« 買収防衛とゲーム理論 | メイン | 企業価値を高めることは買収防衛の「王道」? »

「ジェット・ストリーム・アタック」はworkableか?

昨日のゲーム理論に続いて、今日もちょこっとそんな感じのネタで。
磯崎さんがTBSの例に学ぶ買収防衛策は機能するか?(その2)で、toshiさんのコメントを引用されながら「ジェット・ストリーム・アタック」対策について、次のような疑問を呈されています。

(toshiさんのコメント引用部分はじまり)
あと、共同ではないけれども、15パーセント保有者のうしろで、二人目が15パーセントを保有して「待っている」ようなケース、ライツプランだとどうやって防衛するのでしょうか。二人目には丸腰で戦えというも問題じゃないか、とたしか東大の神田教授が夏ころに発売された「商事法務」の座談会で発言されていたように思います。(ちょっと記憶があいまいですが。間違いがございましたら、またどなたかご指摘ください)
(toshiさんのコメント引用部分終わり)
「黒い三連星によるジェットストリームアタック」対策をどうするかですね。(「マチルダさーん!」)
要するに、新株予約権という弾を撃った後に、授権枠の「弾切れ」が発生しちゃうということですよね?

この3匹のドムがガンダムを取り囲んでいるというシチュエーションは、現実では決して珍しくなかったりするわけで、その意味では確かに心配しなきゃいけない話だろうと思います。
これを何とかするには、もう会社がニュータイプに脱皮するしかないわけですが、重力に縛られている地球人には、それもよう叶わんところです。
ただ、そもそも3匹のドムがいれば、当然にジェット・ストリーム・アタックは成立するんでしょうか?


誰がガイアになるのか?

少し落ち着いてジェット・ストリーム・アタックについて考えてみると、何がすごいって、3対1のシチュエーションなら、普通に包囲して攻撃しても、勝つ確率は増すだろうに、敢えて、3体が一直線に並んで相手に突進する陣形を守って攻撃していっているところです。
一直線に並ばなきゃいけないので、自ずから攻撃・回避のバリエーションは限られることになり・・・1対1でガンダムに勝てる確率が30%だとすると、最初の1機(ガイア)でしとめられる確率は、それよりも落ちて15%とかになるとか?
ところが、2体目からは、その率がグンと跳ね上がって60%、3体目に至っては90%とかになるイメージでしょうか?
となると、誰が好きこのんで先陣をつとめるんでしょう?
これは、よくある「誰が猫に鈴をつけるか?」という話にも似ています。
一つの答えは、黒い三連星のようにトリオで繰り返し同じシチュエーションに当たる場合には、例えば3体で交互に、というか、順繰りに先陣を務めるという方法です。これなら、長期的にみれば、敵を倒せる確率は上がりつつ、やられるリスクも軽減できそうです。
もう一つの答えは、予め最初の一体がやられた場合の補償のとりきめをしておくことです。まあ、ドムの場合は、やられると命あっての物種になるんですが、経済的な補償で何とかなるというのであれば、リスクを背負う分、そのリスクに見合う報酬の分配とか、補償を合意しておけばいいということになります。
・・・逆にいうと、1回きりのゲームで、しかも、当事者間にそうした補償とか利得の分配の合意がなされない場合は、誰も最初の一体にはなりたくないわけです。

敵対的買収者同士での合意は?

企業買収の場面で、繰り返しゲームというのは・・・まあ、いっつも同じ連中で顔を合わせて敵対的買収をするようになったら別ですが、通常は1度きりの関係と考えるのが普通でしょう。
となると、誰かが先陣を切って希釈化のダメージを受けたら、後に続いた買収者がそれを補填するというのは現実的か、という話になってきます。
そもそも、そういう取り決めが事前にある場合には、これは共同保有者とか、特別関係者とかそういう話にもなってくるわけで・・・そんな世知辛い法律の話はひとまず措いたとしても、いくら事前に取り決めをしていたといっても、最終的に成功した買収者が「そんな約束知らない」とか、「まけろ」といってごねる可能性が、これまたありそうな話です。
裁判所にいって、履行させてくださいとお願いするのは一つの手ですが・・・それこそ、証取法違反とかそういう話にもなりそうなんで、なかなか表にはしづらいんじゃないでしょうか?
となると、合意しようと思っても、相手が「裏切る」可能性というのが払拭できないと、なかなか有効な合意はできそうにありません。
また、買収に関する期待利益の見込みやそれによって得られる利益の算定は、けっこう不確実性や評価の違いがあるので、具体的な補償額とか分配額を事前に合意してのは、更に難しそう・・・
というわけで、ますます事前に補償や利益分配についての約束が成立するのは難しいんじゃないか、と。

・・・てなところからいくと、実際にドムが3台いても、それだけじゃジェット・ストリーム・アタックは成立しないだろうという気がします。
だから、「弾切れ」は全く考える必要はない・・・とまでは言いませんが、(なので、自分が設計するときはちょっとした仕掛けを入れておきますが、)基本的には、そんなにナーバスになる必要はないんじゃないかと思っています。
ところで、前述のエントリーの中で磯崎さんが、次のようなスキームを紹介されています。これは、そのちょっとした懸念をも払拭するという意味では、十分使えると思うんですが・・・。

ここで、(例えば条件決議型ワクチン・プランを採用するとして)新株予約権の発行を「停止条件付」で決議するのにあわせて、株主総会でも、

「(このプランの新株予約権が行使等されて発行済株式数が増加した場合に限って)、定款記載の発行可能株式総数を行使等前と後の発行済株式数の比を乗じて得た数に増加する」

というような「停止条件付」決議をしておくというのは、上記の規定に照らしてどうでしょうか?

