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ブログ論壇考(1):ブログの力

ブログ論壇考とぶちあげてみたものの、いざ書き始めようと思うと、どこから手をつけていいか迷うんですが、まずは最近のエントリーにfujiさんからもらったコメントを引用してみましょう。

まさにその後者のパターンそれ自体に注目してほしいのです。全世界の人が瞬時に作り上げるその行為自体を。47thさんのブログで私が質問すれば瞬時に答 えが返ってくること。47thさんが問題提起されたことに各方面から瞬時にいろんな意見がコメントされること。リアルな世界なら、まず、47thさんにア ポをいれ何日もまって運よく面談できて相談料を払ったり又は47thさん執筆の本を本屋さんに出かけて購入したりして47thさんのお考えなりがようやく 理解できるかもしれない。それがブログではトラックバックやコメントで47thさんだけじゃなくもっと多くの方のご意見を拝見できる。それもたった1日程 度で。私の様な素人はそれは革命的なことの様に思う・・・

私に会うのに数日前からアポや運が必要という点は否定しておきますが(笑)、fujiさんが仰っているように、面識のない人とコミュニケーションをとったり、ましてや、単なる言葉の交換を超えて、お互いの「考え」や「意見」を交換するというのは、現実社会では容易ではありません。

もう少し巻き戻して考えてみると、このブログを始める前に「私」という人間のことを知ってくれいている人というのは、どれほどいたんでしょう?
あるいは、名前や存在は知っていたとしても、「私」がどんなことを考える人間かを知ってくれている人はどれだけいたんでしょう?
知り合い同士でも、相手が何を考えているかを知ったり、あるテーマについて真剣に意見を交換し合うのは、日本人の気質もあるのでしょうが、実はそれほど容易ではありません。

口説くなりますが、もう一つだけ具体例で考えてみましょう。
fujiさんがコメントの中で触れられているように、個人の存在と考えを多くの人に伝える媒体としては、従来から出版物やメディアというのもありました。
私も留学前にいくつか紙媒体の原稿を書いていましたし、それなりに業界の人には目を通してもらっていました。
ただ、業界以外の人の目に触れる機会がどれほどあったのかは微妙です。
目に触れたとしても、立ち読みや借り読みは別として、それには一定の代金を支払う必要があります。
そうやって「お代」を頂戴しなければいけないわけですから、書き手の側も何を書いてもいいというわけではありません。当然、代金に見合うだけの知識や情報が期待されていますし、その期待に応えるためには、書き手の側でも、下調べに始まってそれに見合う労力を投じなければいけません。
何よりも、書き手がお金をとる形で書けるテーマには自ずから外枠があります。
そして、幸いにも、こうしたいくつものハードルを超えて出版ができたとしても、読み手は、基本的には、それを読むことしかできません。
何か、もやもやしたものや、触発されたことがあっても、そのフィードバックの手段は限られています。
読者カードに感想を書いて送り返すことはできるかも知れません。でも、そのフィードバックが本当に届いたかが確認できたり、ましてや、そのフィードバックに対する書き手からの反応を得ることは稀です。

ブログは、こうした従来あった数々の枷を外し、より多くの人に自分の考えを伝える手段を提供してくれました。
この恩恵を受けているのは、何も自分でブログを開いている人には留まりません。
fujiさんのように、私のブログにコメントを残してくれる人も、そうした足跡の積み重ねの中で、「fujiさん」がどんな考えを持っている人なのか、読者は知るようになりますし、時には、ブログのエントリーを書いた私にではなく、fujiさんに向けて別の人がコメントをし、そこで考えのやりとりが行われることもあります。

ちゃんとした統計をとったわけではないんですが、多分、このブログで瞬間風速的に最も多くの人に読まれたエントリーといえば、堀江氏の逮捕報道の直後に書いた「正義のコスト」だと思うのですが、これには54件のコメントと69件のトラックバックをもらいました。
もちろん、世の中には、こんなものの比ではないぐらい多くのコメント・トラックバックを集めるブログもあるわけですが、炎上の気配も希薄でトラフィック集めのトラックバックもほとんどない形でこれだけの人と考えを交換できたというのは、私自身にも大きな驚きでした。

