見せ金・・・というか見せ罪? [ 2006年04月24日 ]
イーホームズ藤田社長、週内に立件・架空増資の疑い (NIKKEI NET)
姉歯秀次・元一級建築士(48)による構造計算書の偽造を見逃した民間確認検査機関「イーホームズ」(東京・新宿)が架空増資をしていた疑いが強まったと して、警視庁などの合同捜査本部は23日、公正証書原本不実記載容疑で、週内に強制捜査に乗り出し、藤田東吾社長(44)を立件する方針を固めた。
何というのか、この「見せ金」騒動を初めて聞いたときから違和感があったわけで、その違和感の源というのは、ライブドアの強制捜査のときと同じ・・・というか、これが「構造計算書の偽造によって欠陥建物が建てられても、現行の建築基準法では50万円以下の罰金にしかならない。法に不備があり、立件するための法的手立てが限られた中での、捜査陣の苦肉の策でもある」(Yomiuri Online)とすれば、法定刑の軽い「本件」に重い刑罰を適用するために「別件」を使おうという話ですから、適正手続きや罪刑法定主義を定めた憲法とか刑事訴訟法1条は空文化しているという話です。
もう一つは、言われてみればそういう判例の取扱いなんですが、「見せ金」で公正証書原本不実記載(・行使)罪というのも、ちょっと怖い話です。
仮装払込の形態には「見せ金」と「預合い」という二つの形式があり、商法(会社法)上は刑事罰が規定されているのは後者だけで、前者には特別の規定はありません。
ところが、公正証書原本不実記載罪というのは、要は「民事上無効なのに、それを知りながら資本金が増加するという登記申請をしたことはけしからん」ということです。「見せ金」自体は、法律構成としては業務上横領に該当する可能性もあるので、それに比べると法定刑は公正証書原本不実記載罪の方が軽いので、被告人には「優しい」取扱いなんですが、一般的に「民事上無効な登記申請は公正証書原本不実記載罪」に該当すると言われると結構怖い話です。
例えば、弁護士から払込は有効だという意見をもらって増資をしたが、あとで民事的に争われて負けた場合なんかに、違法性の錯誤で法の不治は恕せずと言われてしまうと、法解釈の限界に挑戦する取引には刑事罰リスクが生まれることになります。
もし、その刑事罰リスクが顕在化するかどうかは、捜査機関の腹一つということになると・・・息苦しい話ですね。
一応、ライブドア事件のときの関連エントリーを以下に掲げておきます。
Posted by 47th : | 00:51
| 時事
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ものすごく見当違いな質問なのかもしれませんが、姉歯氏は詐欺罪にはならないのでしょうか?
偽装したことは認めていますので、お金を貰い偽物というか、注文どおりのものを渡していない訳ですから、こういうのは詐欺とは違うのでしょうか?
例えば小嶋社長は偽装を知らなかったと言ってますし、小嶋社長が訴えれば詐欺罪に問われるということはないのでしょうか?
Posted by amu : 2006年04月24日 00:28
公正証書原本不実記載(・行使)罪はバブル関係の色々な事件でも「活用」されたんですよね、確か。
ろじゃあも「見せ金」って報道出たときから違和感とその目的を感じておりました。
しかし、相変わらずお忙しいようなのに精力的ですね、うらやますい(^^)。
Posted by ろじゃあ : 2006年04月24日 06:05
あれ?私は「見せ金増資」が公正証書原本不実記載罪になるのは当たり前と思っていたのですが、、、東京相和銀行とか丸石自転車とか駿河屋とか。
なにか私勘違いしてますかね?
Posted by Apricot : 2006年04月24日 09:39
>amuさん
言い訳になりますが、耐震偽造問題は政治的なものも含めて背景が複雑すぎる上に、NYにいると本当に断片的な情報しか入ってきません。また、個人の人の行動を利害関係もないし、情報も持っていない(けど一応法律家ということで世の中の人は何かもっともらしいんじゃないのと思う可能性のある)私が言うのも何なのでやめておきます(相手が国家権力ならやぶさかではないんですが)
どうかご理解を。
>ろじゃあさん
「見せ金」自体、資本金制度の意義が段階的に骨抜きにされている中で、何かその違法性の程度ってどうなの?という部分もあるんですが、それが、今回のような文脈で使われるというのが、何かねぇ・・・と。
>Apricotさん
いえいえ、その通りで、判例としては確立しているんで、そこで無罪を争えるとかそういう話は難しいんでしょうね。
ただ、この民事上無効なものを登記を絡めて刑事罰に落としていくロジックというのは、実は、捜査機関の民事への介入の大きな裁量を与えているんだなぁ、と、今更ながらに気づいたというお話です。
Posted by 47th : 2006年04月24日 10:30
47thさんが人権派の弁護士だったらどんなによかったかと思います。
仰るように検察に、刑法の構成要件を超えて、実質的に刑罰に値するかどうかを判断する裁量権を与えるのは危険すぎると思います。私もこのような前田説(?)な考え方には賛成できません。大谷先生の考え方が妥当と考えます。
Posted by G7 : 2006年04月25日 09:29
>G7さん
お褒め?の言葉ありがとうございます。
もっとも、私の場合、企業活動の自由との関係で問題を感じているので、ちゃんとした人権派の方には怒られてしまいそうです。
>私もこのような前田説(?)な考え方には賛成できません。
>大谷先生の考え方が妥当と考えます。
刑法は昔は好きで、予備校から判例本や過去問本を出したこともあるんですが、すっかり忘れてしまいました。でも、確か、前田説なら弁護士の意見書とかとれば実質的故意で戦えるので、却っていいかも知れませんよ^^
真面目な話をすると、不実登記に刑事罰が適用されること自体は立法政策として一概に不当とも言えないので、実体法解釈というよりも、手続法における捜査機関の裁量や相当性の部分でうまく縛れていないということなのかも知れません。ただ、法的な枠組みの問題というだけでなく、官民でのリソースの差といった現実的な部分との関係もありますよね。
その意味で、企業側が捜査機関の裁量に対抗していくことが、個人レベルでのバランスを変えていくことにもつながるかも知れない・・・などと楽観的なことも考えていたりします^^
Posted by 47th : 2006年04月25日 15:36