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ニレコ事件は決着したが・・・

ニレコの新株予約権、高裁も発行認めず (NIKKEI NET)
「ポイズンピル」三たび差し止め、東京高裁決定理由要旨 (asahi net)
東京高裁決定全文

というわけで、原決定、異議審決定ときて、抗告審でもニレコの新株予約権は発行差止めということになりました。法的には、更に最高裁に特別抗告するという途も残っていますが、ニレコのプレス・リリースによると特別抗告は行わず、発行中止を決定したとのことです。
まずは、この関係での他の方々のブログをクリッピングしておきます。


さて、この事件については、一応、これで決着がついたことになります。
ご覧のとおり、高裁決定は、ちょっと舌足らずなところもあるものの、平時の防衛策は株主総会でなくてはいけない、とか、ニッポン放送決定四要件の場合にしか発動しちゃいけない、とか、特別委員会の勧告に取締役会が逆らう余地があってはだめとかいった、他のライツ・プランにも影響を及ぼしそうなところには触れていません。
焦点は、ニレコピルが、買収と関係ない既存株主にどういう悪影響を与えるかという点に絞られていて、その点では高裁まで頑張った(?)甲斐があったんではないかと思います。
もっとも、高裁決定は原決定や異議審決定の該当部分を覆したわけではなく、単に理由として採用しなかっただけですから、依然として、二つの地裁決定が今後のライツ・プランの実務にいくつかの影を落とす可能性があります。もちろん、ねむねむさんから指摘いただいたように、この事件は非常に特殊なタイプのプランについてのものであり、一般化すべきでないし、可能であれば一般化されて欲しくはないのですが、とはいえ、多くの上場会社の会社法事件については事実上の専属管轄を持っているといってもいい東京地裁民事8部の裁判官の頭の中にある枠組みは、これらの決定の中に垣間見えていて、会社法実務をやる者にとっては彼らの思考パターンを読み取ることがとても重要になってきます。
今回の一連の決定の中で、ニレコピル以外の部分にも影を落とす喉に刺さった骨を一つ一つ検討していくとマニアックになりすぎるので、ざっと思いつくままにリスト・アップしてみると・・・

  • 有事の場合よりも平時の方が取締役会限りでとれる防衛策の選択肢は狭まるのか?
  • 平時の場合の防衛策の導入には、事前の株主総会決議が原則なのか?
  • 事前の株主総会決議が必要とされる場合とそうでない場合の線引きはどこでやるのか?
  • 事前の株主総会決議をやる場合の、総会決議の根拠(商法230条の10との関係)と定足数・決議要件は?
  • ニッポン放送事件東京高裁決定が示した四類型以外に対抗するための買収防衛策は原則として認められないのか?
  • 事前の総会決議があれば、高裁四類型の縛りは及ばないのか?逆に、事前の総会決議があれば、高裁四類型以外への防衛策の拡張は認められるのか?
  • 特別委員会を設置した場合には、特別委員会の勧告を取締役会が覆すことは認められないのか?その場合の取締役の善管注意義務はどうなるのか?fiduciary outが認められないということか?(そんな取り決めがそもそも適法なのか?)
  • 事後的な株主総会決議の承認で代替できる場合があるのか?その場合の要件は?直後の総会でなければならないのか?
  • 既存株主への損害が観察されない場合にも、保全の必要性は認められるのか?

思いつくだけなので、もう一度個々の決定を読み込むとまだ色々と出てくるのかも知れませんが、少なくとも以上の点については、今後プランの設計をする際に意識しておかないといけない点ということになるんでしょうね・・・なかなか厄介な話ですが・・・

最後に、私自身はアメリカのフリップ・イン型ライツ・プランの詳細を日本に紹介したときから随伴性というか一体性は、ライツ・プランの肝の部分だということで一貫して主張してきました・・・ので、ニレコ・ピルそのものに対する評価というのは推して知るべし^^;ということで、余り突っ込まないで欲しいのですが、 ただ、防衛策としてどの程度の完璧さを求めるかは、最終的には、資本市場での評価や経営陣への信任の是非というメカニズムを通じて判断されるのが本筋じゃないかなという気はしています。もちろんよく知っている人たちがやっているということもあって、今回の結果については同情的になってしまうという面はあるのですが、その点をおいたとしても、実体面での「防衛策としての完成度」に司法が線をひくことには疑問が残ります。
実際、西濃運輸の信託型ピルが発行時点での既存株主や株式の流通性に悪影響を与えないかというと・・・要項をよく読めば分かると思いますが、程度は違えど、理論的にはニレコピルと同様の問題は生じ得るわけです。(うがった見方をすれば、西濃さんが火消しに躍起なのは、程度は違っても、潜在的にニレコ・ピルと同じ問題があることを設計者が認識しているからではないかと思うんですよね・・・)
結局、ニレコ事件における裁判所の判断は、真面目に考えて作ったプランには不可避的に生じる、そうした「程度」に帰着する問題について裁判所が踏み込む「きっかけ」をつくってしまったということのような気もします。
深読みしすぎなのかも知れませんが・・・どうも、米国の裁判所ですら踏み込めなかった魑魅魍魎の領域に日本の裁判所は(本人たちは余り意識せずに)足を踏み入れてしまったんじゃないかという気もするところです・・・まあ、とりあえず、See what happens nextというところですが。

