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結果よければ全てよし

昨日、みずほ証券の誤発注問題について機会主義的行動をそのまま認めていいのかという記事を書いたんですが、ろじゃあさんのブログを読んでいたら、大手証券会社が利益の全額返還を決めたということのようです。
詳細はまだよく分かりませんが(Harwaveさんのコメントによると、基金や財団への寄付を検討という話もあるようですが)、まあ、とりあえずは結果としてはよかったんじゃないでしょうか・・・


・・・なんて、天の邪鬼な私が思うはずもなく。
私が昨日言いたかったのは、こんな特殊なケースで、個別具体的な当事者の状況をや法的な解釈論をぎりぎりまでつめることを「取引安全」の旗印の下に放棄してしまうことは、証券市場の公正や信頼を高めることにはならずに、却って、証券市場というフィルターを通せば、どんな機会主義的行動も許されるというメッセージを送るということになってしまうんじゃないの?ということでした。
ところが、今回のケースでは、ろじゃあさんが仰っているように、「取引としては有効」というラベル付けをいったん行ったわけです。この「有効な取引」から得た収益を返還する理由が、どこにあるんでしょう?
当局の圧力?・・・今回の件では、一見妥当な結論に見えても、当局の判断や常識が誤っている可能性は常にありますし、そうした行政による権力の濫用を防ぐ枠組が憲法であり、法律です。
もし、「今回の件では処分できないけど、他の件でペナルティを課す」ということを、本当に考えているとすれば、そのこと自体が、今回の誤発注問題よりもはるかに深刻な別の問題を提起することになるような気がします。
更にいえば、こういう「行政がルールの枠外のことをしてくるかも知れないので、その損害を避ける」というのは、100億規模の利益をあきらめる根拠として十分かという疑問も生じてきます。
レピュテーション?・・・greedyだからという理由だけで「有効な取引」を巻き戻すことができるんであれば、一般投資家相手の回転売買だって、説明義務とか適合性なんか挟ませることなく、利益を返還すべき?・・・というか、およそ企業というのは利益追及が主たる目的のひとつなんですから、本質的にgreedyな行動様式を持っているんで、greedyだからという理由で利益の返還を始めたら、きりがない(線がひけない)んじゃないでしょうか?
何よりも、今回の「自主返還」では、前回問題にしたex anteなインセンティブの問題は解消できないように思えます。例えば、「大手」じゃない証券会社とか、今後日本でも増えてくる可能性のあるヘッジファンドとかは、どう考えるんでしょう?

我々は今回のような棚ぼたの利益は求めていない。また、自分たちの取引が証券市場の混乱に寄与することも望んでいない。しかし、目の前に落ちている現金を見逃すことは株主に対する義務を果たしたことにならない。東証とみずほ証券が、我々が利益を返還すべき法的根拠を明確に示し、それが適切なものであれば、あるいは、裁判所においてその見解の妥当性が確認されれば、我々はそのルールに喜んで従うつもりである。

・・・私が望んでいたのは、どちらかというと、こういうステートメントだったんですが・・・

Posted by 47th : | 10:29 | 時事

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コメント

すごくつまんないことかもしれないのですが、「機会主義的」という日本語が私はわからないのでいつも困っています。おそらく英語のopportunisticを誰かが訳して使い始め、定着しているのだと推測していたのです。英語にそれほど通じている訳でもないですが、opportunityの連想で、機会主義的、という訳になったのではないか、でも本当に英語の意義はそうなの???と思っています。どなたか、いやそれは正しい、というご意見でも、そういわれればいや変だな、というご意見でも結構です。もやもやを晴らすためにも、ご助言賜りたく。

Posted by 辰のお年ご : 2005年12月14日 11:24

>辰のお年ごさん
元々の"opportunistic behavior"という言葉自体は、契約の締結後に契約に規定されていなかった事象が生じるという"opportunity"や、再交渉の"opprotunity"が存在することから、そうした"opportunity"=機会を利用した行動を誘発するという意味で、そういう意味では英語でも"opportunistic"という用語はちょっと短縮しすぎで、"oppotunity-exploiting behavior"(機会利用行動)と言った方が正確なのかも知れませんね。
とはいえ、背後にそういう意味があるということを理解した上でテクニカルタームとして用いる分には、moral hazardやadverse selectionなどと並んで短くて便利な言葉なので使ってしまうわけですが^^;