―ブログは多くの可能性を秘めている―

fujiさんと同じようにそう確信する自分がいる傍で、天の邪鬼な私が冷ややかな視線を投げかけています。

―じゃあ、そんな素晴らしいブログを、帰国するというだけで、何でやめるの?
暇だからやるけど、忙しくなったらやめる。しょせん、そのぐらいのものなんじゃないの?―

いや、守秘義務の問題や営業政策の問題もあるし、そう簡単にも割り切れるもんでもないんだよ―もちろん、それに対する反論はあるのですが、それでも、自分がやめる理由、あるいは、素晴らしい考えを発信しながら様々な理由でブログをやめていった人たちがいる理由にもう少し踏み込んでおかないと、自分がいつかブログを再開するのか、再開するとして、どういう形で何をやりたいのかは見出せない気がします。

というわけで、ある意味語り尽くされている感もあるバラ色のブログの未来については、これだけにして、次回からはその裏側に隠れている衰退への種子を考えてみたいと思います。

(続く)


Posted by 47th : | 12:59 | ブログ論壇考

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コメント

なんつーかね、「インターネットの個人化」の一過程なんだと思う訳ですよ。
コンピュータも、コンピュータ->マイコン(My Computer:私のコンピュータ。まだマニア向け)->パソコン と進化してきてだんだんと個人との親和度が上がっていったように、インターネットもだんだんと「個人化」か進んでいて、その一側面が”ブログ”なんだろうな、と考えています。マイコンからパソコンに進化していく過程には、「使いやすいんだけど孤高のMac」とか「国民機PC9801」とか、いろんな登場人物が歴史を彩ってきたのと同じように、インターネットの世界も華やかな(そして妖しい?)花たちが縄張りあらそいしてるんだろうな、というのが現状の感想です。

#踊るアホウに見るアホウ、同じアホならおどらにゃソンソン?

Posted by ななし : 2006年11月15日 22:52

はじめまして、ベンダソンと申します。「カイロス・・・」から辿ってきました。
敬愛するヒロさんの繋がりなので、前から存じ上げ気にはなっておりました。

本日の記事は、全く同感で、拙ブログでもブロガーの連携を呼びかけていたところです。
http://yahhoo.cocolog-tcom.com/goodwill/2006/10/post_8452.html#trackback
↑この個別具体な本文内容はともかく、最後にブロガーの連携を呼びかけております。また少し大げさな物言いですが、報道革命の日と題して、メジャーな報道が抹殺した事件をブロガーが報道している事を取り上げました。
http://yahhoo.cocolog-tcom.com/goodwill/2006/10/post_0356.html#trackback


そして遅ればせながら、貴ブログの「正義のコスト」を読ませていただき、ああ似たような思考をする人がいたんだ、と気付いた次第。

早速トラバさせていただこうかと思いましたが、拙ブログには具体の内容で直接関係する最新記事が無いので、コメントにとどめました。お暇な時には拙ブログも覗いてみてください。

拙ブログ、身近なところでは、全く評判悪く、実際自分でも、誰がこんな屁理屈の長文を読むんだろうと思いながら書いていました。たところが、最近何気にアクセス数を見たら、日に2000もあって、ホンマかいなとランキング登録したらベストテン入りしびっくりしました。

どうやら、目に見える世界ではマイナーな考えは、埋もれ抹殺されますが、ネットの世界では連携や発見が可能なようです。不覚にも貴ブログに今まで気付かなかった事が悔やまれますが、今後は注目していきたいと思います。

取り急ぎ
よろしくお願いいたします。

Posted by ベンダソン : 2006年11月16日 00:43

ちょっと乗り遅れましたがおめでとうございました。NYもこのブログも残り僅かというのが残念至極というか本当に寂しい限りです(勝手ながら続編を期待しています)。
いつかのエントリの「学際的議論に向いている」という言及に触発されて&別の点で思う所もあったので、TB頂いていきます。シリーズ楽しみにしています。

Posted by そらまめRRZ : 2006年11月16日 02:18

初めまして。
私は、弁護士の方々の仕事や思考を理解したいと思い、このブログを見つけ、愛読(?)しておりました。
私のような素人が論議に参加する事も理解する事も難しく、ただただ眺めているだけでしたが、47thさんがこれからの日本の法曹界をリードしていくに違いない方だという事だけは理解できました。
何も知らない私が言及するのは大変失礼かと思いますが、日本へ戻った折には、是非とも日本で頑張っている後輩達の力になって頂きたいと思います。
なんとなく趣旨がずれておりますが、今後のご活躍も、ブログの再開も期待しております。

