な流れのような気がします。

Posted by 47th : 2006年04月22日 08:32

はじめまして。
おっしゃるとおり、短期の資金提供に対する手数料的な部分が金利として年換算すると高利になるとしても、必ずしも暴利とはいえないと思います。

しかし、手数料的なものであれば、信用リスクに応じた金利という議論とは本質的に異なる話になると思いますし、融資期間に比例させる必然性もないのではないかと考えられます。借入期間が1か月なら年換算50%の金利(実額としては約4%)でも全然OKだとしても、借入期間が1年以上にもなったら、そのような年利で返済するのはやっぱり無理でしょう。法定利息超過分の法的有効性について訴訟になったのもそういう債務者であるわけで、給料あるいはボーナスの前借りの代用のような合理的利用をする顧客とは経済的に連続的なものとは言えない部分があるように思います。

その意味では、手数料的な部分は融資金額には比例させるが期間には比例させず、期間に比例させる部分は貸倒リスクで説明できる水準とするというのが、本来あるべきビジネスモデルということになるのではないかと思います。

うんと冷淡な言い方をしてしまうと、(ここでいう手数料的な部分は別にした上で)超高利でしか借入ができない債務者というのは、自己破産するのが経済学的には最も合理的なのではないかという気がします。そう考えると、そのような債務者は合理的存在とはいえないので、単純な需要供給曲線モデルによる経済学的議論の説明力が十分かどうかという点については一定の留保が必要であるようにも思えます。

Posted by MO : 2006年04月22日 10:10

>MOさん
コメントありがとうございます。
私も「給料あるいはボーナスの前借りの代用のような合理的利用をする顧客」がいる可能性は全く否定していないんですが、政策設計においては、それが個別のノイズに留まるのか、そのノイズがシステマティックに金融市場に歪みを与えていて、経済学による予測と異なる結果が生じているのかどうかということだろうと思います。
個々人の選好選択の余地を広げるということは、結果の分散はそれだけ大きくなるわけで、お小遣い制の方が支払不能に陥る可能性が低いのは当たり前ですよね。問題は、一般国民は自己管理ができないから、そうして選択肢を制限してやることで破産者の出ない状態にしてあげることが望ましい政策なのか、それとも選択の自由を与える中でその不可避の結果として出てくるばらつきを受け容れるか(その上で社会的なセーフティーネットの枠組みの政策立案をしていくのか)ということではないかと思っています。
要は、親が子供のお小遣いを1日単位でコントロールしてあげる世界より、1か月まとめて使うタイミングは自由に決めさせた上で、明日の遠足のおやつ代がなくなったと駆け込んできたら、きつく説教をしながらも遠足のおやつ分は別に渡してあげる世界の方が個人的には好きということなんでしょうね。

Posted by 47th : 2006年04月22日 19:03

はじめまして。いつも勉強させていただいております。この問題については、借地借家法のときのように法律家と経済学の議論がすれ違わず、噛み合った議論が行われると良いなと思っています。先生の議論はそういう点からも期待しています。
さて、本問題は上限金利を設けるかという点と設けるとしたら何%が良いかにわけられると思います。前者は理論的な問題、後者は実証的な問題になりますね。おそらく前者は、ゴリゴリのマネタリスト以外は反対はしないと思います。問題の本質は後者だと思うのですが、消費者金融に対する偏見?が影響したのか格差社会論のスケープゴートになったという印象があります。多くの人は普通に借りて普通に返済しているはずだから(システムとしては正常に機能しているのではないか)金利は現行制度とし別の規制を導入してはいけないの?という疑問があります。
個人的には1980年にプライムレートが9.5%だったことを考えると、100万以上15%はキツイかなと思います。
あと、金融庁の懇談会の吉野座長が個人的感想として、「委員に消費者金融関係者がおらず議論の中立性を欠いている」と指摘した点は気になります。

Posted by 初心者 : 2006年04月22日 21:33

>初心者さん
私がごりごりのマネタリストかどうかはともかくとして(笑)、ブログで議論しているうちに、上限金利規制は結局時点選好に対する規制の一態様ですから、消費者金融の金利だけ規制することは歪んだarbitrageを誘発してしまうだけなので、いっそ撤廃してもいいんじゃないかという方向に心が揺れています。
仮に設けるとしても、今の日本のフレキシブルな与信を全否定して、最低借入期間と最低借入金額を同時に設けるのでもない限りは出資法基準の40%が29%に下がったことにより中小消費者信用の供給が急激に閉じてしまったことからすれば、旧出資法基準は最低ラインだろうと思っています。

Posted by 47th : 2006年04月22日 22:32

こんにちは。関連する豆知識として、銀行の手数料の年利を計算してみました。

銀行から営業時間外に1万円を引き出したとき手数料105円を支払ったとすると、これを実質年利(初日不参入の片端入れ)で計算すると

383.3%

にもなります。銀行の預け入れ・引き出しをする人数は消費者金融の借り入れをする人数の比ではありませんから、本当においしいだろうなあと思います。うらやましいです。一方、29.5%の消費者金融から1万円を1日借りるときに支払う金利は8円で、実際、この差を理由に銀行から預金を引き出さず、消費者金融を利用する人がいます。

1万円を何日借りれば利息が105円になるかというと

13日

です。この計算から、いくらを1日借りれば利息が105円になるかがわかりますね。もちろん同じ「13」を使えばいいわけでして、

13万円

です。どう計算しても銀行の手数料というのは実に割の悪いものですね。

Posted by bun : 2006年10月01日 08:34

>bunさん
そうなんですよね。
銀行のATMって、結構、いい額になるんですよね。

>一方、29.5%の消費者金融から1万円を
>1日借りるときに支払う金利は8円で、実際、
>この差を理由に銀行から預金を引き出さず、
>消費者金融を利用する人がいます。

実は、私も昔、夜飲み代が足りなくなったときに、時間外営業の手数料を払うよりも、(消費者金融ではありませんが)クレジット・カードで短期ローンをする方が「得」な場合があるということで利用していたいことがありました(しかも、5日間以内に返すと金利がつかなかったりするんですよね(笑))。

Posted by 47th : 2006年10月01日 11:09

 
法律・経済・時事ネタに関する「思いつき」を書き留めたものです。
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