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郵政民営化 pro or con ? (1)

8/15 追記あり <\p>

衆院総選挙とか郵政民営化絡みの話は、あんまり色々と書くと政治的知識やセンスの不足がばればれになってしまうので、深入りは避けておいた方が賢明とは思いつつ、とはいえ、自分なりに考えていることもあるので、批判を歓迎しつつ、ちょっと思いついたことを書き留めておこうかと思います、

民主党の政策って、どうなんだろう?

・・・ええと、実は今回選挙という話になって初めて民主党の公表している「郵政民営化に関する考え方」(の要約版)を拝見したんですが・・・これ、想像以上によくできているような気がするんですが、巷の評価というのはどんなものなんでしょう?
特に私的には納得間が高いのは、「基本的なポイント」の中で挙げられている次のあたりです。


③ 郵政事業のうち、郵便事業は万国郵便条約に明記された基本的公共サービスであり、国が責任をもって国民にユニバーサルサービスとして提供する義務がある。但し、民間事業者の参入を妨げるものではない。
(中略)
⑧ ・・・当面は預入限度額の上限を引き下げ、徐々に規模縮小を図るとともに、国債管理政策の観点から現実的なソフトランディングを図るべきだと考える。具体的にはプライマリーバランス均衡までの間は、公社の経営改革の継続に加え、預入限度額の上限引き下げによる段階的規模縮小を図る。

ちょっと補足すると、まず、郵便事業については民主党の指摘するとおり、インターネット網が相当に普及・発達して、郵便サービスが不可欠の生活インフラとは言えないという形になるまでは、特に過疎地域における郵便サービスの提供という部分は完全な意味での民営化というのは難しいのではないかという気がします。
まず、既存の交通インフラや人口密度といった地理的条件の違いがある(初期資源の配賦が異なる)条件の下では、市場による資源分配によって公正性が確保されるとは限らないわけで、何れにせよ地理的条件の不利な地域の住民か、そこへのサービスを維持する事業者への補助が必要になるのでしょうから、民営化が財政に貢献するというためには、このコストが現在の公的郵便網の維持の(ネットの)コストよりも少なくなければならないはずです。
余談ですが、この「ネットで見る」という考え方は、民営化においてしばしば見落とされがちな点のような気もします。例えば、同じ民営化ということで国鉄民営化の例があげられますが、国鉄民営化が(未だに旧国鉄時代の債務整理は残っていることを別にしても)財政に貢献したかどうかは、採算性を理由にローカル線が廃止する一方で、その地方にはバスなどの代替的公共輸送手段の提供が必要になっているはずで、そのコストとのネットで見なくてはいけないのではないかと思います。
印象だけですが、地方のバス会社というのは公営・民営問わず、かなり財政が苦しく、産業再生機構のお世話や地方自治体から補助を受けているわけで、単純に国鉄が民営化して不採算路線を廃止したので財政再建に貢献したという見方はできないんじゃないでしょうか?
で、こうした補助金方式というのは、常に情報の非対称性(事業者の経営努力の水準を補助金の支出者が適切に把握できない)から来るモラル・ハザードやエイジェンシー・コストの問題が生じるわけで、これが公社方式で直接に事業内容について監督する場合に生じるコストよりも低い保証というのはないわけです。
別の言い方をすれば、郵便事業がユニバーサル事業として維持される限りにおいては、民営化による効率化(これもエイジェンシー・コストの削減)は、補助金制度の下で発生するエイジェンシー・コストによって打ち消されてしまうわけで、何れにせよ事業の効率性を政府が効果的に監視するシステムがない限りは民営化の効率化効果というのは生まれないように思えるわけです。

そして、もう一つユニバーサル・サービスとの関係で考えなくてはいけないのは、非効率な企業の退出ルールが整備されているかどうかということです。
簡単にいえば、民営化後の郵便会社が、「経営が苦しいので破産して事業を停止します」ということが許されるのかということです。これができなければ、結局、民営化といっても、最後のところで公的に救済してユニバーサル・サービスを維持しなければならないので、単にこれは国民負担を長年にわたって少しずつやるか、破綻するまで待って一気に負担するか、というタイミングの問題でしかなくなってしまうように思われます。
また国鉄のローカル線の話に戻ると、地方のバス会社というのは事業内容が苦しいわけですが、いざ破綻させようとしても、なかなか難しかったわけです。産業再生機構ができて、真っ先に支援が決まったのが地方のバス会社だったというのは、何か示唆的な気がするんですよね。

