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上場・買収防衛は何のため?

(9/14 追記あり) 

東証に買収防衛策要求、金融相懇談会の最終報告書で(YOMIURI.ONLINE)

与謝野金融相の私的懇談会「証券取引所のあり方等に関する有識者懇談会」が13日にまとめる最終報告書で、東京証券取引所に対し買収防衛策の導入検討を求めることが明らかになった。
欧米の取引所などによる経営支配の懸念を未然に解消するためだ。しかし東証は、上場企業の買収防衛策について「株主利益を損なう恐れがある」として慎重な対応を求め、自らの防衛策導入にも否定的な姿勢を示しており、東証の対応が注目される。

まず、東証の擁護からするとすれば、東証自身は買収防衛策について「市場の評価を向上させることにより当取引所の基礎体力(足腰)を回避することで被買収リスクを回避」というのを基本方針とした上で、括弧書きで「他の上場会社が導入している一般的な買収防衛策の導入についても検討」としていたようですから(懇談会に西室社長から提出された8/29付け資料(pdf))、「欧米の取引所などによる経営支配の懸念」対策としての買収防衛策というアイディアは東証のイニシアティブによるものではないのでしょう。

当たり前といえば当たり前なのですが、私自身は買収防衛策そのものにはネガティブではありません。ただ、買収防衛策は単なるツールに過ぎません。

何のために上場を目指して、何のために買収を防衛するのかが、明確に意識されているのであれば、買収防衛策もありだと思いますが、そこが曖昧なままだと、そもそも防衛策をどう設計するかも定まりません。(一切支配権の移転を認めないのであれば、黄金株のようなものが簡便でしょうし、買収過程のコントロールであれば既存のライツ・プランが適しているでしょう)

何れにせよ、これを受けて更に東証の中でも議論がなされるのでしょうし、その中でツールの部分ではなく、そもそも論の部分で議論が深まっていくことが期待されます。

(9/14追記)

金融庁から「わが国証券取引所をめぐる将来ビジョンについて(論点整理(第三次))」が公表されています。

実際に公表されたものについては、上の報道とは違って、次のように大分穏当なトーンになっているようです。ちょっとフライング気味の報道だったようですね。

いわゆる買収防衛策導入の是否については、法令による主要株主規制 の下で、市場評価の向上や安定的な株主との関係構築により対応するこ とを基本とすべきとの考え方が取引所側から示された。他方で、この問 題については市場関係者等の意見も交えながら検討を継続し、実際に上 場する時点における市場環境等も十分見極めた上でその導入について 改めて判断していく必要性も認められよう。

(おまけ)

買収防衛策に対する私の考えというのは、『企業買収防衛戦略Ⅱ』のために書き下ろした「買収防衛策の意義に関する覚書」の中でまとめているのですが、今回の問題意識はそのまとめ部分で書いたことにつながっているので、ご参考までということです。(脚注省略)

  最後に、既に別稿でも論じたところであるが、買収防衛策は「器」あるいは「ツール」に過ぎない。そして、もう一つ明らかなことは、買収防衛策はいかなる形態をとるとしても、買収防衛策が委任状勧誘によって解除され得る形態をとる以上は、それ自体は次の株主総会までの間の「時間のばし」の効果しか持ち得ない。この意味で、買収防衛策は、一時的な「Just Say No」を保証するものでしかなく、「Just Say Never」という効果を達成するものではない。
それが友好的なものであれ、非友好的なものであれ、会社の支配権が「買収」の俎上に上った場合には、取締役会はその「買収」に対して、どのように対応するか、その「戦略」を立案しなければならない。
「戦略」の立案の第一歩は、何が自らにとって守るべきものなのか、あるいは、何をもって「勝利」と考えるべきなのかを見出すことである。例えば、株主に提示される価格の最大化が目標だとすれば、積極的に買収者と交渉を行い、例えば税制上のメリットが得られるような買収手法を合意することが望ましい方向性であろう。この場合、買収防衛策は、あくまで交渉における手段でしかない。徒に買収防衛策を用いて取引費用を高めることは、最終的に株主に分配され得るプレミアムに悪影響を与えるだけで、買収者と対象会社株主の双方にとって望ましいものではない。
また、仮に株主利益だけではなく、従業員の利益を考えるとしても、それが現在の株主の利益とどのような関係にあるのかについて株主に対して合理的な説明が必要であろう。仮に買収にあたって株主へのプレミアムよりも従業員の利益を一定限度で優先することについて株主との共通理解がなければ、株主にとっては「不意打ち」となる。この場合も、結局のところ、委任状勧誘において株主の支持を得ることは困難となり、最終的には従業員利益を守るという目的すら達成できなくなる。こうした点を考慮すれば、おそらく、この場合の望ましい「戦略」は、買収が具体化する前から、買収に関する取締役会の考え方を明らかにし、株主の事前の信認を得ておくこととなろう。
さらにいえば、買収防衛策を採用しないということも、一つの選択である。ただし、この場合には買収防衛策を採用しない場合において、株主の意思形成過程を歪めるような形態での買収がなされた場合に、取締役会として何を望ましいと考えるのかという問題は避けて通れない。
こうした意味において、友好的なものも含めて「買収」が飛躍的に増加しつつある現在、「なぜ買収防衛策を導入するのか?」あるいは「しないのか?」という点について、その本質に遡って考えた上で、「対買収戦略」を立案しておくことは何れの上場企業にとっても不可避となりつつある。

Posted by 47th : | 23:05 | Takeover Defense

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コメント

ということで、その論理的帰結として委任状勧誘に関する制度の当否に関心を持たざるを得ませんよね。47th先生のご見解にも興味があるところですので、よろしくお願いします。

Posted by NYlawyer : 2006年09月14日 01:26

いや、何だか面倒くさくなってきて・・・

Posted by 47th : 2006年09月14日 16:22

まあ、そういわずに。
ところで、この記事にもこの前の記事にもTB打ったんですが表示されないようです(迷惑TBか??)。

Posted by NYlawyer : 2006年09月14日 22:50

 
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