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あふたーまーけっと、いきづまり・・・

ちょっとエントリーが滞っている間に、スパムコメントが増えてます。
早くもMovable Type 3.2のフィルタを無効化する技が開発されたということなんでしょうか?
もっとも、実際のコメントの内容はスパムであることが一目瞭然なんで、フィルタをくぐったとしても、これを実際にクリックする人がそんなにいるとは思わないんですが・・・ここまで来ると、フィルタをくぐることが一つの目的と化しているんですかね?それとも、スパムコメントの報酬?体系が、実際のクリック率ではなく、フィルタを突破させた数で判断されるんでしょうか?・・・でも、どうやって測っているんでしょうね?
何て言うことはどうでもいいんですが、試験までいよいよ1週間を切ったというのに、Antitrust Law and Economicsのpaperが、完全に行き詰まっています(- -)。
いかに自分がミクロの基礎をちゃんと理解していないかを改めてつきつけられている感じです。
題材は、Eastman Kodak Company v. Image Technical Services, Inc., et al, 504 U.S. 451 (1992)をきっかけとした、いわゆるAftermarket Monopolyの競争法上の取り扱いについての話です。Aftermarketというのは、例えば、コピーのトナーやメンテナンスサービスなんかの市場で、こういうのは、大体元々の機種特有の部品やメンテナンス・ノウハウが必要なんで、こうしたパーツやノウハウの供給をコントロールすると、元々の機会を製造しているメーカーが割合簡単に独立系保守業者やパーツ供給者を閉め出すことができるわけです。
一見すると、そうした独立系保守業者を締め出すのはけしからん、ということで終わりそうなんですが、よくよく詰めて考えてみると、必ずしも社会的に非効率とは限らないんじゃないか・・・更には、実は、こうしたaftermarket monopolyを認めることが社会的には望ましい場合もあるんじゃないか、ということで、上のEastman Kodak事件以後、このAftermarket Monopolyの是非を巡っていろいろな議論が戦わされています。日本でも、昨年、レーザープリンターのトナーカートリッジに関して、次のようなリリースを公正取引委員会が出しています。


平成16 年10 月21 日キヤノン株式会社に対する独占禁止法違反被疑事件の処理について
レーザープリンタに装着されるトナーカートリッジへのICチップの搭載とトナーカートリッジの再生利用に関する独占禁止法上の考え方
近年,レーザープリンタに使用されるトナーカートリッジ(以下「カートリッジ」という。)にICチップが搭載される事例が増えている。レーザープリンタのメーカーがその製品の品質・性能の向上等を目的として,カートリッジにICチップを搭載すること自体は独占禁止法上問題となるものではない。しかし,プリンタメーカーが,例えば,技術上の必要性等の合理的理由がないのに,あるいは,その必要性等の範囲を超えて
① ICチップに記録される情報を暗号化したり,その書換えを困難にして,カートリッジを再生利用できないようにすること
② ICチップにカートリッジのトナーがなくなった等のデータを記録し,再生品が装着された場合,レーザープリンタの作動を停止したり,一部の機能が働かないようにすること
③ レーザープリンタ本体によるICチップの制御方法を複雑にしたり,これを頻繁に変更することにより,カートリッジを再生利用できないようにすること
などにより,ユーザーが再生品を使用することを妨げる場合には,独占禁止法上問題となるおそれがある(第19 条(不公正な取引方法第10 項[抱き合わせ販売等]又は第15 項[競争者に対する取引妨害])の規定に違反するおそれ)。なお,前記の考え方は,インクジェットプリンタに使用されるインクカートリッジにICチップを搭載する場合についても,基本的に同様である。

一応、主要な文献には目を通して、整理はしたのですが、問題は、その評価。
今までの分析の主流は、一言でいえば、equipment marketが十分に競争的であれば、aftermarket monopolyは問題がないというもの・・・なんですが、そうすると、「何故、企業はしばしばaftermarket monopolyを維持しようとするのか?」という疑問が出てきます。
また、aftermarketのmarkupが高いと、equipmentの交換のタイミングを早めてしまうという議論があるのですが、それが全体的な効率性にどれほど影響があるんだろうというのも、何だかもやもやとするところです。
・・・というわけで、どっちかというとコーポレート・ファイナンスから始まってオーソドックスな経済学的な手法の勉強に進んできている、邪道な人間としては、購入時点(ex ante)の時点での不確実性の処理という観点から考えることができるんじゃないの?という浅はかな直観に従って、既存の議論の評価と反トラスト法執行への示唆をやってみようという無謀な試みをやろうとしたのですが・・・ここに来て、完全に行き詰まり(- -)。
まず、いろいろと試行錯誤の末に、需要曲線をAftermarket Purchaseを含めた"Package" priceの期待値と、それに伴うリスクの2つから説明すれば、色々な事象が説明できるんではないかと思って、次のような需要関数モデルを考えたわけです。