Posted by 47th : 2005年12月14日 11:48

こんにちは。寄付だの返還だのには驚きました。ぶっちゃけた話「日本ってのは、資本主義のルールを無視してこんな感じにお詫びなり社会的貢献すれば、世論が納得するんだよな」と、逆にバカにされている感じというか、大人の言うことを一字一句必要以上に聞いて不自然な行動をとることでかえって逆らっている反抗期の子供を見る感じがします。

返還も寄付もすべきでないし、そんな貢献に感心する気にもならない一方で、もし私が「外資」だったら彼らのような行動をとりたくなる気もします。今年いろいろなところで、「外資」の耳に入ることなど全く考えていないと思われるような、つまらない感情的な反資本主義の議論等々が平気でされてましたからね。

本気で返還とか寄付をされないようにすべきだと思います。私はこれは「外資」による日本の資本・市場主義の無知に対する大いなる皮肉であると思います。

Posted by bun : 2005年12月14日 18:11

47thさん
早速のご教示ありがとうございます。おそら頭ではそうかなと思っていたところを丁寧に説明いただいたので、納得せねば、と言い聞かせているのですが。語感の問題として、しっくりこないなあ、というのは否めません。時間をかけて、同化しようかと思っています。

英語のopportunistic については、私見では自分勝手な、とか、「日和見」のような訳語が英語の語感を表しているかな、と思っていたのですが、どうでしょうか。
Oxford Advtanced Learners Dictionary (手元にあった古いものを改めて見てみたのですが)

opportunism = (esp derog) looking for and using opportunities to gain an advantage for oneself, without considering if this is fair or right.

とあって、

opportunist = person who acts like this.

there were many opportunists and few men of principle

という例があがっていました。この例文は、結構英語としてはなるほど、語感として持っていたところをうまく言い表していて、さすが!と思ってしまいました。
どうも日本語で「機会主義的行動」とか(例えば経済の伊藤教授などの話の中で使われていた用語でも私的には英語を訳しているように思われながら、どうも英語の語感から外れて日本語が存在しているような、変な違和感がありました。。。「主義」などというような行動様式ではないので、そもそも訳語のあて方がどうだったか、という問題があるのかもしれません。主義がない主義みたいな場面でしょうから。)

すいません、いろいろと。あとは個人的な感覚の問題なのでしょうね、きっと。言葉としては知っていますが、自分の文書や発言ではこれまでの人生でおそらく一度も使っていない(自分の言葉になっていないから)ので、まだ馴れるまで時間がかかりそうです。。。でも説明、わかりやすかったです。

Posted by 辰のお年ご : 2005年12月14日 20:56

>bunさん
「日本の市場運営者には、ちょっと難しすぎたみたいだから、『大人の対応』をしてやらなきゃな」・・・てなもんですかね。
日本も法治国家なんで、東証なり、みずほなり、日証協なりが、本当にこれはルールに反していると思うなら、裁判所に駆け込めばいいのに、と、思うんですが・・・なんかアメリカで同じことが起きたら、翌日には裁判所に取引停止の仮処分の訴えが提出されているんじゃないかという気が。
こうしたトラブルがあったときに、きちんとルールに基づいて正邪やその線引きを明確にしていくことが、トータルで見たときの取引の安全につながると思います。トラブルをルールを明らかにするチャンスとして前向きに捉えるようになって欲しいものです。
>辰のお年ごさん
こちらこそ、普段、何気なく使っていた訳語について考えさせられました。横文字を連発するのはやめようと思って、縦書きにしても、頭を使わない訳語だったら、余り意味はないんですよね。

Posted by 47th : 2005年12月15日 11:09

 
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