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モハマド・ユヌス氏にノーベル平和賞

ノーベル平和賞、ムハマド・ユヌス氏に 貧困解消に尽力(asahi.com)

ノルウェーのノーベル賞委員会は13日、06年のノーベル平和賞を、バングラデシュの金融機関「グラミン(農村)銀行」とその創設者のムハマド・ユヌス氏 (66)に授与する、と発表した。農村の貧しい人々の自立を促そうと、「マイクロクレジット」と呼ばれる無担保少額融資の仕組みを考案し、貧困の脱却に貢 献した功績が評価された。

と、既にろじゃあさんにスクープされていましたが(笑)、個人的にはグラミンやマイクロ・ファイナンスには以前から興味を持ってきたので、今回の受賞でまた一段と関心が向くのではないかと期待しています。

というわけで、過去の関連エントリーの紹介です。 

ところで、これまたろじゃあさんが示唆されていますが、グラミンやマイクロ・ファイナンスは、今の消費者金融問題に対する対応の方向性についても色々な示唆を与えます。

グラミンは政府によるセイフティ・ネットの乏しいバングラディッシュで、返済能力を欠いていると思われていた農村の女性を中心に高金利・少額の貸出を実行しました。
日本だと、これは一種の慈善事業のようなイメージで捉えられるかもしれませんが、少なくともグラミンに関しては、きちんと営利ベースで運営がなされています。
もちろん、資産を殆ど持たない貧困層への少額貸出は(理論的には)貸倒リスクも高く、また、信用管理コストもかかります。当然、こうしたコストを埋め合わせるために金利は高くなるわけです。
従来は逆選択やモラル・ハザードの問題から、こうした貧困層への貸出は成り立たなかったわけですが、グラミンでは、日本でいう連帯保証人にも似た連帯責任制度(グループ・レンディング)や、頻繁な取立て、一定額の貯金の義務付け(一種の拘束預金)などの手法を使うことで、こうした問題を軽減し、貧困層への貸出を実現しています。

一見すると、連帯責任類似制度や頻繁な取立て、一種の拘束預金制度etc...は、貧困層に「厳しい」制度であって、今の日本で同じことをやれば、瞬く間にマスコミや政治家によるネガティブ・キャンペーンの格好のネタになってしまいそうな話です。
もちろん、こうしたメカニズムには、貧困層に対して苛酷な面も持っていますが、他方で、そのインセンティブ構造は経済学的な面から見ても非常にうまく設計されたものとして評価されています。
何よりも、もし、こうした高金利や「厳しい」取立メカニズムを否定してしまったら、現に貧困であえぐ農村の貧困層は、バングラディッシュ全体が富裕になり社会の隅々まで十分な公的な生活扶助がなされるのを座して待つしかないということになっていたかも知れません。
何よりも、そうした貧困層が社会の発展に対して寄与し得る潜在的な能力が活用されないことは、国全体の発展に対しても遅れをもたらしてしまったかも知れません。

マイクロ・ファイナンスが国全体の発展にどれほど寄与できるかについては、今なお研究の途上にある重要な論点ですが、単に目先の厳しさを排除することだけが優しさではないということをユヌス氏は示しているような気がします・・・って、これまたろじゃあさんに既に言い尽くされていることになってしまいましたが、とりあえず今回の件でマイクロファイナンスや消費者金融における経済学的な考え方への理解が深まることを心から願います。


Posted by 47th : | 11:18 | Law & Development

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前回のエントリを書いてからあっという間に一ヶ月以上が経ってしまいました。グラミン銀行へのメールも実はまだ書けていないのですが、その間に以下の記事を読みまし... [続きを読む]

トラックバック時刻: 2006年11月26日 11:09

コメント

こんにちは。

そんな折りにユヌス氏が来日して(すわ、受賞記念講演?)と思いきや、おもむろにもってきたチラシを取り出し、電柱に

「即決!ブラックOK!グラミン090-」

という張り紙して、あっさり帰ったりして(笑)。

通常の営業だったのだな。

Posted by bun : 2006年10月13日 20:12

bunさんへ
これこれ(^^;)。
でも便乗組みがいなきゃいいけどなあ・・・いないか。
日本で言うと昔は「講」とか「無尽」の世界にもつながるお話なんですけどねえ。
民法の入会権とかやってた先生方とかもある意味では共通する世界のお話だと思うんですけど。
都会派のセンセが増えすぎちゃったわけじゃないと思うんですが。

Posted by ろじゃあ : 2006年10月15日 23:50

>bunさん
いや、まじめな話、ここでユヌス氏をイメージ・キャラクターに使って、破産経験者向けの貸金を専門に営むグラミン・ジャパンを立ち上げるのはGood Timingではないかと。

