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新日本無線へのTOB-Interesting Case Study

村上ファンド、新日本無線にTOB (NIKKEI NET)

村上世彰氏が代表を務めるエム・エイ・シー(東京・港)は21日、新日本無線の全株式の取得を目指しTOB(株式公開買い付け)を実施すると発表した。新日本無線株は、日清紡が子会社化を目的に今月9日からTOBを開始しており、今回の買い付けは対抗的なTOBとなる。日本ではこうした対抗的な買い付けが実施されるのは珍しい。

TOBの理由についてエム・エイ・シーは、日清紡の買い付け価格が新日本無線の潜在的企業価値を下回る水準であるためとしている。買い付け価格は1株900円と、現在実施されている日清紡のTOB価格より60円高い。期間は11月21日から12月15日で、新日本無線株の50.01%以上(議決権ベース)を取得できない場合はすべての応募株券の買い付けを行わない。

ということで、早速、M&AコンサルティングのHPをチェックすると、プレスが出ていました。

新日本無線への公開買付け開始に関するお知ら (株式会社エムエイシー)

この中で、公開買付けの目的について、次のように述べられています。

本公開買付けは、新日本無線の株主としての観点から、平成17 年11 月8 日に発表された日清紡績株 式会社(以下「日清紡績」といいます。)による新日本無線への公開買付けに異議を唱えるものであります。日清紡績による公開買付けは資本市場の観点から非常に歪な資本異動である上に、以下の点において、新日本無線及びその親会社である日本無線株式会社(以下「日本無線」といいます。)の株主価値最大化に反しているものと考えています。

村上ファンドの主張

もう少し、具体的な内容は、是非原文を読んで欲しいのですが、簡単にまとめると次のように。

  1. 日清紡績は、新日本無線の親会社である日本無線の大株主(20%弱)で取締役も「派遣」しており、「コーポレート・ガバナンスが機能しにくい環境の中で、「日本無線は新日本無線の売却先及び売却条件を決定したが、この日本無線から日清紡績への新日本無線の売却については、日本無線及び新日本無線が多数の一般株主を擁する上場会社であるにもかかわらず、日本無線は自社の筆頭株主である日清紡績に遠慮して、最高の売却先を探す努力も、また最高の売却価格を求めることも怠った可能性が高い」。また、840円という価格は潜在的な企業価値を下回っている。
  2. 買付予定数(50.49%)からみて、「日本無線という特定株主からの買付けを主目的とするものと見受けられ・・・新日本無線株主全てに広く平等にプレミアムを付与した価格での株式売却の場を提供すべき」である。
  3. 事業シナジーの少ない日清紡績の傘下に入って数多くある事業部門の一つとして、「しがらみの中で」経営していくよりも、「新日本無線が自立心と向上心をもって経営に取り組むことにより新日本無線の企業価値を最も向上することができる」

新日本無線取締役会の言い分

では、「歪な資本移動」に賛同した新日本無線の取締役会によるプレスリリースを見てみると、「カーエレクトロニクス分野での連携を強化することにより、経営基盤の強化に加え業績の向上と事業規模の拡大に大きく寄与するものと確信し、取締役会において本件公開買付けに賛同の意を表明することにしました」としています。
また、買付後も上場は維持することと、50.49%を有する大株主である日本無線が公開買付けに賛同の意向であることが述べられています。

Notes and Questions

余りにも興味深いケーススタディなので、私の意見を述べる前に、ケースブック的に、この事例についてのNotes and Questionsをいくつか。どれでもいいので、思いついたことがあれば、コメントなりTBをどうぞ^^。思いつくままに書いているので、ちょっと練られていないQuestionsもあるかも知れませんが、その場合は、適当にClarifyしてください。

