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新しいフェーズ到来の予感(気のせいか?)

磯崎さんHardwaveさんのブログをチェックしていて気づく。そうか、楽天がTBSにねぇ・・・
まだ、全然分析もしていないし、そもそも、そんなに深くつっこめない事情もあるのですが、楽天のプレスリリースからすると、楽天はこれまでにもTBSと提携協議を進めてきていたという話もあるようで・・・今回の楽天の究極の目的は本当に提携なのかも知れません。
もちろん、提携というのは力づくではできません。
ただ、他方で相手の顔色をうかがうだけでは、交渉はできません。
友好的に進めようとしても、相手方がのらりくらりとしているのであれば、相手を前向きにさせるためのカードが必要です。
今回のように水面下の交渉経緯を、突然パブリックにされてしまうと、対象会社の身動きは結構とりにくくなるもので、アメリカでは、こういうのをBear Hug(要するに抱え込んで身動きがとれなくしてしまうという意味ですね)といい、アメリカでは一つの常套手段となっています。
M&Aの実務をやっている弁護士によると、このBear Hug Letterのドラフトというのが、一つの醍醐味ともいいます。というのも、相手の態度を必要以上に硬化させることなく、それでいて、確実にプレッシャーを与えることができるかどうかというマニュアルやひな形の存在しない世界で、状況判断能力や創造力が試される領域だからです。
日本では、若干誤解されて紹介されているような気もしますが、敵対的買収と友好買収の境界は非常に曖昧です。実際には、コストや不確実性の高い敵対的買収は(何か隠れた目的でもない限り)誰も望みません。むしろ、敵対的な手法は、「最終的に友好的な買収を実現させるための戦略の一つ」という位置付けです(オラクルとピープルソフトですら、最終的には両経営陣が合意の上で合併契約が調印されたことを思い出してみましょう)。
これまでの、いくつかあった「敵対的」買収というのは、どこか「敵対的」であることに意義を見出しているような、その意味で、何が買収者の目的なのかが非常に分かりにくいものでしたが、今回の楽天の行動は、「TBSとの友好的提携」という最終目標を実現するための、「戦略的敵対的買収」とでも呼べるものではないかという気がしています。
ちょっと気が早いのかも知れませんが、敵対的な買収手法が戦略的に用いられるというのは、また一つ日本のM&A市場が新しいフェーズに入っていく兆しのような気もします。
もちろん、こういう新しいフェーズでは、単なる形だけの買収防衛「策」は、それほど大きな意味合いを持ちません。「防衛」自体も交渉の上での一つの選択肢でしかなく、買収対象となった会社にとっても、大事なのは、全体として達成したい目的、あるいは、守りたい価値をきちんと見据えて、そこに着地するための全体戦略を立てることです。
・・・というわけで、今後の両社の対応には要注目です・・・(ただし、残念ながら、私の方では、諸般の事情により、(多分、)これ以上個別につっこむことは支障がありそうですが・・・)


Posted by 47th : | 10:44 | M&A

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コメント

今回をはじめとするM&A案件へのマスコミの論調やblogでの取り上げられ方が感情論と技術論に二極分化していて(技術論自体は重要なのですが)、肝心の当事者の経営判断(経営戦略や交渉戦術)についての議論が不足しているように感じていました。
ご指摘のように企業も法律の枠組みを十分に踏まえて交渉戦略を練っていくことがますます必要とされるわけですが、弁護士の方々が日々スキルを向上されている一方で、企業側には逆に「優秀(有名?)な弁護士に買収防衛策を作ってもらえば安心」という意識が生まれているのではないかと心配(商売人が商売のことまで全部弁護士に任せてどうするんじゃい)しています。
M&A市場が新しいフェーズに入ったときには、企業経営者の戦略経営に関しする自覚と覚悟がより一層問われ、淘汰が進むことになるんでしょうね。

Posted by go2c : 2005年10月14日 13:07

>go2cさん
こうした支配権維持の絡む交渉というのは、通常の経営判断とは違う部分もあるわけで、弁護士の方でも技術的な緻密さと同時に大局を見渡す目が求められるんだと思います。
ただ、弁護士、というかアドバイザーは、最終的な着地点とかボトム・ラインを決めることはできないわけで、依頼者に考慮要素を整理させて、必要な意思決定を促していくという辺りが、ディールをやる弁護士の醍醐味ではないかと思ったりしています。
本件なんかは、まさにそういうところで面白そうな案件ですね。

Posted by 47th : 2005年10月14日 21:27

久しぶりの晴天ですが、いかがお過ごしでしょうか?
これだけ情報を浴びているにもかかわらず自分なりの考えが未だまとまらないのが非常にもどかしいのですが、私は上のgo2cさんのご意見に共感を持ちました。
NIKKEI NETの「TBSと楽天、政財界に根回し合戦」(http://www.nikkei.co.jp/news/main/20051016AT1D1501715102005.html) をいう報道を見ますと、「なんか違うんだよなあ」としか思えないのです。
弁護士は防衛策のスキームを作り、i-bankerはvaluationに専念し、報道陣は世論を煽り、会社・経営陣は根回しをしているだけならば、本当の経営判断はいったい誰がするのか?と思ってしまいます。まあ、別に根回ししちゃいかんとは言いませんけど、独立した第三者機関という建前からしてどうなんでしょうね。

Posted by NYlawyer : 2005年10月15日 21:00

 
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