奥田経団連会長、値下がり防止策「業界で検討を」 (NIKKEI NET)
日本経団連の奥田碩会長は21日の記者会見で、三洋電機やパイオニアの経営が悪化していることに関連して「値引きをしないような方策を業界全体で考えないとマージンを取れない」と述べ、デジタル家電などの値下がり防止策を家電業界として検討する必要があるとの認識を示した。
奥田氏は「販売価格を大手の小売業者にコントロールされており、新しい製品を出してもあっという間に値段が下がる」と指摘。家電メーカーが製品の価格政策を協議すれば談合と受け取られかねないが、奥田氏は「構造的な問題を皆が意識をしないといけない。(価格に関する)具体的な話をしなかったらよいのではないか」と述べた・・・
・・・さて、「(価格に関する)具体的な話をしなかったらよいのではないか」・・・というのは、もちろん、そんなことはありません。価格を維持するためには、何らかの形でアウトプットを制限しないといけないわけですが、販売数量の制限や地域分割も典型的なカルテルですし、川下業者に対して共同で取引拒絶するのもアウト・・・というよりも、「業界としての値下がり防止策」をさせないのが、独占禁止法の最大の目的といっても過言ではないので、この取組を許してしまうのは、独占禁止法の自己否定みたいなもの。
内心はどうであれば、この前のマイクロソフト事件の話でもあったように、こういうことを公で発言してしまうと、逆にあらぬ疑いをかけられないかという心配も・・・
ただ、奥田会長は、以前にもアメリカの自動車メーカーを救済するために日本車の値上げを考えるべきだといった発言をされているので、ひょっとしたら、奥田会長はかなり確信犯的にこの発言をしているのかも知れないという気もしてきました。
独禁法の世界では、競争により退出する企業が現れても、それは社会全体で見れば、最適な資源分配達成の一過程と見るわけですが、実際には企業の退出というのは、ものすごーーいエネルギーを必要とするわけですし、その資源が適切により必要性の高い産業に割り当てられるとも限りません。特に人的資源というのは、そんな容易に調整できるわけではありませんし、歴史からみれば、10年は一瞬でも一人の人間にとっての10年は極めて大きいわけで、資源分配の再調整のタイムスパンが人間の時間感覚と一致しているというわけではありません。
結局、アメリカを見ていても、競争を激しくやった後で企業が淘汰されても、他の産業への資源の分配が促されるわけではなくて、債務だけ整理されてすぐに再生されて、同じ産業に資源が再投入されているだけのようにも見えます。それでも、長期的にみれば、資源分配の調整はなされているのかも知れませんが、果たして市場に頼った調整が他の調整に比べて常に優れているのかは、一概に言えないような気もします・・・
ただ、他方で、「和をもって尊し」は、「馴れ合い」と紙一重なわけで、そのバランスをどうとるかも悩ましいところ。
まずは、今の競争法の枠組の中での分析能力を身につけるべく勉強しているわけですが、奥田会長の発言に、「その先」に考えなくてはいけない問題をつきつけられたような気がしました。