>ろじゃあさん
ちょっと違うのかも知れませんが、近年マイクロ・ファイナンスが普及しはじめた地域でも、多くの場合、従来型の農村金融や日本で言う講(ROSCA)は存在していて、それと最近のマイクロ・ファイナンスはどこが異なるかは関心の対象となっているんですよね。
日本でも、従来型の農村金融や講が、近代的な消費者金融に移行してきた過程を見ると通じるものを見出せるのかも知れませんね。

Posted by 47th : 2006年10月16日 12:20

日本にも,グラミン銀行のような貧困層の救済的な側面を(多少)持つ消費者金融会社は既にありますよ。「エイワ」ですね。
対面貸付のみを未だに行う金融会社で,一部では「やみ金より怖い消費者金融会社」と2chを中心に揶揄されています。まず,顧客に対して30分ほどの説教の後に5万円のみを貸付,半分以上無事に返済が終了してから追加貸し出しを行う等,独特のノウハウの山です。
 返済も基本的に窓口に直接訪問して行う方式のため,とにかく手を打つのが早いですね。そのため,貸付金利が高くても返済率は良いし,金融の厳しさを安全に教え込むので学校と称する顧客も居ます。このきっちりとした指導体制こそ,グラミン銀行の本質ではないですかね。
 いやになるほどの「セクシーコール」とでも揶揄される猛烈な勧誘電話とかいろいろありますが,一度借りてみるのも面白いです。・・・ただ,ここは「ブラック寸前」のお客が多いため,借り入れ0の人は門前払いをしばしば受けますが。せめてVIPローンカードの上限張り付きとかその程度は必要かも。

あと,グラミン銀行の金利は25%ですが,これはバングラディッシュの平均的な貧困層向け金融機関の金利の1割ほどというのは指摘しておくべきかと考えます。ただ,安すぎてもプレッシャーがないので返す意欲が減退するという創業者の指摘もあるので,難しいところですか。

Posted by ふくいけいじ : 2006年10月30日 02:22

ふくいけいじさん
ちょっと違うような。
そうした中堅の業者は、債務者の借入件数では、3‐7件くらいではないでしょうか。そしてエイワさんは、まず小額を貸してみる。そして返済してくれそうであれば、20万円とか貸すのでしょう。
多重債務者の場合、貸して翌月に金利も入らない詐欺的な場合が、1%、3ヶ月で、一回程度の金利しか払わない利用者を入れたら、2.5%くらいいるでしょうか? 弁護士費用ですか。それとも破産ですか。払う意思のないのに借りるひと。
そういうのを注意する意味でも、4件以上では、初回は5万円というのは、理に適っているのでしょう。
しかも、エイワさんが、もし債務整理後(場合により破産免責後)の資金融通もされるとすれば、初回から大きくは出られません。
そうすると、いずれにしても、多重債務で大手業者が与信方針では貸さない資金逼迫者に、優先的に回収できる方法で、小額を貸しているのではないですか。
間違ったら、すいません。
グラミンは、借入なしで信用がつかなかったひとに貸しませんか。
そういう意味で違いませんか。

Posted by x : 2006年10月30日 03:25

>ふくいけいじさん
興味深いお話をありがとうございます。
グラミンのビジネス・モデルのどこを強調するかは、色々な考え方があると思いますが、債務者へのモニタリングやスクリーニングにコストをかけて、モラル・ハザードのリスクを敢えてとっていくという点では仰るように似ているところはありそうですね。
ご存じかとは思いますが、マイクロ・ファイナンスで有名になったグループ・レンディングについては日本での連帯保証人問題と類似の問題性が指摘されるところもあって、他にクレジット・アクセスのない債務者に対して借換手段を提供することで返済のインセンティブを維持する方式も積極的に導入されていますので、その意味では似ている面はあるように思います。
グラミンとの類似性を離れて、もう少し広い文脈で見ると、大手消費者金融業者よりも高リスク・高利率での貸付を行っている業者に対しては多重債務者を食い物にするといった批判もされますが、単に高リスクを引き受けるだけではビジネスとしてペイしないわけで、そのビジネス・モデルやノウハウについては感情的な否定論ではなく、客観的な検証が求められるべきだと感じています。

>xさん
仰るようにターゲットとなる層自体は(そもそも日本と途上国の社会厚生の違いもありますし)全く同視することはできないと思いますが、個別的なスクリーニングとモニタリングを工夫しているという面では似ている部分もあるんではないかと思います。

Posted by 47th : 2006年10月30日 21:41

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