・・・と郵便事業の部分だけで、結構分量がいったので、金融保険サービスについては、次回に回しますが・・・まあ、これは前に郵政民営化に見るデジャビュで書いたことなんですけどね。
というわけで、小泉さんの郵政民営化は全面反対というのが、私の立ち位置になる・・・かというと、ちょっとそういうわけでもないのが難しいところで、その辺りもまた次以降で。
なお、以上は本当に思いつきですので、誤解とか勘違いがあったらご指摘いただけると助かります。
では。

(8/15 追記)
ところで、郵政民営化については、もちろん知っている人は既にご存じのとおり、bewaadさんのところの方がコメントの質も含めて、とっても充実されているんですが、そのbewaadさんが、ほとんど同じタイミングで奇しくもこの記事と同じく国鉄のローカル線との比較なんかも入れて「郵政民営化と解散を考える・その2:民営化すべき理由の批判的検討」で論じていらっしゃいます。
もちろん、私の「思いつき」とか「印象」だけの話と違って、極めて具体的に論じていらっしゃるのですが、着想点がbewaadさんのようなプロ(?)の方と近かったのが、勝手に一人で嬉しかったのでご紹介ということで^^

Posted by 47th : | 15:06 | 時事

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» [economy]民主党案を通してみる郵政民営化関連法案の評価 from bewaad institute@kasumigaseki
といってもwebmaster自身の考察ではなく47thさんのエントリの紹介です。 「郵政民営化 pro or con ? (1)」 「郵政民営化 pro o... [続きを読む]

トラックバック時刻: 2005年08月14日 19:31

» 郵政民営化反対 from 風のまにまに(by ironsand)
http://d.hatena.ne.jp/ironsand/20050806#p2でも書いたが,私は郵政民営化反対である。郵政民営化反対というだけで,亀井さん... [続きを読む]

トラックバック時刻: 2005年08月27日 10:59

コメント

郵便サービスについては、鉄道網やバス路線との比較とともに、電話サービスとの比較で考えるのも一考に値するかと思います。
電話サービスも郵便サービスと同様に、ユニバーサルサービスとしての総意が概ね得られておりますし、且つ1985年の民営化以降純然たる民間会社であるNTT東日本・西日本等によりサービスが提供されていますので。

ポイントは、郵便サービスが、電話・鉄道・バスサービスと比較して、より自然独占性が高いか否かということではないでしょうか。
すなわち、国営の1社に独占的にサービスを提供させたときの利益と競争を導入したときの利益のどちらが多いか。
独占を認めた場合の方が、サービス提供の総コストが減少する等し且つ独占者が独占的価格設定ができない状況にある場合は、独占状態を維持した方が国民にとってもプラスでしょうし、市場を開放して価格競争が発生した時の方が消費者厚生が増すのであれば市場を開放した方がいいということにもなるのでしょうね。
私は市場原理主義者なので、独占じゃないとダメだということがはっきりしているのでなければ、民間にも市場参入させればいいじゃないかと思っています。

何れにせよ、市場開放は、民営化とは直接には関係ないところが痛いところです。
私は、正直なところ、公社じゃないとユニバーサル義務を課すことができないわけではない(NTTにもユニバーサルサービス提供義務を課されています。)以上、民営化に反対する理由はそれほどないのではないかと思っています。
(それほどメリットもないですが、「民でできることは民で」という原則自体は賛成です。)

Posted by S : 2005年08月13日 18:12

>Sさん
早速示唆に富むコメントありがとうございます。
消費者利益として考えた場合には、市場競争に委ねた方が効率化するというのはその通りだろうと思います。
ただ、ユニバーサル・サービスの問題は、市場に委ねた場合には過疎地域へのサービス提供価格が著しく高くなったり、コストに合わないためにサービス提供がなされなくんる点です。
NTTとの比較については、実はちょっと意図的に避けた面があるのですが、特にユニバーサル・サービスが義務づけられている固定電話網については、単純に民営化したことで競争が活性化したとか、経営効率が高まったということではないようにも思うんですよね。

