« 畏るべし隣国 | メイン | 確かに私も憂鬱なんですが・・・ »

「読み物」と「科学」の境界

有名な団藤記者のブログ時評の「離婚の減少はサッカーW杯から始まった [ブログ時評26]」という記事で、離婚率の月別の統計をベースに日韓W杯が離婚率減少のきっかけとなり、ヨン様が更にその流れを加速したという話がされています。
これは「読み物」としては面白くて、タマちゃんと風太君ではどちらが癒し効果が高いのか、とか、若貴騒動と日本のW杯アジア予選通過ではどちらが影響力が強いのか、とか、話題が盛り上がりそうな話です。
ただ、「数字を使った読み物」が、「科学」や「学問」と同じ意味を持つかというとそれは違います。


私のつたない統計学の理解からすると、少なくともポジティブなニュースとネガティブなニュースをクラス分けして(更にポジティブ度とネガティブ度を立証する仮説にしたがってクラスわけすると、よりよいと思いますが)、メディアでの露出頻度(これもどの範囲をとるかが問題ですし、経済紙と女性週刊誌では全く異なってくるわけですが)に基づいて加重平均を出して、回帰分析で有意な相関が見られるかといった辺りは見てくることになるのではないかという気がします。(そもそもニュースが離婚率に影響を与える機構そのもの(仮説)も、つめないといけませんし、離婚の類型などによる場合分けも求められると思われます)
もちろん、ブログ時評の記事は新聞記者としての団藤氏一流のシャレというか、あくまで読み物としての記事で、そういう四角四面な議論をするつもりはないのでしょう。また、離婚率に関する、こうした数字的なデータを用いた「読み物」というのは、全く害はないと思いますし、読み手も読み物としての範を超えて、こうした知識をふりかざすことはないのでしょう。
ただ、こうした「数字を使った読み物」と「科学」とか「学問」の違いが、巷にあふれるいろいろなニュースでちゃんと使い分けられているのかは、受け手としてはきちんと見極めておかないといけないような気がします。
その逆というか、徹底的なまでに冷徹かつ客観的なデータ分析で、世の中の真実を光をあてるのが、シカゴ大学の経済学教授とNew York Timesの記者の共著による「FREAKONOMICS」という本です。
FREAKONOMICS.bmp 実は、先週うちに遊びに来ていたもりたさんに教えてもらったのですが、今、いちばんはまっています^^
例えば、大相撲について次のようなデータをつきつけられたら、どんな結論が合理的に導き出されるでしょう?

  • 千秋楽に勝ち越しをかけた力士が8勝6敗で勝ち越しを決めている力士と対戦した場合には、他の条件でその力士が対戦したときのデータに比べて2倍近い勝率(80%弱)を記録している。
  • その次に同じ顔ぶれでの対戦があたっときに、前回千秋楽で負けた相手が勝つ確率は、その他の条件の場合の2倍近い勝率を記録している。
  • 八百長疑惑がかけられている期間では、上のような減少は見られず、千秋楽に勝ち越しをかけた力士の勝率は他の条件の場合とほぼ同じ。

ね、面白くありません?
「科学」や「学問」って、実は、極めると「読み物」としても面白いものにつながるんですよね。
逆に団藤氏の「読み物」としての着想も「科学」として突き詰めてみると面白い結果が出るのかも知れませんね。

Posted by 47th : | 12:20 PM

このエントリーのトラックバックURL:
http://WWW.ny47th.COM/mt/mt-tb.cgi/82

このリストは、次のエントリーを参照しています: 「読み物」と「科学」の境界:

» 離婚「減少」現象を科学っぽくしてみましょう from ブログ時評
 「離婚の減少はサッカーW杯から始まった [ブログ時評26]」についてトラックバック「『読み物』と『科学』の境界」をいただきました。良い機会なので「減少」現象を... [続きを読む]

トラックバック時刻: June 22, 2005 05:50 AM

コメント

団藤氏の「読み物」は僕も面白く読みました。あそこまで突飛な説であればしかめっ面で真剣に否定しようとする坊やもそんなに現れないでしょうね。

あのエントリはひょっとして、科学としての正しさ(妥当性の高さ)よりも物語としての面白さ(わかりやすさ、ツッコミやすさ)のほうが人を動かす現状を憂えた団藤さんの「ね、数字と事象の関連づけなんてどういう風にでもできるんだから踊らされないように論理を身につけなさいよ」っていう教育的な意図だったのかも。

Posted by tockri : June 21, 2005 02:08 PM

ご存知かとは思いますが、元の論文のいくつかはウェブで見られます。私はこっちを見てました。というか、本が出たの知らなかった……
http://www.src.uchicago.edu/users/levit/recentpublications.htm

Posted by t.ikawa : June 21, 2005 03:40 PM

>tockriさん
団藤さんからレスポンスの記事のTBを頂いたのですが、ちょっと私は真意をつかめませんでした(- -)
>t.ikawaさん
そんなページがあったんですね。
ありがとうございます^^
本の方も、なかなか面白いので是非ご一読ください。

Posted by 47th : June 22, 2005 10:28 AM

あれだけの「まともな」説のトラックバックを受け取りながら47thさんにだけ反応されたということを考えると、やはり「物語の面白さ」というのが重要なキーワードだったのではないでしょうか。
だって、とりあえず納得感が高いのは
http://blogpal.seesaa.net/article/4164535.html
とかの、「離婚しやすい年代が減ったから」という説ですよね。
あと、
http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/geppo/nengai04/kekka4.html
と併せて見て、婚姻件数が増えてないのに3年前まで離婚がうなぎのぼりだったということは、「離婚しそうなとこはみんな離婚しちゃった」という身もフタもない説をいま思いつきました。でもそんなんじゃ面白くないから団藤さんはとりあげないのでしょう(から自分のエントリにしないでこんなとこに書いてます)。
ということで「科学っぽく」のエントリは「追い打ちのオモシロさ」じゃないかと。

Posted by tockri : June 22, 2005 09:37 PM

>tockriさん
ちなみに、物語的な面白さで言うと、職種と離婚率の関係も面白いのではないかと・・・例えば芸能人と渉外弁護士の離婚率は高いとか。
(同業者の方には、それはおまえの事務所だけだというツッコミが入りそうな気もしますが・・・)

Posted by 47th : June 24, 2005 12:41 PM

コメントしてください




保存しますか?

(書式を変更するような一部のHTMLタグを使うことができます)

 
法律・経済・時事ネタに関する「思いつき」を書き留めたものです。
このブログをご覧になる際の注意点や管理人の氏素性はこちらにありますので、初めての方はご一読を。