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上限金利規制に対する議論の中間整理

(4/24 一部修正・リンク先追加) 

別に消費者金融業界にクライアントがいるわけでもなく、利息制限法や貸金業法を専門にして生きているわけでもない私が、何の因果でここまでムキになって上限金利規制に反論せにゃあかんのかという話はあるわけですが、それでも反論したいというのが人間の摩訶不思議で、これを選好の個別性の問題と呼ぶか非合理性と呼ぶかはともかくとして、とりあえず、ここまでのところでの関連エントリーを以下にまとめてみました。

ところで、一つ確認しておきたいんですが、私は、上限金利規制強化が、政策目的として掲げれている多重債務者問題の解決自体に反対しているわけではありません。
多重債務者の債務整理や自己破産申立てにかかわったこともあれば、信販会社の申し立てた財産差押えの執行で執行官について一日に複数の多重債務者のお宅を訪問したこともありますし、その意味では(現にばりばりと債務整理をこなしている方々とは比ぶべくもありませんが)多重債務者の実態についても人よりは見聞きしているものもあります。(ただ、その印象からは、多重債務者が自己抑制の利かない非合理な人々という印象は実は強くありません。多くの場合、自分又は連帯保証の主債務者の倒産・失業という予測の難しいイベントがトリガーとなり、消費者金融からの借入も生活費や住宅ローンの支払原資で、それ故に同情すべき余地の多い事案でした。この辺りの感覚は、下で挙げている「消費者金融顧客の自己破産ーその特徴と原因ー」の実証結果と一致しますが、それについてはまた後日ということで)
私が一連のエントリーで問題としているのは、上限金利規制はまず理論面から考えても多重債務者問題の解決に役立たないという意味で政策として無益であるのみならず、低所得者層によるクレジットへのアクセスを閉ざしライフラインを危殆化させるのみならず、ヤミ金融への依存度を高めてしまうという点で、却って保護の対象であるはずの低所得者層にとって望ましくない結果を惹起するおそれが高いという点です。

人間は世の中を敵と味方の二つで見たがり、敵の味方をするものは敵と考えたがる・・・と、経済学者のDavid Friedmanも最近こぼしていたわけですが、「貸金業者にとって不利な上限金利規制に反対すること→貸金業者の肩を持つこと→多重債務者の敵」という構図で見られている方がいらっしゃったら、少し立ち止まっていただけると幸いです。

また、私が拝見した他のブロガーの方の記事の中で、専ら経済学的な観点から(従って、実務的な観点や純粋に法的な観点からのものは除外しています)上限金利規制を行うことについての意義を考える上で参考になるエントリーを。

次はネットで見つけた有用な論文が掲載されているサイトと参考になると思われる論文です。

消費者金融サービス研究所:早稲田大学プロジェクト研究所ワーキングペーパー

消費者金融サービス懸賞論文サイト

同サイトには学部生の受賞論文も載っていますが、ここに挙げたのは大学院生以上の論文の中でこれに関連すると思われる論文のみです。

というわけで、この問題について引き続きご興味を持たれる方は、こうした論文などもご覧になってみるといいんではないかと・・・で、皆さんが、こうした論文をご覧になっている間に私はゼミのペーパーと試験準備にいそしむということで。

では、皆様ごきげんよう。


Posted by 47th : | 13:25 | Law & Economics

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コメント

早稲田の研究会を評価される方、よく読めば、全部貸金業者側の主張を代弁してませんか。無理な理屈を通しているし、金利制限やめて自由にする根拠もよく分からない。

Posted by 田中happy : 2006年05月15日 22:08

ご存じない方もおられるが、これが学会なのか研究会なのか別にしてこれを支援して、研究活動費を早稲田大学に一社あたり数千万円だしているのは、アコム、プロミスなど大手貸金業です。イメージアップと金利自由化運動。だから彼らの言い分の主張を早稲田大学がしているのです。そんなこと、奥島さんが認めた活動です。

Posted by TAPALS : 2006年05月15日 22:11

>田中happyさん
私もそうですが、ブログで金利上限規制に批判的な方々のほとんどは、早稲田ペーパーを読む前から、基本的な経済学のロジックの適用の結果として上限金利規制には反対しています。
経済学のロジックを政策判断の根拠とすべきでないという議論だと別なのですが、経済学の枠組みの中で議論するとして、早稲田ペーパーは比較的オーソドックスな論理的組立てだと理解していたので、どの辺りがどのような点で「無理な理屈」なのか個人的には興味があります。
>TAPLASさん
一社あたり数千万円かどうかは存じ上げませんが、消費者金融会社がバックアップをしていることは存じ上げています。
その上で、もし議論の内容がおかしいのであれば、それを批判すれば足りる話ではないかと思います。

Posted by 47th : 2006年05月17日 01:34

 
法律・経済・時事ネタに関する「思いつき」を書き留めたものです。
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