Posted by 47th : 2005年08月13日 19:30

失礼。
「なされなくんる点」→「なされなくなる点」ですね(一人ぼけ/つっこみ・・・)
ついでにNTTとの違いは、NTTの場合は、少なくとも近年まで民営化前に整備されたインフラ網を独占的ないし優先的に利用することで、事実上、民営化後も独占的状況が存在し、これが一種ユニバーサル・サービス義務の代償的な役割を担っていたと思われる点です。
Sさんの書きぶりだとご存じだと思うのですが、近年のエッセンシャル・ファシリティの議論でも、しばしばNTTにのみがユニバーサル・サービス義務を負うことに競争的不均衡とのバランスが論じられているわけで、この点で郵政民営化とは事情が違うように思えます(インフラは基本的に道路や鉄道・航空など他事業者によってもアクセス可能なもので、そうしたエッセンシャル・ファシリティ付与による独占的利益の源泉は存在しない)。
ついでなんで、もう一つは、NTTが従来の固定電話網以外の事業に進出して成功を収めたことについては、旧電気通信研究所(でしたっけ?正式名称忘れました)時代に蓄積された技術力が背景にあるわけで、そういう意味で他の競争者に対する比較優位性を持っていたという事情もああるように思われます。なので、NTTというのは、民営化の中でもちょっと特殊な事例として考えた方がいいんではないかという気がしています。
・・・以上、メチャクチャはしょってしまったので、ひょっとしたら、これについては別途エントリーを立てるかも知れません^^
NTTとの比較についても、ご意見お待ちしております^^

Posted by 47th : 2005年08月13日 19:47

この問題は、一定の経済モデルを立てて議論しないと決着がつかないのではないでしょうか?お互い、もっともらしいファクターを羅列するのは簡単だと思うので。

Posted by じょう : 2005年08月14日 00:17

>じょうさん
「決着をつける」となると、かなり大変なんでしょうね。
経済モデルを組んでも、今度はその現実との整合性ということも問題となるのでしょうし^^;
私自身にはそもそもそこまでの能力もありませんし、またそれをやっていたら、衆院選は終わってしまっているかも知れないので^^、私自身の手持ちの知識と経験をベースに、「私自身はこういう見方をしてるんですけど、どうですかね?」というレベルで書いているので、「ああ、そういう見方もあるかもね」ぐらいのつもりで見ていただければ幸いです。
その辺りで、何だか「これが正しい見方で、相手のいうことは間違っている!」みたいな押しつけがましさを感じさせたら、へりくつでも何でもとりあえず言い負けて引っ込んではならないという、職業的(?・・・それとも私だけ?)なカルマのせいかと思いますので、ご容赦を。
>Sさん
上のコメントも、SさんがNTT民営化にも見識を持ってらっしゃる方とお見受けして、そういう方は私の思っていることについて、どう考えられるんだろう?というのが楽しみで、ちょっと書きすぎてしまったもので、ご意見を否定するとか、そういうことではないのでご容赦を。
今後とも、これに懲りずにどうかコメントして頂ければありがたいです。

Posted by 47th : 2005年08月14日 01:13

NTTの場合は、民営化よりもむしろ指定電気通信設備の開放義務や、
接続料算定方法の政策的変更の方が大きかったと思います。
郵政民営化が、ある程度成功を収めたJR方式やNTT方式を十分検討し
ていないのは、片手落ちだと思います。

Posted by 規制業種 : 2005年08月15日 11:03

>47th様
丁寧なコメント戴きありがとうございます。
現在ネットの環境が悪くて、返信が遅れてしまい申し訳ありませんでした。

結局のところ、何で民営化(逆に公社維持)が必要かという議論に尽きるのではないかと思うのです。
ユニバーサルサービス維持という観点からも、公社という形態を維持することが必要か否か自明ではありませんし。
そもそも公社であればなぜユニバーサルサービスが維持されることになるのか、私には理解できません。
例え公社であっても、高コスト地域でのサービス提供コストがあまりにも大きくなった場合、当該地域の切捨てをしないとも限りません。
それを避けるためには、ユニバーサルサービス提供義務を課したり、取締役の選任を認可制にするなど公社の経営をコントロールする必要がありますが、かかる義務を課すのであれば、公社でなくとも日本郵便株式会社でもユニバーサルサービスの提供は確保されるわけです。

