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Who Monitors a Judge (in Tennis and others)?

昨日は延々とテニスのUS Openの話なんぞ書いたんですが、このブログの普段のテーマ的にみて今回のUS Openについて興味深かったのは、Challengeと呼ばれている(※)システムです。

大ざっぱにいうと、コートサイドの線審によるIN/OUTの判断に対して、プレイヤーが異議を申し立てると、その打球の軌跡がCG処理されてスクリーンに映し出されて、線審の判断を争えるというシステムです。
といっても無制限に異議を出せるわけではなく、1セットにつき各プレイヤー原則2回まで(タイブレークになると1回追加。異議が正しかった場合には(判定が覆った場合には)、その回数は減算されない)になっています。

US Openの公式サイトには、このChallengeに関する統計も掲載されているのですが、13日目までにチャレンジ総数が130回(男子)/53回(女子)で、線審の判定が覆されたのが38回(男子)/19回(女子)で、チャレンジ成功率が29.32%(男子)/35.85%(女子)、1試合当たりの平均チャレンジ数が3.42回(男子)/1.71回(女子)となっています。

これを見て誤審を多いと評価するか少ないと評価するかは難しい問題ですが、①プロのテニス・プレイヤーがチャレンジするのは余程自信がある場合だということと、②平均チャレンジ数にチャレンジ成功率をかけた1試合当たりの誤審数(※2)は1.00(男子)/0.613(女子)であること、③1試合当たりの平均ポイント数は217.6(男子)/134.9(女子)であることを考慮すると、相当に正確といっていいのではないかという気がします。(今日の男子準決勝の試合でも解説者が30%しか判定が覆らないというのは驚きだという話をしていました)

これだけなら、「テニスの線審って凄いね!」で終わってしまうわけですが、昨年のUS Openでは、(どっちか忘れてしまいましたが)ヴィーナス姉妹のどちらかの試合でミスジャッジが多発してちょっとした騒ぎになったりもしたわけです。
あの試合が特殊ケースだったとか、その試合でも今年のUS Openと同様の判定システムが導入されていれば(※3)意外と判定は覆らなかったという可能性も当然棄却できないわけですが、もう一つの可能性として考えられるのは、プレイヤーからの異議申立てシステムそのものが審判の判定の精度を高めたというものです。


一般にプレイヤーの行動やその結果の評価を行うのは審判ですが、この審判のパフォーマンスを誰がチェックするのかは、色々な文脈で問題になります。
日本でもプロ野球で誤審問題というのが色々と話題になったようですが、一つの解決法は「おれがルールブックだ」式で、一切異議申立てを認めないという方式です。

それが本当に誤審だったのか、それとも誤審に見えても正しい判断だったのかを事後的に確認する手段がない場合には、判定が覆る可能性を認めることによる混乱のデメリットが大きいということは言えそうです。

ただ、テクノロジーの進展により、そうした水掛け論を避けて審判の評価が正しかったかどうかを直後に検証する仕組みがあれば、今回のUS Openのように回数制限など濫用防止の仕組みを設けつつプレイヤーに異議申立て権を与えることは、審判の側の緊張感を高めるという意味で有効なように思えます。

また、今回のUS Openでプレイヤーがチャレンジし観客も誤判定だと思ったものが、数ミリのレベルでオンラインであることが確認されたりということを通じて、逆に審判に対する信頼も高まったように感じられました。
その意味で今回のこのシステムは単にプレイヤー側に審判にチャレンジする権利を与えたというに留まらず、審判側もプレイヤーからの信頼を高めることができたという点でWin-Winのシチュエーションということができそうです。

プレイヤー側が合理的に判断をチャレンジすることができることで、判断権を有する審判のパフォーマンスを規律すると共に、それによって審判への信頼も高める…コートの上での絶対的な権力=判定権の適切なコントロールに知恵という意味で、今回のチャレンジ・システムは私にとっては非常に示唆的でした。

そうした新しいバランスの模索がアメリカのコートの上でなされている頃に、日本ではこんなことや、あんなことが起きていたようです・・・わが国の審判に堂々とチャレンジできる日はいつ来るんでしょう?
 

(※)Electronic Line 何チャラという正式名称があるようなんですが、中継とかでは、Challenge、Challengeと呼んでいるので、とりあえずそれに倣っておきます。

(※2)もちろん、このシステムを敢えて利用しないプレイヤーがいた可能性や、早々にチャレンジの権利を使い切ってしまった可能性もあるので、全ての誤判定がチャレンジされたとは限りません。その意味では、実際の誤判定はこの数値よりも上方にぶれる可能性は否定できません。

(※3)もっとも、テレビ中継では、私が見始めた2年前から同様のCG処理がされたリプレイが流されていたので、その意味でメディアによる誤判定チェックの精度が今年になって急に変わったわけではないような気もします。

Posted by 47th : | 19:11 | Corporate Governance

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コメント

異議、というのとはまた違いますが、
ラグビーにはビデオレフリーというものがあります(日本の試合であるかどうかは知りません)。
正式なルールはしりませんが、選手がもつれあってトライしたかどうか等主審・副審ともあるプレーについて確信が持てないときに「主審」がビデオレフリーを宣言しているようです(曖昧ですいません)。
文字通りビデオで見るのですが、会場のスクリーンにも問題シーンが異なった角度のカメラの映像が何度も流れます。そして主審がイヤホンでなにやら話した(別室の審判?)後にどうであったかを宣言しているようです。
ラグビーだから可能なのか、他のスポーツで可能か、などはよく分かりません。

Posted by サンプラス派 : 2006年09月10日 21:46

>サンプラス派さん
そういえば、私はたまにしか見ないんですが、アメフトでも同じような制度があるみたいですね。
ラグビーやアメフトはプレーの切りが分かりやすいので、使いやすいということはありそうですね。
ただ、同じくプレーを切りやすい野球では相変わらず審判絶対ですから、伝統とかそれぞれの文化みたいなものもあるのかも知れません。
サッカーでは、ゴール線を越えたかどうかについてビデオ判定を導入すべきという動きがありますが、まだ実現はしていないようです。

Posted by 47th : 2006年09月12日 13:05

 
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