  1. 本件が「日本無線から日清紡績への子会社株式売却」だとすれば、なぜ、日本無線と日清紡績は直接に契約を行わなかったのか?また、なぜ、日清紡績は買付上限を設定したのか?買付上限を設定しなかった場合には、買付価格はどうなると予想されるか?それは何故か?
  2. 新日本無線の株式は公開買付発表まで730~750円だったのが、その翌日に835円に上昇し、その後は830円前後で安定している。市場が情報を適切に反映したとすれば、これは、投資家がどのような期待を頂いたことを示唆するか?(a)830円台で購入した株式を840円の公開買付価格で日清紡績に売却できる(日清紡績の買付には買付予定数が設定されていることを考えよ)、(b)新日本無線の取締役会が述べたような「業績の向上と事業基盤の拡大」が見込めると予想した(日清紡績とはシナジーが見込めないとする村上ファンドの主張と整合的か?)、(c)全株買付を行う第三者が現れることを期待していた(親会社である日本無線が買付に応じない限りは、およそ支配権獲得を目論む他の買付者が現れる可能性は乏しいことを考えよ)、(d)その他。
  3. 市場において株価が公開買付価格前後で推移している状況において、一般株主としては、公開買付けに応じることは合理的か?公開買付けにあっては、50%超を有している日本無線が公開買付けに応じることを表明しており、50%超を超える部分については按分比例での買付となるため、他の一般株主が全員応募しても、応募した株式のうち半分しか買取に応じてもらえないことを考えよ。
  4. エムエイシーのプレスリリースは、新日本無線の株主が害されると主張しているのか?公開買付価格の840円が潜在的価値より安価な場合には、当該公開買付けによって新日本無線の株主は害されるか?仮に、一般株主が公開買付買付に応じなければ、日本無線から日新紡績に親会社が変わるだけであるが、日清紡績に親会社が変わることによって、新日本無線の一般株主の利益が以前より害されると信じる合理的な理由はあるか?
  5. 日本無線が900円の公開買付けに応じなかった場合に、日本無線の株主から日本無線の取締役会が義務違反を提起される可能性はあるか?訴訟が提起された場合には、どのような基準が適用されるべきか?また、どのような事情があれば、責任を追及される可能性を軽減することが可能か?新日本無線の取締役会についてはどうか?
  6. 日本無線が公開買付けに応じない場合には、エム・エイ・シーが採り得る選択肢には、どのようなものがあるか?それぞれのメリット、デメリットも答えよ。

・・・とりあえず、今のところ、思いつくのは、このぐらいでしょうか。また、思いついたら追加するかも知れませんが。
アメリカのロー・スクールで使っているケースブックというのは、こういう考える材料を与えて、あとは、「自分で考えてね」という感じで回答は特に教えてもらえません。そこがよくもあり悪くもあるところです。
それにしても、ケース・スタディとして非常に面白い事案なので、是非皆さんも、色々な角度から考えて見てはいあkがでしょう。では。

Posted by 47th : | 22:15 | M&A

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このリストは、次のエントリーを参照しています: 新日本無線へのTOB-Interesting Case Study:

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47thさんが、村上ファンドによる新日本無線に対するTOBについてエントリしていらっしゃいます。47thさんの柔軟な発想力、経験に裏付けられた知識を無料で... [続きを読む]

トラックバック時刻: 2005年11月21日 18:25

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法科大学院2年生として色々と忙しい中ですが、とりあえず、47thさんの設問5のみ、考えてみました。(余裕が出てくれば、その他の問題も考えたいと思います。)... [続きを読む]

トラックバック時刻: 2005年11月27日 03:30

コメント

こんばんは。
1はフジテレビのニッポン放送株へのTOBで、5はUFJと東京三菱の統合準備時の三井住友の提案問題などで、なんとなく回答がみえてくるようですね。
ホントは2から4までが、一番おもしろそうですが、ちょっと私には適切な回答が思いつきません。

安易な経営判断原則は通用しないように思いますので、現状では日本無線の経営陣が840円の買付に応じてしまうと問題が生じるおそれがあるように考えていますが、いかがでしょうか。私が経営陣だったら、友好的TOBのリリース前に、日清紡側と覚書を交わしておいて、内諾違反には高額の損害賠償を負担しないといけない、などと取り決めをしておくかもしれません。ただこれも、取締役が自らの義務違反を防止するためにあえて株主に損害を与えるような行動(合意)に出ていいものか、迷うところですが。株主にとって有利なTOBがなされる余地を奪う結果になりそうですし。
また、模範解答を期待しております。

