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NY運転免許事情(1)

私は渡米してから1年以上になるのですが、実は、まだこちらでの運転免許をとっていません。
実際、マンハッタンに住んでいると地下鉄やバスが発達しているので、免許がなくても余り不便は感じなかったのですが、さすがに2年間NYに住んでいて、地下鉄とバスで行ける範囲のところしか見ないというのもつまらないので、さすがに免許をとることにしました。
・・・もっとも、今まで免許をとらなかったのは、免許取得が「かなり」面倒くさいということも理由の一つにあります。他の州はよく分からないのですが、ニューヨークでは外国人が免許を取得するのは、かなり面倒くさいというのも、結構大きく・・・


「6点ルール」とソーシャル・セキュリティ・ナンバー

まず、免許取得のときの障害となるのが、いわゆる「6点ルール」です。これは、免許を申請・取得する際に、複数の身分証明書を揃えていなければならないというルールなのですが、パスポートは「3点」としてカウントされるので、あと3点分の身分証明書を揃えなくてはいけません。
これには、クレジットカードや公共料金の請求書などが含まれるので、それだけ見ると「3点」分の身分証明書を揃えるのは簡単なようにも見えるのですが、実際にはクレジット・カードと銀行口座は何れか一方のみとか、公共料金の請求書も重複してカウントすることはできないとかいろいろな決まり事があって、現実的には、いわゆるソーシャル・セキュリティ・ナンバー(SSN)を取得しないと、この「6点」ルールを満たすのは、かなり困難です。
じゃあ、SSNを取得すればいいじゃないか、と、思うかも知れませんが、これも実は簡単ではありません。
SSNというのは、いわゆる社会保障番号で、年金とかの受給資格を判定するためのものなので、建前上は社会保険料を払い込んだ経歴のない人間にはSSNを発給する必要はないわけですが・・・実際には、銀行口座の開設、電話・電気などの公共サービスの申込み、携帯電話の契約、etc・・・と、日常的生活のあらゆる場面で、一種のIDナンバーとして、このSSNが使われています。
・・・というわけで、アメリカで生活を始めるときに、このSSNがないと、エライ苦労をするわけです・・・で、こうしてSSNをIDナンバーとして市民生活のあらゆる場面で用いる一方で、9・11以降のアメリカでは外国人によるSSNの取得がどんどん難しくなっています。
単純にいえば、実際にアメリカ国内で働いて給与をもらった経験がない限り、SSNはとれません・・・というわけで、典型的なところでは、配偶者ビザで暮らしている外国人は、労働許可をとって、かつ、実際に働かないとSSNの申請すらできません。また、噂では、今年からは、F1ビザで入国した学生も、実際に働かない限りはSSNを取得できないという取り扱いになったとも聞きます。
市民生活のあらゆる場面でSSNを要求するシステムにしていながら、適法に入国して暮らしている外国人にもSSNを与えないわけで・・・実際、今でこそ私はSSNを持っていますが、SSNが発給されるまでの2か月間は、本当に不便この上ありませんでした。
・・・と、脱線が長くなりましたが、そうしたSSNが不可欠となる市民生活の一場面が運転免許の取得というわけです。
ちなみに、米国内で働いていなくても、米国に住んでいれば納税申告が必要になります。そういう時には、別に納税者番号(ITN)をとらなくてはならないのですが、このITNでは運転免許取得の際のIDとしてはカウントされません。
つまり、適法なビザで米国内に住んでいて、現住所確認ができる書類があって、納税をしていても、米国内で働いていなければ、SSNがとれないために、事実上、ほとんど運転免許の申請はできないわけです。いったい、これにどんな合理的な政策的理由があるのか、私にはとんと分かりません。
もっとも、免許がとれないまでも国際免許証で運転できれば、余り支障がないはずなのですが、これもニューヨークでは住居を定めてから30日を過ぎると国際免許証で運転してはいけないということになっています(>_<)。
でも、SSNを取得するまでに1か月から2か月、で、そこからすぐに免許を申請しても1か月ぐらいかかるわけで・・・何だか外国人の便宜というのは、ほとんど無視されているような気がします。
・・・と、日本人にはニューヨークで免許を申請すること自体難しいという話をしてきましたが、次回は、その要件を何とか満たして申請した後の話などを。

