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中国政府と中国企業は同じ夢を見ているのか?

中国石油化工、カザフの石油会社買収を検討 (NIKKEI NET)

中国国有石油2位の中国石油化工(シノペック)がカザフスタンに権益を持つカナダの石油会社、ペトロカザフスタンの買収を検討していることが明らかになった。中国紙・東方早報などによると買収額は最大25億ドル(約2700億円)。原油などの資源が豊富なカザフスタンに拠点を築きエネルギーを安定確保する狙いだ。
(中 略)
エネルギー資源の安定確保は中国政府にとって最重要な国策の1つ。国有石油各社は豊富な資金を元手に世界の石油会社の買収を加速させる戦略で、既に3位の中国海洋石油(CNOOC)が米石油大手ユノカルの買収に名乗りを上げている。

ちょうどCNOOCによるUnocal買収提案について、福井さんがお書きになったコメントでも触れられていた話で、非常に興味をそそられる話です。
・・・といっても、私の興味は、恐れるべきは政府の陰謀よりも中国人の実利能力の高さではないかと思っている私は、案外、政府と中国企業の同床異夢ということもあり得るんじゃないかという気もしています。


中国企業が石油会社買収に名乗りをあげている理由としては、もちろん中国の「国策」に基づいているという見方もあり得るのですが、個々の企業の経済合理性からいっても十分に説明が可能です。
経済合理性からこの現象を見ていくときに、一つの見方は中国企業にとって欧米の(売りに出ている)石油会社というのが「割安」というものです。
私の石油会社に関する知識というのは80年代のアメリカ、それこそピケンズがユノカルの買収をしかけた頃のものなので多少陳腐化しているところもあると思うのですが、石油会社のバリュエーションというのは、基本的に保有埋蔵原油量と掘削コストが中心で、これについては両者共に相当程度の精度をもって算定が可能だったのではないかと思います(それゆえにピケンズは石油会社の安定したキャッシュフローを狙って、数々の買収を仕掛けたわけですが)。
とすると、最終的にキャッシュフローの決め手となるのは、原油の将来的な需給関係、つまり将来の価格動向に対する見通しということになります。ここで中国の将来的な成長性やエネルギー需要に対する見通しについて、これらの中国企業がより多くの情報を持っていて、欧米企業による見通しよりも多くの需要が起きるという見通しをより高い確度で中国企業が立てることができれば、欧米企業よりもより高い価格をオファーすることができるということになります。
この観点からいうと、天然ガスや内陸の油田という、(運搬のコストがかかるため、)より地域的な要素の大きい資源を持っている会社が選択的に狙われているのも、(もちろん政治的な説明も可能ですが)経済合理性から説明することが可能です。
ところで、これだけでは中国政府のエネルギーに対する需要予測を共有して民間企業が動いているだけですから、同床異夢とまではいえないのですが、ひょっとしたら中国企業は、もっとしたたかに中国政府の危機感をうまく利用しているという可能性もあるのではないかという気もします。

CNOOC Gets Below-Market Rates on Loans for Unocal Bid (Bloomberg)

The parent company, China National Offshore Oil Corp., will give CNOOC a 30-year loan of $4.5 billion at a rate of 3.5 percent, Chief Financial Officer Yang Hua said. The parent also provided a $2.5 billion, no-interest bridge loan, Yang said. The yield on a 30-year U.S. Treasury bond is 4.2 percent.

このローンがどのぐらいfavorableなものかは一概にはいえないんですが・・・買収資金を30年、3.5%の固定ローンで貸す銀行があれば、あっという間に破綻するんじゃないかという気がしないわけでもありません(爆)。
こうした貸出条件が成立するのも、中国政府がエネルギー政策に対して敏感になっているからなのでしょうが、CNOOCとしては、そうした中国政府の「焦り」をうまく使って有利な資金調達をしているということもあるかも知れません。
ここから先は完全なモーソーですが、中国政府が、いざというときは中国政府に優先的にエネルギー供給するような約定をつけようとすると、CNOOCは、そんな「紐」がついていると、Exon-Florioの下での米国の審査に通らないとかいった理由をつけて断っているとか・・・何だか「国益」に見せかけて、ちゃっかり中国企業は「私益」を実現する・・・そんな「したたかさ」を持っているんじゃないかとか・・・そんなことを思ってしまいます。
・・・もちろん、これだけ「したたか」なら、それこそ「いざ」というときには、「国益」を図る方が自分たちの利益になると判断すれば、契約を破るという行動をとる可能性もあるので、経済合理的だから心配するつもりはないという気はないのですけど^^;

Posted by 47th : | 19:29 | Crossborder Transaction

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中国企業によるアメリカ企業買収が活発化しているようです。これが何を意味しているのかを考えると、資本による中国のアメリカ支配を意味しています。 日本は、バブルの時... [続きを読む]

トラックバック時刻: 2005年06月28日 20:00

コメント

うーん、先にシノペックが手を上げましたか・・・
シナジー効果からすると、どう考えてもペトロチャイナの案件なんですが・・・これは今後の動きが気になります。

株価を見ていても、ペトロチャイナと2番手のシノペックを比較すると、このところ随分ペトロチャイナの方がアウトパフォームしていてシノペックは大きく水をあけられていたのですが。

ペトロチャイナは親会社資産の一部を50:50のJVという形態で買収していました。中国ではこの手の非上場親会社と上場子会社間のアセットの付け替えがよく行われていて、前回の取引ではインドネシア、カザフスタン、ベネズエラ、ペルーなど、「見栄えの良い」親会社の資産を「リーズナブルな価格で」貰い受けたと報道されています。
リーズナブルな価格と言っても、大体EV/BOEでUS$4.4/boeなのですが、ゴールドマンの試算ではペトロチャイナ自身のEV/boeがUS$5.8であり、それより割安である、という程度のものです。このアセットの中身の大部分がカザフスタンで、確かにカザフスタンの資産自体は割安で買えたのですが、これは位置的な問題でディファレンシャル(輸送費)がかかるので割安にならざるを得なかっただけです。その前回のパッケージのメリットはカザフスタンのパイプライン資産も含まれているという点で、カザフスタンと中国を結ぶパイプラインが竣工すればディファレンシャルは下がり、今回買収した親会社資産の価値は上がるという図式で、最終的にはペトロチャイナが取っていくと見ていたのですが・・・

中国株関連の情報がリンク切れですので、このあたりを貼っておきます。
http://www.9393.co.jp/arita/kako_arita/2005/05_06_arita.html

Posted by 福井 : 2005年06月28日 23:02

>福井さん
今回の一連の動きは、ひょっとしたら中国国内での生き残り競争的な意味合いもあるということなんですかね?
少なくとも金融面では国策的なバックアップがあることは確かでしょうから、政府の思惑とそれぞれの企業の思惑に・・・私は全く分からないのですが、中国国内の政治的な勢力図も背景にあったりするんでしょうか?
米国メディアは中国勢力と括っていますが、中国内部にはもっと生臭いパワーバランスがあるということかも知れませんね。
こうなると、ペトロチャイナの次の一手に注目ということになるんでしょうか?

Posted by 47th : 2005年06月28日 23:16

>47thさん

魑魅魍魎、百鬼夜行の世界です。モメンタム筋も絡んでいますし。
長くなったので、ここに書いておきました。
といっても、大したことは書いていませんが。
http://nishio.main.jp/blog/archives/2005/06/post_176.html#c698

Posted by 福井 : 2005年06月29日 13:16

 
法律・経済・時事ネタに関する「思いつき」を書き留めたものです。
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