Posted by 47th : | 11:47 | Takeover Defense

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このリストは、次のエントリーを参照しています: ニレコ事件は決着したが・・・:

» 敵対的買収vs.ポイズンピルに決着 from le Quatorze Juillet
東京高裁決定理由の要旨↓ http://www.asahi.com/national/update/0615/TKY200506150244.html ... [続きを読む]

トラックバック時刻: 2005年06月15日 14:17

» ニレコの抗告審やはり差止認容(決定全文あり) from ビジネス法務の部屋
(6月16日午後5時 追記) ちょっとわかりにくいのですが(高裁のホームページの [続きを読む]

トラックバック時刻: 2005年06月16日 04:07

» 鹿子木裁判長が与えた憂鬱 from 西尾幹二のインターネット日録
・否定された企業防衛策 我が国初の平時導入型敵対的買収予防策が司法により否定さ... [続きを読む]

トラックバック時刻: 2005年06月21日 07:48

コメント

47thさんへ
ひょっとしてろじゃあの間違いかもしれないんだけど、上のエントリーで貼り付けてる東京高裁の「全文」(早い)ってライブドアの時の東京高裁の鬼頭判事の所の決定文ではないですかい?念のためご確認を。

Posted by ろじゃあ : 2005年06月15日 12:12

>ろじゃあさん
あ、本当ですね。事件名だけで判断してしまいました。
まさか、3月のがトップにあるなんて・・・遅い!!と書くべきでしたね。ありがとうございます。
ちなみに、今回の決定本文の主要なところは朝日に乗っている要旨で大体カバーされているようです。ただ、本文の方には、設計時に東証の通達やMETIガイドラインを検討しなかったとして責められているように読める箇所があって(若干表現は微妙なのですが)、それは無理だろうと突っ込みたくなるところはありますが^^;

Posted by 47th : 2005年06月15日 12:25

47thさんへ
>本文の方には、設計時に東証の通達やMETIガイドラインを検
>討しなかったとして責められているように読める箇所があっ
>て(若干表現は微妙なのですが)、それは無理だろうと突っ
>込みたくなるところはありますが^^;
ははは・・・それは殺生な・・・(^^;)。
47thさんの懸念はろじゃあも共有できているのではと思います。そこから前に行くためには、仮処分ワールドから一歩踏み出したところで本訴で判断を仰ぐか、平時のレフリーと戦時のレフリーを裁判所以外の主体を想定して枠組みを提案していかないといけないんじゃないかと思ってます。そろそろその辺について、本業の方で書いたり外野で話したりしてみようかなあなんて身の程知らずなことも考え始めています。新商法の821条の議論も「証券化第一世代」(ちゅうか「証券化黎明期世代」)からするとちょっとなあ(「死文化」とかはちょっといい過ぎじゃね?というかなんか前提違ってねえか?今までも無制限って訳じゃなかったって認識あるんか?という意味)という疑問もある訳で、ちょっと匿名ブログの限界を感じ始めてたりします。やれやれ・・・
今後もよろしくお願いしますね。

Posted by ろじゃあ : 2005年06月15日 13:09

こんにちわ。意外に早く(?)全文掲載されましたので、とりあえずTBさせていただきました。(47thさんはすでに手元にお持ちでしょうが、こちらに来られる方のご参考になれば、と思いまして)私はちょっと忙しいので、今夜にでも全文目を通してみます(^O^;)あっ、でも今夜はコンフェデ杯だった。。

Posted by toshi : 2005年06月16日 04:12

>ろじゃあさん
カミング・アウト?お待ちしています^^
とはいえ、HNでもろじゃあさんの言説の説得力には、いささかの疑いもないので、あとはリアルな社会での自分の言説とのリンクを図るかどうかというところですよね。
>toshiさん
全文読後の意見も拝見しました。
表立っていえることといえないところがありますが、かなりの点で同感でした^^

Posted by 47th : 2005年06月16日 12:51

こういうケースって、設計料と弁護士報酬と両方とれるんでしょうか。
裁判はアフターサービスですか。負けたときのことも含めて契約してるんでしょうかね。
とても気になります。

Posted by mousikos : 2005年06月17日 01:55

>mousikosさん
気になりますが・・・私も知りません^^;(知ってたとしても言えませんが・・・)

Posted by 47th : 2005年06月18日 14:41

はじめまして、福井と申します。
当方にて少しニレコの件に絡めてエントリを書いていますのでトラックバックをさせていただきました。
こちら様とは読者層が違いますので、あまり専門的なことには触れておりませんが、ご覧いただき何かのご意見を頂戴することができましたなら幸甚に存じます。

Posted by 福井 : 2005年06月21日 07:59

 
法律・経済・時事ネタに関する「思いつき」を書き留めたものです。
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