公社or民営の議論はさておき、郵便局にユニバーサルサービス義務を課すことの是非については、47thさんご指摘のエッセンシャルファシリティ(不可欠設備)に関する議論が参考になるかと思います。(ただし、エッセンシャルファシリティとユニバーサルサービス義務は直接的にはリンクしていないと思います。)
エッセンシャルファシリティ(不可欠設備)の開放義務を独占的事業者にのみ課した結果、当該事業者の設備投資インセンティブ(例えば光ファイバ設備に関する投資)を阻害されると主張しているため、米国では、ブロードバンド設備に関し、独占的事業者の他事業者に対する設備開放義務を撤廃する方向で制度改正が進められているところですが、ユニバーサルサービス義務についても同様に、事業者のユニバーサルサービス提供インセンティブに関する議論はありました。
ユニバーサルサービス提供義務については、赤字地域の採算を確保するため、ユニバーサルサービス基金を創設、固定電話サービスに係る全事業者は一定の金額を拠出し(利用者から回収されています。電話の明細にUSFと書かれた費目があるかと思います。)、基金から赤字地域において電話サービスを提供している事業者に赤字分が補填されるという仕組ができています。(実は近年のIP電話等の出現により、拠出金が不足してきているという難点はありますが。)
日本でも同種の法的仕組みはありますが、まだ不採算地域の赤字が顕著にはなっていないので、基金の発動はしていません。(現在制度改正中で直に発動されるでしょうけど。)

郵便サービスについても、ユニバーサルサービスの提供の確保(不採算地域へのサービス提供確保)は、市場原理では担保できない問題ですので、民営か公社かという問題とは別に、補助金又は基金で担保する必要があるのではないかと考えております。

要すれば、以前のコメントの繰り返しになりますが、
-公社とする必要性が感じられないので民営化自体は消極的賛成。(特段、メリットも感じられないという意味で消極的。)
-ユニバーサルサービスの確保は、民or公とは別の議論。田舎で本当に必要なサービスが提供されない事態になれば、補助金やユニバーサルサービス基金等の仕組みを創設すべき。(使われない公衆電話を多数設置することや、空席だらけの電車を田舎で運行させることがユニバーサルサービスの確保か。)
ということです。
ただし、ユニバーサルサービス基金の発動には、郵便サービスに参入する黒字事業者(いいトコどり(クリームスキミング)事業者)の存在が必要なので、郵便サービスに新規参入が認められないという現状認識に立てば、ユニバーサルサービス制度は機能しないかもしれません。
(その場合は、単一の郵便事業者が独占利潤を確保できるのでユニバーサルサービス基金は不要となり、むしろ必要なのは料金規制(プライスキャップ・公正報酬率規制等)になります。)

蛇足ですが、低サービス高コストの米国の郵便局(USPS)こそ民営化すべきだと心から思います。

Posted by S : 2005年08月15日 20:31

>Sさんの書きぶりだとご存じだと思うのですが、近年のエッセ
>ンシャル・ファシリティの議論でも、しばしばNTTにのみがユ
>ニバーサル・サービス義務を負うことに競争的不均衡とのバ
>ランスが論じられているわけで、この点で郵政民営化とは事
>情が違うように思えます(インフラは基本的に道路や鉄道・航
>空など他事業者によってもアクセス可能なもので、そうした
>エッセンシャル・ファシリティ付与による独占的利益の源泉
>は存在しない)。

エッセンシャルファシリティ義務とユニバーサルサービス義務は直接的にはリンクしていないと思いますので、47thさんの議論を日本郵便株式会社にもエッセンシャルファシリティ義務を課すべきかという趣旨に、慎に勝手ながら、受け取らせていただきました。
私の認識でも、電話サービスにおける固定電話網(NTTの最寄の局舎から加入者宅までの回線。いわゆるラストワンマイル)と同列にみなせる「不可欠設備」は郵便サービスについては、少なくとも、現時点では存在しないのではないかと考えています。
郵便局の局舎も電話局と異なり代替性が高い(コンビニでも市役所でも代替可能)、配送人員も雇用可能なので、Essential(不可欠)であるとはいえないと思います。

因みに、現在の通信法制では(日本も諸外国も)、旧国営の設備(エッセンシャルファシリティ、旧国営の研究所)を引き継いだか否かは、義務のある・なしには影響を与えず、純粋に市場に対しどの程度の影響力を及ぼし得るか(エッセンシャルファシリティ又は市場支配力の保持等)により判断されるのが主流です。(WTO電気通信合意等参照。)
そもそも国営の電話会社が存在しない米国でも旧ベル系の会社が加重的な義務を課されていたり、日本のKDDIが国営の旧KDDの設備・研究所を引き継いでいるにもかかわらず、それだけを理由に特別な義務を課されていないのがその一例です。

Posted by S : 2005年08月15日 20:48

 
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