Posted by toshi : 2005年11月21日 12:44

>toshiさん
コメントありがとうございます。
TBをして下さったneon98さんのエントリーも是非ご覧下さい。
責任については、どうなるんでしょうね?でも、普通に土地を売るときに、必ず高い方に売らないといけないかと、そんなこともないような・・・

Posted by 47th : 2005年11月21日 21:40

はじめまして、いつも楽しみに拝見しております。ごんたと申します。法務部門所属の者です。

このような案件がもしうちの会社で起こった場合、私は、本事例でいう日清紡のTOB(又は単純に経営陣の「好きな」方)に応じるよう経営陣にアドバイスしようと考えておりました。といいますのも、現時点では、どちらのTOBに応募しようが将来(例えば数年先)、どちらが正しかったことなど誰にもわからないからです。日清紡のTOBに応募して、仮に株価が下落したとしても、村上ファンドに応募した方がもっと悪い結果になっていたかもしれません(経営権に争いが生じ、会社がガタガタになっていたかもしれない)。そこで、結果論だけ見た株主から代表訴訟を起こされてはたまったものではありません。この「神のみぞ知る」結果については、経営判断の原則が適用されて然るべきだと思います(よって、米国のレブロン?基準は当てはまらない)。ただ、代表訴訟になるリスクは高いと言えますが、原告が勝つ要素などありえるのでしょうか(もちろん、ある程度日清紡に応じることの根拠があり、社内手続きがきちんと行われていることが前提ですが・・)。

確かに1株60円の実損は発生するのですが、そこは短期保有目的株主でなく長期保有目的株主の利益を重視したということで十分に説明できるのではないでしょうか。
この辺りは、かなりの私見が入っていますので、他の方がどのように考えておられるのか非常に興味があります。

Posted by ごんた : 2005年11月21日 23:07

遅ればせながら、この記事いろいろ考え始めたところです。遅くてあまり意味がないかもしれませんが、一点気になったのが、toshiさんのコメントのうち、日清紡と覚え書きを交わすっていう案。かえって取締役の義務違反の問題がでてくるようにも思えました(いわゆるFiduciary out条項の議論)。。。それとも違う意味でおっしゃっているのでしょうかね

Posted by ぶらっくふぃーるず : 2005年11月27日 14:54

日本法では、まだFiduciary Outは確立された実務ではないですし必要性もまだかなと思われます(契約上、規定しておく余地もありますが、そもそも日本ではベースとなる法的義務としてRevlon Dutyはないですし、あるとしても厳密にはrevlonの場面ではないですね)。ただし、そうでないとしても、善管注意義務違反の余地があることを考慮して、合理的な経営判断といえるか、単純な価格の議論以外の要素で重要なものがあるか、という問題を考える必要があるでしょうね。通常言われるFiduciary Outではないとしても、日本法上の善管注意義務を問われるおそれのある場面について、契約を解消できる余地を残していくのも本来は一法かと。こういった問題を事前に指摘したうえで、これを回避するのも重要な弁護士等の仕事ではないか、と思いますが。経営判断上の問題として考えた場合、他に売却候補が生じる可能性を考慮しなかったことが、注意義務違反になるか、現時点ではそこまで裁判所も厳しくはないでしょう。しかし、わが国でも、状況が刻々変わることを考慮して、より良い価格で処分できるようにせよ、という規範が今後定着する可能性がないとはいえないでしょう。

Posted by 辰のお年ご : 2005年12月01日 09:44

>皆様
コメント及びTBありがとうございます。
取締役の責任については、別エントリーをアップしようと思いつつ、ちょっと時間がなくて延び延びになっています。
何れ、もう少しきちんと書こうと思いますが、少なくとも日本無線から見れば、子会社株式も「資産」の一種であり、資産売却一般についての義務というところから考えるべきであり、新日本無線からみれば、基本は株主間の取引であり、自らは取引主体ではない(法的には意見表明権があるだけ)といった辺りを考える必要があるのではないかといったところがポイントではないかと(勝手に)考えております。

Posted by 47th : 2005年12月01日 18:19

 
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