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Behavioral Economics の悩ましさ

ふと思いついて書いたペッキング・オーダーのもやもやについて、思いがけず色々なコメントを頂き、ありがとうございました。特に獏さんともりたさんのコメントのやりとりを見ていて、改めてBehaivoal Economics って悩ましい世界だなと痛感。
(一応、念のために書いておくと、Behaivoal Economicsというのは「行動経済学」とか訳されたりして、ファイナンスの分野に適用されると「行動ファイナンス」(behavioral finance)といって、日本でも紹介が始まっていますが、認知心理学的な知見を応用して、従来の経済学が前提としてきた「合理的」な主体ではないということを明らかにして・・・そこからは?・・・従来の経済モデルの批判的検討を目指すのか、それともモデルの再構築を目指すのか?・・・うーん、説明しようとして、やっぱり分かっていないことが判明(涙))
この前の論点そのものについてのコメントは、少なくともオリジナルを読んでからじゃないと、余りにも空中戦になっちゃいそうなんで避けますが、ふと思ったことを書き留めておくと・・・
大体、すべからく人間は非合理なものなので、身の回りを探せば、「うっかり」とか「ど忘れ」なんかも含めて非合理な行動は山のように転がっているわけですが、多分、多くの非合理性は個人的なテイストの違いみたいなものと同様に、ある程度のボリュームをとれば、経済行動に対する影響は残差として処理できてしまうので、問題は残差として処理ができないようなシスティマティックなバイアスの有無ということになりそうです。
例えば、タクシーの運転手の中には、月曜日は「休みぼけ」で働く気がしない人もいるかも知れませんが、逆に月曜日はリフレッシュしてノリノリな人もいてサンプルが多くなると中和されるのであれば、この「休みぼけ」という現象を分析に取り入れる必要はないわけです。
ところが、有名な例のように、雨の日などタクシーの稼働率が高く、単位時間当たりの収入が多い日の方が、逆に労働時間が短くなるとういことが、サンプルを多くしても傾向的に見られれば、これをモデルに採り入れる必要が出てきます。
かくもBehavioral Economicsでは、実証的なアプローチが重要だということを、遅まきながら実感・・・しかも、Behavioral Economicsの悩ましいのは、実証的というのが、心理学的な知見に基づいた個人レベルでの行動パターンに関するものと、ある特定の経済活動単位で見た場合のパターンの2段階で必要になってきそなところ・・・
その上、個人のレベルで見られる行動パターンと経済的活動を結びつける際のモデル造りにも、色々と問題がありそうなところです。とりあえず、一つ思いつくのは、多くの経済活動は、純粋な個人ではなく、組織単位で意思決定がなされるところ。
例えば、一人でやれば、お馬鹿さんなことをやるとしても、3人寄れば文殊の知恵で、お互いの行動を客観的にチェックすることで、個人レベルで見られた非合理性が解消される可能性もありそうです・・・そういえば、Behavioral Economicsでよく扱われている事例は、「個人」投資家とか、「個人」タクシーとか、何れも「個人」レベルの話で、会社とか機関投資家レベルでの話は余りないような気もします。
この辺りが、Behavioral Approachを知識として持っていても、何かモデルに組み入れづらいと感じる原因かも知れません。
何れにせよ、こういう意味でのBehavioral Economicsのアプローチの有用性と限界については、もう少し勉強しないといけないんでしょうね・・・というわけで、春学期はBehaviral Law & Economicsの授業をとることに決定。
facultyは、イスラエル出身の若手で、某教授によるとNYUの次代のスター候補の一人とのこと。
Course Descriptionは以下の通り。

The law aims to control, guide, or facilitate many aspects of human behavior. To achieve these goals legal policymakers should benefit from an accurate account of how people make decisions. Research in psychology and behavioral economics has demonstrated that in many circumstances the standard rational choice model of neoclassical economics, which has also dominated the economic analysis of law, fails to provide a satisfactory account of human decision-making. As a result, a new model is emerging—a model informed by a more nuanced understanding of the interrelations between the law, economics and psychology of decision-making. This course will explore the implications of this new model for legal policy. Topics will include law enforcement, decision-making by judges and juries, pre-trial settlement negotiations, contract law and contracting, market manipulation and securities regulation, tort law and products liability, and antidiscrimination and affirmative action.

Posted by 47th : | 10:26 AM

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