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パブコメのススメ (1)

この記事はドリコムの旧ブログの記事の転載です。オリジナル記事に付けられたコメント、TBについては、こちらをご覧ください。

イントロ編の続きです。

企業価値研究会の論点公開全体は130頁近くに及びます。全文を時間をかけて読んでいくことができれば、勿論いいのですが、それが難しい方は、まず細かいところに入る前に4頁から9頁にかけて書かれた「はじめに」を熟読玩味してみるのがオススメです。

内容に賛成するしないは別として、この部分には、今回の論点公開のエッセンスが凝縮されています。というよりも、この「はじめに」で書かれていることを具体論でサポートするために、あとの120頁近くの本体部分がついていると言っても過言ではないような気がします。

まずは、ここを読みながら、「うんうん」と頷けるところ、あるいは、「あれっ」と首をひねるところにメモを書き込んだり、印をつけておくことから始めてみて下さい。専門的な知識がなくても、ライブドア問題について触れたいろいろな方のブログの記事の中に意外なほど多くの材料は詰まっているので、一つ一つの文章について頭を使いながら読んでいくと、いろいろと思うことが出てくるのではないかと思います。(このブログでも「敵対的買収」あるいは「ニッポン放送vsライブドア」というカテゴリーで、かなりの部分を取り扱っていますので、宜しかったらご覧下さい)


この後に続く100頁以上の(一見もっともらしい)データや細かい議論に触れてしまうと、余程の予備知識を持っている人間でないと、その情報量の多さに圧倒されてしまうかも知れません。でも、実際には、そうした「情報」とか「専門性」といった権威のベールをまとわないところで、自分が頷けるかどうかというのが大切だったりするものです。いわゆる「素人考え」は結構真実を衝くことがありますから。

実際のところ、今回の論点公開では欧米でも理解が一致していない点や理論的に議論の余地が残っている部分について、特定の立場を前提にして記載がなされている部分が少なくありません。今回の論点公開の目的が「公正なルールの形成」という政策的な側面を持っていることからすれば、それもやむを得ないところがあるのですが、他方で、結論に至る過程の議論については客観的・理論的な観点からの議論の余地は大いに残っています。
(一例をあげれば、44頁の脚注57は1987年のShleifer=Summersの実証研究を基に「LBOや節税目的の買収の場合、買収プレミアムの少なくとも80%はステークホルダーの利益を移転したものである」と結論付けていますが、こうした利益の移転はプレミアムの一部しか説明できず、プレミアムの主要な要素ではなく、また、合理的なレイオフの結果と区別するのが困難であるといったその後のサーベイの結果については、(意図的かどうかは不明ですが)触れられていません。)
この辺りは、いずれ会社法やファイナンス理論の専門家の議論の的になっていくことになると思いますが、皆さんに留意して欲しいのは、この論点公開に書かれていることを鵜呑みにしないことです。読んでいく中で「本当にそうなの?」と疑問を持った部分を大切にして下さい。その疑問が「パブコメの種」です。

・・・というわけで、先に進む前に、まずは、「はじめに」を皆さんの方で味わって頂くことを期待して、今日はこの辺りで。

Posted by 47th : | 01:30 PM

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