Posted by 47th : | 10:19 PM

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コメント

今年からF1ビザでも、SSN貰えなくなったのですか。これだと、自動車が必須ともいえる片田舎の大学に留学する人の日常生活が厳しくなりますね。

今年から、旅行者であっても指紋・顔写真取られた上に、出国時は再度機械で指紋・顔写真を撮影して2次元バーコードを発行しないといけなくなったので、どんどん不便になってる気がします。

安全を求めると不便になるのはしょうがないのですかね。

Posted by Cazper : August 21, 2005 11:52 PM

F1だとSSNがもらえないというのは、もう何年も前からそうですよ。私の知る範囲では1997年の時点で、もらえない場合の方が多くなっていました。1997年の時点ではもらえた場合もありましたが、今はもう職員の怠慢で間違ってもらえたりはしないのでしょうね。田舎でも。
で、免許取得ですが、そもそもSSNがないと免許を取得するのが難しいというのは、他州の例では聞いたことがありませんし、よく分かりませんがたぶんNY州の事情なのでしょう。NYは他州に比べてかなり免許が取りにくい仕組みになっていると思います。どういう理由でそういうことをしているのかはさっぱり知りませんけれど、もしご存知でなかったら、他の州の例を調べるとビックリすると思いますよ。申請に必要な条件も違うし、問題数もぜんぜん違うし、受けられる言語も違うし、一日に受験できる回数も違うし、免許の渡し方も郵送だったり手渡しだったり。
ちなみに、私も女房もSSNなしの時にNYの東隣の州で免許を取りましたが、簡単すぎて笑いました。IDには何を使ったかは覚えてませんが、たぶん、パスポートと、電話とか電気の請求書とかだった気がします。

Posted by nh : August 22, 2005 12:40 AM

ほんと、米国のSSN重視は、外国人には困りものですよね。
F-1だとSSNが取れなくなったのは、昨年の10月からです。
正確には、Job offerの書類を持参しないとSSNを発行しなくなりました。(昨年10月以前は、仕事を探していると申告すれば発行してもらえました。)
どこの州もこの点については変わりがないようなので、多分、連邦法で措置されているのでしょう。
SSNのあるなしと運転免許の取得の関連性は、州によって大きく異なるので、これまた外国人には不便です。
NY州以外でも、例えば、マサチューセッツ州は、ソーシャルセキュリティオフィスから「Denial letter」というSSNが取得できないことを証明する書類を持参すれば、SSN所持者と何ら変わりなく免許を取得できます(カリフォルニア州も同様のようです。)が、イリノイ州では、SSNがないと免許の取得はできず、しかも州内に居住後3ヶ月以内で国際免許の効果が切れるので、外国人学生はどう生活せえっちゅーねん、という状態になっていると聞きました。
国策として合理性があるのか、甚だ疑問です。

Posted by S : August 22, 2005 01:05 AM

 テキサス州でもDenial Letterさえあれば運転免許が取得できました。テキサス州では運転免許はある意味生死にかかわる問題ですから、運転免許を与えないということは非現実的だからかもしれませんが。

 なお、今後はSSNを取得できない人でも免許証が取れるようになっていくようです(一時運転免許証)。
http://www.chicago.us.emb-japan.go.jp/con_realID.htm

Posted by ぴて : August 22, 2005 09:39 AM

47thさんの場合、一年目研修なのですから、そのときにSSNは
取っているのではないかと最初思いましたが、そうではないのですね。僕のときはF1ステイタスで、申請書を持っていけば楽勝で取得できたのですが(NY)今は大変ですね。

Posted by ねむねむ : August 22, 2005 09:45 AM

>ぴてさん
実はイリノイ州の一時滞在者用免許は、滞在期間(I-20の期間)が1年を越えないと取得できないようです。
したがってロースクール生は不可、MBA生等は取得可能という風になっています。
イリノイ州のTemporary Licenseの現物は見たことないんですが、他の州でTemporary Licenseと言えば、仮免のときとかに貰う紙っぺらの免許証ですよね。。。

Posted by S : August 22, 2005 06:48 PM

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