水曜日は3コマ入っていて、アサインメントもピークに達する・・・ということで、シリーズ2回目は簡潔に。
前回はジニ係数自体は単に「不平等さ」(inequality)をはかるための基準に過ぎず、その配分が「公正」(fairness)かどうかとか、望ましいかどうかということを直接示しているわけではないんじゃないかということを扱いました。
今回は「不平等さ」の指標として使う場合にも、気をつけるべきポイントがあるんじゃないかという話です。
ジニ係数の相対性
下の図はある2つの社会の所得配分を表したものです。
赤い線で表された所得分布(A)と、青い線で表された所得分布(B)を見比べてみた上で、まずは直観的にどちらが「平等」な所得配分を実現しているか考えてみましょう。
例えば、所得分布Aでは平均所得が500万円、所得分布Bでは平均所得が250万円であるとしましょう。
そもそも「不平等さ」というのを、どう考えるかということにもよりますが、例えば、所得分布AよりはBの方が所得最下層と所得最大層の絶対的な差は小さく、平均の前後50万円の所得帯を中流層とすれば、その部分の密度も高く、その意味では所得分布Bの方がより「平等」ということもできそうです。
では、この2つのジニ係数はどのぐらい異なるのかプロットしてみましょう。
一見青い線しか見えませんが、実はこれは所得分布Aのロレンツ曲線(赤)と所得分布Bのロレンツ曲線(青)が完全に一致しているために重なってしまっているためです。つまり、所得分布Aと所得分布Bのジニ係数は全く同一であることを意味します。
この「相対化」という作業を行うことによって、ジニ係数は所得水準の違う社会を同一の土俵で比較することができるわけですが、逆にいえば、このことによって失われている情報があるということです。
「不平等感」や「格差」を、どのように定義するかにもよりますが、例えば、絶対的な金額での「格差」と、ジニ係数で表される「不平等さ」は、必ずしも適切な尺度にならない可能性があります。
また、ジニ係数が一定でも平均所得が上昇すれば、絶対的な意味での所得「格差」は広がっていることもあり得ます。同様に、国と国の間での比較をする場合でも、ジニ係数における「不平等さ」が一緒であると言うことと、絶対的な意味での「所得格差」が一緒ということにはなりません。さらに、ホンの一握りのとびぬけた高額所得者がいたとしても、それ自体はジニ係数に大きな影響を与えるわけではないように思われます(最初の所得分布の右側のしっぽがごく僅かな密度でひたすら先に伸びていたとしても、ジニ係数にはほとんど影響を与えません(もっとも平均所得に有意な影響を与えるぐらいになれば別ですが))
さて、というわけで、ここまでは「ジニ係数では分からないこと」を書いてきましたが、こういう特性を踏まえた上で、「ジニ係数から分かること」を次回以降考えてみたいと思います。
(なお、以上の考察はジニ係数に関する教科書的な説明をベースに、私が思いついたことに過ぎないので、ご注意を。誤り等あればご指摘いただけると幸いです)
Posted by 47th : | 12:38 AM