Q=α-βE-γσ

・・・でも、こんな式jは私の手持ちの文献の中には見たことはなく・・・いや、もちろん需要関数の導出を多元回帰分析でやれば、こんな感じの式にはなるとは思うんですが・・・実際、こんな式になるかどうかを実証はおろか、示唆している文献すら見あたらないというところが、何かものすごーくイタイ。
あと、このモデルとマッチさせるような供給サイドのモデルや、需要関数とのマッチングになると、何かいろんなものがぐるぐる回ってきて頭が痛くなってくるんですよね・・・とりあえず、Aftermarket goodsの限界費用は平均可変費用と一致するというような強引な仮定を置いて解決しようとしているんですが、そんなんでいいんだろうか・・・
というわけで、すっかり行き詰まっているわけですが、行き詰まってばかりもいられないので、とりあえず強引にやるしかないんですけどね・・・ふぅぅ

Posted by 47th : | 12:22 | Competition Law : Antitrust (U.S.)

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トラックバック時刻: 2006年02月03日 21:49

コメント

この分野はど素人ですが,
> equipment marketが十分に競争的であれば、aftermarket monopolyは問題がないというもの・・・なんですが、そうすると、「何故、企業はしばしばaftermarket monopolyを維持しようとするのか?」という疑問が出てきます。
のところが,??

この「主流」の議論は直感的に(そして,Chicago的には?)筋が通っていると思うのですが。つまり,aftermarketでがんがんふっかけても,その分の価格が上乗せされた形で,equipment marketでの当初の"true" priceが決まっているから,問題なし,というロジックですよね。そうだとすると,aftermarket monopolyを維持しようとする企業の行動は,むしろ積極的に守ってやるべきとすら言えるかもしれない。

このロジックの前提は,equipment marketでの消費者の行動が,2つの市場を見据えたものになっている,ということなので,この前提が崩れれば,anti-trust regulationが正当化される。

その1。behavioral econの想定にしばしばあるように,消費者は合理的な意思決定をしない。より具体的には,aftermarket purchaseについて十分に考慮しない(→少なくとも最近の日本のプリンタ市場では,ランニングコストもかなり詳しく開示されているので,ちょっと厳しい議論?)。

その2。(equipment marketが)競争的でない。「市場画定」の問題になりますが,aftermarketだけで一つの市場と考えるか(全部で2つ),2つを併せて1つの市場と考えるかで,市場参入コストは大きく異なる。後者の場合,現状では十分な競争が行われていない,と判断するなら,規制は正当化される。

素人考えなので,話はこんなに単純でないかも。2つの市場をバラバラに捉える行き方だと,プリンタの大量使用ユーザが得をして,少量使用ユーザが損をする,というマーケット構造ができあがりますが,2つの市場を一緒に捉える行き方だと,どのユーザにfocusするかは,個別の企業の自由な選択に委ねられる。Chicago的(?)には後者の世界の方が素敵?

Posted by もりた : 2005年12月04日 14:18

>もりたさん
早速ありがとうございます。
さすがの鋭いご指摘・・・実は、私も狙っている結論の一つは、bahavioral economics絡みで、消費者は将来の購買のコストを過小に見積もる(モデル的には高い割引率を用いる)という傾向があって、多くの場合、企業はそれを狙っているんじゃないかというものです。直接的ではないんですが、それにつながるような実証的な研究は若干見つけているんですが、そこにたどり着く前に、既存の理屈(情報の非対称性、Hold Up、price discrimination)に何らかけちをつけなきゃあかんというところで苦しんでいます。
今のところ、結論の方向性は、消費者のmyopicな行動を助長するような慣行と組み合わさる場合や、寡占市場での協調行動につながり得るような行動はアウトじゃないのというところなんですが・・・日本語でもよう書いたことのない経済学的な言い回しを英語で書くのは、かなり苦痛です。

Posted by 47th : 2005年12月04日 14:30

こんにちは。マクロの国からやってまいりましたbunでございます。

うーん、とにかく具体的なデータと時間がたくさん欲しいところですね。データや実証がないまま理論の複雑化や精緻化で断言しようとしても(そんなことしようとしているわけではないでしょうけれど)あまり望ましいことにならないと思います。我々はなじみのない分野に入ると全体を見渡せそうな最先端に目が行きがちですが、そうした最先端がないのが「現代」であります。そこは自制したほうがいいと思っています。悪いのはデータの不足と経済学プロパーたちの研究不足・実証不足でありまして、47thさんはむしろミクロの実証研究の使えなさを怒っていいところです。私もどさくさにこぶしをふりあげるかもしれません。どうかお気楽に(笑)。

独占が許されないことについて深い検討は不要でしょうから、aftermarketに独占が許される場合についていくつか仮説をつくって、それぞれについて検討を加えるという形でいかがでしょうか。日本ではキャノンのレーザプリンタのインクカートリッジについては公正取引委員会が「問題ない」と見解を出していて、その理由は、