この磯崎さんのアイディアには、コメント欄で葉玉氏が「会社法でも認められないと思います」と仰っているんですが、授権枠の停止条件付拡大決議は現行法の下でも、しばしば使われる手段ですし、条件の客観性や明白性(更に妥当性も?)という「解釈論上」の問題は残るものの、きちんと株主が情報を開示された上で、そうした定款変更を承認するのであれば、ア・プリ・オリにできないということにはならないような気もします。
もっとも、どうせ定款変更をするんであれば、2発目、3発目用の種類株(1単元1株)発行のための定款変更決議をとっておくという手もあるんですが・・・まあ、マニアックな話なんで、こんなところで。

Posted by 47th : | 09:00 | Takeover Defense

関連エントリー

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://WWW.ny47th.COM/mt/mt-tb.cgi/159

このリストは、次のエントリーを参照しています: 「ジェット・ストリーム・アタック」はworkableか?:

» TBSの買収防止策を巡る「ガンダム世代のM from 法務の国のろじゃあ
  喜ばしいことなんですけどね、ろじゃあ的には(^^)。   TBSと楽天の今回 [続きを読む]

トラックバック時刻: 2005年10月19日 00:14

» ジェット・ストリーム・アタック(その2) from isologue −by 磯崎哲也事務所
「TBSの例に学ぶ買収防衛策は機能するか?(その2)」に対して、47thさんから「『ジェット・ストリーム・アタック』はworkableか?」というトラック... [続きを読む]

トラックバック時刻: 2005年10月19日 07:35

» 3Dガンダム−ジェットストリームアタック!−(くっだらねぇ〜 笑) from 明日は明日のホラを吹く-Tomorrow, I'll give you another big talk-
Japunditブログで紹介されていた動画ですが、何はともあれまずはご覧下さい。千葉大学シネマウントフイルムパーティー1991年度作品。 ... [続きを読む]

トラックバック時刻: 2006年08月31日 11:51

コメント

磯崎さんといい47thさんといい当たり前のようにガンダムの話を織り込んでいる訳ですが論点は別にしてネタ的にはtoshiさんには通じているのだろうか・・・?ちょいと心配しております。
まあ世代的には磯崎さんとか私とあまり変わらないと思うのですが(^^;)。
toshi親分、余計なお世話だったらごめんなさい。
後でTB付けさせていただきます。
本筋でお話に参加できるようにがんばります。

Posted by ろじゃあ : 2005年10月18日 23:11

TB付けさせていただいたのですがやはり反映されるまで時間がかかるようですね。

Posted by ろじゃあ : 2005年10月19日 00:42

>ろじゃあさん

お察しのとおり、ほとんどついていけてないわけでして。Σ(^o^;)映画というと「ミナミの帝王」くらいしか足を運ばないんです。。。

常々思うんでけど、こういった話のツカミに、別のサンプルを持ち出すのは、そのサンプルを持ってくるセンスと、よほど話の中身に対する造詣の深さがないとむずかしいんですよね。
ろじゃあさんのエントリーを読んでおりましても、ブログを書く楽しさがこちらに伝わってきて、なんとなく心の琴線に触れるときがありますよ。私はそれで十分でございます。(笑)

Posted by toshi : 2005年10月19日 01:10

>ろじゃあさん、toshiさん
私も実は本家ガンダムは再放送で見た口なので、微妙に世代はずれていたりしますが・・・
別のたとえでいうと、波動砲を一回打たせておいて、そこを攻撃するデスラーというところで、どうでしょう^^

Posted by 47th : 2005年10月19日 10:19

こんばんは。ご指摘の通り相当に本質的な問題機制だと思います。

まず、ガンダム対ドムを(1)「繰り返しゲーム」とみるか「1回限りのゲーム」とみるか、(2)モニタリング(各プレーヤーが相互にどのような行動を選択したかについていつでも完全に観察すること)可能とみるか否かの検討が必要ではないでしょうか。

またニュータイプのように公共シグナル(ドムにもガンダムにも利用可能な情報)でない「私的シグナル」に依存して戦略を決定するプレイヤーの存在を認めると、話が相当難しくなるようです。詳しくはAberu, Pearce and Stacchetti(1986,1988)を、日本語のサーベイとしては「現代の経済理論(東大出版会、岩井・伊藤編)」の松島先生の論文をおすすめいたします。

ぶっちゃけた話、ニュータイプは・・・ボロ儲けですね(笑)。何のハンディもなければ彼らは市場という資源配分スキームを私的独占の道具にできてしまいます。逆に今地球上で市場が機能しているということは、地球上にニュータイプがいないことの証ですね(笑)。

Posted by bun : 2005年10月19日 10:55

bunさんへ
TBS側にもニュータイプがいるとビットを無能力化することは可能なんでしょうけどねえ。ただ、ララァみたいなキャラは少なくとも今回はいないわねえ(^^;)。
なお、一応、現行の証券取引法の枠組みは少なくとも「私的シグナル」に依存するプレーヤーを想定して枠組みを構築する必要はないのではないでしょうか?物理的な情報媒体を利用するか面と向かって話をするかしか一応手がない訳っすから(^^)。「私的シグナル」の意味によりますね。少なくとも「ニュータイプ」ベースでの「私的シグナル」は考えなくてよいということで。

Posted by ろじゃあ : 2005年10月22日 23:26

 
法律・経済・時事ネタに関する「思いつき」を書き留めたものです。
このブログをご覧になる際の注意点や管理人の氏素性についてはAbout This Blogご覧下さい。