「擬似外国会社」規定と「レース」 (1) [ June 09, 2005 ]
ろじゃあさんによると日経朝刊で擬似外国会社に関する会社法821条がとりあげられていて、これで外資系会社が取引を継続できなくなると騒いでいるらしい・・・とのこと。
今頃になって騒いでいるのか、あるいは最近ネタが解禁になったのか・・・いずれにしろ外資系会社について問題だろうことはよくわかるが、証券化のSPCやM&Aや事業再生関係の債権や資産の買取のためのSPCも問題となり得る規定。既存の譲り受け分や既発債などの取り扱いについてはとうの昔に手当て済だとは思うが、今頃になって外資系証券についてこれが問題になるということは、まだ証券化関係等で未対応の主体も多いということなのかなぁ。
ちゃんと調べたことはないのですが、外資系の金融機関(投資顧問なんかも含めて)ではバミューダあたりに○○Securites Ltd. (Japan)とか置いてやっているところは結構あるので、擬似外国会社は「継続的取引ができない」と言われてしまうと、やはり、それなりに困るところは多いのではないかと^^;
ただ、ろじゃあさんの仰るとおり、この問題は、そんなに目新しい話ではありませんよね。
擬似会社問題は新しい問題か?
元々、擬似外国会社について、現行商法482条は次のように定めています。
日本に本店を設け又は日本に於て営業を為すを以て主たる目的とする会社は外国に於て設立するものと雖も日本に於て設立する会社と同一の規定に従ふことを要す
これだけなら、「何だ日本の商法に従えばいいだけじゃん」と、思うところですが、実は大審院判例によれば、ここでいう「日本に於て設立する会社と同一の規定」には設立関係の規定も含まれ、しかも、効果としては、日本で設立手続を踏んでいない擬似外国会社については、法人格が否定されるということになっていたので、結局、この規定は擬似外国会社については法人格を認めないということを意味する規定というのが一応の理解でした。
その意味で、ろじゃあさんの仰るとおり、会社法現代化の前から擬似外国会社の問題は、あちらこちらに存在していたわけです。その意味では、別にとりたてて目新しい問題ではないわけです。ただ、従来は大審院判例はいきすぎじゃないの?、とか、そもそも商法482条の立法趣旨が不明確だ・・・とか、いろいろな「言い訳」があって、実際に擬似外国会社規定を使って訴訟を提起するインセンティブを持つ人間も、そういないだろうというところで、実際にはあんまりクローズアップされることもなかったことが、逆に会社法現代化でトピックとして採り上げられてしまったために、見てみぬふりをするわけにはいかなくなったということはあるのかも知れません。
会社法現代化で厳しくなったのか?
実は新会社法821条の厄介なところは、その「字面」だったりします。
新会社法821条1項
日本に本店を置き、又は日本において事業を行うことを主たる目的とする外国会社は、日本において取引を継続してすることができない。
「取引を継続してすることができない」というと、これは大変だ、と思うのですが、よく条文を見ると罰則は登録免許税相当額の過料(979条2項)のみです。実際、この「過料」(「あやまちりょう」とか言ったりしますが)というのは、これを課された人はツチノコなみにレアな存在なので、法的な意味で大きいのは、むしろ2項の連帯責任規定の方だったりします。
新会社法821条2項
前項の規定に違反して取引をした者は、相手方に対し、外国会社と連帯して、当該取引によって生じた債務を弁済する責任を負う。
というわけで、規定の構造からすると、現行商法が擬似外国会社の法人格を否定していることを前提とすると、新会社法では、法人格は認めた上で過料と連帯責任というペナルティを課すことにしているわけで、これは必ずしも現行法よりも擬似外国会社に対して厳しくなったという意味ではないわけです。
ただし、実は擬似外国会社については、一度立法の過程でそもそも擬似外国会社に関する規定を削除するという案も俎上に上り、強い支持を得ていました。
そこからすると、新会社法は一種の後退になるわけです。
と、ここまでは前振りです。
擬似外国会社なんて、一部の証券化やM&Aの連中にしか関係のない規定でマイナーな話でしょう、という印象を受けるかも知れませんが、実は、それは大間違いで、この擬似外国会社規定のあり方如何は、よくも悪くも日本の企業社会を大幅に変えてしまう可能性を持っています。
それは、どういうことか、というところは、次回へ。
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Posted by 47th : | 01:58 PM
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