1.搭載するICチップが市販されていて容易に入手可能である
2.ICチップ製造に必要なデータがマニュアルで公開されている

の2つでした。( http://www.jftc.go.jp/pressrelease/05.june/050627.pdf pp17)

私ならこれらの見解も上記仮説に含まれる形にして書くと思います。需要関数の導出は今のデータ量からすると少しやりすぎかも。インクの制御をコンピュータでできるようになったこと自体、そもそもごく最近なのですから、繰り返しになりますがデータがないからといってさほど責められることもないでしょう。

Posted by bun : 2005年12月04日 22:14

留学中に趣味で読んだ文献では、このようなaftermarketの囲い込み行為は(tying に類似しているわけですが)、rule of reasonで判断されるべきとされていて、読みながら「適法なprice descriminationと評価すべき側面があるし、そうだろうなあ」と思ったのを記憶しています。確か、Areeda & HovenkampのAntitrustか、Hovenkamp, Janis & LemleyのIP and Antitrustのどっちかを読んだんだと思いますが、とても懐かしいですね。この論点、FTCとかでの内部議論もネットで取ると、色々おもしろいんですよね。とおりすがりでした。

Posted by かも : 2005年12月04日 23:40

Good Countryと申します。弁護士でも大学教授でもございません。

・「シカゴ」的には,上流市場(プリンタ)に参入障壁
がなければ,仮に下流市場で高価格ふっかけても参入
がおこるから問題ないとされていると,思うのですが
この理解って間違っていますか?
シカゴさんは,ロックインされているユーザーも評判効果によって企業の行動が抑制されるために守られるとか言う。現実問題,かなり高価格払っていると思いますが。

・ご存知かと思いますが,Lexmark Int'l, Inc. v. Static Control Components, Inc., 387 F.3d 522 (6th Cir. 2004)は,独禁法が問題となる以前に,DMCAによる請求を認めませんでした。こういう手法もありかなと思います。

余談ですが,使い古された「パンチカード」の例,若い人は「パンチカードってなにさ?」と思うかもです。

以上,失礼しました。

Posted by good_country : 2005年12月05日 00:10

 アフターマーケットをプライマリマーケットから遮断されるための論拠として、行動主義経済学を持ち出すのは、そもそも1992年判例が採用した立場だったのではないでしょうか。逆に言うと、洗練された買い手が合理的に判断できる場合にはアフターマーケットは関連市場たり得ないということになるし、下級審は標準ミクロの立場からアフターマーケット関連市場性を否定するのが通例であることはご存じのことと思います。
 当事者の合理性を仮定したとしても、アフターマーケットでの機会主義的行為を容認した場合とそうでない場合は、不完備契約下でのコミットメント問題の改善に伴い、機会主義的反競争行為を容認しない方が効率性が改善される余地があるというモデルは容易に作れるような気がします。
 日本では、転換コストがかかってロックインが生じるなら直ちに関連市場となるというような議論がかなり強いみたいではありますが・・・。
 DMCAって、まさに従来確保できなかったアフターマーケット独占を著作権改正を奇貨として、改正が保護しようとした目的を超えて、独占確保に使ってはいけませんということですね。

Posted by 独禁屋 : 2005年12月05日 04:33

ついでに、Kodakを二部料金制で説明する話は、うちの学部の経済法ゼミでもIBMの1936年の説明を聞いた学生がよく勘違いくる話ですが、これは間違いとしています。補修サービスはmeteringの道具としては有効ではないと思われるからです。補修サービスと部品ではむしろ投入要素の変動比率の説明が妥当しそうですが、Kodakでは商店となった部品が基盤部品であるとするなら、変動投入要素による効率性改善の説明は無理みたいです(さすがに、ここまでは法学部の学部レベルでは説明しませんが)。ところで、トリビアとしてかつて抱き合わせの理論的説明の代表例とされていた、Burnsteinの1960年論文のモデルはOiの二部料金制論文と数学的には非常によく似たものでした。もっとも、モデルと彼の具体例が一致しないのも事実で、それを権威あるものとして引用していた1970年代の日米のミクロ、産業組織論のテキストはちと情けない。

Posted by 独禁屋 : 2005年12月05日 07:33

なんと、Kodakの事例は、Two-part tariffの例には、該当しないのですね。
独禁屋さんは、「補修サービスはmeteringの道具としては有効ではない」ことを理由としてあげられてますが、meteringの道具として有効でなければ、Two-part tariff類似の方法として使用できないものなのでしょうか?
不勉強な私は、(効率性があるかどうかは別にしても)Tie-inやCross-subsidization等の反競争的な料金設定でなければ、企業の自由な料金設定の手法の一つとして基本的に認められるものだと勘違いしておりました。
所詮職業訓練学校の議論なのでどこまで理論的に精緻なものか分かりませんが、うちのロースクールの教授は、International saltの事例もTwo-part tariff的な料金設定の一環として認められる余地があるとも言ってましたが、なかなか難しいものなのですね。

Posted by Shim : 2005年12月05日 13:40

 
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