Posted by KA : 2006年11月16日 10:03

こっそりコメントが・・・(汗)。
続きがある様なのでROMしとこうと思ったのですが、やっぱり感謝の気持ちを伝えたいので。わたしは法律好きで基本書と呼ばれる本を読んではウズウズともっと理論的根拠を掴みたいと思ってネットで検索してて47thさんのブログに出会ったんですね。衝撃的でしたね。ローエコ。ブログの話題についていく為に随分経済学の本も買わされました。自分の理解を確かめる為にトンチンカンなコメントばかりしてましたが47thさんは本当丁寧にご解説頂きました。最近では医療経済学と金利規制の話題が印象深かったですね。ああ法と経済学に関わる本どうして頂けるのでしょうね。47thさん。bunさんも仰ってましたよね。ブログ続けていること自体が感動的だって。

Posted by fuji : 2006年11月16日 11:06

お終りになってしまうとのことで、初めてコメントします。例えが下手ですが、ブログの筆者というのは、どうしてもギブアンドテイクではなくて、ギブアンドギブの状態に陥りがちなのではないかと勝手に推測しています。人間は、ギブアンドギブの状態では、なかなか気持ちのバランスを取ることが難しいのではないかと思っています。そのような状態で、これだけ長い間、密度の濃いブログを続けられたことには感動します。「知」に対して、とても謙虚で誠実な態度を取られる筆者に対して、それなりに敬意を払う読者が多かったことは、一つ恵まれていた点ではないでしょうか。ブログの未来はバラ色ではないかもしれませんが、またブログを始めようという精神構造になる日が来ることを期待しています。

Posted by Papaya King : 2006年11月17日 01:44

>ななしさん
大きな流れということでは、そうかも知れませんね。個人的にもPC8001でBasicを走らせていた頃とは隔世の感がありますし。
ただ、今回は、もうちょっとブログ、それも意見交換のツールとしてのブログの意義に着目してみようかなと思っています。

>ペンダソンさん
私の場合、身近なのは企業法務関係の事柄でしたが、ブログの世界での意見の多様性は、モノトーンなマスコミとは対照的で、非常に興味深いと思いました。
ただ、その可能性というのが、放っておいてもそのまま育っていくものなのか、それとも、そのままだと一時の輝きで終わってしまうものなのか、その辺りを、私なりにちょっと考えてみようと思っています。

>そらまめRRZさん
TB拝見しました。
面白いエピソードですね。
利点は時に自らを傷つけることもあるわけで・・・この辺りも、連載の中で考えてみようと思っています。

>KAさん
暖かいお言葉ありがとうございます。
私は弁護士としては、ちょっと(かなり?)変わり者のところもあるので、その辺りは割り引いて考えて頂いた方がいいかも知れませんが、企業法務で働く弁護士がどういうことを考えているかが、少しでも伝わったのであれば幸いです。

>fujiさん
こちらこそ、本当に助かりました。
どうしても、頭に浮かんだことを手早く書き留めようとすると、読んでいる人に分かりにくかったり、独りよがりになったりするところで、fujiさんが質問をしてくれたことで、立ち止まることができたり、自分の伝えたかったことを、もう少し伝わりやすい形で伝えたりできたことがたくさんありました。
まだ、考察の途中ですが、漠然とですが、ブログのこれからを左右するのは、ブログを書いている人とROM中心の一般読者とのコミュニケーションをいい形で促進するアクティブな読者なのかなと思っています。
fujiさんには、今後とも、他の方のブログでの、そうした媒介役としての活躍を期待しています。

Posted by 47th : 2006年11月17日 02:05

>Papava Kingさん
仰るように、私の場合は、読者の方に恵まれたおかげで、結構、ギブアンドテイクでやってこれたような気がしています。
ただ、仕事が忙しくなると、今までのような形で時間をかけていくことは難しいだろうと思うので、そこでなし崩し的に中断するよりは、余裕のあるうちに一度区切りをつけておこうかなと思った次第です。
再開は全く未定ですが、また機会があれば是非遊びにいらして下さい。

Posted by 47th : 2006年11月17日 13:10

 
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